IS とある特殊部隊の日常   作:レッドオーガ

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楽しんでいただけると幸いです。


プロローグ

~高度423km 太平洋上空~

 

 

ピーッ ピーッ ピーッ

 

甲高い電子音が頭に響く。

 

 

「・・・チッ・・・今日はバランサーの調子が悪いな・・・」

 

 

耳元で鳴っている五月蠅い音も、周りに響き渡ることはない。

 

 

 

ここは宇宙。

 

 

周りには誰もいないし、空気は極限まで薄められ呼吸などできない。

辺りは生命の息吹を感じさせない漆黒で染まっており、自分を残して皆死んでしまったのではないかと思えてしまう。

 

 

「・・・・・・レン。」

 

「・・・・・・・」

バディの反応がない。

 

 

「レン!!」

「は、はい! なんでありますでしょうか!?」

声色から緊張が見て取れる。

 

「初めてのミッションで緊張するのもわからなくはないけど、もう少し肩の力抜こうな?さっきから少しずつ軌道ずれてるぞ。」

「えっ・・・あ・・・うわぁっ!!」

まだISの無重力下での機動に慣れていないのだろう。PICの出力を上げすぎて体が回転してしまった。

 

 

「おい! 大丈夫か?」

回転している体を反対向きの力を加えて止めてやる。

宇宙空間での回転というのは方向感覚を失いやすいため非常に危険な事なのだ。

 

「あ、ありがとうございます。大丈夫です」

ほんのり顔を赤らめるレンだったが、辺りが暗いので見られることはなかった。

 

 

 

ピーッ ピーッ Worning! Worning!

さっきから五月蠅かった電子音が、さらにボリュームを上げた。

 

 

「次は高度異常だと!? ったく今日はどうしてこうトラブルが多いんだ・・・。」

部下の前だというのに愚痴を漏らしてしまう。

 

「ごめんなさい!ごめんなさい!!私が不甲斐ないばかりに・・・」

レンが顔の周囲に涙を漂わせながら謝ってきた。

「へ?あ、ああお前の事じゃないんだ。今日は何故かISの不具合が多くてな。お前もどこかおかしいところはないか?」

「ふぇっ? と、とくに異常はありませんけど・・・」

 

 

「そうか・・・こちらオリーブ1。『鳩ノ巣』聞こえるか?」

 

流石に異常事態だと思ったオリーブ1は『鳩ノ巣』に無線をつなぐ。

 

「こちら鳩ノ巣。フランです。どうしました隊長?そろそろミッション開始時刻ですが」

 

「俺のISが高度異常を示している。そちらで確認してくれるか?」

 

「了解しました。・・・・・・隊長。こちらでは高度異常は確認できません」

 

「ということは、システムエラーか?」

「その可能性が高いですね。アラートはこちらで解除しておきます」

 

 

 

「あ、そういえば。例の件。本部から認可が下りましたよ」

 

「本当か!?レンの喜ぶ顔が見ものだな。出発はいつだ?」

 

「それがですね、本部の手違いで日本標準時の明日から登校予定になっているんです」

「明日・・・」

 

「だから今日の日本標準時22時には降下してもらうことになります。」

 

「そう・・・じゃあ早くこのミッションを終わらせて皆で祝賀会でもやろうか。」

「そうですね。準備しておきます」

「レンはアップルパイが好物だったよな。忘れないでくれよ?」

 

「フフッ 了解です。」

フランは微笑みながらそう答えた。

 

 

 

 

 

 

 

「よ~し、着いたな。」

 

 

「あれ?どうしたんですか隊長。なにかご機嫌ですね」

「い~や。なんでもないよ」

 

「さて、レン少尉。始めるぞ」

いつまでも浮ついてはいられない。

 

「了解!ウェスタナー・ピジョン、スナイプパッケージ起動します。」

水色の機体の表面に黄緑色の粒子が光る。

突如現れた粒子は彼女の手に身長の倍ほどある銃を形作った。

超長距離狙撃リニアライフル『グングニル』

レンが今持っている銃の名前だ。

決して射損じる事のない槍の名前を与えられた武器には、攻撃が届くことのないはるか高みから、正確に敵を葬り去る機能が満載している。

 

「標的の座標はいわなくてもわかるな?」

「はい!」

ISにはハイパーセンサーと呼ばれる。超高感度のレーダーが搭載されている。その機能は人間の知覚に直接作用し、普通見えるはずのない距離にいる者さえ、いとも簡単に見つけることができる。今の彼女は千里眼を手に入れたも同義だ。

 

「標的、確認しました!」

今回の標的はアフリカの砂漠に置かれた大型トレーラー。

 

「あー、その、あれだ。いちおう今回は限りなく実戦に近い訓練だ。落ち着いたらお前のタイミングで撃っていいぞ。」

 

そう、今回はあくまで訓練なのだ。

限りなく実戦に近づけるため今のような助言は本来NGなのだが、ガチガチに緊張している彼女をそのままにはしておけなかった。

 

「はい! ありがとうございます。隊長!」

 

 

 

そういうとレンは再び目線を下の青い大地に向けた。

 

 

「はぁっ・・・ふぅ・・・」

深く深呼吸をした。

 

 

 

キッというような眼光で地球を睨む。

 

 

 

「・・・・発射!」

 

ドンッという大きな音はしないものの、銃身部からは火花が走り、赤い線が宇宙と地上をつないだ。

銃後部についたスラスターは反動を抑制したが、レンの小さな体は仰け反らざるを得なかった。

 

 

標的を破壊できたか確認しようにも、着弾の際の砂埃で何も見えない。

 

 

 

「お、晴れて来たな・・・どれどれ・・・」

かすかに見えてきた標的周辺に目を凝らす。

 

 

 

そこには、横転こそしたものの弾痕が見られないトレーラーの姿があった。

 

 

 

「・・・・。」

「ミッション・・・失敗ですか。」

レンはうつむきながら、声だけで聞いてくる。

 

 

 

「ああ、そうだ。」

 

 

 

「今回含め、32回。お前は失敗している。軌道狙撃が俺たちの主な戦術だ。実際の戦場では今回のように止まっている標的だけではなく、動いている標的に狙撃しなくちゃならない場合だってある。」

 

 

「・・・・・」

 

 

 

「止まっているトレーラーにさえ狙撃できないお前はうちの部隊に相応しくない。

                          ―――――除隊してもらう」

 

 

「―――――ッ!」

 

レンは涙を流しながら驚いたように顔を上げる。

 

「ま、まってください。私はまだ・・・」

 

「除隊は決定事項だ。もう本部にも話をつけてある。お前は除隊後――」

 

 

「あ・・・・ぁ・・・・・・」

レンは言葉にならない声をあげる。

 

 

 

 

 

 

「お前は除隊後、俺と一緒にIS学園へ向かう。」

 

 

 

 

 

「え・・・・」

 

「IS学園だ。お前は明日からIS学園の生徒になるんだよ。俺はその付き添いだ」

 

「え・・・え?」

 

「なんだ、嬉しくないのか? 俺がどれだけ本部に頭下げたと・・・」

「あ、いえ・・・私、除隊されたのでは・・・」

 

「除隊だよ。 一時的に除隊。ついでに俺もだけど。」

 

「一時的・・・つまり・・・どういう事ですか?」

 

 

 

 

「つまりだな、お前はIS学園でISのことをきっちり学んで来いってこと。

                  原隊復帰はその後だ。 期待してるぞ、レン。」

 




書く暇があれば、続きを投稿していきたいと思います。

読んでいただきありがとうございました。
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