神々の尖兵 作:揚物
「止まれ!」
水路を出て少しすると大きな声が響き、視線の先には犬人族が槍と弓をこちらに向けていた
「私は狼人族のサルファと言う! 水路を抜け国交を求めてきた!」
「同じ、獣人か!? 無事に逃げてきたのか!」
「他に居ないのか!?」
「仲間だ!」
武器を引き、同じ獣人が集まってきた。なんとか一息を付けそうだが、それでもまず外交するために人族が来ている事を平和的に伝えなくては。
水路内で待機する面々の耳には騒ぎになっている声が聞こえていた。
「阿部一等陸尉、上手くいくでしょうか」
「行かなければ困りますよ。 しかし人が疑われているのも確か、今はサルファさんを信じましょう」
交戦中の国家ではなくとも、人間ある事に変わりはなく、疑いの目を持たれるのはどうしようもない。
ニ十分ほど待ったところ、狼獣人のサルファが皆の下に戻ってくる。
「皆さん。 大丈夫ですこちらへ来てください」
サルファの案内に従って、銃を下ろしてゆっくりと水路を出ると、犬獣人に囲まれ睨まれているものの、武器は向けられていない。やはり説明しても交渉の始まりは敵意から始まるようだ。
「こちらがニホンの外交官のアベさんです。 我々避難民を保護している国の外交代表です」
外交官でもある阿部一等陸尉は笑顔を崩さないよう注意をし、狼獣人のサルファがしてくれた商会に伴い丁寧に挨拶を行う。
「……外交官ということだが、人種が一体何の用だ」
「彼らは他の人種とは違います。 見た目も異なりますし、少なくとも我々はノーリスモルトの手から守られています」
「私達を奴隷扱いなどしません。 対等に扱いってくれています」
狼獣人サルファと猫獣人ビッテの言葉に、嫌悪の目を向けながらも武器を収めてはくれた。
そのまま案内され、もっとも近い砦で話し合いが行われ、一応の責任者と会う事が出来た。
怪訝な顔をしながらも、狼獣人のサルファと猫獣人のビッテが信頼できるとの説得を聞き、会談に応じてくれただけ譲渡ともいえる。
「我々としてましては、弾圧を止める為に来ました。 その為まずは貴国と国交を持ち、交流を行いたいと考えています」
「人族が止めるだと? 一体お前達に何の理がある」
「失礼、我々はオーメウス教徒ではありません。 理解してもらえるかはわかりませんが、これが神様からの指示でしてね。 遵守しなければ恐ろしい神罰が下るのですよ。 ですから我々は弾圧一切を停止させるよう尽力いたします」
苦笑しながらもはっきりと阿部一等陸尉は説明し、どうしたものかと砦の責任者は悩む。
「それで、あなた達は何をするつもりなのかね」
阿部一等陸尉の尽力により、完全に信頼されたわけではないものの、一応の交流と言う形で砦に隣接し小さな建物を立てる許可を得た。
まずは国交と言う事で、獣人の国フルーダン王国と交易品と対話、そして保護している獣人難民を確認しに訪れるとなった。
水路の整備と並行し、恐竜族からも理解を得るのには時間がかかったものの、水路と水場の拡張整備を条件とし、海に面する地域ではあるが、山を貫くトンネルの掘削も開始された。
明日にはもう一話いける!