神々の尖兵 作:揚物
特定基地から車両で道なき道を数日、人の高さほどがある石組みの防壁に囲まれた小国、冒険者や兵士達の話では、比較的温厚な国家であり良い噂も多いとのこと。
兵士達や冒険者から得た情報に従い、商人ギルドの許可を得て倉庫を借り、倉庫前に露店を開いたのはいいが、余りの混雑に派遣されていた外交団の自衛官は忙殺されていた。
生地と中古のTシャツを主に販売、平民や貧民には無地の中古Tシャツを安価に、手鏡などを富裕層に少数販売、日々売り切れるまで混雑し、品物を補給する為店を毎日閉め帰還していた。
効率が悪いようで、倉庫に品物がないので襲われる心配もなく、また情報に目敏い商人や貴族だけを相手にできる。
「本日も通常品は売り切れましたが、これでいいのでしょうか?」
川久保陸曹長が疑問を持つが、阿部一等陸尉は冷静に話す。
「貴族などは珍しい物を所有し、それがお互いの駆け引きや権威につながると情報があります。 間違いなく我々に接触してくるはずです。 開店している時間が短いのなら、情報収集に秀でた強く求める者が接触してくるでしょう。 貧民相手の安価な服はまぁ、名売りと日本国内への配慮ですね」
社交界で名声を高めるには、先んじて珍しく良い物を手に入れなければならない。それなら日本の製品を求めて必ず接触してくる、そう阿部一等陸尉は読んでいた。
その予想通り三週間が経った時、目的とした階級の者が接触してきた。
トロン王国 王城
一室では、ブロンドの髪を整えた第一王女フォリナ姫が、流行遅れになりつつあるドレスにため息を付き、探させていた情報を得た従者の話を聞いていた。
「商店がわかりましたか」
「交易に来ている旅商人が取り扱っているようです。 他の商店との取引もなく、直接の買い取りもしくは他の商人から流れた生地を得るしかないかと」
この一月、社交界では見慣れない生地によるドレスが出回り始め、トロン王国の第一王女であるフォリナ姫としては、王族として最新鋭のドレスや装飾品を身につけなければならず、取引のある商人に探させるも、最終的に稀に開いている倉庫街にある小さな商店で取り扱われていると判明した。
「本日は開店しているようです」
「そうですか。 では準備をしなさい。 私が直接向かいます」
判明してから従者は何度も取り急ぎ使用人を送るも、店が開いておらず、人をやって監視させ開いているときを確認し、商店が立ち並んでいる大通りではなく、倉庫が並ぶ倉庫街、護衛の兵士と従者を連れ、執事を連れフォリナ姫はお忍びで訪れた。
「私は高貴なるお方の使いである。 責任者の者は居るか」
「私が責任者の阿部です。 どういった御用でしょうか」
黄色い肌をした見慣れない人種の男が出てきた。危険性は感じられないのだが、品の良い見慣れない服装をしている。
「近年出回り始めている品々はお前達が販売している物か」
「なるほど、高貴なお方でしたか。 それでは特別な物を置いてある屋内にご案内しましょう」
混雑する露店を開けさせ、倉庫の中へと案内しようとしている。薄汚い場所に姫様を案内するのは少々心苦しいものの、貴族の子女として訪れている以上、余りにも大きく出過ぎるのは良くはない。
案内され倉庫の中に入ると、そこには見たこともない品物、どれも貴族どころかどの国の王族も所有していないだろう不思議な物が多く置かれており、その中でもひときわ目を引くものがあった。
「これは……!?」
銅や鉄を磨いた製品では考えられない、曇りも歪みもない美しい巨大な鏡、他国の王城でも見たこともない一品。
「我々は遠く離れた東の果てに暮らしているのですが、この国まで行商に来ているのです。 運べるものも限られますが、このような品物もあります」
阿部という商人の説明、色彩様々な生地、そして見たこともない2mx2mはある巨大な鏡、それが確かなら珍しい物もおおくあるはず、優先的に得た者が社交界を席巻することができるかもしれない。
「そなたの国ではこのような物が作られているのか?」
「他にも多くありますが、何分遠くですので運べるものが限られております。 時間さえ頂ければ用意できるものもあるでしょう」
「ふむ。 我が主は多くの物を求めている。 この品々は全て買わせてもらおう」