神々の尖兵   作:揚物

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14.庶民1

「いってきまーす」

 

 王都の子供は朝になれば薪拾いに出かける。貴族や高級商人ならまだしも、一般庶民の子供の仕事は薪拾いと荷物運びなど家事手伝い。

 いつもと変わらず近くの森で薪を集め、兵士の人達が守る城門を通り抜けて町に戻ろうとしたとき、見たこともない大きな馬が牽く荷馬車が城門を抜けていくのが目に映った。

 

「すげぇでけぇ馬!」

 

 城門を通るとき兵士の人達と一緒に眺めていると、顔なじみの兵士の人が気が付いた。

 

「坊主か。 遠方の商人らしいが。 倉庫街に店を開くそうだからいってみたらどうだ」

 

 城門を抜けて薪を家に届け、妹を連れて次は買い出しに出かける。

 母親に言われていた野菜を少し買った後、倉庫に開くと言っていた商店の事が気になった。

 

「ちょっと寄っていこう」

 

 妹の手をにぎり、倉庫街の一角に開かれている商店に向かう。

 

 

 

 倉庫の前に露店のような店が開かれ、見たこともない人達が慌ただしく準備をしていた。

 並べられている品物はどれも見たことがなく、興味がわいてしまって遠目に見ていたのに、気が付いた時にはすぐそばまで来ていた。

 

「アベイットウリクイ コドモガキテマス」

 

 何を言っているのか良く分からないけれど、こちらに気付いた緑のまだら服を着た人話している。

 

「チュウコシャツヲモッテキナサイ」

 

 緑のまだらの服を着た人ではなく、見た事のない装飾もまったくない服を着た人が指示を出している。あの人が長なのかもしれない;

 見たこともない綺麗な服、2枚差し出され困惑していると男は笑顔で話し始める。

 

「これをあげる代わりに、ここでお店を開いている事を、両親や友達に伝えてくれないかな。 これも銅貨3枚で売る物なんだけど、開いたばかりで誰も来そうにないからね」

 

「教えるだけでくれるの?」

「おじさんありがとう」

 

 妹は喜んで綺麗な服を受け取る。

 

「わかった。 帰ったらお母さんに言うよ」

 

「銅貨5枚もあればいろいろ買えるものをたくさん用意しているからね。 そう伝えてね」

 

 手を振りながら笑顔で見送るおじさんの後に、もらった服をもって家に向かう。

 

 

 

 

 

 

「ただいまー」

「お母さ~ん これもらったよ~」

 

「おかえりなさい。 あら、その服は?」

 

 子供達の手には綺麗な服が握られている。盗んでくるような子達ではないし、どこかに落ちているようなものでもない。

 

「商人の人が新しいお店を開いて居る事を教えたらくれるって言った」

「きれ~な服とかみ~んな銅貨5枚までといってたよ」

 

「そう、お隣さんに声をかけて少し行ってみようかしら」

 

 手仕事を片付け、子供達と一緒に倉庫の前の露店に向かう。

 まだ人はいないけれど、露店の棚の

 

「いらっしゃい。 この棚はどれも銅貨3枚、向こうは銅貨5枚ですよ」

 

 露店に並べられた品物は、見たこともない服と道具ばかり。

 

「あら、随分安いのね」

 

 服を手に取ってみるけれど、品質もだいぶ良いのか手触りも良い。何着も見てもどれも同じように銅貨3枚とは思えないほど質も裁縫も良く、色もとても綺麗。

 

「これが本当に銅貨3枚?」

 

「そうですよ。 この棚は全て銅貨3枚です」

 

 見たこともない上着だけれど、生地は丈夫そうで少し手直しすればいい感じのものになりそう。

 3着ほど選び、道具が並べられている方に目を向ける。

 

「これは包丁? 綺麗ね」

 

「それはおひとり様一本に限り銅貨3枚です。 店を開いている最中なら研ぎも無料で行いますよ」

 

 商人の男は一本手に取り、見たこともない果実に薄くスライスしていく。

 

「凄いわね。 銅貨3枚なんて信じられないわ」

 

 包丁も購入し、満足していると他のお客さんが一組現れ服を眺める。何着か服を手に取るけれど、ため息を付きながら元に戻す。

 

「……端切れはないかしら?」

 

 商人の男は振り返るとまだら服の男に声をかける。

 

「ウエスハアルカ?」

 

「セイソウヨウニイクツカアリマスガ」

 

「ソレヲモッテキテ」

 

 何を言っているかわからないけれど、緑のまだら色の服を着た人達が倉庫の中に引っ込み、縛られた布の塊を持ってきた。

 様々な綺麗な布の切れ端、真っ白な布の束、様々な色彩布の束、高そうなフカフカ布の束、どれも普通に売ってるところはみたこともない。

 

「端切れはこれしかありませんが、そうですね。 今日は開店日ですので、特別にひとつ銅貨1枚でどうでしょうか」

 

 とてつもなく安い。これだけの量で綺麗な端切れなんて、他所では銀貨でも出さなければ買えそうにもない。

 

「買います! 全部買います!」

「私にも一つください!」

 

 フカフカした布の束を購入し、驚きながら触れていると子供に服の裾を引かれた。

 

「お母さん。 これ欲しい」

 

 小さな棚には綺麗な丸い玉が置かれているのを、子供が指さしていた。

 

「それにお金は要りませんよ。 お母さんが一品品物を買うごとに、子供に一つ差し上げます。 5個取っていいよ」

 

 木製の玉に色を塗ったもの。5個の玉を手に取り、子供は嬉しそうにしている。

 

 

 

 

 子供が持つ見た事のない綺麗な丸い玉、親が着ている綺麗な服、口コミでうわさが広がるには十分な効果を発揮し、翌日からは全ての品物が売り切れるほどの盛況となった。

 

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