神々の尖兵 作:揚物
特定基地では現在急ピッチで開発がすすんでいた。
大まかな権益もひと段落し、設備拡充による人員の増加と、一部民間建設会社による建設や飲食店の開業も橋の周辺でのみ行われつつある。
150mの電波塔はもっとも重要であり、いまだ人工衛星を打ち上げられていない環境では、これのあるなしでは長距離通信にかなりの弊害が出てしまう。
もちろん所々に通信経由設備も用意するが、150mとなると建設会社の協力が不可欠。ただしお世辞にも安全な地域とは言えないため、自衛隊員以外との交流は禁止されており、特定基地外に出る事は出来なかった。
特定地域では検疫等の観点から、基地外に出る者は地球になかなか戻れない。その為、PXや食堂は充実しているが、それでもなお飲食店などを欲していた。
バーガーショップにファミレスに牛丼屋にカレー屋、食事の充実はストレスの軽減に大いに役に立つ。予備役自衛官には復帰と同時にそう言った職務についてもらっている。
「準備は進んでいるようですね」
阿部一等陸尉の見ている先、大型トラックの外側にベニヤ板を張り付け、大型馬車に偽装を進めていた。
大量の交易品の輸送を可能なように新たに用意している物で、香辛料や高級生地にガラス細工、日本価格の4倍から10倍以上で交易をおこなう。
それでも本来なら金と同等か、いくら金を出そうとも手に入らないものばかり、どのような事をしても市場を完全に破壊してしまうことにかわりはない。
「荷物の用意も進んでいます。 ですが本当にもっていくのですか?」
発電機も持ち込み、電化製品も少なからず持っていく。業務用の気化熱式冷風扇や冷蔵庫、LED照明と簡素ながら滞在する為の機器も今回は用意されていた。
「甘味は高く売れますからね。 向こうで保存しておくにも、最終調理するにも電気設備は必要です」
阿部一等陸尉の進言で多くのものが追加されていた。
イチゴジャムを一瓶、日本で購入するなら税込み約3000円くらいだが、銀貨30枚で販売される。
輸送料や人件費、そして世界の物価から、大よそ算出されたものだが、これでも市場を潰してしまうだろう。
もちろんそれを見越しての、プレミアム価値の価格設定ではある。瓶と言う存在が高価格だが、容器だけでもそれなりの価格になると予測されていた。
「衣類も積みましたが、これ本当に売るんですか?」
大量のパーカーやTシャツを運び込んでいる。それどころか端切れの生地も沢山詰め込まれていた。俗にいうウエスと呼ばれる安価なリサイクル裁断布、元タオルや元シーツから洗浄と漂泊のなされた端切れの山、その様子を見ながら山崎陸曹は首をかしげながら、指示を出した阿部陸尉に尋ねた。
「庶民や貧民の服を見たでしょう。 彼らを味方にするには衣食住、そのうち我々が手軽に手を出せる服を充実させます。 住はさすがに無理ですが、我々に協力すれば衣食は得られると思ってもらえれば有利になります」
食べ物も保存性の良いカンパンも一斗缶に入っている物もたっぷりともっていく。
計算された善意、それが現場責任者である阿部一等陸尉の考えであった。
「そう、ですか。 失礼しました」
数日後、準備が整い一ヵ月ぶりにトロン王国の商店兼倉庫へと出発、偽装を施した大型トラックには大量の物資が積み込まれ、商会として大きく財力で国を動かすために、ばん馬に見た目は牽かれながら進んでいく。