神々の尖兵 作:揚物
「やれやれ困りましたね」
情報が広まれば、厄介者も集まりだす。珍しい品物を求めて、夜盗やならず者の連中が輸送中を狙い、道中先回りされ10人ほどの男たちが槍や剣を構えていた。
「金と荷物を置いていけ!」
「命が惜しけりゃ跪け!!」
馬が居なければ車の速力で逃げ切る事も出来るが、借りたばん馬がいるためそれもできない。
「催涙ガスの用意。 殺傷は出来る限り避けるように。 岩切君あれを」
阿部一等陸尉の言葉に、商人に偽装している全員が武器を手に取り非常時に備える。
日本国外であり、法整備もまともではない他国、捕縛権限もなにもない以上最適な行動は撤退となるが。
「使えますかね?」
用意されていたハッサン社製 ヘラクレス、狩猟用エアーライフルだが実銃を使うよりかは安全と言える。距離によってはキジを簡単に仕留められるほどだが。
「ないよりはいいと思いますが、当たり所によっては失明どころか重傷を負いますよ?」
「可能な限り避けた上でのことなら仕方ありません。 ここはまともな司法もない国外なのですから」
全員が偽装した高機動車降りると、岩切1等陸曹を除き全員が89式自動小銃を構え、非常時に備えている。
銃と言うものを知らない以上警告射撃はなんの役にも立たない。だからこそ意図して撃たなければならないが、出来る限り殺傷を避けるには実弾もゴム弾も避けるしかない。
車両の上に出た岩切一等陸曹は狙いを定め、兜に向けトリガーを引いた。
額当てのような部分に6.35mmの玉が当たり、首をはね上げられ後方に倒れる。
「魔法か!?」
「何をされた!? くそ!」
「投石をしろ!」
盗賊達が何が起きたかわからず、混乱しながらも投石を始めようとしたとき、一人が再び腕を撃たれ持っていた剣を落とした。貫通したらしく血を流している。
「上級魔法使いがいるのかよ!」
「わりにあわねぇぞ!!」
「退け! 退け!」
盗賊連中は、武器を持ったままその場から散り散りに逃げていく。
小隊に偽装していた一団は一息つき、銃を下げる。
「弓矢をもっていませんでしたね。 もし装備していたら射殺もやむなしでした」
「矢というのは意外と高い物なんですよ。 鳥の羽に木の棒と鏃、それを手作業で生産するとなると、軍隊とか狩猟用で少数とかならともかく、盗賊が小競り合いで使うには難しいものです」
阿部一等陸尉の説明に川久保陸曹長は納得したように頷く。
「そういうものですか。 現代の工業量産している物とはことなりますね」
「現代でも矢は高い物ですよ。 工業生産でも高品質の物しか作られませんからね」
王城
フォリア姫は今年の遊楽先を決めかねていた。
「ポロム国は一昨年行きましたし、アクチノ国は昨年訪れましたし」
王族の遊楽にはその国との友好を深める意味もあり、200人近い護衛の兵士を連れる為そう簡単に決められるものではない。
国とって重要な交流を兼ねた遊楽、友好関係の為の物資に夜会への参加など、訪れたとしても自由な時間などない。
「あの商人の国、近ければよいのだけれど」
筆頭従者を呼びつけ、国までの距離を確認するものの、正確な場所は不明であった。
「非常に遠いと聞き及んでおりますが、行商をするため中継基地が馬車で行ける距離にあるようです」
筆頭従者の説明では、遊楽と言うには近すぎるが、行商品を集めている港に余り価値があるとは思えないものがある。
東南のラジム国への遊楽の帰り、少々寄り道をするつもりで行けば可能かもしれない。
「そう。 次の遊楽はラジム国とし、帰りに寄るように行程を決めましょう」
「承りました」
行商で運べるものに限りがある、直接赴けば輸送前の多くの品物を選ぶことができる。
その中継基地とやらで野営することになったとしても、それも良い事だろう。次の夜会でさらに影響力を得る為には、それくらいは覚悟しておくべき。
従者を通して二か月後に訪れるので、歓待するようにと商人に命じた。