神々の尖兵   作:揚物

28 / 65
27.平和は簡単に崩れるからこそ、維持する価値がある

 主に嗜好品であるが、日本から仕入れた品に色を付けて販売する、それだけでトロン王国には他国の貴族や商人集まり、それだけでここ二ヵ月で他国との交易黒字はどんどん増えている。

 他国の王侯貴族が集まり、嗜好品の優遇販売を求めては、トロン王国に有利な話が持ち込まれていた。

 

「姫様、ラジム国より第二王子が会談の希望をなされる書面が届いておりますが」

「そこに置いておきなさい。 いま何件会談の予定が入っていますか?」

「他国の王侯貴族11件です」

 

 連日の会談の申し込みにうんざりしながらも、トロン王国は10か国の中でも比較的発展した地位にあるが、これほどまでに連日王侯貴族が訪ねてくる今まではなかった。

 交易によって得られる金銭は国土の開拓にも回され、農地もいくらか広がっている。間違いなくあの国との交易は理にかなっている。

 

「ところで、フェリペ兄様はどうしました。 これだけ予算が増えているなら、動かせる資金も増え何かしらしているはずですが」

 

 予算があれば酒を飲んで暴れるか、騎士や兵士に無理難題を言って困らせるか、どちらにしろあまり良いことはない。

 それでも、第一王子として最低限国民には気を配り、どのような形であれトロン王国を大切に思っているからこそ質が悪いのだが。

 

「フェリペ様はここ数日外出しておりますが」

 

 何日も居ないとなると、またどこかで自前の騎士団の演習でもしているのだろう。

 

「兄の事です。 何か問題を起こす前に監視を」

 

 扉が乱暴に開け放たれ、王女護衛騎士団の隊長アメリが入ってきた。

 

「姫様お逃げください! 反乱です!!」

「なんですって!!」

 

 王国などと言っても軍団のほとんどは国民から集めた兵士が数千程度、大局が決していれば命を尽くして王族に従うはずもなく、すでに暴徒と化した兵士が王城内を荒らしまわり始めていた。

 親しくしていた騎士団を除いてもはや信頼も置けず、身の安全の為にはもはや逃げるしかない。

 護衛されながら部屋を出ると同じく王妃護衛騎士に守られた王妃と合流、王城から脱出する為広場に出るとみるに堪えない光景が広がっていた。

 

「女どもがいるぞぉ!」

「犯っちまえぇ!!」

 

 粗暴な兵士達が侍女達を嬲り、動かなくなった女を捨て半身裸のまま武器を向かってくる。

 

「どけ!」

 

 アメリ達騎士が握る剣や槍の刃が滑るように走り、腕ごと木製の盾を切り裂き血しぶきが上がる。

 専門訓練を受けた人殺しのプロである騎士と、簡単な訓練と数を力に戦う兵士では物が違う。数で押すならまだしも、同数以下なら相手になるはずもない。

 

「姫様! お早く!!」

 

 直属の護衛騎士団に守られながら、母である王妃と共に侍女達を連れ王国を捨て、荒れ地の広がる東に逃げるしか取れる道はなかった。

 

 

 

 翌日、トロン王国は首謀者不明の反乱によって王は死去、王弟トミン公爵によって反乱は鎮圧され新たな王座に就いた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。