神々の尖兵   作:揚物

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28.簒奪

 テネシ王妃及びフォリナ姫の一行は当てもなく荒れ地近くまで逃げたものの、食料もほとんどなく着の身着のままの夜営を二日、それだけでもみながかなり疲弊している。

 国に戻ろうにも王はすでに居らず、すでに乗っ取られてしまっていた。

 

「王妃様 姫様、このままでは」

 

 王妃護衛の隊長ラニールは騎士の状態や物資の数から、約300人を支えるのは不可能。国を失った王族など、盗賊に襲われるかどこかの国か村々を襲うしかない。

 国を取り戻すためにはそれしかないが、それをしたところで国を取り戻せる可能性は決めて低く、成功したとしても国民からの信頼を得にくい。

 

「一つ案が御座います」

 

 王女護衛騎士団の隊長であるアメリは、王妃護衛隊隊長ラニールとも話し合い、もっとも可能性が高い安全な道を探していた。

 

「商人ならば、取引によって味方にできるかもしれません。 このまま手がない状況より可能性があります。 日本の貿易中継地点へと向かいましょう」

 

 王妃であるテネシは訪れたことが無いものの、他に何一つ案がないことは理解していた。

 そして国を失った王族の末路ももちろん知っており、最悪奴隷狩りや盗賊連中に捕まりまともではない死に方しかできない。

 

「このまま何もしないよりは、まだ道がありますね」

「僅かですが金品もあります。 向かいましょう」

 

 フォリナ姫一行は、万に一つの可能性に賭け、日本の貿易中継基地へと向かい始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 フォリナ姫との外交対談の約束に従い、わざわざ調達した本物の馬車でトロン王国を訪れた防衛駐在官 小柳一等陸佐と正式な外交団の面々は、トミン王の居る王の間に呼ばれ跪かされていた。

 外交対談と言う話であったのだが、来てみれば命令として日本に全ての技術者と物資を献上するか、滅びるかと言う命令であった。

 

「このような内容を受け入れるはずがありません」

 

 正式な外交対談で行うような話ではない。

 小柳一等陸佐は自らの役目としてというより、外交に関わる一人として回答を行う。

 むろん正式に日本政府に伝達したところで、到底受け入れられる内容ではない。

 

「そうか。 ではお前の首を開戦の証としよう」

 

 兵士に引っ立てられ、抵抗する間もなく小柳一等陸佐は処刑され、馬車と外交対談で渡される予定であった贈答品と交易物資は奪われ、随伴していた男性事務官達は拷問されたのち、同じく特定基地に戻ることなく晒し首となった。

 その情報はまだ訓練段階とはいえ、旅人に変装してトロン王国で情報収集をしていた自衛官によって伝えられ、日本政府は頭を抱えた。

 順調に進み始めた外交が突然戦争へと変わる。これは日本政府も、そして日本政府に協力をしていた各国情報機関職員も想定していなかった。

 王が変わろうとも、少なくとも理解できる技術の差と交易によって得られる利益、それを簡単に手放し簒奪する方針に変更するなど余りにも想定外であった。

 

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