神々の尖兵   作:揚物

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30.歯がかけた歯車は直らず、空転するほかない

 方針が決定したところで問題が発生した。

 いくらトロン王国の推定主戦力が騎馬歩兵程度とは言え、トロン王国と特定基地とは距離が離れている。大型の獣や盗賊もいる道を舗装したところで車両では輸送に限度があり、兵站問題がどうしようもない。

 そして騎士兵士を殺傷するのは簡単な事だが、男手が極端に減ってしまっては国として傾いてしまう。

 トップ周辺の頭をごっそり変えてしまうのが一番なのだが、その方策を練るのに防衛省ではCIAやCBPの助言を受け連日会議が行われている。

 侵攻の為に迅速な物資輸送のが必要だが、線路を敷いてディーゼル列車を走らせるにも、獣や盗賊の害が無くなるわけではない。兵站を確保できなければ、例え奪還したところで他国の攻撃を受けてしまう可能性がある。

 そこで解決策を出したのが、ロシアのСВРであった。

 

“装甲列車”

 

 ロシアでも国内対テロ対策として、第二次大戦末期に使用されていた装甲列車を近代化改修し、広い国土を守る為に現役で運用されている。

 日本にはそんなノウハウはまったくない。それどころか大戦中に日本でも使われた装甲列車の設計図さえ残っておらず、現存する資料をかき集め一から設計するという難題が発生した。

 川崎重工業に依頼を出し、必要な機能の検討共に製造が開始。

 

・トロン王国との間を繋げる鉄道の敷設

・装甲列車の製造

 

 その必要性から予備役の中から鉄道に関わる人材が集められ、第101建設隊も再結成が行われた。計算された必要量からレールや砕石などの物資の貯蔵も進められ、先行して施設科による木々や雑草の除去などが行われていたが、第101建設隊に引継ぎが行われた。

 

 

 

 

 テネシ王妃とフォリア姫は迎賓館に留まっており、騎士達も訓練を行いながら王国を脱出するときに損傷した武具の修理を願い出た。

 特定基地内には鍛冶屋など一か所しかないのだが、獣人族の鍛冶屋に案内するわけには行かない。

 修理する為に簡単な工具類を貸し出したが、状態が酷い物は日本側が受け取り修理して返却するとしてした。

 穴が開いたり酷い凹みの部分については武器科と施設科が話し合いを行い、板金工具で形を整えたあと溶接で穴を塞ぎ、体に固定する紐を交換、汚れがひどい物はそれも落とし返却を行う。

 騎士の鎧と言っても思ったよりも鉄板は薄く、ちょっとした剣や槍の攻撃を受け止める事は出来ても、斧やハンマーに重槍などは容易く貫かれる強度しかなかった。

 騎士達はそれを理解し、機動重視で高い技術があるようだ。

 

 

 

 物資の調達に作戦の法関係、山積みの問題を急ぎ片付けた二か月後、作戦と入念な準備は唐突に全てが台無しになった。

 わざわざ日本の特定基地に、トミン王自ら軍を率いて攻めようと王都を出たからだ。とはいえ、通信機器もなく現地を目で見なければならない以上、将軍や騎士などを前線に出し、自らは安全な後陣に構えて命令を下すのは至極当然と言える。

 

「物資を奪い、職人を捕えるのだ! 抵抗する商人どもは殺してしまえ!!」

 

 トミン王が中陣から声を張り上げ、堂々とした略奪及び虐殺の号令を下した。むろん聞こえたわけではないが、王都を出陣前の式典での演説を行ったので、日本にももちろんその事は伝わった。

 

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