神々の尖兵   作:揚物

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31.手段を選ばせるのは人としての誇り

 

「ここに攻めてくるとは」

 

 現在ドローンで確認しているが、王都からまずは東に向かい、そこから海岸沿いに北に進むことで特定基地に向かうようだ。

 王都から東北東に向かえば最短距離なのだが、正確な位置を知るすべなどなく、道もわかっているわけではないため、手探りでの侵攻なのだろう。

 

「ちょうどいいでしょう。 せっかく奪った城を開けてくれたのです。 城を奇襲しましょうか」

「話では王都を守るのは100名程度らしいですから、別ルートから強襲ですね」

「民衆の抵抗もあり得ますから、王妃と王女に騎士団にもきてもらいましょう」

 

 わざわざ王城を開けてくれるのなら、労せず奪還することができる。

 帰る場所を失った軍など、追い払うだけで勝手に自壊し、徴兵された国民なら勝手に家に戻ってくることだろう。

 

「到達が予想される南部の防壁には、催涙ガス弾投射装置を優先配備いたします」

 

 トミン王の兵団の到着予定日はおよそ10日後、道なき道を食料の荷車を引いたりしているため異常に時間がかかっている。フォリナ姫が遊楽に要した時間も長かったため、徒歩や馬車が基本の世では当然ともいえた。

 二日後、編成された王都奪還部隊は特定基地から西南西に整備された砂利道を進み、トロン王国王都へと車両で一気に向かう。

 騎士団の面々には大型トラックではなく、複数のバスに便乗して乗ってもらい、まだ暗い間に出発し、夕刻に到着した王都では少数の兵士が門を守っているだけであり、空城とも言える状態であった。

 余りの速度に騎士達は少々目を回すも、護衛騎士団約250人は即時に制圧に掛かり、半日と掛からず兵士達は降伏。

 兵士にとって上の者がどう変わろうと大した差はなく、忠誠心よりも命と生活が優先され、テネシ王妃とフォリナ姫が居る事が分かると、あっさりと貴族や役人も降伏し王城の門は開かれた。

 彼らにとっては、トミン王からテネシ王妃に実権が移ろうと、何も自分の達の生活は変わらない、国や王への忠誠心など大してなく、自分の生活こそが大事であった。

 

 

 

 

 

 王都を奪還して数日後、いまだ王都からの伝令兵士が追い付かず、詳細を何も知らないトミン王率いる兵団が到着、歩兵を主力に剣や槍を持った粗末な革の鎧をきた者達が先陣として、木製のはしごを持ち特定基地の防壁に向かってくる。

 雄たけびを上げ、自らを鼓舞しながら向かってくる集団はなんとも恐ろしいものだが、どう足掻いても深さ10mの広い堀を降り地面から12mを超える防壁を超えられるわけもない。

 合計22mもある高さに届く木製のはしごもなければ、投げ縄を掛けられる場所もない。のっぺらとしたコンクリート製の垂直な壁、一定距離間隔といっても2~3キロに一か所しかない橋と、何故か開かれたままの門に殺到していく。

 

「催涙ガス及び放水砲開始!」

 

 防壁から射出される催涙ガス弾によって兵士達は混乱し、放水によって迫っていた者達は押し返され、足元の土もぬかるみ、泥まみれで転倒して動きは鈍る。

 

「いまだ! 突撃ぃ!!」

 

 催涙ガスの途切れたタイミングで、中陣に構え騎乗する騎士達は兵士達をなぎ倒しながら橋へと向かっていく。

 日本側もただ門を閉じずに橋をそのまま架けているわけではない。稼働橋であるためいつでも閉じる事が出来るため、そして罠としてそのままにしていた。

 もちろん堀を渡している全ての橋がそういうわけではない。戦車などが渡る橋は丈夫に作られており、代わりに厳重な非殺傷ではない銃火器が設置され、分厚い鋼鉄の扉が設けられている。

 警報が鳴り響きながら稼働橋が徐々に上がり、勢いあまって止まり切れなかった騎士達は10mはある堀に馬と共に落下していく。

 なんとか落ちるのを留まる事が出来た騎士達も、高水圧砲を受けて落馬し泥まみれになりながら高水圧に転がされて防壁から離れていった。

 繰り返し突破も出来ない攻勢は夕刻になった頃、一旦策を練る為なのか兵士や騎士達が引き下がっていった。

 

 

 

 トミン王国軍はたった5km離れた場所に陣を張り、夜営を始めていた。歩兵や騎士としては十分な距離、投石機や弩弓も届く事はないだろう。

 

「いつでも撃てますが」

 

 防壁の上では状況を確認し、ドローンによって正確な陣形情報が得られている。自衛隊の155mm榴弾砲は騎士達が居る中陣に狙いが定められ、攻撃開始の命令を待っていた。

 

「攻撃開始!」

 

 FH70による155mm榴弾砲の攻撃、榴弾は夜の闇を超え狙い通りの地点に落下していった。

 

 

 

 

 

 

 突然の爆発に次々と吹き飛ばされていく騎士やテント、騎士達は残骸となって飛び散る。

 防壁を守るたったあれだけの兵士など、恐れる必要もない。ここで奪った物資や職人どもに多くのものを作らせ、国家をさらに大きくしノーリスモルト国にも対抗できる力を得る。

 そのはずが、突然地面が爆ぜ、騎士達が吹き飛ばされていく。

 

「なっ、なんだこれは!? 何が起こっている!?」

 

 混乱、壊乱、何が起きているのか理解も出来ず、金と権力を使って集めた騎士が何もできず死んでいく。

 圧倒的優位な兵士の数、無理に4000人も集めた使い捨ての兵士ではなく、重要な戦力である騎士達が失われる。

 

「撤退だ! 撤退せよ!!」

 

 トミン王など身近な将軍や騎士達は何もかも捨て、着の身着のままで必死に逃げる。

 兵士のほとんどは離散し、付いてきた騎士達も数が少なくなるが、防壁が見えなくなるまで必死に逃げ続けた。

 夜明けごろまで必死に逃げ続け、ようやく生きた心地がしたころ伝令兵による王都が奪われたという情報が入った。

 

「そんな、そんな馬鹿な! なぜなぜこんなことが起きる!? 王都に急ぎ戻るのだ!!!」

 

 王都に再度奪還に向かうも、夜の間に残っていた兵士は勝手に離れていき、所詮騎士達も自らの生活の為に従っているに過ぎず、給与も望めない主の下に居ても意味はない。

 その状態でも付き従うのは金銭ではなく、信頼関係と金銭では補えない繋がり、王になって短く、金と権力でのつながりしかないトミン王に従う騎士などほとんどいない。

 

「う…ぐぐ」

 

 テネシ王女側に着くために、トミン王は騎士達に捕えられた。

 

 数日後、テネシ女王の下に裏切った騎士によってトミン王は引っ立てられ、暴力を振るわれた哀れな姿を晒す事となる。

 その場で処刑を命じる事はなく牢に繋がれ、簡易的な裁判ではあるが仮初の法をもって裁く。それが日本との約束でもあった。

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