神々の尖兵 作:揚物
王が変わったところで何も変わらない。それが貧民の生活だった。
それがテネシ女王の命令によって貧民街は潰され、廃屋や路上で暮らしていた者全員がみたこともない巨大な施設に押し込まれた。
最初は不満も大きく、軽い暴動になりかけ騎士団に抑え込まれたが、辛いが簡単な肉体労働の引き換えに、それなりの食事と寝床と服の提供と安い賃金、ルールを守る集団生活の教育など、無理やり従わされ腹も立った。
しかしわずかな食事でも争う貧民にとって、ユニット住居と日本の食事、衣服も中古服と言っても質は良く、日本なりに計算された最低賃金が保証され、日本なりに考えた衛生及び治安向上施設は評判が良かった。
どうしようもない者を除いてほとんどが不満もなく教育は進み、国家の仕事である農地や土木作業などの仕事に従事している。
「あ~、疲れたなぁ」
「今日は砂利運びだし、体が痛いわ」
「俺の所の穴掘りよりはましだろ。 すごく腹が減っちまった」
「肥溜めの輸送作業よりは楽だろ。 臭くてたまらねぇよ」
疲れたとぼやきながらも、充実した表情で元貧民たちは集団で帰宅の途についていた。
「でも、今日は変わり肉の日だろ? 腹は減りまくってた方が食えるだろ」
「おぉ、そうだったな! がっつり食うぞ!」
「変わり肉は食い放題だからな!」
大豆ミート、しかし味や食感はきっちり肉であり、美味しい調理方法は限られてしまうが、からあげやハンバーグなどに最適であり、食べ放題なため変わり肉と呼ばれ親しまれていた。
教育施設に戻り、共同浴場で汗を流してから綺麗な服に着替える。
「その服いいな。 動きやすそうじゃないか」
「この前の販売会でかったんだ。 寝巻らしいが涼しくていいぞ」
食堂では多くの元貧民が順番に食事を受け取りテーブルにつく。
食事をしている最中、ふと一人がスプーンを下ろし周囲を見回した。
「変わったよなぁ。 俺達家もなかったのによぉ」
「ん、そういやそうだな。 家も飯も風呂もかんがえられなかった」
周囲に居るのはみな元は貧民ばかり、それが今はキツイ労働やルールがあるとはいえ衣食住に困ってはいない。
怪我や病気をすれば稼いだ金で診てもらえるし、稼ぎだって少ないとはいえ生活に困るほどではない。少し我慢して貯めれば酒だって飲める。
「女王様は何を考えてるんだろうなぁ」
「少なくとも、俺は感謝してるぞ」
「ここが無くなったら、食うに困るあの生活に逆戻りだ。 それだけは勘弁だぞ」
ほんのわずかに芽生え始める国への感謝と忠誠心、ただの搾取者として王族と国家ではなく、働くことで保護が得られる場所だと思い始めていた。