神々の尖兵   作:カキフライW

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37.平和?

 トロン王国を奪還して一年、許可された日本の製品、包丁や鏡に生地を4~20割マシの価格でトロン王国に輸出し、トロン王国はさらにそれを倍以上の金額で他国に売り払う。

 それでも売れてしまうため交易黒字はどんどん膨れ上がり、日本からの円借は順調過ぎるほどに返す事が出来ていた。

 

 護衛騎士団長に昇格したアメリは急速に発展している王国に困惑しながらも、まとめられた報告書をもってテネシ女王とフォリナ姫がいる会議室へと入る。

 会議と言ってもその内容のほとんどは報告であり、大臣達も書類に忙殺される程度で特段急遽の問題はない。

 

「快適なのは良いのですが、どうも外に出るのが億劫になってしまいますね」

「仕方ありません」

 

 いまだ王城の建設中で、ユニット住宅を組み合わせた仮設の屋敷ではあるのだが、全部屋一括管理された空調、暑くも寒くもなく快適そのものであり、遊楽に訪れた他国の王侯貴族も羨むほど、中には多額の金貨を支払うので空調道具を売るように願い出る国もあった。

 

「騎士の錬成は順調に進んでおり、日本から購入した鉄により武具の質も向上しております」

 

 王都を守る為の騎士の増員に教育、日本に売った鉱石や石炭から購入した鉄による武具の新調、鍛冶師は強固な鉄材に苦労しているが、それで作られた防具は非常に頑丈であった。

 

「予算はありますし、新しい道具も専売してくれるそうですから、その準備も進めませんと」

 

 他国との交易で得た資金は円借の支払いと王都発展の為に必要なモノを日本から購入。そして使用しているものが他国が欲し、それを高く販売し利益を得る。

 正式な援助が得られるようになってからは、王国の発展速度は加速し、一年で農地は倍以上広がり食べ物に苦労はしていない。

 

 

 

 

 

 

 仮の王城の展示室兼説明室では、各国の王侯貴族や豪商が品々を検分していた。

 

「おぉ 素晴らしい鏡だ。 全身を映し出してもまだ広さに余裕がある」

「見知らぬものだが香辛料がこんなに安いとは、それも非常に美味い!」

「華奢な料理用ナイフだが、凄まじい切れ味だ。 これを料理人に使わせれば良い料理を作れるかもしれん」

「これが石鹸とは、良い匂いがしているな」

「このグラス、見たこともないほど透明で美しい。 これだけのモノをどうやって作ったのだ……」

 

「どの商品もトロン王国のみと交易をしている国からの品物です。 品々は限られており、我が国を通してでしか購入は出来ません」

 

 品々に驚いている中、トロン王国の担当大臣が独占欲を掻き立てる言葉で誘導し、金貨が飛び交い品々が次々と購入されていく。

 

「では、本日の特別商品である 蒼きクリスタルの花です!」

 

 布がとり攫われた中にはクリスタルガラスで作られた装飾品が置かれていた。

 葉は美しい緑の透明なクリスタル、花は複雑な光を放つ蒼のクリスタルで作られ、数輪が美しく輝きを放っている。

 日本で買えば5万円くらいなのだが、それをさらに倍額の10万でトロン王国に売却し、さらにそれを王国の大臣達が価格を決め金貨5枚で売られる。むろん差額は全てトロン王国の交易黒字となる。

 

「素晴らしい!」

「なんという、私が飼おう!」

「いや! 私が金貨20枚で買おう!!」

 

 価格があれよあれよと引きあがり、たった一品しかないクリスタルの花は金貨110枚で、ノーリスモルト国の豪商が購入していった。

 

「くそっ! あれだけの品を作れるとは!!」

 

 南の隣国であるオドン国の豪商であるヨクゴウは羨望が徐々に悪意へと変わり、トロン王国と交易している国家が作り出す金貨の山を得ようと計画を始めた。


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