神々の尖兵   作:カキフライW

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40.国力こそが一番の武力

 確かに兵団は追い返しトロン王国の安全は確保された。

 しかし再び兵力が整えば襲ってくるのは明白、数年はかかるだろうとも必ず来るだろう。

 騎士団を再編成し、僅かな兵士と共にオドン王国へと侵攻し、方をつけなければならない。

 トロン王国内では国民は戦勝の祝いをしているが、騎士団の半数である500人および兵士400人を集め始め、逆侵攻を行う準備を進める。

 トロン王国従来の方法なら、ほとんどの騎士や兵士を打ち倒し、領地を丸ごと支配下に入れるのだが、しかし今回からは現代式に合わせ、賠償を受け取る形で矛を収めるとする。

 わざわざ遠く広い地域を防衛するのは予算も人員もかかるが、手が届く範囲を着実に開拓し発展させていった方が、トロン王国の軍事および国力から言って適切であった。

 

 

 

 

 

 

 

 数日後、オドン国は王都を包囲され、何もできずにひたすら持久戦に持ち込まれていた。

 オドン国も当初から真正面からぶつかるつもりもなく、王都籠城による防衛を考えていたのだが、トロン王国は攻めない。

 延々と包囲しながら食料や薪などを完全に断たせているだけだが、それがかなりこの時代の国家としては辛いだろう。

 

「さぁ、食べ物は沢山ある。 存分に食って備えろ!」

 

 トロン王国は投石器や弩が届かない距離で宴までとはいかないが、存分に食事を行い大きなテントを立てる。戦うことが馬鹿らしくなるほどの差を見せつけ、戦意を失わせる作戦を取っていた。

 日本から輸入したサスペンションというものがついている荷車は、物資の輸送を迅速にさせていたが、何よりもの違いは日本のトラックという大型荷車によって運ばれる大量の食糧、そして潤沢な資金によって適正価格以上で周囲の農村や商人など食料を購入し、背後攻撃を受けないように略奪を禁止させ、それどころか貧困にあえいでいるなら、僅かではあるが食料を逆に融通してやった。

 

「少しだが酒もあるぞ!」

「攻めてくるかもしれんからほどほどにな」

 

 時折一か八か門を開き攻撃を仕掛けてくることもあるが、しっかりと日本によって城内の動きは見えており、きっちりと陣形を組まれたトロン王国兵団の反撃の矢の雨を受ける事になる。

 

「もはや、我々に負ける事はありませんな」

「当然だ。 これで負けるようでは何もできんわ!」

 

 兵団長は戦況を確認しながら参謀の横で大きく笑う。

 後衛にいる少数の日本の兵士から伝えられる情報、どのような手を使っているかはわからないが、手に取るように相手の動きが分かり、先手を簡単にとる事が出来る。

 

「騎士や兵にはニホンが言ったルールを守らせ、存分に食料を喰わせておけ。 食い物には困らんからな!」

 

 周囲の農民などから徴発は行わず、その為襲撃を受ける事もない為包囲して2週間、トロン王国兵団は兵をほとんど失うことなく、オドン国は食料枯渇によって降伏した。

 

 

 

 領地内にいる全ての獣人奴隷の開放を条件とし、この戦争を主導した人物の引き渡しと、少し広がった領地をトロン王国は得ただけで引き下がった。むろん広がった範囲には鉄鉱石鉱山が含まれる。

 一部の貴族は占領を主張したが。

 

「せっかく得たのに手放すのか! 領地を得ればその分の税収だって得られるのだ!!」

「働いた貴族の取り分はどうする!」

 

 一方で冷静に物事を見れる貴族たちは反対していた。

 

「あれだけ荒れている土地を得てどうする。 我々の農地の半分の広さもないぞ」

「そもそも守るのも手間だ。 今は王都周辺に集めているおかげで、税収も防衛も楽だぞ」

「二つも鉱山を得られただけでも大儲けではないか。 貴族達の取り分は鉱山で十分であろう?」

 

 放っておいても敗北した国家は領民は逃げ出し、周辺国から簒奪され消滅していく。自らこれ以上手を汚し苦労する必要はないのだ。

 何よりも弱った国家の領地など手に入れる価値もない。


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