神々の尖兵   作:カキフライW

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50.遊楽の騎士

 王族護衛騎士団長のアメリは日本の特定基地に特別に招致され、剣道などの鍛錬を行っていた。

 剣道は所詮はお座敷剣術と言われようとも、速度に特化し攻防の技能レベルはかなり高い。参考になればと列車の往復に合わせ定期的に訪れていた。

 さらに近接戦ではその身体能力から無類の強さを持つ獣人族、お互いに競い合い連日腕を磨いているのだが、木刀を何本もへし折りあざを作るほど厳しく激しい訓練には、自衛隊も呆れながらも感心するほどであった。

 

 その練習に混ざり、二か月間も鍛えた頃にはバランスの良い食生活も含め、体は徹底的に鍛え上げられ女性自衛官たちと共に、少々口の悪い男性自衛官からゴリラ呼ばわりされるほどとなる。

 そのアメリが参加する事で園遊会で有力な人員を集める手はずであった。

 

 

 

 

 トロン王国、小さく力もない国家だったはずだが、ここ数年各地でうわさを聞くようになった。

 そして旅商人が販売する武具、どれもふざけた様な価格だがトロン王国の物は非常にモノがよく、武具を揃えるのがステータスとなっていた。

 

「トロン王国で園遊会が開かれるそうですよ。 腕自慢のモノを集めて、闘技会を開き優勝商品は盾さえ両断できる名剣だとか」

 

 立ち寄った隣国の町で聞いた話、盾さえ両断できる名剣の話は怪しい物だが、闘技会が開かれるなら参加するのも一興だろうとその時は思い向かった。

 

「なんだ、これは」

 

 トロン王国の一面に広がる広大な農地、水を湛える張り巡らされた水路、敷き詰められた石板の道、そこを農民たちが足早に歩いていく。

 

「騎士様。 失礼ですが、急がないと門が閉まってしまいますよ」

 

 巡回していた兵士がこちらに気付き、門が閉まると伝えてきた。夕刻も近く、そろそろ門を閉じる時間なのだろう。

 足を進めると見上げるほどの防壁、その上には何人もの兵士が弓をもって警戒している。

 荷物や訪れた理由を確認され、橋を渡ると鐘が鳴り響き門の前に居た兵士が橋を渡り門が閉じられた。

 

「なんだ…これは!?」

 

 夕刻だというのに光る柱が立ち並び、多くの人々で道はにぎわっている。どの露店も人であふれ、小国とは思えないほど。

 

「さぁさぁ、ラジム国から入荷した新しい布だよ!」

「うちは他と違って混ぜ物のしてないワインだ! 美味いぞ!!」

 

 光る柱のおかげで夕刻だというのに露店の活気は続いており、ありえない風景が広がっていた。驚きながらも大通りに面している宿屋に入る。

 

「飲料水は無料ですが、風呂は先払いで近場にあります」

 

「風呂があるのか!?」

 

「はい。 公共浴場と言う物で、使用方法は入口に描かれております。 少々お値段も張りますが」

 

 受付の説明に驚きながらも案内された部屋も並みの価格でありながら、他国ではまずみられない大きなベッドが置かれている。

 この国は、一体何なのか理解も追いつかず、三日後の園遊会まで食事に風呂、そして公衆トイレや水道などもはや驚く事さえ疲れてしまった。

 

 

 園遊会の一番の見どころである闘技会。

 どれだけの強者が集まっているのか、参加者である騎士や傭兵達は緊張をもって集まっていた。

 そんな中、優勝賞品となる剣、どこから見ても非力なメイドの女が拙い動きで振り上げられた剣によって、革の鎧ではあるが簡単に真っ二つにされてしまう。

 あれが今回の優勝賞品、たしかに鍛え上げた騎士が使えば、鉄の鎧さえ切る事は可能だろう。

 ぜひとも欲しいと多くの騎士や傭兵達が剣を見る中、トロン王国の騎士団長はじっと様子を見ていた。今回はこの中で使える者を探す目的があり、事によっては騎士として取り立てるつもりである。

 

 

 

 丸二日続いた闘技会ではけが人が続出する者の死人は出ず、王族護衛騎士団長のアメリは顔と素性を隠し、5人を叩きのめし優勝をするとともに当てを付けた10人ほどを勧誘をしたのだが、強さはともかくとして学という事に関してはもはやトロン王国の平民にも劣る事が分かり、正規採用するには勉学を必要とするなど頭を抱える事になった。


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