神々の尖兵 作:揚物
漂流船に残っていた海図と地図、そして海魔の話から航海日数はおよそ15日。
フランス侵攻直前の1939年数からおよそ5年、本来ならばかなり科学的に発展しているはずだが、中世から近世程度の技術レベル相手に新技術や新兵器が必要なはずもなく、量産性を優先していると思われた。
何よりも一軍である以上、生産設備の立て直しや国家体制の構築も必要であり、いまだ第二次大戦直前より劣る程度しかないようだが、これ以上の事は残されていた書類などからわかることはなかった。
そして漂流していた理由は、遠洋に出たことで海魔に襲われ船員が皆喰われたと言う事を、海魔族が物知りであり、大まかな情報を得る事は出来た。
大陸で戦争をしている相手は虫人族、元々は虫人族の縄張りを人族が荒らすために戦争になっていた、生物的に優位な虫人が勝っていたが、ナチスドイツが介入したことで虫人族は攻め込まれており、害虫として殺戮が行われているそうだ。
正確には余りにも力の差がある為、虫族との戦いは片手間であり他国と戦争中であるとのこと。
縄張りを勝手に船で回ろうとする為、海魔族が攻撃をしているため遠洋に出る事は出来ていない。漂流船も海魔族によって船団を破壊し尽くされ、たまたま残っていたものらしい。
「よーしよし。 約束通り大きな洞だ。 一族から案内を寄こしてやろう」
一年半かかった海中建設も終わり、海魔族のデビルフィッシュ(タコ) ジュウモンに案内されながら、日本の外交船団はミヤムロス大陸から北西に向かって航行を始めた。
3900トン型護衛艦くまの
重巡洋艦程度の大きさのある護衛艦艇では威圧になりかねないとして、フリーゲート級に近いものが選ばれた。
十数日間の航行中に時折海魔が現れるものの、大型種であるデビルフシッシュがいるため襲われることもなく、大陸に近づくとレーダーに反応が入った。
近海のみしか航行できない事を理解しているらしく、何か慌てたような動きが見て取れる。
「あれは 駆逐艦でしょうか」
「データ上は類似点がありますが、現物の情報はありませんので」
大陸沿岸は海魔族も口を出さすことはないから船の運用ができる。だからこそ遠洋から現れた日本の艦船を怪しんでいた。
砲身が向けられ穏便とは言えない状況のようだ。急ぎドイツ語で日本であることと外交の為に訪れた事を伝え、かなりの驚きをもって返信があり、案内される形で南東部の主要港に寄港する事となる。
蒸気タービンではない為黒煙を上げていない3隻の船にいささか疑問を持たれているようだが、特に探られることもなく港での検疫を兼ねた事務所で簡易的な話し合いが行われ。
「大日本帝国から来るとは、そちらもこの世界に転移してきたのか」
どうやら過去というか、次元の異なる過去の日本を知るドイツ人将校がいまだ現役で存命なのは助かることであった。
「色々ありましてこちらに来れたのです。 まずは外交関係の再構築等ができるよう、面会の手続きをお願いしたいのですが」
まずは色々としなければならないが、幸いな事に比較的日本にも理解あることからスムーズに連絡が届き、蒸気列車も走り、主要港であるため外交の為の領事館もあることから、見事な石材建築のなされた外務署に案内された。
ドイツ風の建物はまだ多くないようだが、いくらか見受けられる事から建設そのものは始まっているようだ。しかし町を歩いている人間にドイツ人は多くは見られず、そのほとんどがこの世界に住人と思われた。
外交の為に通された応接室ではドイツ人の外交官が待っていた。
「いやはや、この世界にも日本帝国が来るとは。 久しく同程度の人間に会えず、嗜好品も限られていてな。 まずはその辺りから始めましょうか」
状況が状況である事から、まずは細かい取り決めの前に、単独国家では充足するのが難しい嗜好品の交易から始めることが急ぎ決定された。
酒にコーヒー、たばこ、砂糖に香辛料と現在入手に苦労している物の交易が優先された。不思議な事に原油や石炭にガスついては話が出なかったことから、何かしら入手する方法をすでに確立していると考えられる。
むろん嗜好品が不足している事は予測されており、酒類にたばこに甘味など、第一次交易を兼ねて輸送してきていた。むろんすべての品の産地は入念に消されており、他国がある事は隠されている。
到着した翌々日には広めの倉庫に並べられ検分を兼ねた販売が行われたのだが、近隣都市や基地にいた高級官僚や上級将校も訪れ予想外の状況になった。
「ふむ。 これほど甘いものは久しく味わえてなかったが、日本は砂糖類を生産できるだけの領地を得ていたのであったな」
「砂糖類の輸入、これは重要ではあるが、今回の交易量は総統府に回すべきだろう」
バターレーズンサンドは好評で、無料の甘味として提供したところすべて食され、お土産用に木箱に入れた物は全て持っていかれてしまい、遅くに来た方には丁寧に謝らなくてはならなかった。
「これはシュバルツか。 ビールはやはりこうでなくてはな」
「これも悪くはないが本国のものが懐かしい。 ラオホのあの癖が恋しいものだ」
安価に用意した黒ビールは200リットルの大型鉄製タンクで販売とは別に試飲用で持ってきたのだが、まるで水であるかのように飲まれている。
どこから持ってきたのかクランツとグラスが用意されてしまい、どんどん注いではグラスは空っぽになり、同じようにどこからか用意されたソーセージと合わせて一部では酒盛りが始まっていた。
「シガーがあるのか!」
まだ見回っていた将校は、嗜好品でもある葉巻に目を付けた。
ドイツでは葉巻やタバコが好まれるが、どうやら現在の領地では十分に賄えていないのか、品質が良くないようだ。
「どうぞ。 お試しを」
シガーカッターで吸い口を切り、数本の葉巻を渡すとシガーマッチで火をつけ、煙を口内で回し十分味わった後煙を吐く。
「中々悪くない。 全部買わせてもらおう」
「まて。 国家買い上げとして、総統府に送る。 こちらに譲ってもらおうか」
高級官僚と上級将校のにらみ合いが起こり、険悪な雰囲気がタバコ及び葉巻が並べられた前で起こっていた。
ライヒスマルクでの取引とはいかず、最初の取引であるためにまずは金銭ではなく、為替については今後ということで元のドイツでの同等製品と同じ価格設定し、それを個人が国家に支払い、その総額に値するものをドイツが日本に渡すという事で話が付いた。
それほどまでに嗜好品に飢えている状況であったための緊急措置であった。
帰還後順調な接触が出来たと報告したものの、しかし国連では大いに荒れた。
別次元であるとはいえナチスドイツ、過去の大戦で被害にあった国々は早急に国連軍を結成し、攻撃をすべきと訴えた。とは言え、別世界であり橋を渡れるのは日本のみ、それ故にフランスとポーランドは兵器の価格低減し、押し付けるように早急に対応するように国連を通して訴えた。
ポーランドからは自国製PT-17戦車
ポーランド製戦車は砲弾が規格が異なる為運用が難しいと断りを入れるも、わざわざNATO規格の120mm砲に換装されたタイプまで輸送してきた。
フランスからは対地攻撃が可能な ダッソー nEUROn
格安で大量購入を持ちかけられ、とはいえ日本政府は情報を得るためにメンテナンスの理由を付けてデータを得ようとしているフランス政府の思惑がみえる。
それほどナチスドイツへの恨みはいまだに消えていない事に日本は驚きつつ、断れるわけもないため受け入れた。
ヴィーゼルとレオパルド2PSOでさえ、売りつけられた陸上自衛隊で運用と錬成に苦労している中、さらにPT-17と現場は青ざめ、どうしたものかと頭を抱えてしまった。