神々の尖兵 作:揚物
ミールモノル大陸の東端にある虫人達の国。
これも海魔によって教えてもらった事で、そこには小規模ながら港があり接触をするため外交団を送っていた。
とはいえ人間は忌避されている。そのため難民町に住まう獣人の中から、ルファスさんが推薦した10人ほどの獣人族の人達と共に外交に赴いている。
陸が見える沿岸まで近づくと、低空ではあるが空を飛ぶ虫人、おそらく種類はトンボ系だろうか。頭部も虫の比率がかなり高いものの、体は一応四肢が大きく人類種に近しい所まで進化してるのが見て取れる。
警戒されているようで手に持っているスピアーや剣をこちらに向けていた。
「私は狼獣人族のサルファ! 我々は戦いの意図はなく外交に来た!! 取次ぎを願いたい!!!」
甲板に出た狼獣人のサルファが声を張り上げ敵ではないと訴える。
いくらか警戒するように周囲を飛び回った後、1人がサルファの前に降り立った。
「ミーは飛行隊長であるホロリス。 外交に来たというユー達はどこの者だ」
驚くべきことに言語はやや訛りこそあれどやはり日本語、それも小笠原方言であった。
どうやらクロノス人種以外にはある種の方向性があるらしく、もしやそのために日本のみをこの世界に送りこむ理由となったのかもしれない。
阿部三等陸佐は今はまだ顔を出すべきではないと判断し、猫獣人のビッテ達などに任せ船内から出なかった。
「ここより南東に数十日航海をした大陸にある国家、といえるかどうかは分からない規模だが、協力を受けながら危険なこの世界の人種相手に対抗している」
この世界、異なる世界からきているというのを最初はサルファ達も信じなかったが、光の先に消える橋を見てからは、日本が異なるモノだと認識していた。
初めて見た時は、神から命じられたという言葉が嘘ではない事、そして光の先から現れる車両や船にどれだけ驚きを持ち、そして神に見捨てられず守られている事を感謝したことか。
考えるようなそぶりを見せ、数人を甲板に降ろし話をしていたが、少ししてこちらを向くと持っていた剣を腰の鞘に納めた。
「上にはコールしておく。 ポートには案内する故に指示に従え」
合図を送ると警戒していた全員が降りた地、1人が説明を受け陸地に向かった。違和感があるが、小笠原弁なのだから仕方ない。
誘導された港は水深が浅い為途中で小舟に乗り換え、サルファさんやビッテさん達に囲まれる形で阿部三等陸佐のみが向かう。
危険が伴うが人種と戦争をしている相手に対し、大人数で行くのでは話が通らなくなる可能性がある。何よりも阿部三等陸佐が姿を出したところで確実に敵意を向けられたことからもわかる。
港にある外交を行う為に招かれた屋敷、獣人族によって守られているものの安全とは言い難い敵意を向けられていた。
「ふん。 人間が一体なんのようだ」
「我々は物品の取引を考えております。 戦うつもりはありません」
阿部三等陸佐は丁寧に出るも、やはり攻撃を受けている国家の外交を司る以上対等とは言えない。敵対的な反応が隠されずに見えていた。
「身を覆って隠す人間の事などビリーブできるものか。 リアルインテンション 覆い隠しているに違いない」
虫人は服を着ていない。ならばと阿部三等陸佐はその場で服を全て脱ぎ、何一つ身に着けない産まれたままの姿になり再び席に着いた。
「それでご理解を頂けるなら、そう致しましょう」
さも当然であると違和感もなく堂々としている姿に、さすがの虫人も唖然とした。これがきっかけとまでは行かないものの、互いの風習など基本的な話を行い、次の機会に外交を司る虫人が10人ほど難民町を視察に訪れる事が決められた。