神々の尖兵 作:揚物
2度目の外交・交易に伴い、希望のあった嗜好品を満載し新生ドイツを到着していた。
まだ総統代行との面会は出来ていないが、相応の外交に関して立場を持つ人物との会談の場を設ける事に成功した。
港から蒸気鉄道に揺られ半日で首都ルリンへと到着、周辺にはドイツ人が多く見られ都市もドイツ式建築が非常に多い。
「どうやら完全に国家として定着しているようです」
「半世紀も経たずにここまで、もはや文明を戻す事は難しいでしょうか」
消えた文明は元に戻す事は出来ない。生活を壊され教育された国民たちは元には戻らないだろう。ドイツ式の国家としてこれからも進めていくしかない。
通されたレンガ造りの庁舎に執務室。そこで待っていた生粋のドイツ人との交易に為替レート、交流への話し合いの中で問題が語られた。
「それでは、神王モネフ国との外交は無理であると?」
「生きたまま生皮と爪を剥がされ、局部を切り落とされ、目玉をえぐられて帰ってきたのだよ。 近くに行くことさえも止めたまえよ」
どこまで真実であるかは不明ではあるが。
新生独逸は現在の国を占拠したのち、マスケット銃程度を使用する文明程度故に、高度な文明国家であるとの自負から形式に則り外交の為に赴かせた一団は壊滅。
拷問がなされた後、全身にモネフ国が崇める神のシンボルが全身に焼き印された状態で外交団代表が戻されたとのこと。
新生独逸の外交官から聞かされた文明国家ならあり得ない行動、外交が出来ない以前に接触が出来ないというのはさすがに異常過ぎる。
何はともあれ今回の外交対談では実りがあり正式な為替が結ばれ、日本が持ってきた交易品をライヒスマルクで購入することで第一為替保有とし、今回の交易では三号戦車B型の設計図を日本側がライヒスマルクで購入する事で、ほぼ等価の形で通貨の保有量は最小限にとの取り決めであった。
むろん交易ルートである外洋航行術について、暗に探られるものの、日本側の重要な軍事機密として伏せられ、その主を聞いたドイツ側の外交官もそれ以上は話す事はせずに済んだ。
重要な軍事機密の開示は簡単な事ではなく、一の外交官のやり取りで情報を引き出せるわけもない故に、今後の話し合いと言うことで終わっている。
交易品一覧を眺めながら、贈答品として贈られた葉巻を深く吸い込む独逸外交官。
「ふむ。 趣向品や食料品ばかりだが、繊維類はないのかね? 木綿や絹は日本の主要輸出品であったはずだろう」
「一覧以外についてはご要望のモノを聞いてからが良いかと考えておりまして。 こちらとしても、転移後の騒動で国内産業は順調ではございませんので」
正直第一次大戦と第二次大戦の間、独逸との交易していた品物についての情報が余り残っておらず、確実に必要としている嗜好品や食料品以外については手探りであった。
転移後の国内産業のごたごたも一応一息つき、消えた国家が行っていた生産活動の代替など、各国は大変であり低迷どころか需要に対して供給が追い付かない状況であった。さらにそんな状況でも新天地の開拓需要は留まる事が無いのだから、日本でさえ製造設備のほとんどがフル稼働状況で要求もなく準備する余裕はなかった。
「そうか。 では服を発注しようか」
「服、ですか」
日本の外交官が疑問に思っている中、苦笑いをしながら秘書に命じ、壁に掛けてある外套を持ってこさせテーブルの上に広げる。
「この国の者達は裁縫技術が低くてな。 なんとか軍服などを作らせているが、出来るのは遅く裁縫は稚拙と酷いものでな。 参考の衣服を渡す故に各種サイズと量を、あとは靴類もだな」
服の質はともかく裁縫はかなり宜しくないようで、依頼する意味はよく理解した。一方で独逸側の輸出品は主に設計図や技術情報、そして大量に採掘できるというレアメタル類。
日本以外の他国が競うように開拓している新大陸から、あらゆる種類のレアアースやレアメタルが大量に産出しているので、価格はかなり暴落傾向にあるのだが、交易で得られるに越したことはない。
難民町
薬、仁丹に近いものを作ろうと、近隣で手に入る野草や木の実などあらゆる植物や虫の解析を日本が続け、それ相応に近い生薬が見つかったので、難民町では現在薬の調合が始まっている。
懐かしい手作業での製作と植物の生産、大変だけれど病気を治す薬に関して、自分達で作れなければ自立した国家とは言えない。
道具は昔日本で使われていた道具を説明し、獣人の人達に制作してもらった。
「ふーむ。 これが頭痛止めになる丸薬か」
手作業でやる為に作れる量は限られる。それでも少しずつ生産量を増やしながら、日本に頼った治療から自分達での治療と徐々に国家として運用ができる物事が集まりだしている。
「生薬が基本ですが、森や草原、そして生き物を大切にしないと失われてしまいます」
医学に精通した自衛隊の医務官から説明を受ける獣人達、植物はともかく虫などの管理は難しく、そして効能はバラバラで採取できる季節もさまざま、文明と知識がなければ不可能な事、それでも町として国家として強みとするなら、医学が発展している事は大事である。
そして生薬が産まれたことで、調味料も随分と種類が豊富になり豊かになった食料と合い、食生活の味そのものがだいぶ良くなった。
僅かな小麦を繋ぎにした米粉がメインのうどん、大量に採れる米の消費先として日本が教えたところ人気が出始め、海からとれる海藻や魚を使った出汁と合わせ、自衛官たちも頷くだけの味になりつつあった。
「うーん。 この味が癖になる」
「これを作るには多様な香辛料が必要で、育成は非常に大変だそうですが、がんばってみましょう」
日本が提供しているカレー粉を使ったカレーうどん(米粉)。若い世代には思ったよりも好評で、この世界で確認できた似た香辛料と不足している香辛料、気候としてさほど適しているとは言えないものの、それでも育てられないわけではなく、交易や作物育成についての技術協力等の一環として進んでいた。
特にここ数年で成人した若い世代達は日本人であれば、人種に対してほとんど嫌悪感などもなく、食べ物や技術などを積極的に取り入れていた。