神々の尖兵 作:揚物
文明が発展しているとはお世辞にも言えないものの、3虫人達は船に乗り避難民町に最も近い場所で小舟に乗り換え、難民町が自ら建設した港へと降り立った。
直接自衛隊が設営した港は宜しくないとの考えであった。
「ふむ。 カームか」
「良いじゃない」
「……」
蜻蛉人・蜘蛛人・甲人、ある程度は人間に近いといっても、あくまで虫族としての特徴が多く、蜘蛛人ともなると人と同じ手を4本持つだけで残りは蜘蛛の姿のままであった。
「私が町の責任者の狼人族 ルファスだ。 遠くから良くお出で下さった」
白い体毛を持ち町の代表者である狼人族のルファスは、町を運営する部下と共に3人の虫人を迎えた。
すぐに案内を始めるため、敷設された線路へと案内し台車部分だけの客車に乗ってもらう。
「よし、せーの!」
ルファス達は人力のペダルを動かし進み始める。荷物の輸送の為に日本の自衛隊が敷設したものだが月に一度も使わない事と、難民町側が整備する代わりに使用しない日は人力車による輸送や移動に使われていた。
人力とはいえ線路の移動は早くそして多くの荷物を運べる、速度も速くない為台車に誰かを載せるのはいつもの事であった。
「人力だが、人力とはディフィレン?」
「不思議ねぇ」
「……」
港から予定された場所で停車し、台客車から皆が降りたところで木で作られた作業場に案内し説明を行う。
「糸は木綿から取り出し、織物を作っている。 虫人とは異なり、体表が弱い獣人や人族には服が必要なモノだ」
糸車らしいものは日本の知識を参考に木工職人が新しく作り、織機も木製ながら立派なものが作られ固有の民族衣装などが多く出来上がっていた。
「面白い編み方ねぇ。 私はここで作業を見ているわ」
手作業とはいえ、複雑な織物に蜘蛛人が興味を持ち、他を見て回るのを取りやめそこに残る事にした。次は農地に案内される。
「食料はここで作っている。 家畜区画は隣にあり、余ったものは直接使っている」
一面青々と作物が育ち、数か所では午後の収穫を行っていた。すぐ近くには家畜広場もあり、牛や羊に鶏が飼われていた。
「食べ物はちゃんと作られている。 畜産もされ問題はなし」
「……」
蜻蛉人は細かくチャックしつつ、報告する為の木板に書き込んでいるが、甲人はずっと何も言わずに案内された場所を見ていた。
一週間ほど一通り見て回り、強制されたり奴隷労働されている様子もないとして報告書を書き上げ国に戻ることになったが。
「私は残るわ。 中々面白いし織物っていうのは興味深い」
蜘蛛人は織物に興味があるとして残り、駐在外交官としても活動すると言う事で住む事になった。
滞在費用等については、次の外交交流時に交易品を輸送してくると言う事で、一旦は全額日本持ちと言うことで話が付いた。
トロン王国
徹底管理された連作の注意に病気や鳥獣害への対処、適切な肥料の割り当てなどで消費しきれないほどの収穫量は、真面目に働く国民は食うに困らず家畜にも十分に食わせ、それでも余るゆえに他国に積極的に販売されていた。
「いやぁ、売れ過ぎて困るよ。 運んでも運んでも足りない」
「まったくですな。 安くて出来も良いし」
商人達は荷車に積まれた作物の詰まった袋を眺めながら、笑みを浮かべている。荷車に山のように積まれた小麦に根野菜類、他国ならどれだけの価値を産むか。
「一儲けしたら旅商人を引退して商会を開くのも良いな」
トロン王国は規模を考えると商人や商会は少ないのは当然ながら、徐々に旅商人が店を持つようになっていく。