神々の尖兵   作:揚物

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61.日本に似た国家

 転移歴 10年、惑星クロノスに打ち上げられた衛星によって、限られた範囲ではあるが衛星通信と地表のデータ、大陸全土と新生独逸が存在するミールモノル大陸の一部の映像を得る事は出来た。

 東西に広がる広大で森林や緑に溢れた大地、北には山岳地帯に南には原油採掘地と思われる大規模な泥炭地など大分優れた地域を新生独逸は占領したことがわかる。

 神王モネフ国と思われる場所は建物が乱立し、海に挟まれ北へと延びる細い街道が確認されたが、衛星は破壊され確認できなかった。

 

 海魔、彼らは情報や航海の安全と引き換えに、建設された海中の洞穴の建設や食料で一族繁栄の生活を選び、海魔として得られた情報、非常に似た国家があると海魔族から情報が伝えられた。

 ただ、その国はエルフやドワーフなどの種族を従え、敵対した国家を消滅させ、破壊された国家は大地まで焼き尽くされ木一つ残っていないという。その凄まじい力に陸近くに暮らす小型の海魔にも幾らか被害が出て居る事から、大型の海魔であるデビルフィッシュ族も情報を得ていた。

 その敵対した国家は新王モネフ国の従属国家であり、エルフとドワーフを捕え奴隷としていたという。しかし侵略していた国家であった為、報復ともいえるのだが日本の考えからしてみればやり過ぎにもほどがある。

 

「核……でも使ったのでしょうか」

 

 確かに、強烈な衝撃波があったことは観測されているものの、放射能の観測はまったく出来ていなかった。

 

「衛星写真はないのかね?」

 

 担当官であるアメリカから出向している海兵隊の中佐は、苦い表情を隠さないまま資料に目を通している。

 

「その、一定地域を離れたものは破壊もしくは鹵獲されてしまい、情報は何もありません。 少なくとも衛星技術において我々は後塵を期しているかと」

 

 少なくとも米国NASAの協力を受けて打ち上げた偵察も可能な高度な衛星。データを持っていかれる事も覚悟した上での運用であったのだが、それさえも近付くと破壊もしくは鹵獲されてしまい情報はまったくなかった。

 どれだけ技術が隔絶しているのか頭を抱えながらも、会議室で聞いていた各国から派遣されている協力士官や技術者も、小声で話し合い裏で何かを画策しているようでも、橋を渡れるのが日本だけである以上、日本に持ち込まれた物資や情報を手に入れるしかないのだが。

 

「接触を持つべきでしょうな。 優秀な外交官を送ることができれば、何かしらわかるでしょう」

 

 英国の情報部中佐から提案に、被害を受ける日本側は渋顔をするが、それしか方法がないのも現実であった。

 

 

 

 

 もう一つの救援国

 回収した衛星を分解し、その国家程度を調べ情報を元に会議が行われていた。その者達は紛れもなく人間であり、クロノス人とも異なっていた。

 

「異なる次元の日本とは。 西暦は2025年、ずいぶん昔だな」

「さて、敵となるか味方となるか。 どちらせによ神命の邪魔をするならまずは勧告するのだが」

「それよりもだ、エルフとドワーフ達に自衛できるだけの技術と、そして平和への学問を教える準備を」

 

 エルフやドワーフを守る為に敵性国家を滅ぼし、少しずつ影響範囲を広げ続ける。手段こそ異なれど、クロノス人の暴虐に対処し亜人族を守るという目的の為に。

 

「しかし時間はありません。 奴らは動き出すでしょう」

「星を喰う寄生虫相手だ。 加減などしてられんだろうな」

「幼竜の受け入れも順調ですが、巨人族の障壁もあとどれだけ持つのか。 彼らは命絶えるまで抑えるつもりでしょうが」

 

 本来の相手との準備を進めている最中であった。それまで力を蓄えつつも、余裕のある範囲で周辺地域での民族浄化を防ぐ程度の戦力を出していた。

 

「軍事援助は、出来ないでしょう。 彼ら独自にやってもらうしか」

「彼らは最初の支援国家とは異なる。 第一次クラスの科学文明を持たぬ以上、供与は不可能」

「主力はともかく、安全確保の為の支援は出しましょう。 幸い“彼等”と“彼女”から好意的な意見が出ていますし」

 

 会議室と繋げられた通信映像、二つのディスプレイにはそれぞれ人間とは異なる存在が映し出されている。

 

「我ら一族の連隊が最初に動く。 我らは近代兵器の戦いには加われん」

 

 人の形をしておらず、大きな爪と甲殻を持つ見た目は蟹そのもの、しかしそのサイズははるかに大きい。

 

「後詰めでワタクシの連隊が直接動きましょう。 これ以上は本来の目的に影響が考えられます」

 

 電子処理され3Dで構成された女性、この会議の場にはいないもののリアルタイムで会議に参加している。

 

「カルキーノス三等特佐とケーニギン二等特佐が対応するなら安心できる」

「たしかに、では何かあれば連絡を。 陸海空が支援をしましょう」

 

「では、本日の会議はここまでということで」

 

 決定された事項に基き、物資及び部隊の準備が整えられる。その動きは日本よりも早く、そして次々と出発していった。

 

 

 

 

 森林公国クウェン・火山王国イルーヴァ、合同会議場

 破壊し尽くされた国家に面する森林及び高山地帯、そこでは再び植林と再開発による復興計画が進められていた。

 

「これで、我々は助かった。 しかし随分と同胞を失ってしまった」

「死んだ同胞に哀悼の意を」

 

 エルフ国の首長とドワーフ国の王は、合同の会議室で安堵の息をついていた。普段であれば相容れる事などなく、お互い嫌いあっているのだが生存の為に仕方なく別々の場所で戦線を敷いていたが、押し込まれ続け共同戦線を敷くまでに陥っていた。

 鍛冶の天才であるドワーフの作り出す武具も、魔法の達人であるエルフも人類の数の暴力相手に苦戦を強いられ、かなりの数が殺され囚われてしまった。

 そんなとき現れた龍の国は、彼等は何度も奴隷の返還と侵略を辞めるように訴え、穏便に穏便に済ませようとし、我らが止める中交渉や対話を試み、最後は対話の為に外交に向かった者を殺そうとまでした。

 それから穏便な表情を浮かべていた彼等は、その表情のまま苛烈な行動を始めた。鉄の地竜と空を舞う鉄の飛竜の武力によって、都市や町や村からかなりの数の同胞が救出され、そして最後は雄たけびを上げる鋼鉄の巨鳥の群れによって大地を焼尽くす火球弾、それが降り注ぎ都市も村も森も畑も破壊し尽くし、国家は一夜にて消え去った。

 今は国があった広大な土地はまばらに草木が生えているだけの荒れ果てた大地と化している。

 

「彼らからは開拓の協力と物資の提供を申し出されております。 一部では技術と学問を伝えたいと」

 

 外交官から説明を受け、首長と王は書面に目を通す。

 

「受け入れましょう。 彼らには大きな恩があります」

「ワシらとしては、酒と鉄を弄る方法がありがたいが、借りは返さんとドワーフの名が廃る」

 

 彼らは穏便で穏当である、初体面の時は敵意を向けた会談であったが、温和で柔和な行動を崩さず、

 敵対しても一線を超えない限りは、距離を取るだけで行動は起こさず、たんたんと対話をもって解決を試みる。

 しかしその一線を越えてしまえば暴力を躊躇せず、エルフとドワーフを奴隷にしようとしていた国家を、跡形もなく滅ぼしてしまったように。

 

「まずは国境線を敷くそうです。 その為の作業人員の協力を求められています」

 

 自国を守れる程度の技術と情報、そしてエルフとドワーフの二カ国が争わずに協力できる国家形態、そして侵略を是としない基本的思考を流布する事を目指していた。

 

 

 

 数日後、破壊され荒れ果てた大地、そこに鋼鉄の巨鳥から物資と共に警護に現れたのは蟹であった。見たこともない防具で全身を覆い、身を濡らす魔石を備えた一団。

 

「これより我が隊は警戒任務にあたる。 第1から第5分隊はルートの再確認後即座に巡回を開始する」

「施設科はこれより駐屯地の設営を行う。 無人重機の邪魔にならぬよう用地範囲を指定するポールの固定作業を開始」

 

 無駄口一つつかず、機材を運びポールの設置や巡回地域の確認を行っている。淡々としながらも徹底した規律ある行動にエルフとドワーフの連合軍は唖然としながら眺めていた。

 

「あれが我々の味方、ということなのだろうが」

「あの国はあのような同胞まで居るのか」

 

 配備されていく鉄の物体に1人のエルフが恐る恐る一体の蟹に声をかけた。

 

「あの、あれは一体」

 

「あれは、見ての通り我々は爪で精密には動かない。 それを補佐する機械」

 

 甲羅の上の鎧に載せられたものは小さな4本指の腕を6つだし、小さな道具などを代わりに掴み運んだりしている。

 

「これで、小さなものや複雑なものを動かせる。 訓練は必要だが」

 

 話していた蟹は自らの上に載せている小型機械から伸びるアームを操作し、地面に落ちていた小さな石を掴み上げて見せる。

 ドワーフの兵士は驚きながら大きな声を上げた。

 

「そんなものをどうやって作ったんだ! ぜひ教えてくれ!」

 

「我らでは作れない。 我らは彼らに種の保護と引き換えに戦力を提供し、傭兵として働いた対価として便利な道具や武具を得ている。 当時の一族代表がそのように取り決め、我らは繁栄している」

 

 ポールの設置が終了し、無人建設重機が駐屯地造成を始めると施設課の蟹たちは別の作業に移り始めた。

 

「以上。 質問がないなら我々は任務に戻る」

 

「あっ、あぁ ありがとう」

 

 鎧に覆われた六足で作業に戻っていくのをドワーフとエルフの兵士は見ている事しかできなかった。

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