神々の尖兵   作:揚物

63 / 65
62.女王の苦悩・姫の行動力

 ここ数年で急激に発展したトロン王国。

 安価で平民でさえ食うに困らない大量の食料の買い付けに商人は集まり、王家によって園遊会に向けて投資された絵師や彫刻士によって作られた一品を求める他国の貴族、鉱山から算出される鉄鉱石で作られた丈夫な武具、黒い町で大量に生まれる税収と腕の立つ兵士達、平民でも最低限の読み書きは皆出来るため商売も生活も向上、王国は当時の規模から考えれば倍近くまで膨れ上がっている。

 そんな状況ともなれば日本からの特別な品物がなくても、商人は活発に活動しある程度はやっていけるほど国は発展した。

 完成した王城では、現在テネシ女王が式典用ドレスを着用しようとしていたのだが。

 

「女王様、そろそろ新しいドレスを仕立てる必要が出てきましたね?」

 

 最近、テネシ女王は扇とんかつにハマり、昨年の式典で使ったドレスがきつくなってきていた。

 開いた扇ほど巨大なサイズで揚げられた両手を合わせたほど分厚いとんかつ、それにたっぷりとタルタルソースをかけて食す、その為半年ほど前に好物となってから体重は増え続けていた。

 

「仕方ありません。 新しく仕立て」

 

「てきせいなたいじゅう になられると健康になるそうですよ。 来月の王城の完成記念式も近い事ですし。 ニホンの医術者の話ではテネシ女王様ならあと6kgほど落とすのが良いようですよ」

 

「……そうしましょう」

 

 幼い頃から付き従っている従者長の言葉にうなずくしかできなかった。

 新たな城の完成記念式典、それに合わせて絢爛豪華なドレスを半年より前に寸法を測り現在仕立てている最中、いまさらやり直しなど出来るはずもなかった。

 

 

 長らくかかったすべてのユニット化の準備が整い、日本で仮建設されたものを再分解して輸送、現在新たな王城というなの迎賓館が出来上がっていた。日本から次々と運び込まれ、施設課によって重機を利用しているため一度始まるとどんどんと作業は進み、今は最後の段階として100m級の電波塔が建設されている。

 電波塔は王城と隣接し、20mと50mと70m地点には周囲を見渡せる展望施設が設けられ、完成記念祭は友好国からだけではなく、ノーリスモルト国からも侯爵が訪れる事になっており盛大なパーティーが行われる予定であった。

 これは日本にとっても長距離通信が可能になることから、建設するときに観光地になりえるとして展望室を設け、王国騎士による警戒と管理による悪戯防止なども兼ねている。

 記念日には天空に描く花をフォリナ姫が特定基地で見つけ、確認し購入してきたものが使われる予定になっている。下から見上げるのも美しいものの、タワーから水平に見るのはもっと美しいとのことであった。

 

 

「日本の医術者の話では、歩くのと泳ぐのが良いと言う事ですので、城内及び庭園の散策を大目に行いましょう」

 

 侍従長は女王の健康の為に色々勉強をしており、その一環の中には日本が指導している家庭の医学も含まれていた。

 文化として貴族女性の運動ははしたないという風潮はあるものの、ではふくよかすぎる姿が良いかと言われれば異なり、食べては吐き戻す方法が良いかと言われればせっかくの美味な食事の後味が悪くなる。

 翌日から執務前の朝食はしっかりと食べ、執務中は濃く入れたお茶のみ。

 昼食後は日本から購入したサウナスーツ、それをドレスの下に着用し優雅に庭園を歩き、視察の名目で護衛を連れ二日に一度騎士団の訓練見学を行う。

 昼過ぎのお茶会という貴婦人同士の交渉では、濃い目に入れたお茶を飲み茶菓子はあまり手を付けない。

 夕食後、全身をゆっくりと伸ばす柔軟運動をしたのち湯浴みをしてから眠る。

 

「いたたたた! ちょっと加減しなさい!」

 

 真新しい絨毯の上に日本から購入した柔軟用マットを敷き、動きやすい服装に着替え柔軟運動をしているが、そんな動きなどしたことが無い為体は固く痛みに声が上がる。

 

「テネシ様が命じた事です。 我慢してください」

 

「それならまずやってみせなさい!」

 

 余りの痛みにテネシ女王に強く言うと、侍女長は本を置きもう一つのマットの上に座る。

 

「こうですね」

 

 柔軟などやったことなどなかったものの、自衛隊の医療病院を訪れて健康促進のために参加していたので、体はかなり柔らかく足を180度開くと上半身を床にぺったりとつける。

 

「……できるのですか」

 

「はい。 ではテネシ様もやりましょう」

 

 減量生活を2週間もする頃には体重は元に戻り、適度な運動と柔軟で血色がよくなり、美しさが一段増した事でトロン王国の貴族夫人からはあれこれ問われ、王国内では徐々に活動的な婦女子ははしたないのでは無く美に拘る女性と認識が改められ始めた。

 

 

 

 

 

 

 テネシ女王が減量を始めた頃、フォリナ姫は2人乗りの4輪自転車が気に入り。誰の手を借りることなく素早く長い距離を手軽に移動でき、馬車の様に馬の匂いを嗅ぐ必要もない。侍女にペダルを漕がせることもあるものの、運動の為に自ら漕いで王城の敷地内にある庭園を見て回ったりしていた。

 気に入った事からトロン王国でも作れないかと、調べるために新しく一台購入し分解して製造を試みていた。

 

「やはり、これを作るのは無理ですか」

 

 腕の良い鍛冶師達を集めて自転車を作ろうとしていたが、どうしてもスプリングやタイヤのチューブ、そしてギアにチェーンが作れなかった。

 

「木工師にも聞いては如何でしょうか」

 

 幼い頃から付き合いの長いお付きの侍女は、多くのモノを姫と共に見てきただけに発想が豊かであった。鉄だけで無理なら木材で代用できる箇所もあるかもしれない。

 

「そうですね。 木工師と、それと革職人も集めなさい。 似た物が作れるというなら、それで代用して作り上げましょう」

 

 試行錯誤によってかなり高く付いたものの、似たような4輪自転車は出来上がった。

 鉄製のバネは作れずしなりの良い板を何枚も重ねて丈夫な革を何重にも巻き付けて代用し、チェーンが作れない為に木製ギアを組み合わせ、タイヤも木製車輪に薄くした鉄を打ち付けているだけ。出来る限り馬車を元に細身に軽く小さくをしたものであった。

 フォリナ姫にとっては不出来とはいえ、馬車にも使えるサスペンション擬きは思ったよりも好評、技術を転用し作った馬車はどんどん売れている。

 ただし馬車ではなく人力車としてではあるが、使用人や奴隷に牽かせれば良いと他国の王侯貴族や豪商には、生産が間に合わないために出来次第と大臣が直接話をしなければならないほどであった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。