神々の尖兵 作:揚物
新生独逸、西部最前線
「また奴らか、弾の無駄にしかならんな」
ドイツの将兵は高台で警戒している部隊からの連絡に、呆れながら時間をかけて作り上げた塹壕から機関銃とライフル銃を向けるよう命令を下す。
迫ってくるのは旧式ともいえるミニエーライフルを持つ銃歩兵と騎馬銃兵のみ、いまだ不出来なミニエーライフル程度であるため射程も短く相手にはならないのだが、いくら技術差があり兵器が優位にあるといっても数の力はいかんともしがたい。
油断するには数が多すぎる上に、後方には前装式牽引大砲が控えているのもある。
「今度はどれくらいだ?」
司令官は前線の通信兵からの情報を確認しながら机上の地図に駒を配置する。
「大よそ1万程度かと」
「そうか。 ならば三号戦車も不要だろう。 温存するように」
3号戦車でさえ生産性は悪く、4号戦車もまともな代替部品を製造できるようになったのはごく最近、5号戦車や6号戦車となると非常に貴重で総統代行許可がなければ運用さえ禁止されていた。
「念のため航空偵察の複葉機も用意しては如何でしょうか」
「ふむ。 それも良いだろう。 必要であれば即座に飛べるように。 砲兵も必要であれば動けるように準備を」
副官からの進言も聞き入れ参謀団は作戦を立てている頃、前線ではすでに敵軍の攻撃を受けていた。
「撃て!」
敵の射程に入られる前から銃撃を始め、次々とミニエーライフルを持つ敵兵を葬っていく。
戦闘開始から3時間後・・・・
「西部第四地点で敵兵が塹壕に近づき過ぎているぞ! 第五分隊は何をやっている!」
「弾切れです! 後方に下がらせ剣士どもに対応させます!」
「くそどもが! 前回よりも3割以上弾薬を多く配給したが、今回はどれだけ兵士を送りこんできやがった!」
国境線に向かってくる敵国兵団を追い返すだけで、生産に苦労している武器弾薬を消耗してしまう。そして占領した地域から徴兵した者達は、剣や斧で塹壕に籠って命令を待っている。
平地などではミニエーライフルの銃撃に対応できないと言っても、張り巡らされた塹壕内での至近距離戦ならいまだ剣や斧は有効であり、新生独逸軍が銃撃で削れるだけの敵兵を削った後は彼らの役割であった。
「司令部から入電! 敵が想定以上に大軍であるため二度の砲撃支援許可が下りました!」
戦場の女神 榴弾砲による支援。
「よし! 航空隊にスモークを投下させろ!」
航空偵察を行っていた飛行機から標的用スモークが投下され、強烈な爆発音と振動が戦地を襲い、敵兵の残骸がまき散らされる。
それでも塹壕に取りつくことに成功されてしまった最前線では、近接戦闘が始まると剣や斧による血肉を削る戦いが起こり荒々しい声が響き渡る。
敵部隊の中核に降り注いだ支援砲撃によって夕刻まで続いた防衛戦は新生独逸側の勝利で終わり、1万近い敵の死体が戦地に転がっている。新生独逸側の被害は少ないものの、兵站部が頭痛を引き起こすだけの弾薬を消耗していた。
「物資回収班を出しておけ。 あんな骨董品でも、奴らに使わせればまだましになる」
倒した敵兵が持っていた銃器や大砲類は全て回収し、純独逸人でもハーフでもない現地住民兵に使わせている。高等教育及び品位の限界からの区別であったが、それでも数の力を頼みに押してくる敵国相手に攻め入るだけの力はまだなかった。
神王モネフ国 東端信徒国 レーヴスイ
「また失敗しただと!」
執務室で王は報告を持ってきた部下に怒鳴りつけた。報告に来た部下は恐怖で表情を引きつらせながら、書類を執務机の上に置く。
「神敵を滅するように仰せつかりながらなんたる背信行為! 侵攻軍の奴は奴隷落ちを覚悟しておけ!」
怒りに任せ、フリントロック式銃を取り出すと壁際に立っていた奴隷に向け発砲、血を流しながら倒れた奴隷を気が済むまで蹴り続ける。
この国にとっても奴隷は消耗品、生死など所有者の自由でありどのように扱おうと罪に問われることはなかった。
荒れた呼吸のまま銃を執務机の上にたたきつけ、椅子に座ると羊皮紙を取り出す。
「教皇様にお伝えしなくては!」
急いで書面をしたためる、いまだ原始的な電話もなく、自動車の質も良くない事から長距離は蒸気機関車の特別便に限られる。それでも最東端にある信徒国のレーヴスイにはいまだ蒸気列車は敷設されておらず、隣国まで早馬を走らせそこから宗主国たるモネフまでの列車とる。