神々の尖兵   作:揚物

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63.自由と責任に販売開始

 転移してから11年、特定基地周辺も安定したこと、そして度重なる要求から報道機関の受け入れ決定した。

 

「御覧ください。 これが異なる世界の姿です」

「獣人の人達です。 初めてみました」

 

 大人しく撮影がなされている集団がある一方で、そこかしこで獣人の人達に話をさせろと押し問答が行われてもいた。

 

「彼らから許可を取っていませんので」

 

 獣人の人達が暮らす難民町は全てが人間に対して好意的と言う訳ではない。

 そもそも撮影許可を出しておらず、自衛隊基地内だけの撮影許可だけで、難民町はその範囲には含まれていない。自衛官は報道機関の人達を生かせないように道を阻んでいた。

 

「これは報道の自由の侵害だ! 自衛隊は裏で何かやってるんじゃないか!!」

「まさか、獣人の人達を奴隷にして」

 

 さすがに呆れかえるような発言、言っている当人達も言いがかりなのは分かっていても、それを利用して悪質な強硬策に出ていた。

 詭弁を利用して無理やり通ろうとし、一部が報道の自由を盾に足止めと言う名の問題を起こし、その隙をついてバイクを使用し駐屯地の外に出て行ってしまった。あくまで防壁の範囲内ではあるものの、日本国内と異なり安全ではない。

 その直後押し問答と駐屯地外に出た報道陣が消え去り、自衛官たちも何事かと大騒ぎになりヘリを飛ばし周囲を探し回ったものも行方は分からない中、無事だった報道陣は日本に戻り映像公開の準備を進めていた。

 それでも悪質に映像を切り取り、報道しようとしていたプロデューサーや記者たちも同じように消え、USAの地球の定期観測によって汚染された元は日本があった大地で確認された。

 

 主たる目的を歪めようとする者、都合よく情報を歪めようとする者、そんな者達を必要とはされていなかった。一方で情報を抽出せず正確に報道した者達は何一つ事が起きることなく、ほんの一握りが問題を起こしていたことが明確になり、国民のほとんどが報道機関をかなり冷めた目で見放し、TV局や新聞社などがかなりの打撃を被る事になる。

 むろん最低の職業と協力者も減り、転移前から報道されてきた事柄についても虚偽報道があったのではないかと疑われ、さらにいくつかが破産し消え去る事になった。

 

 

 

 日本側ではそんな大騒ぎになっていることなど知らず、難民町では様々な治療薬の製造に甜菜糖から作った砂糖、お米を使った米粉類など自給量を超えたので正式に売却を始め、自ら商隊と護衛部隊を編成し国家としてトロン王国に販売と輸送を行う運びとなった。

 トロン王国は可能な限り獣人に対しての差別や奴隷化が禁止されているとはいえ、長年続いたことはそう簡単に消せるわけもない。

 盗賊など非合法な者達にとって獣人の奴隷は高価な対象、護衛するのは猫獣人のロッテが運転する、皆乗り込み獣人の兵士に守られながら進む商隊。獣人町で作られた荷車と馬車、磨かれた木工技術と日本から購入したサスペンションとベアリングを組み込み、積み込まれた砂糖と薬の樽と壺、そして薬の丸薬が入った箱は固定され輸送される。

 

「大丈夫だろうか」

「警戒は怠るな。 トロン王国の兵以外は敵と思え」

 

「あれは、盗賊の襲撃だ!」

 

 目が良い狼獣人が武器を持った30人の集団を向かってくるのを発見、即座に護衛の獣人達がクロスボウに矢をつがえてトリガーを引く。盗賊たちのもつ容易く木製の盾を貫き体に太矢が突き刺さる。衝撃力は120kgを超えるために木製や薄い鉄の盾や鎧などなんの意味もない。

 

 アメリカ製コンパウンドクロスボウ 240ポンド-450FPS ヴェンジェント。

 新大陸での狩猟が限定地域とはいえ一般公開されたことから生産され、大量生産されているので日本にも少数ながら特定基地向けに輸出されていた。

 米国企業が貪欲にシェアを求めている中、銃器が無理ではあるが弓やクロスボウなら問題ないとして新たな輸出先として狙い、160から200ポンド程度の威力のモノを“一般狩猟用名目”で、240ポンド難民向け狩猟品として、日本や他国の製品が入り込めないほぼ独占状態であった。

 

 

 相手の弓矢が届かぬ距離放たれた多数の太矢は弓を持つ盗賊を貫く。

 

「敵の弓は倒した!」

「槌槍隊! 長剣隊!」

 

 獣人村の人々が呼ばれる野田太刀と薙刀の利点を混ぜ合わせた長巻を剣士隊が手に握る。

 そして長巻を参考に自分達でも鍛冶場で製造し、小型のピッケルと槍を組み合わせた槌槍、小型のピッケル部を叩きつければ鎧は容易く貫き、生身ならば槍の先端の刃で貫け、ピッケル部は小型なので取り回しも効く。彼らなりに日本が提供した剣道に薙刀道、居合や海外の剣術や槍術の映像を見た中で彼等の答えだった。

 

 接近してきた盗賊に槍を突き刺すと引き抜かず力任せにそのまま持ち上げ横にいた盗賊にたたきつける。

 

「おおぉぉぉ!!」

 

 雄たけびを上げ狼獣人や犬獣人が力強く打ち付け合って盗賊達の剣や槍を壊し、人間の盗賊達を槌槍で貫き長巻で切り裂き倒していく。

 獣人故の人間を超える力、歴史上地球にもそう言った武人は地球にもいたがそれは極々わずか、そしてクロノス人が獣人を恐れる理由でもあった。並の人間を超える身体能力、ほぼ同数となりまともに戦えば力では勝てないからであった。

 一時間と掛からず盗賊を全滅させ、不安な旅ながら線路沿いを進み二日後にはトロン王国に到着、警戒しながらも通達があった事からトロン王国の騎士達が護衛しつつ、王国と直接取引されるため大臣達が待つ仮設の王城だった、現在では2階部分が撤去されたものの高級商店として一階が使用されている。

 日本から輸入した製品や王国の中でも優れた鍛冶師や彫刻士に絵師の作品のみが並べられ、ここでしか手に入らない製品に他国の王侯貴族や豪商は集まり高く評判が上がっている。

 そしてここに難民町によって作られた製品、頭痛と痛み止めと腹痛の丸薬、生成された茶色の砂糖が並べられる。どれも高価ではあるが日本のモノよりは安く、そして量が手に入る物であった。

 日本は薬は治療が必要である場合に限り処方するのみ、それを除けば相応に苦労している王国の医術者より獣人の薬の方が効果があることは、取引前に王女が幾らか持ち帰り従者の家族で試して判明している。

 

「ふーむ。 ニホンの薬とは違うが、効果が確かな薬が手に入るのなら安いものだ」

「砂糖が安いとは、ニホン以外からは非常に高価だがこれも相応に安いな」

 

「今後の取引量は徐々に増やしていく予定です。 ですが原材料には限りがありますので」

 

 他国貴族や豪商達がトロン王国の大臣から説明を受け、薬の購入について商談が行われている。

 代表者は獣人の為に

 一方で仲介として日本の自衛官も立ち会っていることから表向き高圧的に出る様子はない。

 

「荷物おろすよ~」

 

 砂糖が満杯まで詰められたドラム缶、およそ210kgを両手で掴むと荷車から軽々と下ろしていく。

 獣人族の中でも特に大柄な熊人族、熊人族はのんびり屋で少し臆病ではあるが力は獣人族で一番、一方で戦う事は嫌いであるために力仕事を主にしていた。

 そしてトロン王国から発注のあったコンパウンドクロスボウとコンパウンドボウが荷車から降ろされる。

 無遠慮な広がりや野盗などに渡らぬよう非常識な設定価格とはいえ、他の王国や帝国の製造する弓やクロスボウの射程を遥かに超え、鎧や盾など意味をなさないために需要はとんでもなくあり、販売した分は他国の騎士団などが購入し配備していた。

 トロン王国ではもっとも威力のある200ポンドのコンパウンドクロスボウと72ポンドのコンパウンドボウが配備され、他国からは売却要請があるものの断り続けている。自らの優位性を失うものを販売するつもりはなかった。

 

「こちらが、今月盗賊団などから解放された獣人の人達となります」

 

 そして怯えながらも大人から子供までの獣人の人達が20人ほど集まっていた。

 表向きはトロン王国は獣人奴隷は一切禁じられ、そして王国内や取引のある他国では守られすでに全員引き渡しが終わっている。しかしそれはあくまで表向きであり、盗賊や犯罪者たちにとってそれは当てはまらない。

 希少としてさらに価値が上がったために盗賊や野盗の類は狙い、そしてそれを知っているがゆえに、ある種真っ当な傭兵団や賞金稼ぎにとっては、盗賊団などを襲って獣人奴隷を回収し、トロン王国政府に引き渡し高値の報奨金を受け取る。

 

「皆、こちらへ」

 

 難民町の一団によって保護され、馬車や荷車に乗り安全な場所へと向かう。保護される数も徐々に減りつつあるが、獣人王国へと移民する事もあるので安全だけは確保され、交易も進んでいるので友好的ではある。

 ただ国として合流する事だけは難民町側が拒否し続け、独立した獣人の国家を立ち上げようと日本から経済知識と国家法への基本的な事だけ。

 

 

 

 

 トロン王国第一王子フェリペ

 兵力を集め、ソミ国の第二の交易都市に向かって兵を進めていた。数年かけて人を集めて訓練を行い、ようやく侵略するための戦力が整ったとして行動を開始。

 

 

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