神々の尖兵 作:揚物
半島に日本が防衛線を引き、その中で獣人難民は暮らしている。
半島の4分の1を利用しているが、500人にも満たないので、かなり広く筆頭として狼獣人のルファスが長として、皆を纏めている。
最初はジエイタイに対して懐疑的ではあったが、丁寧に対応するジエイタイに対して、襲うわけでもなく、道具や住居を提供し、言葉や文字、そして周囲の文明について協力している。
そんな中、運悪く皮膚病の初期に掛かり、全身刈り上げられることになったのだが。
「……屈辱だ」
ルファスは頭部を除きすべてを刈り上げられ、薬用のお風呂に浸かる事になってしまった。
「そういうな。 悪化すれば治らんらしいが、刈り上げてこの薬湯に浸かれば治るのだ」
隣には旅の最中に悪化してしまい、所々が禿げ上がってしまった老体の狼獣人の先客がいた。同じ皮膚病に長く侵され、少しずつ生えてきてはいるが、それでも悪化してしまった腕は完全に毛がなくなってしまっている。
「誇り高い毛皮がこのざまだぞ。 治すためとはいえ」
「悪化してワシと同じハゲで過ごすか? それくら我慢せい」
老狼獣人は失った毛皮の代わりに、普段は日本から支給されたスポーツ用のアームガードと手袋を着用している。
「しかし、彼らがおらんかったらワシらはやられていただろうな」
小さな手桶で頭から薬湯をかぶり、全身に薬湯をしみこませる。
「しかし油断は出来ん。 いつ我々を裏切るか」
「油断はせんが敵対はせんようにな。 少なくともすでに住居に食料、安全な土地に治療と融通してもらっとる。 彼らはいずれの自活を求めとるし、我らも工芸品など何かしら還元せんとな」
湯船のふちに置かれていたコップを手に取り、苦い飲む薬湯でのどを潤す。
「我々狼人族は戦いと狩猟の一族、体が万全であれば一兵卒に加わる事も考えている」
「なんにせよ。 お主は長、見誤らないように注意せぇよ」
薬湯風呂から上がり、刈り上げられた体を隠すように服を着る。
言語や文字と風習の研究、定期的な健康診断(検体提供)による報酬を得て、生地を買ったり道具を買うなどして制作を始め、民族衣装を着用することが出来るようになった。
逃げ回っている最中はそんな余裕はなかったが、身重だった妻も今は体を休めることができている。
妻だけではなく、長い旅で体の弱っていた老人や子供など、ようやく落ち着きを取り戻した。
見回りのため、農地を回るとすでに青々とした農作物が育っている。
「調子はどうだ」
犬族の男が作業を止めて立ち上がる。
「上手くいってますよ。 このコマツナとトウモコロシというのが採取できます。 他のも順調に育ってますよ」
早めに収穫できる植物らしく、たった3か月で収穫が始まり、食事に並び始めている。
「そうか。 大変とは思うが頑張ってくれ」
畜産をしている場所はまだ狭く数も狭い、それども牛・羊・山羊・鶏と一通りそろっている。
小屋を掃除している猫獣人と犬獣人がこちらに気付く。
「牛からミルクが取れるようになりましたよ」
「ニワトリっていうのも便利だ。 手間だが毎日卵が取れるおかげで食べ物に困らない」
少ない人数で色々大変とはいえ、徐々に自活できる体制が整いつつある。何よりも安全な環境は産まれてこの方初めてのこと、数年も居れば移動しなければならず、落ち着いた環境など持てることなどなかった。
「大変とは思うが頑張ってくれ」
最後に鍛冶場、いままで作る事などできなかったが、ぼろぼろに古くなった剣や槍を作り直している。
「剣の打ち直しも出来つつあります。 まだまだ簡易的な作りですが」
鍛冶場も簡易的ではあるが出来上がり、古くなった道具を打ち直し。鉈や包丁、そして斧は日本から貰ったものがあり、必要はなかった。
保護されたという形であれ、獣人の難民団は再び活気を取り戻しつつある。だからこそ、どこまで信頼すべきなのか、獣人難民団の長であるルファスは悩み続ける。