ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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更新が遅れましたね。夏が終わることが少し悲しかったので、それで憂いていたら時間がたっていました(つまりぼーっとしていた


第10話 「新・学園生活の始まり」

 

 

『次はーブルーアイランド学園島ー。学園島でーございます。左側の扉が開きます』

 

 

<ガヤガヤガヤ・・・>

 

 

 

あかね「あっっっれー。切符どこいったかな?」

 

 

もも「お姉ちゃんが私に預かっておいてって言ったでしょ?はい。」

 

 

あかね「ありがともも!いやぁ、モノレールって初めて乗ったけど静かでいいもんだね。」

 

 

なつみ「いつもよその島に行くときはあかねのバイクだからね。風がすごくて・・・」

 

 

こまり「なつみ。」

 

 

なつみ「え?ああ、今のナシで」

 

 

もも「やっぱりお姉ちゃん達バイクで海渡って遊びに行ってたんでしょ!あれだけ危ないからだめだっておばさん達に怒られたのにまだ辞めてないの!?」

 

 

あかね「いやいや、もう辞めたよ?なつみちゃんが言ってるのって随分前の話だし。ね?」

 

 

なつみ「そうそう。それよりあおいちゃんは?」

 

 

もも「・・・ああ、あそこのごった返してるところで人波に飲まれてるね。ちょっと行ってくる!」

 

 

あかね「いやーしかし・・・人多いねー」

 

 

 

以前の戦闘より、丸三日が経過していた。その間アローンの襲撃はなく、あかねとあおいの両名はその間でようやくコンディションを整えることができた。そして今日、彼女達は訳あってブルーアイランド諸島間を走るモノレールを使いはるばるこの島へやってきていた

 

 

この島は、あかね達が住む島『大島』から海を挟んで少し離れたところにある『学園島』。学園島は元の小さな島を人工的にどんどん大きく拡張し、その上にブルーアイランド学園をおっ建てた島。この学園は幼稚園から大人になるまでの教育施設が備わる一貫校であり、その豪華な設備と自由で先進的な校風が今時の子供の人気を集め創立5年目にしてとある雑誌の人気のある学校ランキングで堂々の4位にランクインしているとあおいが先日あかねに熱弁を奮ってくれた。

 

 

 

あかねは普段モノレールには乗らない。このモノレールは島と島の間を行き来する最も一般的な手段であり本土で走っている電車くらい気軽に使われるものだが子供にはお金の問題が立ちはだかる。示現エンジンがある本島のショッピングモールに遊びに行く時も、わずかなお小遣いを交通費に回さないためもっぱらあかねのワンコの出番であった

 

 

 

駅から出たところで往来の邪魔にならないよう少し離れたところの噴水そばであかねはちょっと都会の様子を伺う。駅前ですらのんびりした空気の大島とは違う。あかね達は喧騒というものに包まれる珍しい事態に少し身を任せることにした。行きかうのは揃いの制服を着た小さな子、あかね達より年上の男子高校生のような人達、垢抜けた私服の大学生らしい人の姿もある。学園島という名を疑わせない学生の多さである。他の面子を待つ間、あかねはこうなるいきさつを少し思い返すことにした

 

 

 

学校をアローンによって物理的に破壊されたあかね達に、唐突だがこのブルーアイランド学園に全員編入するという知らせが来たのはつい一昨日の朝のこと。先生からの電話で島の公民館に集い、大島分校に通うあかね達小中学生はその説明を受け、モノレール定期と教科書を受け取ると制服の採寸を行った。制服は即日で名前の刺繡いりで届く好待遇。学費は全部示現管理局から出ていると健次郎が夕飯の時語ってくれた。

 

 

れい「え?私も・・・ですか?」

 

 

制服が届いた日の夕食の席のこと。れいは驚いた表情でコロッケに伸ばした箸を空中で止めた。これだけの人数が囲んでいる食卓で箸を止めるという愚行を犯したれいが狙っていたコロッケは芳佳の口の中に入ることになった。

 

 

健次郎「うむ。君の戸籍はちょこちょこっとなんとかなるし、君がよければブルーアイランド学園にあかね達と一緒に入るといい。もちろん芳佳ちゃん達もな。」

 

 

宮藤「ふもほままほほ!?」

 

 

ペリーヌ「口にものが入ったまま喋るのははしたないですわよ。それで博士、どういうお話ですの?」

 

 

健次郎「いくら世界を救うためといえどアローンとの戦いまでこの家でじっと待つというすごし方は中学生としてあまりよいとは思えん。ワシはできるだけあかねとあおいちゃんには中学生としての生活を送って欲しい。

 

 

れいちゃんは、この家で1人悩むより学校という場で多くの刺激に触れるのは記憶を取り戻す大きなキッカケになりえるはずじゃ。芳佳ちゃん達3人も、この世界でただ助けを待つのも暇じゃろうしと思って手を回してある。軍人としての生活に慣れた君達が学校生活を送ることに抵抗を感じたりするなら断ってもらってもいい。どうかの?」

 

 

これには、健次郎なりにそれなりの思惑を潜めての提案だ。偽造でも身元を証明し学生の身分を持てば異世界組みの安全性は上がる。さらにブルーアイランド学園は示現管理局の管理下にあり、外部からの接触に対して安全性も高い。

 

 

ペリーヌ「べつにかまいませんわよ。わたくし達は軍属ではありますけれど、学生でもありましたから。」

 

 

宮藤「でも世界が変わったら中学2年生の習う範囲も違ったりするんじゃないかな?リーネちゃんとペリーヌさんは最悪の場合『ニホンゴワッカリマセーン』で押し通せるんだろうけど・・・」

 

 

リーネ「それなに芳佳ちゃん?」

 

 

ペリーヌ「あかねさん、使ってる教科書見せていただいてよろしいかしら?」

 

 

あかね「ごめん、私置き勉派だったから全部消し飛んじゃった。」

 

 

あおい「私のは家に帰ったらあると思うけど」

 

 

れい「新しい教科書は明日の朝届くのでしょう?それを見て決めたらいいんじゃない?」

 

 

宮藤「まあ大丈夫でしょ。健次郎さん、お願いします!私達も潜り込ませてください!」

 

 

リーネ「言い方!芳佳ちゃん言い方!」

 

 

ペリーヌ「不正しかありませんものね。わたくし達、生い立ちの設定をある程度考えておかなくてはなりませんわね。」

 

 

 

芳佳達もあかね達に混ざってブルーアイランドに編入することになった。ブルーアイランドの管理を行っている示現管理局のトップから先生と呼ばれ慕われる健二郎にしてみれば、ブルーアイランド内の複雑な権利関係のことは大体どうにでもなる。今まであまりそれに手を出さなかっただけだ。ここいらであかねは現実に意識を戻し過去の回想をやめた

 

 

あおい「あかねちゃーん!置いてかないでよぉ!」ヨロヨロ

 

 

こまり「この人ごみはあおいちゃんにはキツイんじゃない?」

 

 

なつみ「そうそう、あんまり無理しちゃダメだよ。小学生軍団の誘導なんて兄ちゃんに任せときゃいいんだからさ!」

 

 

卓「・・・」

 

 

実際卓は役割を放棄した中学生女子達を他所に1人手際よく小学生達をまとめあげ、さながら遠足慣れした教員のような働きを見せていた。

 

 

 

あおい「うん、お兄さんが、中学生達は先に行っておいでって。自分は小学生を連れて後から行くからって」

 

 

なつみ「ヒュー!頼りになる!さすがなつみちゃんのおにいさん!じゃあ行こうか!」

 

 

真新しい制服に身を包んだなつみを筆頭に学校へ向かう学生達の流れに乗って歩き出した。田舎から出てきたあかね達は気分が高揚しっぱなしだが、もとより都会暮らしだったあおいと記憶はないが特に思うことのないれい、集団行動にはなれっこの異世界組は涼しい顔だ。

 

 

あかね「ううん、楽しみだなぁ!こんなに新鮮な気分で学校に行くなんて、高校にあがって島から出るまでないと思ってたよ!」

 

 

こまり「だねー。ただなつみは1年だから1人別のクラス確定だから昨日はめちゃくちゃ不安がってたよ」

 

 

なつみ「ほんと、私1人とかいじめじゃんか・・・ねえちゃん達は誰か1人くらいは同じクラスになるっしょ流石に。芳佳とかリーネも2年なんでしょ?」

 

 

リーネ「う、うん。」

 

 

あかね(結局、芳佳ちゃん達ってどういう扱いなの?)ヒソヒソ

 

 

芳佳(わたしはあかねちゃんの遠縁の親戚。リーネちゃんとペリーヌさんはあかねちゃんのおじいちゃんの研究者つながりで預かった海外からの留学生なんだって。れいちゃんは・・・れいちゃんは?)ヒソヒソ

 

 

れい(わたしも健二郎博士の知り合いの研究者の孫ってことらしいわ。孤児設定よ)ヒソヒソ

 

 

あかね「これメモっとかないと忘れるね。帰ったらまとめとかないと。」

 

 

 

 

ペリーヌ「・・・」

 

 

あかね「ペリーヌちゃん、どうしたの?なんか口数少ないけど。」

 

 

ペリーヌ「ああいえ。なんというか、そうですわね・・・。緊張している、というのが一番近いのかしら。あとちゃんはやめていただけませんかしら。」

 

 

芳佳「えーーっ!ペリーヌさんが!緊張!」

 

 

ペリーヌ「普通の方々と接する方法を忘れてそうで怖いんですのよ。」

 

 

リーネ「あー・・・それは・・・確かに・・・」

 

 

芳佳「?」

 

 

ペリーヌ「宮藤さんはどっちかというとあっち側ですから解りませんわよね。」

 

 

れい「どんな学校だったの・・・?」

 

 

芳佳「えー、みんな普通の人だよ。」

 

 

ペリーヌ「その感覚を捨てないといけませんわよ宮藤さん。お願いですからお行儀よく、ですわよ?」

 

 

芳佳「心外です・・・」

 

 

雑談する余裕もここまでだった。事前にもらった地図を見て歩いていたのだ思った以上にこの学園は広かった。普段地図なんぞみないなつみは責任と一緒に地図をこまりに押し付け、こまりは姉の威厳を見せようと張り切ったものの同じところを一周してしまい、ここで今まで前についていくだけだったあかね達は迷っていることに気付いたのだった。あーだこーだもめにもめたが結局考えることに面倒くささを感じたあかねが直感に任せて走り出し不思議なことに目的の理事長室のある中央棟にたどり着くことに成功した。

 

 

芳佳「うわ、ほんとに中央棟って書いてある。」

 

 

あかね「ビビッときたからね。」

 

 

あおい「校舎も変身しちゃうのかな?」

 

 

あかね「それ最高。大型ロボットだね。昔学校の校舎が変形してロボットになるアニメを見たことある気がする」

 

 

れい「急いで理事長室に行きましょう。確か8時丁度にはついてないといけないはずよ。」

 

 

ペリーヌ「だいぶ迷った気もしますけれどまだ間に合いますわね。急ぎましょう」

 

 

 

 

_________________________________________________________

 

 

 

校長「私がブルーアイランド学園中等部校長だ」

 

 

なつみ「理事長さんではなく」

 

 

校長「この学園の理事長は示現管理局長と兼任で紫条さんだ。今回の話はあの方から降りてきた事案であり、形式として私と顔を合わせるだけで十分だろう。学園のルールに関しては生活の中で教員および学園生から聞いてくれ。時間をかけて慣れるといい。クラスは2年生は全員同じ。あとの2人はそれぞれ1人だががんばってくれ。2年担任!先に新2年生達を教室に誘導しろ。人数が多い。」

 

 

校長の役職の割りには若い、と子供達は思った。一切にこやかな雰囲気の感じられない厳しそうな男性だが話口調は不快な印象は受けられない。ひたすらに真面目なのだろう。彼は部屋の入り口から丁度入ってきた教師に間髪いれず指示を出しこれで言う事は無くなったとばかりに机の上に積まれた書類の一枚を鋭い動きで手元に寄せてペンを走らせ始めた。

 

 

 

担任「私が担任となります!とくにキャラはありません!モブですので!」

 

 

こまり「何の事かさっぱりですけど、これ朝のホームルームに間に合うんですかね?」

 

 

担任「ギリギリですね!走りましょう!お荷物は持ちましたか?さぁ行きますよ!私についてきてください!」

 

 

非常に若い男の教員だった。笑顔は仕事疲れを知らない若者特有の輝きをいまだ失っていない。彼は理事長室の扉を開け放ち小走りとはいえぬ速さで走りだした。置いていかれないようあわてて走るが、その時あおいはチラと壁に貼ってある「廊下は走るな」「実際危ない」「角っこの出会いは憎しみしか生まない」などと書かれたポスターを目にした気がした。その後前を走る担任の背中を見て、何も考えないことを選んだ。

 

 

たった五分とかからなかったが惜しくも教室のドアの前に着く直前にチャイムが鳴ってしまう。

 

 

担任「間に合わなかったか!これなら歩いてくればよかったですね!!みなさん挨拶のセリフは考えましたか!?とりあえず私が先に入るので、合図したらどうぞ!!やぁみんなおはよう!!今日はーーー」

 

 

彼は一息つくことすらせずして教室内に元気に入っていき朝のホームルームを開始した。もしかしたら廊下を走ることに慣れているのかもしれない。遅刻常習犯が担任では困る。

 

 

あかね「このドアたてつけよかったね・・・しかも凄く軽そう。」

 

 

あおい「前の私じゃ学校の教室の扉開けられないこともあったからね。堅すぎて」

 

 

リーネ「それってネウ・・・アローンに壊されなくてもそのうち倒壊したんじゃ」

 

 

こまり「少なくとも私が入学した頃からそんなだったからね。変なとこで丈夫だから改修されなかったんだろうけど」

 

 

あおい「・・・あ、もしかして今呼ばれた?」

 

 

あかね「わかんない。中の声全然聞こえないんだもん」

 

 

教室内でにぎやかな授業をしても隣の迷惑にならないよう、この学園は壁も厚く防音機能に著しく優れている。それを計算にいれていない担任は今教室内で1人戸惑っていた。呼んでも誰も入ってこないからだ。生徒達も戸惑っていた。教室内から外に呼びかけてもほとんど聞こえないのを彼らは知っているからだ。気まずい教室内の空気だったが、中の様子を伺うためそろりと扉を開けたあおいと担任の目があったことで状況は好転した。実際これはファインプレーであった。もしあおいが遠慮してドアを開けなければ教室内の空気に耐え切れない生徒も出てきていたかもしれない可能性がほんの少し存在したからだ。嬉しそうな担任の手招きであおい、続いてあかねとこまり、最後に異世界3人組とこれまでほとんど口を開かなかったれいが入室し教室正面に並んだ。

 

 

新学期早々、2年B組に現れた7人の転校生。この数の人数が1つのクラスに押し込まれる事態は異常だ。驚き、戸惑いから少しざわついてしまった生徒達はそれでも新たな友人達の自己紹介を一言一句聞き逃さないよう口を閉ざし姿勢を正した

 

 

緊迫した空気、さらにすさまじいアウェー感が重く肩にのしかかるであろう状況下の中でまっさきに前に一歩を踏み出し声をあげたのは大島一笑顔の似合う一色あかね

 

 

あかね「大島分校から転校してきました一色あかねです!!運動が得意で大好きです!よろしくね!!!」

 

 

一息で元気に言い切るとすぐに下がって自分の横に立つあおいに目配せする。この勢いに乗り遅れないようにとあおいが続き、こまりも覚悟を決めた

 

 

あおい「お、同じく、大島分校よりきました二葉あおいです!ええっと、よろしくお願いします!」

 

 

こまり「右に同じ、越谷こまりですー。ハイテクと縁のない学校生活だったので色々教えてください、っと。ほい」

 

 

宮藤「はい!宮藤芳佳です!私も右に並んで大島分校から来た・・・かと思いましたか?残念違います!横須賀の方から来ました。どっちかというと理系です。」

 

 

リーネ「リネット・ビショップです。日本語話せますのでお気軽に話しかけてくださいね。」

 

 

ペリーヌ「ペリーヌ・クロステルマンですわ。日本語は一切話せませんので、お気軽に話しかけないでもらえるかしら」

 

 

芳佳(ペリーヌさんまずいですよ!転校早々ケンカを売るのは!)

 

 

ペリーヌ(初っ端から煽り気味のあなたに言えたことではありませんわよ。それにわたくし達はあまり色々聞かれると困るでしょう?事情が事情なのですから)

 

 

芳佳(いやぁ、緊張して思わず分校から来たって言いそうになっちゃいまして・・・)

 

 

リーネ(でも心広いですね。みなさん笑顔で拍手してくれてます。)

 

 

金髪美少女はツンツンしているもの、いわゆる「解っている」紳士力の高いB組男子は怒ったりなどしなかったし、女子達はペリーヌを絶対質問攻めにしてやろうと決意を固め休み時間がくるのを舌なめずりして待った

 

 

 

担任「OK!OK!後ろの方にまとめて席を空けてあるからそこに好きなように座ってください!」

 

 

窓際の列はすでに人がいるが、そこの隣の列の後ろ3・2・2の配分で席が空いている。窓際から二列目、前からペリーヌ、宮藤、リーネ。その隣前からあかね、あおい。横はこまり、れい。担任は教室が多少狭くなることを覚悟の上で何人かの席を違う列にずらすことで7人分の席を空けたがそれでも7つの席を運びいれても丁度よい空間が残った。

 

 

担任「どうです?椅子の高さは下のレバーで多少変えられます。机の高さを変えたい時はあとで言ってください。特殊な器具かいるのでね!では朝の連絡事項ですがーー」

 

 

スっと静かに前の扉が開いた。まさかまた転校生?そういう訳ではない。なら遅刻した生徒か?担任は口を閉じてそちらへ目をやったが遅刻をとがめるような雰囲気ではない。むしろ暖かく彼女を迎え入れた

 

 

「遅くなりました、先生。三枝わかば、ただいま戻りました」

 

 

担任「いえいえ!こちらが頼んだことですから!ホームルームは丁度これからですので!それでは転校生のみなさんに端末を配っていただけますか?ああ、これからお渡ししますのはこの学園の生徒専用の端末機械です。学食での会計や学園の施設利用、学校からの連絡にも使われますので大切に!」

 

 

後ろでしばった緑の髪の根元が見えるほど深々と頭を下げるのを見て担任は気にしないようそう言った。姿勢を戻したわかばは早足で教室後ろの方へと歩く

 

 

 

わかば「それでは1人ずつ名前を呼ぶので手をあげてください。」

 

 

1人1人の顔と名前を覚えるようにわかばは丁寧に端末を渡していく。そして最後の1つの端末を受け取るのは

 

 

あかね「・・・」

 

 

わかば「・・・一色あかねさん・・・ね。どうぞ」

 

 

あかね「あ、ありがと。」

 

 

ぎこちない笑顔で受け取る。深い緑色の眼に覗き込まれるような未知の感覚に背筋がぞくっとしたがわかばは視線を外して自分の席に戻っていった。

 

 

あかね(あの子絶対あれだ!あの時の人だ!気付かれてないと思うけど・・・)

 

 

さっきの視線も、ただ転校生というものに興味があっただけだろうしむしろ自分が意識した方が変な方向に行ってしまうだろう。新しい友達として他のクラスメイトと同様に接するのが最も自然だし安全だろう 正体バレは避けるように、といわれて初日で同級生にばれましたなんてなったらちょっと頭が痛くなる事態だ

 

 

こまり「どったのあかね。なんか見つめあってたけど」

 

 

あおい「!!??」ガタッ

 

 

れい「!?」ビクッ

 

 

あかね「え?そんなことないよー。髪の毛赤いのが珍しかったんじゃない?」

 

 

こまり「あー、なるほど。私は緑の方が見慣れないけどねー。」

 

 

あおい「・・・」スッ

 

 

れい(な・・・なんなの)ドキドキ

 

 

チャイムでホームルームの時間が終わった。担任は転校生と仲良くしましょうとだけ言うと小走りで教室から出て行き、担任がドアを閉めるより早くあかね達の席をクラスメイト達が囲んでいた。その円に加わっていないクラスメイトもいる。自分の席から立ちあがらない生徒達も興味ありげにこちらを見たり、仲良しグループ数人で固まりながら転校生達の様子を遠巻きに見たりとさまざまだった

 

 

「ペリーヌさんさー!」「ねえペリーヌさん!」「ねえねえ!!!」

 

 

ペリーヌ「ちょっと・・・ちょっと!どうしてわたくしがこんなに絡まれてるんですの!?」

 

 

芳佳「そりゃあんなフリされたら絡みにいきますよ」

 

 

ペリーヌ「宮藤さんが何人もいるみたいですわ・・・」

 

 

芳佳「んんん、ちょっとどういうことですかねそれは!」

 

 

「ねえねえ宮藤さん。」

 

 

芳佳「はいなんでしょう?」

 

 

質問攻めの時間はたったの五分ほどだった。すぐに授業が始まったからだが、その五分を質問する方は一瞬の物足りない時間に感じたし、されてる方は永遠の長さに感じるほど忙しかった。向こうはあかね達の名前を知っているがこちらは知らないというまたしても圧倒的アウェイな立場にまたしても苦戦を強いられる場面であった

 

 

しかしその一時間目、気のいいおじいさん先生の受け持つ現代国語の時間は2年B組の生徒達の要望で自己紹介タイムとなった。先生はそれを快く了承し、あいうえお順に転校生達に向けて前の教壇に立ってそれぞれ個性を押し出した名乗りを行った。あかね達も一回でできるだけ全員の顔を覚えようとそれを真剣に聞く。当然その途中で三枝わかばの自己紹介もあったが彼女は笑いを取りにいくタイプではなく、いたって真面目な少女。名前を名乗り、剣道をやっていることだけを告げまた頭を下げて自分の席へと戻っていく。あかねがそうだったように、それ以外の面子もわかばから武士っぽい雰囲気をやんわり感じていた。

 

 

二時間目、三時間目は理科、数学と理系の授業が続いた。普段ならドリルを先生に質問しながら学年ごとに進めるという授業形式しか経験しない大島校の面々は先生の話を聞き、時に手を上げて発言し、板書をして・・・いわゆる大半の中学生が毎日受けている普通の授業がいたく新鮮なものであった。勉強は嫌いでも新しい事が好きなあかねも目を輝かせている一方でまた宮藤達異世界組みも火薬の匂いがしない学校生活を小さな平和として満喫していた

 

 

<チャーイム>

 

 

数学担当「むむむ、今日はこの辺りですね。今解いている問題は次回までの宿題、としておきます。終わってない人は終わらせておくように。ではではまた次回」スタスタ

 

 

あかね「うーんあとちょっとだけど・・・まあいいや、帰ってからやろ。あおいちゃん終わった?」

 

 

あおい「私もあと少しかな。」

 

 

こまり「いいなぁ、あかね達一緒の家でしょ?宿題協力できんじゃん。れいも一緒だよね?」

 

 

れい「ええ、そうね。」

 

 

宮藤「次は・・・体育でしたっけ?初日から色々ありますね。」

 

 

リーネ「体育・・・」

 

 

ペリーヌ「そんなに絶望的な表情をされなくてもよいでしょう?ここは普通の学校ですのよ?」

 

 

リーネ「そ、そうでしたよね。よかった訓練じゃなくて・・・」

 

 

こまり「海外の体育ってキツイの?」

 

 

ペリーヌ「そう・・・ですわね。字の通りとことんまで体を育むための内容でしたから。」

 

 

宮藤「ねえ、今日の体育ってなにするのかわかる?」

 

 

窓際の席の女子「宮藤さん達は始めてだったね。私達も体育は今日で新学期入って2回目だけど前の続きで野球だと思うよ。」

 

 

あかね「野球!この人数ならフルメンバーでやれるんだよね!うわあ楽しみ!!はやく着替えよ!」ヌギ

 

 

あかねの前の席の女子「ちょちょい!!一色さんなにここで着替えようとして・・・おい男子こっち向くなよ男子ィ!」

 

 

面倒見のいい女子「一色ちゃん更衣室あるから!案内するから!」

 

 

あかね「? あー、ごめんごめん。前の学校だとあんまり関係なかったから。男の子廊下で着替えてくれてたし。ごめんねー」アハハ

 

 

こまり「あぶなー、私も全然意識してなかったや。」

 

 

宮藤「でもあかねちゃん今朝下に体操服着てたよね?別にそのまま脱いでよかったんじゃない?」

 

 

あかね「あ」

 

 

面倒見のいい女子「一色ちゃん体育好き?」

 

 

あかね「うん大好き!」

 

 

前の席の女子「でも更衣室の場所は知っておいたほうがいいでしょ。案内するわ。」

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

 

 

A組の野球男児「ふぅ・・・」

 

 

<ワーワーワーワー>

 

 

A組選抜対B組選抜の紅白戦。50分という時間制限のある授業では練習の時間を抜いて試合形式はたったの3回で最終回だ。そして今はその最終回3回の裏。俺は練習試合ならいつもそこにあるロージンに手を伸ばそうとして、これがただの体育の授業の遊びだと思い出して自分ながら少し恥ずかしいと自嘲気味に小さく笑った

 

 

 

野球部の次期エースとして周りから注目の的であった俺の実力を見たいクラスの連中がやいのやいのとピッチングの要求をしたので、俺もちょっとおだてられてマウンドに立っただけだ。9人連続三振でズバっと抑えて授業終了。キャッチャーに簡単なサインを送ってミットを打者の膝元に構えさせ、そこに収まるバツグンのコントロールで

 

 

<キィーン>

 

 

 

A組の野球男児「ふぁっ」

 

 

金髪好きのB組女子「きゃーペリーヌさーん!」

 

 

B組一同「きゃーペリーヌさーん!!」

 

 

ペリーヌ「以外といい運動になりますわね。」

 

 

宮藤「ペリーヌさん、ナイバッチー。」

 

 

リーネ「ナイバッチでーす」

 

 

 

一塁上から応援してくれているクラスメイトに対して少し恥ずかしげに手を振る金色の髪の転校生。三塁と二塁にいる彼女と同じ転校生の2人がパチパチと手を叩いて賛辞を送っているのを背中に、俺は自分の〈プライド〉の崩壊を抑える言い訳を考えるのに必死だった。

 

 

A組一塁手「初心者相手には変化球使わないよ、とか言ってる場合かこれ。7番の代打で出た女の子のセーフティバントから3連弾で一失点、これアカンやろ。せっかくB組の三枝は今日は出てないってのに」

 

 

A組三塁手「まあこっちは3点とってるからな。あと1点やってもいいくらいで気軽にいけ。」

 

 

A組の野球男児「ああ解っている。もう絶対に打たせやしないさ。」

 

 

 

審判「B組、2番橋口に代わって、代打一色あかね!」

 

 

応援スペースにいるA組の生徒達がざわつく。それと反してB組の生徒達はわぁわぁと大騒ぎで期待の転校生を送り出す。バッターボックスに元気に入場してきた赤い髪の女の子に俺はこれを好機ととらえた。謎の転校生女子4人にいいように打たれ、9奪三振どころか一失点。今後の自分の精神に多大な傷を残しそうなこの事態にこの手で決着をつけるチャンス。勝ち負けなどどうでもいい。後ろのエラーで1人返ろうが2人返ろうが俺が投手としてこの転校生部隊を打ち取れたなら___三振にできたのなら、それでいい。

 

 

 

俺は同じく野球部に所属しているキャッチャーの田中に軽いサインを出すと大きく振りかぶって

 

 

審判「ットラーイク!!」

 

 

あかね「・・・」

 

 

インコース低めの全力ストレート。舐めて投げてバントを決められた最初の球でもなく、動揺してセットポジションから投げた球でもない。本気のランナーを気にしない全力投球だ。先輩達でも簡単には打てないストレートだ。そして二球目は外角低め

 

 

<カキーン!>

 

 

A組野球男児「!!!!!!」

 

 

 

あかね「っと、ちょっとはやかったかな。ファールですよね?」

 

 

審判「そうだね、ファール。」

 

 

キャッチャー田中(だ、だめだ!ストレートを簡単に当てられたあげくあのファール!次はタイミング合わせてセンター頭上行くぞ!)

 

 

慌てた様子の田中に俺は1つ、考え方をまた改めた。この転校生部隊は強い。男子も女子も関係ない。この勝負は投手としての全力をもって、打者に勝負を挑む。 俺は田中に今まで一度も出していないサインを出した。軽く一息ついてグローブの中でしっかりボールを握る。この球しかなかった。俺の指先から離れたボールが鋭く回転しながら進む。インローのもっとも打ちにくい場所に、打者からすれば少し逃げる形になる高速スライダーだ。俺はこの球で

 

 

あかね「そりゃー!」

 

 

<グワラギィーン!!>

 

 

A組野球男児「この球で・・・野球部の・・・エースに・・・」

 

 

面倒見のいい女子「わああああああ!!」

 

 

前の席の女子「満塁弾だぁー!!逆転!逆転だー!!」

 

 

リーネ、芳佳、ペリーヌが待つホームベースを踏むあかねはそのまま3人とクラスメイトに胴上げされる。高所恐怖症を治しておいてよかった、とあかねは小さく思っていた。そんな満面の笑顔のあかねを、今日は練習だけに抑えていた三枝わかばは円陣の外から何も伺えない表情でじっと見つめていた。

 

 

 




三枝わかばちゃんのキャラの使い方が難しいと私の中で話題に


もう武士キャラでいいだろうか
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