あかね「これが学食!」
こまり「島のレストランもかたなしだね。」
体育のあと同級生が案内してくれたのは学校内の食堂。こまりの言葉通りの大きさだ。少なくとも百人単位で利用客をさばける程度のゆとりはある。流石に小中学生は弁当もちが多いようで同級生より年上の方が多い。学食を見渡して見当たる小学生は弁当を用意できなかったももやこまり
こまり「私中二だから」
失礼 ももとその友人数名くらいだ
なつみ「ねえちゃんお金貸して」
こまり「数時間ぶりにあった姉へそれが第一声か。お母さんからお金もらったでしょ?」
なつみ「だからねえちゃんがまとめて持っていったでしょ・・・」
もも「お姉ちゃん。はいお金。千円でたりるよね?」
あかね「ありがと!全然余裕!で、もものほうは大丈夫?」
もも「うん!友達たくさんできたよ!」
あかね「さすがわたしの妹!じゃあお昼はそれぞれの友達と食べよ。せっかくだしさ」
もも「うん解ったよ。ちょっとさみしいけど・・・じゃあおつりは帰ってからね!」タタタ
わかば「一色さん、妹いるのね。」
あかね「うん。似てた?」
わかば「そうね。元気さが溢れてるところと、眼は同じね。きっといい子だと思うわ」
あかね「うん。出来た妹なんだよ。わたしそっくりでね」
あの後、三枝わかばは興奮さめやらぬ教室の中であかねを軽い調子に学食に誘いあかねは笑顔でそれを快く受けた。こまりとなつみは先に列にならび、購買を見に行きたいれいとあおいは面倒見のいい女子と窓際の席の女子と共に財布を持って別行動。
ペリーヌ「食堂派は少ないようですわね。」
リーネ「クラス替えの直後だから、お弁当を一緒に食べるメンツを今の時期に集めておかないと今後の昼休みが少し辛くなるから・・・とかですかね?」
芳佳「みんないい人そうだしその心配はなさそう。三枝さんは学食派なの?」
わかば「ええ。去年ここの学食の年間割引券をもらったの。それでね。」
あかね「へー、そういうのあるの?なになに、テストで一番だったからとか?三枝さん勉強できそうだし。」
わかば「ははは、そうね。大体そんな感じよ。」
とりあえずは様子見、安易にカレー、しょうゆラーメン、きつねうどん、親子丼を攻めた転校生勢の横でわかばはしょうが焼き定食ご飯大盛り。明らかに学食を使い慣れている。昼休みはそこそこ長いので他愛ない話を少し混ぜながら落ち着いた昼食をとった。
宮藤「へー、わかばちゃんは剣道やってるんだ。」
この短時間で呼び方が三枝さんがわかばちゃんに変わるくらいには打ち解けたのだろう。あかねももうほとんど警戒せず元気に受け答えるしわかばのほうも外見の厳しい雰囲気に合わない穏やかなトークで転校生と積極的に親睦を深める
宮藤「解った。割引券はそれ関連だね。」
わかば「何故?」
芳佳「素人じゃないもん。手のひらもそうだけど、足運びとかさ。私の上官 じゃない先輩にも剣道すごい人いるけど、その人を思い出すよ。わかばちゃん、スポーツ特待生なんじゃない?」
あかね「わかるわかる!なんていうかわかばちゃん、〈強そう〉ってかんじ!」モグモグ
わかば「ええ、そうね。私は剣道で特待生としてここの中等部に入ったわ。食堂割引券は校長の計らいよ。・・・芳佳も、剣道は得意?」
宮藤「ううん。私はケンカは苦手だから。おっとり系の癒し系だし」
ペリーヌ「えっ?」
宮藤「はい?」
リーネ「ふ、ふたりとも落ち着いて・・・。それにペリーヌさんほら、芳佳ちゃんが癒し系っていうのはその可愛さだけじゃなくて」
ペリーヌ「まあ宮藤さんのウィッチとしての能力は・・・でもおっとりk」
芳佳「ペリーヌさん。それ以上はやめましょう。私ケンカは苦手ですから」
ペリーヌ「今まさにおっとりしてませんわよ。めちゃくちゃムキになってますけど」
芳佳「ふん、しりません。おあげもらいますからね」
ペリーヌ「ちょっとおおおおおおお!!きつねうどんが素うどんになってしまうじゃありませんの!」
あかね「もぐもぐ・・・ごちそうさま!わたしちょっと探検いってくるね!」
リーネ「あかねちゃん早いね。私は芳佳ちゃんとペリーヌさんをおさめたら教室に戻ってるよ」
あかね「うん。じゃあまた後で」
わかば「待ってあかね。私もごちそうさまなの、一緒に行っても?」
あかね「うん。というか、だれか道のわかる人いないと迷っちゃうよね」アハハ
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ここは私がおごるわ、と申し出たわかばの好意に逆らわず食堂を出たところの自販機でバナナオレを受け取るあかね。わかばはスポーツドリンクを買い、そのまま綺麗に整えられた広い中庭をゆっくり歩いた。人はあまりいない。中庭で食事するには少し今日は日差しが強いだろうな、とあかねはバナナオレの最後の残りを吸い上げ少し離れたところのゴミ箱に片手でスローイング ど真ん中に回転しながら完璧に入った直後、わかばも同じようにペットボトルをど真ん中に放りこむ
あかね「すっとらーいく!」
わかば「ピッチャーも得意そうね、あかね。」
あかね「うん。でもやっぱりバッティングかな!あんな変化球初めてですごい面白かったし。今度の体育もあの人出てこないなぁ。」
わかば「あのスイング、実に見事だったわ。空であれだけの斬撃が出来るのだから当然なのかもしれないけど。」
あかね「ははは!はっ」
わかばの言葉尻が耳から入って頭でその意味を再三考えるが、どうにもまずい状況だという結論が三回出た。中庭の静けさが異常に感じる。この静かな中庭なら邪魔が入らないということで誘導されたのだろうか。それにジュースをおごったのはもしや話を聞かせやすくするため貸しを作ったのだろうか
わかば「会うのは二回目、ということでいいのかしら。あの時と姿は違ったし感じる凄みもまるで違ったけれど・・・顔は隠れてなかったから。」
あかね「ええーと」
落ち着いた深い緑の瞳の奥からあの時の激情が表に出てきつつあることを察するあかねは反射的に半身を引いてわかばに対して一足間合いを開けた。もし詰められたらすぐ離れることが出来る距離。
わかば「事情の程はわからないしあなたも話せないことだろうと思う。だから私もそこのところは聞かない。ただ1つ。」
あかね「え、あー」
わかばが姿勢を正したのを見て反射的に腕を胸の前で構えたわけだが、わかばがとったのは攻撃の姿勢ではない。懇願の姿勢。朝見せた謝罪ではなく、誠意をこめた切実な願いを伝えるため深々とお辞儀をした
わかば「私をーー弟子にして欲しい」
あかね「???????」
わかば「・・・」
あかね「え、弟子っていうのは・・・なんなの?」
わかば「私が剣道をやっている、というのはつい先刻言ったばかり。あなたの昼休みを少しだけもらって話しをしてもよろしいでしょうか」
あかね「う、うん。でも敬語はあの」
わかばに促されるようにそこにあったベンチに腰掛けた。わかばはふとももに両手を丁寧に置いてまるでくつろぐ様子もなく語り始めたわけだが、その口調の苦しそうなものを感じるあかねとしては真剣に聞かざるをえなかった。
昨年、三枝わかばは一年生としてブルーアイランド学園の代表として全国大会に出場した。男女混合ではなく女子の部として出た彼女は予選では一本も取らせないどころかまるで苦戦する様子もなく圧倒。各県を代表する三年生や二年生をも軽く制する彼女の姿は会場の好機の目を一身に集めていた。天才剣道少女はもうじき日本一に手が届く、という場面に置いて、しかし気持ちに波1つたっていなかった。3回戦の相手を叩きのめし、一年生に負け自分の三年間が終わったことを嘆く相手を見るのに気まずさを感じ足早にそこを去った。準決勝であってもその剣の鋭さは鈍ることなく瞬く間に勝負を決めると付き添いのコーチから水を受け取り反対側のコートを見た。
すでに勝負はついているようなものだった。片方の選手が取られた一本を取り戻すため必死になっているのをゆるゆるとかわし、二本目。赤い旗が三本バッと上がりわかばの相手が決まった。
少し変則的で、真っ向から力で伏せるわかばとは違いうまさのある闘い方だ。とらえどころがないように見えて、それでも脅威ではない。わかばはいつもと変わらぬ平常心でその少女と相対した。
結果として三枝わかばは敗れた
天才少女、一年生にして彼女が全国の決勝に立ったのが確かな実力による必然のものであることを剣道を多少なりとも解る観客は理解していたが、その彼女が負けたのは時の運などでなく確かな差によるものであることを見抜けた者は少ない
わかば「相手は強かったけれど、立ち会う前に観察していた限りで私は負ける相手でないと思っていた。でも・・・」
何度打ち込んでも竹刀が届かない。入れ替わり切り込まれる刃は鋭く、見切れるはずだった動きに翻弄された。鍔迫り合いでこちらを見据える目の奥に、得体の知れぬ大きな力が潜んでいた。
わかば「私は一年経ってあの負けから一歩も進めていない。ただ身体を鍛えるだけでは得れないものを得ようとした私は、まるで答えを見出せずにいた。そんな時あなたの戦いを見て、確信したの。あなたは私の求める力を持っている。」
あかね「・・・」
わかばの言っているものは示現力のことだろうか?あかねは今日友達になったばかりのわかばの悩みに全力で立ち向かっていた。そういうことを見返り義理もないのに実行できるところもわかばがあかねに感じたものの1つなのだが、あかねはそこまで自分の人間性を高く評価していない。
あかね「・・・」ムムム
わかば「・・・新たな環境に身を置いたばかりで忙しいあなたには迷惑であるというのは百も承知、本当に申し訳なく思うわ。でも、動かずにはいられない。空に消えもう会えるとは思っていなかったあなたが目の前に現れてくれた機会を逃したくは無い。・・・そうね、授業が終わったあとにもう一度話をしましょう。私も熱くなってしまっているし、少し考えを巡らす時間がいるわ。」
あかね「うん。難しいことだけど、放課後までにはしっかり答えを出すよ。」
わかば「ありがとう。」
あかね「ふいー、でもびっくりしたなぁ。なにを聞かれるか、ドキドキだったよ!」
わかば「あなたの抱える事情について?そうね、それもとても興味があるわ。」
あかね「やー、できれば見なかったことにしてほしいんだけどね。」
わかば「あなたが私の頼みを今ここで了承してくれたなら今後一切詮索しないことを誓うわよ?」
冗談めかしてそう言うわかばに笑顔を返すあかねだが、遠くで鳴ったチャイムが最初なんの音かわからない二人はまだ昼休みであることと五時間目の存在を思い出して慌てて教室まで走った
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あおい(あかねちゃん、ぼーっとしてるなぁ・・・)
あかねの後ろの席を獲得したあおいは授業中の暇つぶしにあかねの様子をちょくちょく朝から観察していた。というより黒板を見ようとすると視界の端にチラチラその赤いツインテールがうつるのだからどうしてもその様子の変化は気になった。午前中は授業そのものを楽しんでいたあかねが今はなにか別のことが気になるよう。板書だけはしているようだがその頭の中にはもっと大事なことが容量をしめている
あおい「お昼休みなにかあったの?本鈴が鳴るギリギリに帰ってきてたけど・・・」
あかね「ううーん。や、悪いことは起こってないんだけどね。」
休み時間に聞いてもこれだけ言ってまた目を閉じて眉間にしわをよせてしまった。この悩みはどうやらあかね自身で解決する必要のある案件であることを察しあおいはおとなしく身を引くことにした。
六時間目が終わった。今日はこれまでだ。持って帰る必要のないものを後ろのロッカーにしまう。ここでもあかねはちょっと上の空で宿題が出ていることを忘れて数学の教科書をロッカーに突っ込んでいるところをペリーヌにとがめられていた。ごまかすように笑いながら教科書をかばんに入れなおしていたあかねだったがふと顔を上げた際に教室の扉のほうでなにかを見つけたようで
あかね「ちょっと先帰っといて!わたしよるところあるから!」
転校初日の生徒がなにをそんなに急いでどこかに行く用事を作れるのか 当然の疑問である。流れるように片付けをすませた一行は廊下を全力疾走する赤い髪の女の子の目撃情報を道すがら聞き込みとうとう綺麗な中庭へといたる人通りの少ない通路でいなくなったあかねの声を聞いた。盗み聞きするためだけに植えられたと思わせるような丁度よい植え込みに姿を潜ませ・・・
あおい「えっ?盗み聞きしちゃうの?」
こまり「いまさら何を言ってるのさ。」
リーネ「というか、誰が最初に盗み聞きしようっていったんでしたっけ・・・?」
「「「・・・」」」
言わずとも考えることはみな同じ。自然とそういう行動を取っていた。だって気になるし。バレなければいいのだから。罪悪感を他人に押し付けあいながら彼女達は耳に全ての意識を傾け一時だけ完全に自然と一体化した
「ーーーでーーーだけどーーー」
「しかーーーれはーーー」
れい「よく聞こえないわね」
こまり「ぐっと集中力を高めるのだ・・・焦るでない・・・」
宮藤「相手は誰でしょう?聞き覚えあるようなないような」
「ーーーだからわたしは、わかばちゃんとはそういう関係にはなれない」
あおい「えっ、なんなのそれは」ガタッ
ペリーヌ「おちつきなさいあおいさん!」
こまり「キマシ?」
宮藤「キマシタワー」
「ーーーそれがあなたの応えであるなら、私は受け止めるしかない。あなたが出した答えが軽いものではないことは承知している・・・とすっぱり諦めたいところだけれど、私もそれなりの覚悟を持って頭を下げた。どうしても嫌だというのならば私の魂ごと切り捨ててもらおう!一色あかね!あなたに決闘を申し込むッ!!」
こう・・・地の文の参考になるような小説が読みたいんですけど、近場に図書館がないんですよね・・・。立ち読みするためだけに自転車で30分かける覚悟を決めないといけませんね