ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第14話 あおい「果たすべき役目」

時空の歪みが起こした衝撃が圧となって海をざわめかせた。何か危険が迫ってきたことを察したわかばはその身を無理やりに起こす。少し離れた学園から耳を覆いたくなるような警報が鳴り響き、それは聞く者によっては戦いの始まりを暗示するもののようであった。草むらに身を忍ばせていたあおい達も、こうなってしまっては観客に徹しているわけにはいかず役を果たすため場に踊り出るしかなかった。実際、出て行く間をはかっていたところもあったわけでもあるが

 

 

 

あおい「あかねちゃーん!!!!」

 

 

あかね「あおいちゃん!?どうしてここに!ここでなにしてるの!?」

 

 

あおい「あかねちゃん達がなにしてるか見に来たの!二人ともなにしてるの!?」

 

 

宮藤「怪我のほうも気になるところだけど、後回しだね。どうします?」

 

 

ペリーヌ「一先ず・・・ええ、ここを離れる必要がありますわね。この音は学園の地下シェルターへの避難を指示するサイレンだったはず、話はそこでいたしましょう。こまりさん黒騎さん、お二人はあかねさんと三枝さんのかばんを回収しつつお先にシェルターのほうへ向かってください。」

 

 

れい「わかったわ」

 

 

こまり「みんな残るの?怒られるよ?」

 

 

ペリーヌ「馬鹿なことおっしゃいな、わたくしが誰かに怒られるような行動をとる無責任な人間にみえまして?怪我人二人を連れてすぐ追いかけますわよ」

 

 

 

こまり「そういうことなら、お先に!」

 

 

あかね「れいちゃん、わたし達すぐ行くから!」

 

 

れい「ええ、彼女と一緒にいるわ。あなた達が戻ってくるまで」

 

 

来た方向へ取って返した二人を見送るのもそこそこに、あかねは右手の中に既にオペレーションキーを握り締めていた。いつもより心臓の鼓動が早いのは、気が昂ぶっているだけではないだろう。その身に蓄積されたダメージは残っており、彼女の体調は万全と呼べるものではない。

 

 

だがそれがあかねの戦いへの意志をとめるものにはならない。危険というものは不条理に降りかかって来るものであって、ただ立ち向かうことだけがそれを好転させるのだ

 

 

だがしかし、そんなあかねにあおいが待ったをかけて前に進み出た。あかねの右手を両手でやさしく包み込み、戸惑うあかねの瞳を真っ直ぐと見つめるだけであかねを地に留めた

 

 

 

あおい「私が1人で行く。あかねちゃんは待ってて」

 

 

 

あかね「怪我なんてどうってことないから。私なら大丈夫だよ」

 

 

 

あおい「私だってあかねちゃんのために無茶してもいいでしょ?」

 

 

  

あかね「わたしのかわりに無茶させるために、力をあげたわけじゃないよ!」

 

 

 

 

自分が招いた失態があおいの負担となってしまうことはあかねにとって我慢ならないことだ。アローンと戦う使命は一色あかねが請け負ったもの。これはあかねがやらねばならないことなのだ。その使命を押し付けるためにあおいを救ったわけではない。あおいが恩返しで戦うというのなら、あかねの差し伸べた手をとったことであおいにこの戦いの責任が移ったというなら、それをあかねは罪と認めなくてはならないだろう

 

 

 

あおい「誰もあかねちゃんの代わりになんてなれっこないよ」

 

 

 

あかね「え?」

 

 

 

おあい「弱い私でもなにかあかねちゃんの役にたてればって、願った私を変えてくれた。一緒にいてもいいって笑ってくれた。頼りない私なのはあかねちゃんがよく知ってると思うけど、それでも私はがんばってあかねちゃんの横に立つから。私はただあかねちゃんと一緒にいたいだけ」

 

 

 

あおいが一歩、前に踏み出した。その一歩であかねの前に立ち、空を見上げる。握り締められたあおいの手の指の間からあふれ出す青白い光が段々と明度を増し細い光の帯を空中に照らし出す。

 

 

 

あおい「そんな私の願いの邪魔をする!アローンは『私の』敵なんだっ!イグニッション!」

 

 

 

おあいは手を高く突き上げ示現力の光を解き放った。瞬間、その身を覆った光が鎧の概念を表した青い服へと変化する。

 

ビビッドブルーへと変身を完了させたあおいが放つ示現エネルギーの余波をこれほどまで間近に素肌で浴びるのはあかねを含めその場全員が始めてのことだった。その力のもとにあるのが燃え滾る闘志であると感じながら、優しさすら思わせる暖かいものであることにわかばは無言で驚いていた。

 

 

 

あおい「それでは、ペリーヌさん達はあかねちゃんを」

 

 

ペリーヌ「お待ちなさい二葉さん。確かに、今のあかねさんを戦闘に出さないというあなたの判断にはわたくしも概ね同意いたしますが、なにも本当に1人で戦いに向かわれることもないでしょう?」

 

 

あおい「えっ・・・」

 

 

宮藤「あれ、ペリーヌさんは先生に怒られるようなことはしないんじゃなかったんですか?」

 

 

ペリーヌ「人それぞれに役目というものがあり、わたくしも自分のそれは十分理解していますわ。戦士でありながら仲間1人残しのうのうと逃げるなど、先生方がお許しになってもこのペリーヌ・クロステルマンが許しません。」

 

 

リーネ「あ、あおいさん。アローンの出現までの時間がどれだけのものか解りますか?」

 

 

あおい「はい。おじいさんによると長くても30分もあればあの場所から出現するらしいです。」

 

 

ペリーヌ「ここから大島までモノレールで駅を挟んで15分でしたから、あおいさんの力をかりて真っ直ぐ飛べばもっと早くつけますわね。あおいさん、わたくしとリーネさんをあかねさんの家まで運んでいただけませんこと?わたくし達、ああいう黒くて光ってビームを撃って来る大きな敵との戦闘はそこそこ経験しておりますのでお力になれると思いますわ。あまりあかねさんを心配させたくはないでしょう?」

 

 

 

あおい「・・・解りました。ええっと、お二人だけならあまり速度を落とさずに運べると思いますけど、3人となるとちょっと時間がかかってしまうので・・・」

 

 

 

宮藤「私はここに残ってあかねちゃんの怪我を治します。」

 

 

ペリーヌ「ええお願いしますわ。あおいさん、お願いいたします」ガシッ

 

 

リーネ「おもいきり飛ばしてもらって大丈夫ですよ。魔法発動中は大したことじゃびくともしませんから。」ガシッ

 

 

あおい「えっと、はい、じゃあ行きます!」

 

 

 

リーネを左にペリーヌを右に抱えてあおいは初速は慎重に、そして徐々に速度を増して大島の方向へ飛んでいった。3人の動向を見送るのもそこそこに、あかねは芳佳にうながされてその場に座り込んだ

 

 

あかね「ねえ、なにするの?」

 

 

宮藤「怪我を治すよ。大きな怪我は左腕だけだね?うん、かなり腫れてるから骨折かもしれないけど大丈夫!」

 

 

わかば「大丈夫ではないでしょう。まあ私が言うのもなんだかな・・・」

 

 

あかね「治すって言ってもお薬塗っただけで治ったりするものなの?」

 

 

宮藤「私達ウィッチは共通した魔法力以外にも個別に特殊な力をもっています。ペリーヌさんが『雷』ならば私は『治癒』!」

 

 

宮藤芳佳の頭に犬めいた耳が生えた。続いて同じく犬を思わせる柔らかな尻尾が腰の辺りから飛び出す。芳佳は深く息を吸い、ゆっくりと肺の中の空気を吐き出した。芳佳の身体の中で抑えられていた魔法力が高まっていくのを感じる。あかねはこれから起こる何かに対し胸をときめかせていた。魔法を実際目にできる機会、さながら贈り物の箱を開けるときのように期待を躍らせた

 

 

 

宮藤「一つだけ!絶対に大丈夫ですから、なにがあっても逃げないでくださいね・・・!」ポォオ

 

 

 

しかして箱の中身は爆弾である、と無慈悲に告げられたあかねは絶望に腕を掴まれながらもそれを振り払って逃げ出すことはかなわなかった。ただただ混乱と動揺を瞳で訴えるも、わかばは力なく倒れ伏すだけだ。芳佳の目はすでにどこを見ているのかがわからない

 

 

 

芳佳の両手の平から放出される光は液体めいた質感を持ち、芳佳の手からあかねの腕へと宙を漂いゆっくりと患部を包み込んだ。光の強さに比例する熱にあかねは思わず身体を強張らせたが『動くな』という言葉を思い出し、眉をひそめて我慢した。皮膚を焦がすそれが肉を伝いついに骨へ触れたことは鋭い痛みが報せてくれた。それと同じタイミングで芳佳が少しうろたえた表情を浮かべた。あかねが心配そうな目で見ていることに気付くと、芳佳はあわててニッコリ微笑んで「大丈夫です」とだけ言ってあかねの腕の治療に集中しだした

 

 

 

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一方で、既にあおいはあかねの家の庭に足をつけていた。正しくは少し地面から浮いた状態だったが、二人を降ろすとすぐさま高度を上げて雲を突き抜けるほど飛び上がった。人を抱えているといっても武器を展開していなければビビッドブルーの移動速度はそれほど遅いものではない。そのため移動の時間はほとんどかからなかったが、飛行中あおいはずっと頭のてっぺんを抑えるような強烈な威圧を感じ続けていた。

 

 

あおい「・・・」

 

 

 

というよりあおいからは既に時間の感覚は失われていた。戦いへの緊張があおいの感覚を極度に尖らせ、心臓のオーバーワークが血流を遥かに加速させ、理性が普段押さえつけてるもの全てが頭の中でぐるぐると暴れまわっていた。全てを叫び声に乗せて吐き出せれば楽になる、そう思いながらも残った理性がそれを許さなかった。今自分の中にあるもの全てを力に変えて戦うべき時なのだということを理解している

 

 

ペリーヌ『聞こえますか二葉さん。わたくしとリーネさんも健二郎博士から通信機をいただきましたので、今後これを使って連携を取ります。よろしいですか?』

 

 

あおい「はいっ。」

 

 

ペリーヌ『少し、悪い報せがあります。私とリーネさんのストライカーの燃料が残り少ないのです。ストライカーは特殊な技術が使われているものでそれに従い燃料も専用のものが必要なのですが、いまのところ代用品が見つかっておりません。協力する、と言った以上心苦しいところではありますが、少しでも長く戦闘に参加するためわたくし達はアローン出現以降にストライカーの起動に入ることになります』

 

 

あおい「ということは・・・」

 

 

ペリーヌ『少しの間だけ、あなたに援護のない状態での戦闘を強いることになりますわ。・・・本当に申し訳ありません』

 

 

あおい「いえ、そんな!協力してもらえるだけでもありがたいんです!」

 

 

健二郎『遠洋に防衛軍の艦隊が待機しておる。アローンの足を止めれば、援護も可能じゃろう。』

 

 

あおい「でもアローンを倒せるのは示現力だけなんじゃ・・・?」

 

 

健二郎『解析の結果、ある程度の質量のエネルギーであればコアの破壊は可能じゃ。外部装甲にダメージを与えることはその再生力も相まってほぼ絶望的じゃが、衝撃で攻撃を抑制させることぐらいはできる!はず!』

 

 

 

アローンの装甲は黒く輝く物質で出来ているが、一色健次郎はそれを金属の定義に当てはめることができるものかどうかの結論を出せずにいた。示現エネルギーであればそれを破壊することが可能であるが、アローンの行動を司る核に関してはその限りではないことも確かだ。それは示現エネルギーを管理する高次元生命体により伝えられた情報の一つである。

 

 

 

 

 

健次郎『示現エネルギーの反応が高まっておる!既に以前アローン出現時に計測したエネルギー値を上回っておるのじゃが、出現には到っておらんようじゃな?』

 

 

あおい「それってやっぱり、前より強い敵だってことになるんですか?」

 

 

健次郎『警戒すべきじゃのう。アローンは今のところ出現するたび姿形を変えておる。攻撃方法や行動パターンもそれに準じてもおかしくはない』

 

 

機動力のおとるビビッドブルーにとって攻撃の機会を多く確保することは難しい。敵の出鼻を挫く意味合いは戦術的価値もあいまってとても大事だ。しかし、目に見えた変化が空に起こっていない現状出現地点を予測することは難しく、素早い対応が求められる今ネイキッドインパクトをあらかじめ発動させておくことが出来ずに空を漂っていた

 

 

 

アローン出現を待つ一同だったが、ペリーヌは他のことを待っていた。他ならぬ、一色あかねの戦線復帰である。宮藤芳佳本人への評価は厳しいペリーヌではあるが彼女の治癒魔法の効力が確かなものであることは理解している。ゆえに、苛立っていた。あかねの怪我など所詮は喧嘩の末にある打撲かそれより少し痛い程度のものであろうにまだ完治の連絡がない

 

 

ペリーヌ(時間がかかりすぎてますわね。まさか何かあったわけでは・・・?)

 

 

リーネ「どうかされましたか?」

 

 

ペリーヌ「宮藤さんはこちらの世界に来たばかりのころ記憶を失っていたと聞きましたが」

 

 

リーネ「そうみたいですけど」

 

 

ペリーヌ「魔法の使い方を忘れてしまったのではと心配しているのですわ。」

 

 

リーネ「ええ!?まさかそんなことないでしょう!だってもう記憶は取り戻してるって芳佳ちゃん・・・」

 

 

ペリーヌ「こちらの世界にくるきっかえの出来事、こちらに来る過程、色々と思い出せていないことはあるみたいですが?」

 

 

 

成程、と納得したような顔のリーネが、まさか、と一気に噴出した不安を顔に出す。その不安に追い討ちをかけるような叫び声がイヤホンを通して二人の耳に突き刺さった

 

 

 

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夏の暑さと戦いながら延々書いて消しての繰り返しは、書き手としては楽しいものもあるだろう。しかしこれが数少ない読者に伝わらない以上、誰も読まなくなってしまったとしても文句は言えないわけだ。4ヶ月かけたわりに進んでなくない?みたいな? すいません!次こそ、次こそすぐあげますのでね!ね!!
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