ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第16話 れい「目覚め」

あかね「ーーーーー起きた」

 

 

 

もも「ん…お姉ちゃん?起きたの?」

 

 

 

あかね「うん。おはよう!わわっ」

 

 

 

起き上がったあかねは押し倒されるようにもう一度布団に押し付けられた

 

 

 

もも「よかった・・・今度こそほんとに起きてくれて・・・」

 

 

あかね「え?」

 

 

もも「お姉ちゃん寝言で何回もおはようって言うから・・・その度にぬか喜びしたから・・・」

 

 

あかね「ええ!?それはごめん!でも、もうだいじょうぶ。泣かないでもも」

 

 

 

鼻水を服に擦り付けられていようがなんだろうが、ここまで心配してくれた妹にあかねはただただ申し訳ない気持ちでいっぱいだった。あかねは今何時で、自分があれからどうなったのかを問うのを少しの間だけ待ち、ただただ黙ってももの頭を撫でくりまわした

 

 

ペリーヌ「あら、お目覚めでしたか?それともまだ起きてらっしゃらないのかしら。いつも以上に呆けた顔ですわね」

 

 

宮藤「そんな事言っちゃだめですよペリーヌさん。あかねちゃんは丸一日寝ていたんですから感覚が狂うのも無理ないです。」

 

 

あかね「もう夕方なの!?学校は?」

 

 

ペリーヌ「驚いてばっかりですのねあなたは」

 

 

宮藤「今日は臨時休校だよ。昨日の・・・」

 

 

あおい「あかねちゃん!!!!気がついたって・・・!あかねちゃん!!?」

 

 

宮藤「」キーン

 

 

ペリーヌ「」キーン

 

 

あおい「あ、ごっごめんなさい!」

 

 

転がるように部屋に飛び込んできたあおいは彼女らしからぬ大声で入り口の傍にいた芳佳とペリーヌを驚かせた。あまり眠れなかったようで、髪は少しハネていて目元もうっすら隈が見える。

 

 

 

あかね「あおいちゃん!だいじょうぶだった?」

 

 

あおい「あかねちゃんは心配される方だよ!?でもよかった、すごい熱だったんだよ?もうなんともないの?」

 

 

あかね「うんだいじょうぶ!ちょっともも重いよぉ。動けないからちょっとだけ放して?」

 

 

もも「ぐすっ・・・私どこも抑えてないよ?」

 

あかね「左腕あがらないんだけど・・・あれっ!?」

 

 

宮藤「ちょっ、診せてください!」

 

 

あかねは素っ頓狂な声を上げた。芳佳がその左腕を持ち上げても、あかねは自分の腕が触られている感覚をほとんど感じることが出来ない。魔法力を発動させてあかねの腕の状態を診ていた芳佳は少しの間眉をひそめ、あかねの顔を一瞬見てから口を開いた

 

 

 

 

宮藤「安心して、神経が切れてたりするわけじゃないよ。今動かないのは・・・まぁ、疲れてるからだと思うよ。」

 

 

あかね「ええっと、だいじょうぶってことかな?」

 

 

宮藤「…うん。ご飯食べて早めに寝てればすぐ治んじゃないかな。とりあえず今はしっかり休んだほうがいいよ。軽くでもなにか食べたほうがいいんだけど食欲はある?」

 

 

あかね「お腹ぺっこぺこだよ!1日の3食分いっぺんに食べたい気分だね!」

 

 

宮藤「あはは!胃がびっくりしても大変だしあっさりしたものをなにか用意してくるね。」

 

 

あかねは安心したように笑って見せたが、声のトーンや表情など端々に疲れが出ているようでいつものような明るさがない。とにかくあかねを休ませねばならないので名残惜しくも全員揃って部屋を出た

 

 

 

れい「おかえりなさい。あかねは起きたの?」

 

 

わかば「お邪魔してます」

 

 

茶の間ではれいとわかばが隣り合ってテレビを見ながらくつろいでいるところだった。わかばは朝になるとみんなと同じようにして目を覚ましたが、少し様子を見たいということで健次郎に引き止められたついでにあかねが起きるのを待っていたのだ。あおい達が座るとリーネも台所の方からお盆を持って出てきて机を囲うように向き合う

 

 

リーネ「それじゃああかねちゃんには私が食事を持っていきますね。」

 

 

ペリーヌ「ええお願いいたしますわ。宮藤さんには話していただかなくてはいけませんから。…あかねさんの前で言うべきことではなかったのでしょうけれど、話していただけますわね?」

 

 

宮藤「はい。これは、あかねちゃんの腕を治していた時に感じたことなんですけど、あかねちゃんには何か・・・私の魔法を通しにくくする力が働いてるみたいなんです。」

 

 

あおい「宮藤さんの魔法を通しにくくする力ですか?それってなんなんです?」

 

 

宮藤「示現エネルギーじゃないかな。あかねちゃんは、変身してない状態でも身体の中に常に示現エネルギーが存在してるんだと思う。それがあかねちゃんの身体になんらかの異変を起こしてるみたいで私の魔法がうまく通らないんだ」

 

 

ペリーヌ「修行がたりませんわね宮藤さん」

 

 

宮藤「むっ・・・まあそれはこの際おいておいて。今、あかねちゃんの身体の中にある示現エネルギーの密度はこの間の比ではありません。左腕が動かないのは、そのエネルギーの密度が一番濃い部位だからだと思われます。」

 

 

わかば「でも、示現エネルギーがあかねの身体に残留しているからといってそれほど影響をきたすものなの?あかねはアレを自由自在に扱えると思っていたのだけれど。」

 

 

れい「・・・そういえば博士はいないの?」

 

 

健次郎「おるよここに」

 

 

れい「あ、小さすぎて気がつきませんでした。それで、どうなんですか?」

 

 

健次郎「我々は現在、示現エンジンを通し高次元の特殊空間から取り出したものをこの世界に適した形に変換して示現エネルギーとして使用しておる。パレットスーツという防護服を用い、示現エンジンで変換されたエネルギーだけを使って行動することでは本来こういった問題は起きん」

 

 

ここで健次郎は1つお茶を飲んで喉を潤そうとしたが、ぬいぐるみであることを思い出しそれを諦め再び話し出す

 

 

健次郎「しかしあかねが昨日やってみせたのは、自らを《エンジン》として特殊空間に無限に溢れるエネルギーを直接引き出して使用したのじゃ。そうじゃな、ビビッドエンジン・システムとでも呼んでおこうかの。これによって引き出されるのは示現エンジンから放出される変換済みの劣化物ではない純正のエネルギー。あんなものを使ってしまっては我々の存在自体に悪影響が出て当然じゃ」

 

 

わかば「しかし博士、それではあの時あかねと一体化していた私にも少なからず影響がおきるはずです」

 

 

健次郎「ふむ・・・わかばちゃんは先の戦闘においての負担はさほどないといってもいいじゃろう。あかねがビビッドエンジンを展開するなんらかのファクターとして君の力は不可欠ではあったが、あの時君の身体と精神は完全にあかねの一部として取り込まれておりビビッドエンジン・システム終了と同時に君の身体は戦闘前の状態に再構築されたのじゃ。問題があったかどうかを今日一日かけて調べておったが、特に異常は見つからなかった。なによりじゃ」

 

 

 

あかねが発動した新しい能力は健次郎の想定していたビビッドシステムの仕様から完全に逸脱したイレギュラーな出来事であった。健次郎にとって自らの管理下にある発明物が誰かを傷つけてしまうといった事態はとても辛いものだ

 

 

口を閉ざしてしまった健次郎に対しみなが口を開きにくくなってしまった空気を察知してか、ペリーヌが小さく咳払いをして落ち着いた声で新たな話を切り出した

 

 

ペリーヌ「では、あかねさんのことは専門家である博士にお任せするとして。当面の間の対ネウロイあるいはアローンでの戦闘についてですが、わたくし達も積極的に力をお貸しいたしますわ。健次郎博士のおかげでわたくしとリーネさん、宮藤さんは示現エネルギーに関するプロジェクトに組み込まれる形で正式にこの度の戦いに参加することができるようになりましたので」

 

 

あおい「正式ですか?」

 

 

健次郎「おお、そうじゃ。今回アローンとの戦闘を行っていくにあたり、ブルーアイランド管理局およびブルーアイランド防衛軍の下においてアローン対策本部が設置された。その対策本部に所属する形でつくられた対アローンをメインで行っていく《ビビッドチーム》が結成されたのじゃ!!!」

 

 

あおい「わあ!なにそれ聞いてません!」

 

 

健次郎「すまん。まあこのビビッドチームというのは、ようするに今後アローンとの戦闘を行っていく際他の機関から口出しされたりしないためと、国からきちんとしたバックアップを受けるためにつくった諸君らのチーム名じゃな。あかね達はもちろんそこにウィッチである3人も入り、今後はビビッドチームとして防衛軍や管理局と協力して事に当たることになる」

 

 

わかば「お待ちください博士」

 

 

健次郎「なんじゃねわかばくん」

 

 

わかば「そこに私も入れていただきたい」

 

 

あおい「えっ!?」

 

 

もも「ええっ!」

 

 

ペリーヌ「お待ちなさい、そもそも三枝さんあなた個人は変身できますの?」

 

 

リーネ「そ、そうですね。あれは健次郎博士が言うにはあかねちゃんに取り込まれて起きた現象のようなので、あおいちゃんとはまた違うんじゃ?」

 

 

わかば「・・・」

 

 

 

わかばは言葉ではなく、行動で示した。わかばが差し出した手のひらの中でうっすらと輝きをもつ緑色のオペレーションキーは彼女の戦いへの強い決意を表していた

 

 

健次郎「ふむ・・・。ワシが忠告することなど今更ありはせん。君はあかねとあおいちゃんと共に戦い、共にアローンを討ち果たした。その過程で心は決まり、すでにビビッドチームの一員なのじゃろう。じゃが一言だけ聞いおこう」

 

 

健次郎「この戦いがどれだけ激化したとしても、君はあかねと共に闘ってくれるな?」

 

 

わかば「無論です。三枝わかば、一色あかねの剣としてあらゆるものと戦い討ち果たすことを誓いましょう。二葉あおいさん。あなたにも約束します。私と一緒に闘ってください」

 

 

あおい「はい。よろしくお願いします」

 

 

わかばから向けられた視線にあおいは真っ直ぐ返した。わかばがあおいの覚悟に凄まじい敬意を抱いたように、あおいもまたこのわかばからあかねに対する思いのその本気度を感じ取っていたのだ。二人は共にあかねに心を動かされた者として、またアローンという強大な敵から自分達の生活を守るための心強い仲間としての絆が結ばれたことを感じながら硬く握手を行った。リーダーあかねは就寝中とはいえど、今ここにビビッドチームが結成されたのだ

 

 

 

 

 

れい「・・・私、お邪魔?」

 

 

宮藤「そんなことないよぉ!れいちゃんは私と一緒で記憶喪失仲間だし!」

 

 

れい「いやあなたはもう戻ったじゃない」

 

 

宮藤「まだ若干記憶がない部分もあるし・・・じゃなくて。私達、もうふつーに友達じゃない。あかねちゃんも、ペリーヌさん達も」

 

 

れい「ふふ、そうね。私もできる範囲で手伝っていけばいいものね」

 

 

チーム結成の件を知り、軽い打ち上げ気分の他のメンバーと少し間を空けて芳佳とれいは喋っていた。れいは特別な力などもたず、むしろ普通の少女として本来あるべき記憶すら失っている無力な少女であったが、だからと言って居心地の悪さを感じずにいられるのはひとえにあかねや宮藤達が良くしてくれるからだ

 

 

気を遣ってくれてはいるが、基本的には仲の良い友人として接してくれるあかね達の存在はれいの孤独や喪失感を癒していた。例え短い間だとしても、一色家は黒騎れいの居場所になっていた

 

 

 




更新に一年もかかっちゃってすいませぇんゆるして。でもそういう時もあるよね人生だし

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