ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第34話 あおい「私を焦がす真っ赤な太陽」

アローンの放つビームがあかねとあおいの視線の間を横切る。わかばの警告に我に返った2人は距離をとるように飛びのいてそれをかわした。

 

 

どちらもその開いた距離を詰めようとはしない。互いが自分のもつ今の感情を言葉にすることを恐れているようで、しかしそれがどういうものなのかをわからないでいる

 

 

ひまわり「ちょっ、どうしたの!?アローンの攻撃がヤバイ感じなんだけど!」

 

 

 

ネイキッドコライダーを飛ばして動きを止めてしまったあかねとあおいの前にシールドを張りながらひまわりが叫ぶ

 

 

 

わかば「・・・っ、あかね!なにをしてるの!」

 

 

あかね「!」

 

 

あかね程の少女が戦闘中に迷いを見せるなんてことが信じられなかった。一体どういつつもりなのか、怒りを隠そうともせず荒々しくその肩を掴んで無理やりこちらを向かせた

 

 

 

あかね「わ、わかばちゃん・・・」

 

 

 

いつも彼女の赤い目は活力で満ち満ちており、わかばはその奥で炎のように燃え上がっている力強さが心底好きだ。しかし、それが今明らかに揺らいでいる。ともすれば浮かんでくる涙を必死にこらえているようにも見えてしまう。ようするに今、あかねは傷ついていたのだ

 

 

 

わかばは己の行動を後悔した。あかねがこんな大事な場面で集中を切らす程の出来事を心配するのではなく怒りをぶつけてしまうのは明らかに愚かな行いであった。今あかねに必要なのはどう考えても手を差し伸べることだというのに

 

 

 

わかば「・・・落ち着いて。今は敵を倒さなくては。あおいは___そう、ドッキングをいきなり実戦で試すのは危険だもの。彼女が怯えるのも無理はない。私とやりましょう。あおいもそれでいいかしら?」

 

 

 

あおい「あ、うん!ご、ごめんねあかねちゃん!ちょっと私その・・・怖くて」

 

 

 

あかね「・・・うん、わたしもごめん!今は集中しないとだね!じゃあわかばちゃん、行こうか!」

 

 

 

うつむいて深呼吸をし、再び顔を上げた時にはあかねの表情には迷いなどないように見えた。わかばは一度は力強く引っ張った肩に今度は優しく手を添え、あかねの額に顔をぐっと近づける

 

 

あおい「・・・っ」

 

 

 

あおいはそんな2人から目を逸らした。唇を強く噛みしめ、ひまわりの負担を少しでも減らすため前へ飛び出してネイキッドインパクトを振り回してアローンのビームを力任せに撃ち返した

 

 

 

わかば「いくわよ・・・!」

 

 

 

あかねの前髪を指先でそっとかき上げる。くすぐったそうに落ち着かない様子のあかねの後頭部をもう片方の手で柔らかく固定して逃げられないようにすると、戦闘の興奮でうっすらと汗がにじむ小さな額にそっと口づけを添えた。

 

 

健次郎『ドッキングシークエンス開始!示現エンジンからのアクセスの遮断を確認。ビビッドエンジンの形成を確認。システムオールグリーン。正常値。』

 

 

 

パレットスーツに変身する時とは比べ物にならないほどの巨大なエネルギー球体が2人を中心に辺りに広がる。それを突き破り飛び出してきたのは、ビビッドグリーンその人である。ふてぶてしい顔つきは絶対たる勝利の自信の表れ。風になびく長い緑のポニーテールは陽の光を反射しキラキラと輝いている

 

 

 

 

ビビッドグリーン「溶け合う力が1つとなって、打ちあがるのは無敵の一振り。一刀両断お手の物、正義の一太刀浴びせます!お呼びとあらば即参上!」

 

 

宮藤『ヒュー!!見てよあの武器を!山だって斬っちゃう勢いだよ!』

 

 

ビビッドグリーン「こうなってしまっては手加減はできないわよ!!とわぁ!!」

 

 

 

力強い咆哮だけを残し彼女の姿は忽然と消える。いや、消えたようにしか見えない速度でアローンの目の前に飛翔したのだ。ビビッドブレードの刀身は既に解放されており、高められた示現エネルギーが高密度の光の刃をギラつかせ天高く掲げられている。迎撃のため発射されたビームは、ひまわりがビビッドコライダーを滑り込ませて防御した。

 

 

きっとひまわりが守ってくれる、と確信していたビビッドグリーンは攻撃のみに意識を集中させ、大上段に構えたその大太刀をただ真っすぐに振り下ろした

 

 

 

ビビッドグリーン「ビビッド流剣術奥義!!天空両断撃ッ!!!」

 

 

 

スパァン!と気持ちの良い音がブルーアイランド中に木霊した。真っ二つに割られた亀形アローンの身体がゆっくりと海へと落ちていく。最後の抵抗を試みるアローンはわずかに残った力を集約させビームを放とうと身体を赤く光らせたが、相手にとどめをさすまでが奥義である

 

 

 

ビビッドグリーン「ちょっと、コアは真ん中じゃないって訳!?一撃で決めさせてもらえないかしら!」

 

 

 

暴風雨のようにビビッドブレードが振るわれる。半分に割られた巨体がさらに半分に、そして更に半分にぶった斬られる。ほんの数秒で全身を数百に切り分けられたアローンは流石にコアを破壊されたようで、全身余すことなく白い欠片へと爆散して海に散った

 

 

 

 

ビビッドグリーン「見逸れたかアローン。私が空にある限り、貴様らに好き勝手はさせない!そう、この私こそ!ビビッ___」

 

 

 

 

シャーリー『ああもうロマンのないやつらだな!おーいあかね!こちらシャーリーだ!こっちは片付いたぞ!』

 

 

 

ビビッドグリーン「___うん。はい。こっちも片付きました。はい。余裕です。」

 

 

シャーリー『?よし、帰投しよう!』

 

 

 

ビビッドグリーン「・・・」

 

 

 

ひまわり「うん。かっこよかったよ2人とも。決めゼリフは今度ばちっと決めればいいじゃん。ね?」

 

 

 

___________________________________

 

 

 

 

季節柄かなり長い時間陽は沈まない。しかし戦いを終えて帰還した彼女らがストライカーを抜いで畳の上に腰を降ろした頃には、太陽の替わりに月が海を照らしていた。戦いを終えたビビッドチームはあかねの家に帰還し、各自が思い思いに戦いの疲れを癒していた

 

 

 

 

 

ルッキーニ「うじゅー、つかれたぁ!お腹すいたぁ!」

 

 

もも「ルッキーニちゃん、もうすぐ晩ごはんできるからね。」

 

 

ルッキーニ「ありがとーもも!今日なにー?」

 

 

もも「ふふ、カレーだよ!」

 

 

ルッキーニ「うきゃーやったー!」

 

 

 

年の近い2人はすっかり打ち解けたようで、ルッキーニとももは両手をつなぎ合って楽しそうに身体を揺らす

 

 

 

 

シャーリー「なんだもう仲良くなったのか?」

 

 

ルッキーニ「うん!さっきまで島で遊んでたんだ!それにお菓子いっぱいくれるし!」

 

 

エイラ「太るぞ」

 

 

ルッキーニ「まだ若いもん」

 

 

シャーリー「あやかりたいね」

 

 

健次郎「ワシからみりゃみんな若いよ。もも、ワシにもお茶くれんか?」

 

 

もも「はーい」

 

 

シャーリー「博士、飲み食いできるんですか?」

 

 

健次郎「香りを楽しむだけじゃよ。心がやすらぐ。」

 

 

 

今の健次郎はとても健康的だ。食事も睡眠もいらない。示現エネルギーで魂をつなぎとめているイレギュラーな存在である。しかし、食事や睡眠といったこれまで当然のように行ってきた快楽を取り上げられてしまうと、本来人間の精神力など簡単に削られてしまうものだ。特に彼のように重大な責任を負わされている立場のものにかかる負担は尋常ではない

 

 

 

それを彼は胆力と度胸で跳ねのけ、陽気な祖父としての立場を保っていた。それが培われるほどの長い人生経験を積んできたからできる芸当である

 

 

 

 

 

あかね「・・・」

 

 

 

しかし、少年少女とは悩むことが宿命の生き物である。波の打ち寄せる音も、心地よい潮風も、やわらかで神秘的な月明かりも。今の一色あかねの心を軽くすることはできないでいた。彼女は砂浜に膝を抱えて座りこみ、物言わず海の彼方を見つめている。その両隣に同じような恰好で座り込んでいるのは、ひまわりと芳佳。こちらの2人は死ぬほどきまずそうな顔でそわそわと落ち着かない様子である

 

 

 

明らかに落ち込んでいる彼女を励ましにきたはいいが、ひまわりはこういうシチュエーションをあまり体験してこなかった対人コミュニケーションにブランクのある引きこもりだし、芳佳は芳佳で現場の状況をよくわかっていないのでぶっちゃけ事態を全く呑み込めないまま、ただあかねが心配だからという理由だけでここにいた

 

_________________________________________

 

 

あおい「・・・」

 

 

 

二葉あおいは島のあぜ道を亀のような鈍足ペースで歩いてた。歩いている、というよりふらつく身体が地面に倒れないよう足を前に出しているだけだ。目的地の見えないその歩みは見ている側が思わず駆け寄って肩を支えてやりたくなるような不安定さがあり、そして彼女の両隣を歩くわかばとペリーヌも何度も倒れそうになるあおいに肩を貸していた

 

 

 

わかば「ねえあおい、とにかく一度座って・・・」

 

 

ペリーヌ「あおいさん、わたくしが言うことではないかもしれませんがこういう時こそご友人を頼られるべきですわよ?」

 

 

あおい「いいんです。ほっといてください」

 

 

 

突き放すようなあおいの言葉に、これではキリがないと判断したわかばは無理やりにでも彼女と話すため強引に切り出した

 

 

 

わかば「あかねの心に入ってわかったわ。あなたの様子がおかしいことに彼女は動揺して・・・」

 

 

あおい「当てつけですか!?」

 

 

わかば「あなたが一番あかねの心に寄り添えるのよ。」

 

 

あおい「実際はそうじゃないじゃないですか!わかばちゃんにもひまわりちゃんにも、励まされたくないんです!」

 

 

わかば「慰めではないわ。なんでそんなに自分に自信がないのか不思議よ」

 

 

あおい「どうやって自信をもてばいいんですか・・・。私はわかばちゃんにも、ひまわりちゃんにもなれないのに・・・」

 

 

わかば「それが強みだっていってるの!ええい、いい加減いじけるのやめなさい!」

 

 

あおい「放してください!」

 

 

わかば「暴れるんじゃない!鍵をとりだすんじゃない!そんなことするなら私だって」

 

 

 

ペリーヌ「はぁ・・・お2人とも落ち着いてください」バリバリバリ

 

 

 

もみ合う2人がオペレーションキーを取り出すのを見て致し方ないと判断したペリーヌが雷を落とす。比喩ではなく、実際に

 

 

「「あばばばっば!?」」

 

 

適度に加減された魔法の稲妻が2人の身体に強烈な刺激を与え、不意を突かれた2人はもみ合ったままの形で揃って田んぼにひっくり返った

 

 

 

 




いいよ!今月の投稿ペースいいよ!キレてるよ!週刊連載いけるよ!!
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