ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

4 / 95
今回は書き足しはありません。これで1話です。

キャラの性格が元ネタとまるで同じというわけではないです。そこんとこ許してください。




第3話 あかね「親友と怪物が降ってくる日」

見えてきた家は無残なものだ。それでも跡形もなく消し飛んでいなかっただけ随分ましだとあかねは思った。少なくとも家の手前の被害は玄関が広くなったのとあちこちこげたり少し崩れたりしている程度だ。だがなんだろうこの黒い煙は。どこからあがっている?答えは裏手の方だ。家の裏手の健二郎がいつもこもっている秘密の研究室だ。

 

 

あかね「おじいちゃんッッ!!!」ダッ

 

 

妹の手を引いて駆け出した。玄関で靴は脱がないほうがいいだろう。家の中はガラスの破片がチラチラ見えるし怪我をしては大変だ。あとで掃除するから、と小さな声で誰ともなしに謝りながらドタドタ廊下を走って縁側へ

 

 

 

トイレの前の壁は崩れ落ちていた。だが問題はその奥だ。祖父が誰にも侵入されないよう作った研究室の自動扉はそう簡単には開けられない。石膏の壁くらいならあかねでも破れるがその扉は祖父しか開けられない。しかし扉はあかねを待っていたようにスッと開いた。

 

 

 

あかね「おじいちゃんが開けたんだ!きっとそうだよ!」

 

 

散らばる機械のなるべくとがってないところを選んで中に踏みいる。ここは昔はとても暗かった気がする。液晶の光ぐらいしかまともな光源はなかった。今は天井がぶっとんでいるので見はらしこそいいが黒い煙とガレキで祖父は見当たらない

 

 

健次郎「ここじゃあかね!ここにおる!」

 

 

煙を手で払い体をひきずるように健次郎が姿を見せたが白衣はボロボロ。コゲと血でぐちゃぐちゃに汚れている。

 

 

もも「おじいじゃん!どこか怪我したの!?」

 

   

あかね「大丈夫おじゃいじゃゃん!?」

 

 

健次郎「大丈夫・・・じゃ!それはもういい、今はワシの話をしっかり・・・聞くんじゃ。いいな?」

 

 

 

思わずかんでしまうほど慌てていたももとあかねは心配する言葉を飲み込んで、口を閉ざす。健次郎は頭からながれる血をぬぐってあかねに手招きすると、なにかを握らせた

 

 

あかね「え、これ鍵?カッコイー!なんの鍵?」

 

 

健次郎「しっかり・・・持っておけ。これは示現の扉の鍵じゃ・・・」

 

 

あかね「????」

 

 

家の鍵より一回り大きな鍵だ。持ち手には赤い基盤にパソコンの起動スイッチのようなマークがついている。それに少し厚みがあって先っちょもあんましギザっていない。鍵を模したなにかの発明であることはすぐ合点がいったがなんに使うかは理解できない。

 

 

健次郎「お前の心の鍵じゃ・・・。いいか、よく聞くn」ゴボ

 

 

もも「うわー!おじいちゃんが!!!」

 

 

健次郎「こりゃもう・・・・だめじゃな・・・ちと待っておれ。あー・・・もも、そこの落ちてるぬいぐるみをとってくれんか。あかねはこの取っ手をつかんで・・・そうじゃ、時計回しにまわして引っ張りあげてくれ。違うそっちは反時計じゃ。そうそう」

 

 

ももは自分の足元に落ちている妙に小奇麗なかわうそをモチーフにした二足歩行のぬいぐるみを拾うと、祖父に手渡した。あかねは祖父がはがした10センチ四方の床板の下に隠されていたもの、駐車場にある地面に埋め込めるタイプのポールのようなものがあったのだが、その取っ手をつかみ90度ひねり一気に引き上げた。1mほど持ち上がり、祖父はその円柱のカバーを外して二本のチューブをひきずりだし一本を人形の口、もう一本を自分の口でくわえた

 

 

健次郎「離れておれ!スイッチオン!」

 

 

バリバリバリッ!っとマンガのような青い電撃が走り祖父の体が一瞬透けて見えた。思わず目をつぶりそうになる二人の前で3秒程シビレたあと、機械が白い煙をたてたと同時に停止した。健二郎は白目をむいてうつぶせにバタンと倒れたのであかねとももは慌てて駆け寄り、静電気を警戒するような慎重さでちょんちょんとその身体をつっつき意識があるのか確かめたがどうやらだめだ。死んでいる。

 

 

あかね「そ、そんな・・・自ら命を絶つなんて・・・ダメだよおじいちゃあああああああん!!!!」ユサユサ

 

 

???「おいおいあかね!!!!その身体、大事にしとくれよ!あとでまた戻るんじゃからな!!!!」ドドン

 

 

もも「こ、この声は!!!」

 

 

あかね達が顔を上げもう一本のチューブの先を見ると、それは口にくわえたコードをペっと吐き出し元気に立ち上がった。健次郎がももに拾わせた、二足歩行のかわうそ人形はキリリとした顔であかねとももにぐっと親指を立ててみせた

 

 

健次郎「示現エネルギーは<魂>を制する!大成功じゃな。かーっ!こりゃ天才じゃわ。」

 

 

跳ねる。腕を回す。前屈をする。見事に動いているではないか。歳とともに少しずつ身体を動かすこともしんどくなってきた健二郎だったがこのぬいぐるみは新品に近いものだったので若返ったようなすがすがしさだ。この研究成果を記録に残したいが、今はあかねに話さなくてはならないことがあるのだ。

 

 

健次郎「その鍵についてじゃがな、あかね。説明は―――いや、ここも危ない。すぐに行動を開始せねばな。」

 

 

もも「そ、そうだよ。急いで避難所に」

 

 

健次郎「今からあそこにむかうのは危険じゃ。もも、前説明したと思うがこの家の地下にシェルターがある。お前はそこに入っていなさい。」

 

 

もも「解った!でもおねえちゃんは?一緒に逃げないと」

 

 

あかね「まあまあもも。いいから。大丈夫。ね?」

 

 

あかねはなーんとなく察した。健次郎が妹にだけ避難しろと言ったのは自分にはこれからやる事があるのだと。それがなんなのかは知る由は無いが、このタイミングでこんな不思議なものを受けとったのはきっと不思議な訳があるのだ。祖父が自分の身体を捨ててまで、しなければならないきっと大事な話があるのだろう。

 

 

あかね「もも。地下でゆっくり休んどいて。晩御飯は・・・今日は洋風がいいな。トマトソース系。その献立考えながらゆっくりしといて。ね?」

 

 

もも「解った。信じてまってる。すぐ帰ってきてね。門限は日が落ちる前だから」ギュッ

 

 

あかね「すぐだよ。ちょちょいのちょい。」ナデナデ

 

 

家の裏手の井戸に模した秘密の入り口からももは地下のシェルターへ降りていった。あそこはとても快適な場所だし絶対安全だ。ももの心配はしなくていいだろう。次にすべきは自分の心配ともう1つ。示現エンジンのすぐそばにある空港を目指してやってくるあかねの友人のことだ

 

 

あかね「あおいちゃんだッ!行こうおじいちゃん!」

 

 

健次郎「話が早いな!行くぞ孫よ!」

 

 

小さく可愛くなった祖父を前かごに入れてあかねはワンコを起動させる。行き先は示現エンジンそばの飛行場。そこにあおいは自家用機で飛んで帰ってくるのだ。

 

 

あかね「うわ!なにあの黒いの!」

 

 

島を飛び出し海の上を滑るあかねは海のかなたに変なものを見つけギョっとした。それは4本の脚で中心にある大きな黒い球体を支えるようにしながら時折赤い光を撒き散らしている。その周囲には小さな黒い点と小さな爆発。あかねにはわからなかったがただいま交戦中のブルーアイランド連合軍の戦闘機がその正体。

 

 

健次郎「あれはアローン。この世界の敵じゃ。示現エンジンを狙っておる。やはり防衛軍では歯がたたんらしいの。」

 

 

あかね「???????」

 

 

敵。聞きなれない単語だ。マンガとかでしか目にしない文字だし、リアルで感じたのははじめてたが、海のむこうの黒いものを見ていると肌がチクチクする。胃が握られたような不快感。

 

 

健次郎「あかね!」

 

 

あかね「なにー?」

 

 

健次郎「すまん。これからお前が巻き込まれるのは、一色家の呪いじゃ。宿命じゃ。ワシらがやらねばならんことで、ワシらにしかできんことじゃ。ワシにはワシの、お前にはお前にしかできんことがある。」

 

 

あかね「えーっと・・・ああーうん。」

 

 

健次郎「お前は、今の生活が好きか?」

 

 

あかね「大好き!」

 

 

健次郎「ワシもじゃ。・・・今の平和は示現エンジンがもたらしたものじゃ。いくつものものを犠牲にしたが、それでもワシはこの世界を護りたいと思っている。命をかけてな。ワシはその覚悟をお前にも強制しようとしている。

 

 

その鍵は、あのアローンを撃破する可能性のあるためのものじゃ、それを使えるのはあかね。お前だけなんじゃよ。だからこそ、お前には謝罪と、その上で頼む!」

 

 

健次郎「ワシとともに!戦ってくれ!あかねよ!」

 

 

あかね「任せて!」

 

 

健次郎「うーむノータイムで了承とはさすが我が孫!ほんとにワシの言っていることの意味が解ったうえでの発言かどうかはわからんが、どうにせよお前が戦わなければ示現エンジンを吹き飛ばされてこの世はお終いじゃからな。まあ戦うしかない。」

 

 

あかねがわかったことは、あの黒いのはアローンというものであること。狙いは示現エンジンであること。あれを倒せるのは私だけであること。これだけ解ればまったくもって命をかけるのに十分である。

 

あかね「今の生活だーいすき!これからあおいちゃんも帰ってくる!ももだって待ってる!お母さんもそのうち帰ってくる!ぜっったいにッ!やらせない!!やらせなあああああああああああい!!!」

 

 

あかねは海の向こうに向かって力いっぱい叫ぶ。潮風でだいぶ抑えられたが、あかねの本気の叫び声で健次郎の身体が震えた。

 

____________________________

 

 

 

あかねと健次郎が示現エンジンへ向けて猛進していた時、同じく示現エンジンそばの飛行場へむけて、一機のヘリコプターが海上を飛行していた。ヘリ、といっても人の移動用に作られているものでその内部はゆったりできる空間になっている。そこに備え付けられた横長のソファーに一人の少女が寝そべっていた。長い青い髪は大切に手入れされていることが一目で解った。安いシャンプーなど一度も使ったことはないのだろう

 

 

 

紫外線など知らない白い肌は病的なほど真っ白だが、実際彼女は病弱であった。気品高く資産家の令嬢である彼女は先日ようやく退院となり、少しでも早くブルーアイランドへ帰りたかった彼女のために手配されたこの輸送機で飛び立ちいくらか時間がたった。今、令嬢はひどくゆれる機内でソファーにしがみつき、片方の手にはもしもの備えのエチケット袋を握り締めている

 

 

あおい「まだ着かないんですか!?うっ・・・気持ち悪い・・・」

 

 

パイロット1「お嬢さんもう少し!もう少しですから!」

 

 

パイロット2「えーいなんなんだあの黒いのは!直撃したら一発だぞ!」

 

 

パイロット達はもはや安全なフライトを諦めて逃げる事に全速力だ。先ほどブルーアイランド管理局から連絡があったので異常事態が発生したことは知っていた。だがそれは航路から数百キロ離れた場所での出来事であり、自分達には関係のないこと。パイロット達はそれゆえたかをくくっていた訳であったが、連絡を受けて10分程たった後もう一度連絡が入った。今度はブルーアイランド連合軍からだ。この会話はそのときのものだ。

 

 

ブラボー1『こちらブラボー1。輸送機、聞こえるか?こちらの誘導に従い、示現エンジン方面のブルーアイランド防衛軍基地のヘリポートへ緊急着陸してくれ。』

 

 

パイロット1「了解。」

 

 

パイロット2「緊急事態?なんだ?連合軍のお偉いさんがお嬢さんをパーティーにご招待かな?」

 

 

パイロット1「HAHAHA!だと俺達もおいしい料理が食べられるな!」

 

 

「「HAHAHA!」」

 

 

〈カッ!!〉

 

 

〈ザバアアアアアアン!!!〉

 

 

 

真っ赤な光が二人の視界を塗りつぶす。するとヘリの真下の海から空高く水柱がヘリの真横まで立ち上ったのだ。二人は顔を見合わせると、連合軍機から転送されたデータをもとに最高速度での飛行を開始。そして現在にいたる。

 

 

パイロット1「お嬢様!ほーら示現エンジンが見えて参りました!もうじきです!」

 

 

ブラボー2『危ない!回避しろ輸送機!』

 

 

パイロット2「?」

 

 

赤い光がまた視界を遮る。ヘリの機動力ではとても回避できない危険な直撃コースであると判断した戦闘機隊の一番近くにいた戦闘機がその間に割って入った。緊急脱出装置を作動させながら機体をビームの先端に叩きつける身を張った護衛によりヘリへの直撃は避けられたが、その爆風と衝撃波は飛行に甚大な被害をもたらした。

 

パイロット1「うぉぉぉぉーーッ!ダメだ!操作不能!操作不能!」

 

 

パイロット2「お嬢様!つかまってください!もうだめです!」

 

 

あおい「これはもう窓から身投げしたほうが安全では きゃああああああ!」

 

 

 

________________________________

 

 

 

「とっとととと・・・あっぶない。」トッ

 

 

盾になった戦闘機のパイロットはパラシュートを開き海上に着水するつもりだったが爆風を受けて少し遠いところまで流され幸運にもそばの埋立地に降りることができた。パラシュートを取り外しヒビが入ったヘルメットを地面に放り投げてその場にドサッと身を投げ出した。

 

 

「流石に疲れたー・・・基地まで歩いて帰って来いって流石にアホでしょ。英雄よ?私。」

 

 

その兵士は女性だった。ショートカットの髪は汗でほほにへばりついている。疲労もあって立ち上がれないので、彼女はそこから海の向こうを見やった。黒い巨体は赤い光を放ちながらこちらへの侵攻を辞めない。足止めに向かった軍艦達のことが目に入らないようにゆっくり確実に脚を進め、ただ進行方向の邪魔をするものを的確に破壊するその姿は恐怖だ。ここはいくらなんでも射程外だと思うが女性はゴクリとつばを飲んで少し後ろに下がるためよろよろ立ち上がった

 

 

____________________

 

 

 

あかね「まさかとは思うけれど、まさかとは思うけれどあの煙吐いてる飛行機。あおいちゃんのじゃないよね?」

 

 

あかねはワンコにまたがり、手で帽子のツバのような形をとって遠くを身ながら軽い調子で祖父に尋ねた。祖父は小さな身体で通信機のようなものをなんとかいじりながら軽く応答した。

 

 

健次郎「あれはBI―334輸送機じゃな。ブルーアイランド管理局が保有してるこの国に数十機しかない結構貴重なやつでの。快適な人員輸送能力ゆえ金持ちやらVIPやらを運ぶ時のみ空を飛ぶ。高確率であおいちゃんが乗っとるじゃろうな」

 

 

あかね「何冷静に言っっちゃってんのぉおおおおおおおお!!!」

 

 

あかねは頭を抱えた。煙を吹いているその輸送機はゆっくり高度を下げながらこちらへ向かってくる。かなり遠目からの判断ではあるがあかねはあれが示現エンジンに激突するであろう、と結論を出した

 

 

健次郎「助けに行きたいのはワシも同じじゃが、耐えるのじゃあかね。今示現エンジンとシステム間のエネルギーを調整しておる。これが終わるまでここからは離れられんのじゃ。」

 

 

あかね達はもう示現エンジンの真下に到着していた。あかねはてっきりアローンのほうへ行くのかと思っていたが健次郎の頼みで示現エンジンへとやってきていた。エンジンといってもその主要機能は周りを幾重もの建物で覆われており、周囲の管理施設もあわせて示現エンジン、とまわりから呼称される。のためあかねは一階部分の売店で買ったアイスの棒をガジガジしながら頭を巡らせた

 

 

あかね「どうしよう・・・ワンコを高高度まで飛ばしてぶつかる前に中の人達を拾って・・・でもワンコをあそこまであげるのには相当時間かかるし・・・そうだ!おじいちゃん、示現エンジンの屋上にいけないかな!」

 

 

健次郎「・・・ふむ!確かにワンコは高度をあげるのは苦手じゃが一定の高度を走るのは得意。高いところから飛び出すということじゃな!流石ワシの孫じゃ!その作戦に操縦者が高所恐怖症であるということの対策は含まれとらんのじゃろうが、任せておけ!ここの施設の管理システムはワシがつくったからのふふふ」

 

 

さきほどまでいじっていたのとはまた別の通信機をどこからか取り出しピピピっといじる

 

 

健次郎「あかね!そこのゲートがあと7秒で開く!急ぐぞ!」

 

 

あかね「うんッ!」

 

 

ワンコを走らせるとぴったり7秒でゲートがあかねを迎えられた。中は車が二台入るレベルの広さで、あかねが中央で停車させるとゲートがとじてちょっとした浮遊感と機械の起動音が部屋の中に充満する。少しほこりくさい

 

 

あかねは緊張で汗ばむ手を服でぬぐうとハンドルを握りなおしワンコの方向転換を行いながら気合を入れて前をにらみつける。ゲートがせりあがり下から外の光が入った瞬間アクセルをひねる。頭をさげてギリギリのところくぐって最速で屋上へ飛び出した。

 

 

あかね「颯爽登場一色あかねッ!」

 

 

健次郎「まさに白騎士じゃな!」

 

 

広い屋上に飛び出し、いざ大空の旅へと意気込み高らかに叫んだあかね達めがけて空の向こうから炎を纏った輸送機がこちらへ突っ込んできた。

 

 

あかね「うわああああああああああああああああ」

 

健次郎「うおおおおおおおおおおおおおおお」                                    

 

ブレーキをぶっ壊すほどの勢いで踏みしめる。こちらから迎えに行くつもりが向こうからやってきてくれるとはさすがはあおいちゃん、気の利くお嬢様だ

 

 

あかね「なんて考えてる場合じゃない・・・あわわわ・・・」

 

 

健次郎「あわをくっとる場合かァー!そんなことより泡をかけるぞ!あかね、ワンコには消化機能がついておることは説明してあったはずじゃ!え、知らん?ああそうか。ならそこのパネルの・・・そう、右下の青いやつ長押し。よし行け!」

 

 

〈ブシャァーーーーーーー!!!〉

 

 

健次郎特製のなにかがワンコの前面から噴出す。液体かなにかかとあかねは思っていたが、それは健二郎の言うとおり泡。それはどんどん大きく膨らんでいって1つの大きなシャボン玉となって輸送機を包み込んでいく

 

 

その泡は数秒すると急激にしぼんでいき、泡の面に触れた炎は暴れることもできずやがて沈火した。泡がパチンと弾けたのを合図にあかねはワンコとともに輸送機めがけ突っ込んだ。機体の壁はすでに半分崩れ落ちておりあかねはワンコの頑丈さをいかしてぶち破った。 中に人がいるのになんとも荒々しい白騎士である

 

あかね「あおいちゃああああああああん!!!!!」

 

 

あおい「うわびっくりした!あ、あかねちゃん!どうしてここに!」

 

 

あかね「うわーあおいちゃん久しぶり!元気そうでよか・・・ってわけでもないか。大変だったね。助けにきたよ。」

 

 

あおい「これはまた入院かもと思ったけどあかねちゃんが来てくてなんとかなったよ。ありがとうね。」ケホケホ

 

 

あかね「いやぁ、礼には及びませんとも!はっはっは!」

 

 

力なく倒れるあおいの膝裏と背中に手を回して軽々と抱き上げ、彼女のやさしい笑顔を見てあおいは心から安堵の息を吐いた。

 

 

〈ガガガッ〉

 

 

あかね「うんん?なんの音だろ?」

 

 

あおい「さっきの怪獣かな?こ、こわ・・・」

 

 

あかね「ううん、あおいちゃん、あれはアローンっていうんだよ!」

 

 

あおい「へええ!あかねちゃんは物知りだね!さっすが!」

 

 

あかね「この一色あかねに知らないものはない・・・と、思っていただこう」ドヤァ

 

 

〈メキメキッ グラッ〉

 

 

あおい「か、かたむいてる!?なに!?」

 

 

あかね「わかんない。おじいちゃんわかる?」

 

 

健次郎「機体の先端部は乗り上げていたが後部は宙に浮く形になっとったのか。こりゃ参ったわい。」

 

 

あおい(な、なんて余裕!さすがはあかねちゃんとそのおじいさん・・・!)

 

 

あかね「ワンコに乗って脱出すればいいね。余裕だよ。あおいちゃん立てる?後ろ乗ってね。」

 

 

あおいを地面に立たせるとあかねはワンコにまたがり後部座席をあおいの方に向ける

 

 

あおい「あっ―――」

 

 

あかね「ん?どうしたの?」

 

 

くるりと首だけ後ろを向いたあかねの目にこちらへ必死に手を差し出すあおいが向こう側へ倒れていく姿が一瞬だけ映った。あかねはその手をつかむことなどできない。息を呑む暇もなく親友は残骸の一部とともに重力にひかれ視界から消え去った

 

 

あかね「あおいちゃんッッ!!!」

 

 

祖父がなにか叫んでいるが知ったことか。今のあかねの耳には遠ざかっていくあおいの悲鳴以外なんにも聞こえやしないのだ。ワンコを力いっぱい反転させると大空へ飛び出した。ワンコの水平飛行モードをオフにし、身体がすさまじい浮遊感に襲われ体中に鳥肌が立つ。ごうごうと耳元で空気の音がなり、内蔵がギュッと締め上げられて息ができなくなる 怖さがこみ上げ次は音が聞こえなくなった。手足先端の感覚がなくなり、ワンコが操れているのかもあおいとどれだけの距離があるのかもわからなくなり視界がぐるぐると回転し始め――

 

 

 

 

_______________________________

 

 

 

あかねは高所恐怖症である。ももが言っていたように高いところに登ることは出来るのだが、そこから『降りる』ことがだめなパターンだ。それは、あかねに『落ちる』ことを連想させ恐怖で身体がこわばってしまう

 

 

それは昔は昔、7年前の出来事だ。当時示現エンジンの研究開発に当たっていた一色健次郎は、同じく研究者である自分の娘といつものように調整に当たっていた。あと一歩のところで研究に行き詰まりを感じていた健二郎は異常なまでに焦っていた。成功すれば資源問題は見事解決!となるその研究は世間には秘密裏ながらも政府の支援と期待を受けていた

 

 

 

背負っているものの大きさと健次郎の研究者としての意地がその事故を起こした、と健二郎自身はいつもそう思っている。真の原因は未だはっきりしていない。ただ、未完成ながらも膨大なエネルギーを有していた示現エンジンの暴走が奪っていったものは多かった。異変に気づいた健次郎からすぐさま避難が命じられたが当時研究に関わっていた数人の研究者が大怪我を負い、そして最深部にいた健次郎と、あかねの母ましろ。そしてこの日に限って見学のためその場に居合わせたあかねは爆発寸前の示現エンジン真上にいた。

 

 

 

あかねはこの時のことをほとんど覚えていない。だがいまだ脳裏に焼きついている1シーン。足場が崩れ襲い来る浮遊感。真下に広がる炎と、火花と、目がくらむような閃光。そんな落ちていく自分を母は空中で見事に抱きかかえ、片方の手で鉄骨につかまり、耳元で苦しげなうめき声をあげていた。頭から血を流しながらも大丈夫、大丈夫、お母さん腕相撲島で一番強いから大丈夫、と頼もしいセリフをずっと耳元でささやいてくれていた。でも明らかに体力の削られている母の身体は少しづつずり落ちていく。一緒にあかねも落ちていく。健次郎の絶叫を聞きながら、あかねは閃光の中に落ちていった。

 

 

______________________________

 

 

 

あかね(あの時は、落ちていく側だった。)

 

 

だんだん狭くなっていく視界の中心にはあおいの顔。助けを求める大事な人の顔。死の恐怖にひきつりながら、でも諦めていない、信じて待ってる人の顔だ。母も自分のあんな顔を見て危険を省みず飛び出したのだろう。あの手を掴めれば死んでもいい、掴まなきゃ死んじまうような気持ちで、掴んだあとの自分のことなんて考えの外だ

 

 

あかね(今度は、助ける番なんだっ!!!)

 

 

あかね「ぉぉぉぉおおおおおおおおお!!うなれワンコッ!!ど根性!」

 

 

自分の恐怖を克服したのではない。ただ、助けたいという気持ちの強さが恐怖を押さえつけあかねの意識を正常に戻したのだ。

 

 

健次郎「おう、びっくりしたわい!だが急げあかね!お前はあおいちゃんを拾う事に集中するんじゃ、水平モードへの移行はワシがやる。いいな。」

 

 

あかね「うん!」

 

 

あかねは無意識にブレーキにかかりそうになっていた指を戻してアクエルを握る。落下ではなく飛行状態となったワンコはあおいに楽々おいつき、あかねはあおいの手をしっかり握り締めた

 

 

健次郎はそれを見てワンコの姿勢を地面と水平にし徐々に速度を落としながら地面にやさしく着陸できるようあっという間に調整してみせた。フワリ、と地面の真上数センチで停止した後地面にドカッと落っこちた。あかねの手元のパネルは今にも消えるぞとばかりに点滅しながら危険の二文字を浮かばせたあと真っ暗になった。

 

 

健次郎「無茶させすぎたのう。ここまでの激しい運転は想定してつくっとらんからな。まあすぐ治るがの。それより二人とも怪我はないのか?」

 

 

あおい「・・・」

 

 

あかね「あおいちゃん大丈夫!?なんだか奇妙なものを目の前にした人みたいな顔してるけど、怪我したの?」

 

 

あおい「あかねちゃん、人形がしゃべってるよ!怪我は無いけど、びっくりだね!」

 

 

あかね「ああ、うん。ケガないのよかったけどこれだけの事態でまっさきに関心が向くのが喋る人形ってとこに驚きだね。あおいちゃん身体もハートも頑丈になったんだね。」

 

 

あかねの中のあおいちゃんはおしとやかで内気な性格であった気がしたが、少し興奮しているのか動転しすぎているのかプラスの方向に感情が振り切れているようで随分元気だ。興奮しきっているのはあかねもおんなじだが。手足の先の感覚は戻ってきはしたがまだじんじんする

 

 

いくつもの山を乗り越えて動悸息切れが激しく正直地面に寝転がって休みたいが地上に降りたからと安全地帯ではない。ここは示現エンジン真正面、人口の海岸とテトラポッドの向こうには青い海と黒い敵。今はこちらにビームを飛ばす余裕はないのか先に邪魔者を全部片付けたいだけなのかアローンは沖で空からミサイルを撃ってくる戦闘機と弾幕をはりながら迫り来る艦隊を相手に暴れているが、いつまたこっちに攻撃が飛んでくるかと思うと立ち止まっている暇はない

 

 

あおい「でもワンコは壊れちゃったし・・・どうしよう。まだパイロットさん達も屋上に残ってるのに。」

 

 

健次郎「大丈夫じゃ。管理局の連中に回収を頼んでおいた。すぐ駆けつけるじゃろうて。しかし、たとえここから逃げだせたとしてもアローンを止められなければこの世はお終いじゃ。」

 

 

あかねが休めない理由がもう1つ。仕事はまだ残っている。

 

 

あかね「アローンを!」健次郎「ぶったおすぞ!」

 

 

あかねはポケットにしまっておいた鍵を取り出すと空にかざす。あれだけ激しく動いたにも関わらずちゃんと入っていた。まああかねはその存在をずっとポケットのあたりに感じていたので落とした気はしなかったが。最初はただの不思議な鍵だったがそれは時間が経つにつれて鍵の存在は自分の身体の一部のように敏感に感じられるようになってきた。ずっと大切にしていたぬいぐるみのような、昔からのなじみの一品であるようなしっくりくる感じが手の中でこそばゆい。

 

 

あおい「あかねちゃん!?え、戦うの!?ダメだよそんなの、ここは軍隊の人に任せて」

 

 

あかね「あおいちゃん。」

 

 

――こちらを振り返って。赤い目が静かに燃えながら私の名前を呼ぶ。それだけでもう身体は動かないし言葉は引っ込んでしまう。あかねちゃんが私を何かに誘うとき、私が辞めとこうよ、というと必ずこれだ。彼女に裏はない。ただ、自分がいかに真剣なのかをおふざけ抜きで伝えたいだけなのだが、それで私はすっかり参ってしまう

 

 

 

逆らえたことは一度だってない。大人にだって説得できないだろう。もう仕方ないのだ。ビビッときてしまったのだ。こういう時のあかねちゃんが間違ったことは一度もないというのはももちゃんとの共通の見解。それにしたって今度はとめないといけない。行って欲しくない。一緒にこのまま逃げ出せば、きっと誰かがなんとかしてくれる。子供の私達がしなくちゃいけないことじゃないはずなんだ。あかねちゃんが戦わなきゃいけない理由なんて、ないはずなんだ。

 

 

あかね「待っててね。」

 

 

あおい「うぅん・・・。」

 

 

うなずいてしまった。だめだ、笑顔で言わないで。その笑顔を否定できる人間はこの世にいないだろうってくらいの笑顔だったし、もう事情を知らない私が止められる話じゃないんだから仕方ない。うん、ここで待ってよう。あかねちゃんが待っててって言ってるんだし、救助の人が来たって動かないくらいの覚悟で待ってよう。そしたらあかねちゃんがなんとかしてくれる――

 

 

 

二葉あおいは故障したワンコの座席にまた座りなおした。ここは危ないが、どうせ逃げても示現エンジンが吹き飛べばここら一体は灰になるだろうしあおいはあかねの見える位置にいようと考えた。

 

 

健次郎「よし、あかね。最終調整が終わるまでしっかりと・・・いや、軽くでいいから気を楽にして聞くんじゃ。防衛軍がとめられないところを見て解るようにアローンに普通の攻撃は効かん。大火力を当てれば足止めにはなるじゃろうが、あれに傷をつけることはできん。絶対にじゃ。」

 

 

あかねはじっと待ってるのもあれなのでストレッチをしながら祖父の話に耳を傾けていた。防衛軍は今もアローンと戦っているが今焦ることはなにも意味が無い。時がくるまでしっかり落ち着いていかないといけないことをあかねは解っていた。

 

 

健次郎「アローンは示現エンジンを、正確には示現力を狙ってくる。あれは示現力に深く関係した生物なのじゃ。あれは意思をもっとるから、生物じゃろうな。アローンは示現力で出来ていると言うとわかるか?わからんか。アローンは示現力以外のエネルギーを受け付けない。しかし、示現エネルギーを持ったものならそこまでの大出力がなくとも傷をつけることができる。アローンの身体のどこかにある心臓、アローンの核を破壊すればあの身体はこの世界から消滅する!という研究結果がでとる。」

 

 

健次郎はなにも知らないあかねが解るように説明していたためあおいにもなんとなく伝わっていた。敵の名前と、そのヤバさは伝わった。

 

 

健次郎「核を破壊するのには大した出力はいらん。もしかしたら通常兵器でも破壊できるかもしれんくらい、もろい。問題は、弱点は丸出しではないということじゃな。あの装甲をえぐってえぐって核を見つけ、一撃を叩き込むことがどれだけの難易度になるか・・・」

 

 

あかね「オッケー、やることはわかったから大丈夫だよ。どうするべきかも、なんとなくわかる。」

 

 

手で握り締めていると、どんどん熱い力が身体に流れ込んでくる。すでに鍵は身体の一部であるかのように、あかねはそれを理解できていた。

 

 

 

健次郎(これは・・・あかねの心に・・・)

 

 

 

健次郎「・・・いいや好都合じゃ!調整終了、いけるぞあかね!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

健次郎「変身じゃ!!!!!!!!」

 

 

 

 




次回、戦闘開始。がんばれあかね!

すぐ書きます。
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。