ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第44話 あおい「太陽の沈む刻」

「恐ろしいものです。相応しくないものが示現力を手にすると、ああも醜くなれるものだとは」

 

 

れい「・・・」

 

 

黒騎れいは何も言わない。無視しているというのではなく、口をヘの字に結んでいる辺りから口を利くのも嫌だといった気持ちが読み取れる

 

 

その時遠くの空では最後のアローンとネウロイがほぼ同時に撃破され、事態が収束しつつあった

 

 

 

全ての侵略者が居なくなると同時にドッキングは解除される。反動で倒れこみそうになるあおいをあかねが支え、2人が何かを話し合っているのが遠目でも解った

 

 

 

 

「まさか忘れているとは思いたくありませんので・・・問いますが。これだけの数を揃えたのです。何故動かないのですか?私が与えた〈矢〉はまだ数本残っているはずです。あなたがキチンと保管していればですが」

 

 

れい「3本よ。試練の矢はあと3本残っている」

 

 

「効果的に使用できる場を用意したと自負しています」

 

 

れい「あなたご自慢のおもちゃに使っても、本丸を落とすには至らない。それはもう明らかになっているわ。例え2、3体同時に変化させたとしてもね。アローンに取り付けられた首輪を外すのがあなたイチオシの使い方らしいけど、やり方を変えるしかないわ」

 

 

「では拝見いたしましょう」

 

 

れい「貴方も協力して。私が合図を出したら、ゲートをいくつか上空に開いて」

 

 

「手元にある駒はあなたを除いて現時点で全て投入済みなのですが?」

 

 

れい「ゲートを開いて。それ以上の事は注文していないでしょう?」

 

 

 

れいは首元に手を添える。そこに刻まれたアザこそ、彼女に与えられた〈矢〉が隠された場所。いつもはすんなりと引き出せるそれを具現させようとしているのだがどうにも様子がおかしい

 

 

普段は澄ましている切れ長の目を今は強く見開き、歯を力いっぱい食いしばっている。額から汗が吹き出し、身体は小刻みに震えだす。歯の間から漏れ出す息が苦しげな甲高い音を立てながら、彼女はどうにか矢を出現させた

 

 

「!」

 

 

3つ全てを。1つだけでも存在しているだけで周囲の時空を歪める存在感を放つ危険物が、3つ彼女の手に握られている今辺りに与える影響はすさまじいものになっていた。当然、監視の目にも止まる

 

 

 

健次郎『気をつけろ!大きなエネルギー反応!これまで見たことのない波長じゃ!』

 

 

あかね「なんなの!?」

 

 

咄嗟の事態。みんなが自分の身を守ろうとした。

 

 

れい「今!」

 

 

鋭く飛んだ合図に合わせてカラスは黒い羽を広げた。その動きと同時に上空にいくつかのディメンションゲートが発生する。ビビッドチームは新たな敵の襲来に備え身構える

 

 

 

それを確認したれいの動きは素早い。あらかじめ手にしておいた弓に器用に3本をつがえる。それらは1つの巨大な矢へと合わさった。圧力に耐えきれずれいの足元のコンクリートに亀裂が走る。彼女の表情も苦しそうだが、狙いはブレることなく一点に据えられる

 

 

 

れい「自分の命より大切なものを傍にはべらせすぎなのよ」

 

 

 

吐き捨てるようにそう言うと、限界まで引き絞られた弓が躍動し、ついに矢は放たれた。それはとても目で追うことなど叶わぬ程の速度で___二葉あおいへと飛翔する

 

 

 

ドッキング直後、負担が大きいのはあかねにその身を委ねた者。この攻撃を自力では回避することはできない

 

 

れい「不意打ちであろうと一色あかねに攻撃を当てるのは難しい。であれば、自分から当たってもらえばいい。あなたはきっと・・・その身を捧げてくれるでしょうから」

 

 

 

 

れいの放った矢に気付けたのはあかねだけだった。彼女の直感がそれを知らせた。そしてその規格外なる一撃がどれ程危険なモノかということと、向かう先が自らではないことも瞬時に判断できた

 

 

声を上げる暇もなく、重たい身体が悲鳴を上げるのも無視して全速力で飛び出す。そのまま勢い任せにあおいを押しのけた。とてもではないが、盾となって受けられるようなソレでないことは承知した上での判断だった

 

 

 

 

あおい「うあっ」

 

 

あかね「___!」

 

 

 

 

身代わりとなったあかねの胸を、一筋の光が撃ち抜いた。矢は赤く染まり、轟音と共に西の空へ飛び去る

 

 

 

 

突然突き飛ばされたあおいが何事かと振り向いた頃には、全ては終わっていた

 

 

 

彼女の赤い瞳からは光が失われていたが、そこに映し出されたあおいの驚愕の表情とは逆に彼女自身は痛みなど無いような安らかな顔だ

 

 

事態が全く呑み込めないあおばいが伸ばした手があかねの手を握りしめる。だがいつまでたっても握り返されることはなく、あかねの身体に纏われていたパレットスーツは鈍い灰色の粒となって風に吹かれるまま消えていく

 

 

 

 

 

浮遊する力が失われたあかねが地へ落ちないよう抱きかかえたあおいは瞬きをするのも息をするのも忘れて、じっとあかねを見つめていた

 

 

 

いつしかオレンジ色に変わっていた太陽の光があかねの顔を淡く照らす。夕陽が沈むのに合わせるようにゆっくりと閉じていく瞼を見届けた後

 

 

 

 

あおい「___っあああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!」

 

 

 

 

絶叫した

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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