第52話 ひまわり「至高で華麗なる作戦」
健次郎「作戦は簡単じゃ。アローンは動くことなくこちらを待ち構えておる。そこに突っ込んで、ぶちかます。これにて解決じゃ」
ひまわり「博士……冗談、ですよね?」
健次郎「ガチじゃよひまわりくん。ガチガチじゃ」
ひまわり「」
ひまわりは数秒間天を仰いだ後、言葉にならないうめき声をあげてわかばの二の腕に顔をうずめた。敬愛する健次郎博士であればスマートで画期的なお利巧な作戦を考えてくれるだろうという彼女の根拠のない妄想は打ち砕かれたのだ
ひまわりの肩にそれとなく手を回し抱きかかえるようにしながらわかばが会話を引き継いだ
わかば「やることがシンプルなのは助かります。しかし、何も考えず突っ込めという訳ではないのですよね?」
健次郎「当然じゃ。実際戦闘行動を行うに当たっての詳細はこちらで詰めておる。作戦開始前には諸君らにどう動いて欲しいかのブリーフィングも行う。しかし、本質的に君たちに求めるのはこれだけじゃ。アローンの装甲を突破できる火力を出してもらう、唯一無二の諸君らだけの仕事じゃ」
わかば「違いありませんね。アローンとの戦闘とは結局のところ、こちらのエネルギーが奴の防御力を上回るかどうかが全てですから」
エイラ「一発に限るなら私らの火力よりそっちに頼ることになるしな」
健次郎「うむ。だからこれから作戦を立てるに辺り一番大切なのは、わかばくんひまわりくん、あおいくん。君達が……戦えるかどうかじゃ。もし君たちが無理だと言うなら___」
健次郎の言葉を遮るように3人は鍵を握った手をぐいと突き出した。それぞれが色鮮やかに輝き、戦いへの強い闘志を感じさせる
わかば「私達は示現力に選ばれたのではなく、あかねに選ばれたようなもの。そのあかねがいない今、私達の力はいつもより弱くなっているかもしれません。ですが私達が弱くなった訳ではない。それに、私達は自らが望んだからこそ、あかねと戦場に並び立つことになったのですから」
ひまわり「示現力は人の意志に応えてくれる。私達が心を強く持てば、きっとそれに応えれくれるはずです。どんな状況だろうと私達次第で可能性は生まれます」
あおい「私達は戦います。できるできない以前に、そうしなければならないという強い覚悟があります。私達には守りたいものがありますから」
健次郎「___うむ。浅慮であったな。君達の覚悟を疑うような発言をしたことを謝ろう。存分に頼らせてもらうぞ」
彼女達も、あかねと同じく気高い志を持ち戦場に立つ戦士達であった。分かっていたつもりであった健次郎は、しかしどこかで彼女達を過小評価していたのかもしれなかった。あかねがいないと立ち上がることが出来ない弱さがあると思っていたのだ
確かにあおい達も折れかけたのだろう。しかし仲間に励まされて、あるいは自ら奮い立って今ここに立っている。その強さは世界の運命を背負って立つに相応しい、選ばれた戦士のそれであった
ルッキーニ「ひまわりも結局気合とどこんじょーじゃん!」
ひまわり「……うるさい。大事じゃないなんて一回も言ってない。脳筋プランは最後の手段ってだけ」
あろん子「ま、そうね。じゃあ具体的にヤツの撃破プランを考えていきましょうか」
防衛軍司令部とも通信が繋がり、アローン対処に関わる組織の上層部全てが一同に会した場となった管理局作戦指令室の明かりが薄暗いものへ切り替わる。部屋の壁が全面モニターへと早変わりし、そこに様々なデータが映し出される。メインは中央に出された黒くそびえる塔を描いたデッサン
管理局職員「我々はこのアローンを〈塔のアローン〉と呼称しております。周辺5キロ圏内ではありとあらゆるレーダーや観測装置が無効化され、遠方からも肉眼以外ではまともに補足することができず、完全に解析不能です。車やバイクといったものも全て動作しません。
しかし唯一、ストライカーユニットは問題なく稼働することはウィッチの二名が確認しています。これによりパレットスーツを装備したビビッドチームも問題なく戦闘ができると判断しております」
防衛軍兵士1『徒歩で現地の偵察を行った防衛軍兵士のデータによると瘴気のようなものは発せず、〈ただそこにあるだけ〉といった報告がなされているだけです。本日0600時の偵察の際にも、依然として変化なしとの報告です。やつにはなんの動きもなく、上空にもアローン及びネウロイ出現時に見られる次元の穴の出現も見られません』
防衛軍側からも最新の情報が入るが、事態は一向に変化なしだった。これによりあろん子に視線が集中する。彼女だけが突破の鍵となる情報を持っている可能性があるからだ
あろん子「いや別にないわよ。悪いけど」
防衛軍長官『は?』
あろん子「知るわけないでしょ。私がつくったアローンってわけでもないんだから。どういう役割をもっているかだけよ。一定時間が経つとこの世界の示現の戦士の魂を吸い上げて超強力なアローンを生み出すのが役割なの。アレは繭か、大げさにいうなら城ね。中には囚われの身のお姫様と、それから力を吸い上げる悪い怪物が待ち構えている」
エイラ「弱点はなんだ?」
あろん子「そりゃどこかにあるコアでしょ」
シャーリー「そりゃそうなんだろうけど……」
あろん子「よく思い出してちょうだい。これまでのアローンだって弱点を探し出して倒してきたって訳じゃないでしょう?ゴリ押しでぶん殴って、制圧してきた。そうでしょ?」
わかば「そういう言い方もできなくはないけれど、一言で片づけて欲しくない熱いドラマがあったのよ」
リーネ「竹刀で殴りかかったりですよね?」
ペリーヌ「対話の方法もゴリ押しですわね」
わかば「……」
あろん子「実際に戦ってみるまで解らない。だから一色健次郎博士の言う通り力一杯ぶちかまして、やれるか、やられるか。覚悟を決めなさい。そのための24時間なの」
あおい「覚悟なら決まってます。行きましょう今すぐ!!!!!」
鍵をもつ手を振り上げ椅子から勢いよく立ち上がったあおいの肩をリーネとペリーヌが掴み無理やり椅子に座らせた
あおい「なんですか!?!?」
ペリーヌ「落ち着きなさいな・・・この子、ほんとあかねさんの事となれば止まれませんわね」
リーネ「あおいちゃん、気持ちは解るけど落ち着いて!」
あおい「ご、ごめんなさい。ちょっと興奮しちゃって・・・」
健次郎「作戦開始は16時ちょうど。今からおよそ5時間と少し後じゃ。」
わかば「なぜそんなに時間をとるのです?」
健次郎「最後の作戦じゃ。防衛軍、管理局共持てるもの全てを投入したい。そして君たちにも、猶予をな」
少し言いにくそうに話す彼が話すのを見て、わかばも察した。思い残すことのないよう過ごせと、そう言われているのだ
わかば「では、15時……いえ、14時半にはここに戻ってきます。それまで少し家に帰ってもいいですか?」
健次郎「うむ。柴条くん、ヘリを出してやってくれ。彼女達を……」
シャーリー「博士、そいつは私達がやりますよ。万が一に備えての護衛も兼ねてね。私とルッキーニがわかばにつきます。リーネとペリーヌ、ひまわりに。エイラと宮藤はあおいと一緒に行ってくれ」
シャーリーが直感で割当を決めてウィッチ達が了解の意を示す
柴条「その間、こちらもアローン攻略に向けて部隊を編成します。皆さん、短い時間ですが身体を休めてください」
健次郎「それでは一時解散じゃ。ここで諸君を待っておるぞ」
健次郎の一声で一気に動き出した管理局職員達の波に追い出されるようにして退室したビビッドチームはストライカーユニットが格納された格納庫へと足を向けた
あろん子「じゃあ、私は少し1人で動かせてもらうわね。時間には戻るから」
宮藤「あれ、どこ行くの?」
あろん子「どこって……人目につかないところ。この恰好じゃ街中を歩く訳にもいかないし、管理局を1人でうろうろしてたら会った人みんなを驚かせちゃうから」
首から上は普通の人間の少女に見えるが、その身体は不思議な光沢を持つアローンの装甲で覆われているのだ。この世の物ではない物質が発する気配は独特で、何も知らない人間が見たとしても彼女が異質な存在であることは本能的に察知するだろう
あおい「それはそうだけど……せめて私と一緒に行こうよ、あろん子ちゃん。上から何か着れば誤魔化せるだろうし」
あろん子「嬉しいお誘いだけれど、博士の配慮を無駄にしたくないし。あなた達、ちゃんと水入らずで家族と話してきなさい。心残りが無い方が戦いにも集中できるのだから」
尚も引き留めようとするあおいに背を向けてあろん子は再び小さな時空の歪みを発生させ姿を消してしまった
あてもなく探し回る時間もない。仕方がないので素直に彼女の言葉に従いあおい達はそれぞれウィッチに連れられそれぞれの家へと向かうことにした
やべーな夏が見えて来たってのに……ペースが上がらないじゃないか……