ブラボー1『こちらブラボー1。切り離しポイントまで10キロを切った』
防衛軍オペレーター『こちら本部。進路上に敵の反応無し。そのまま作戦を継続してください』
ブラボー1『了解だ』
ウィッチーズを輸送する命を受けた戦闘機隊長、ブラボー1は通信を終了すると意識を前方に集中させた。ブラボーチームは3機で構成された部隊であり、それぞれが2機のストライカーを牽引する形で目標の東京まで全速力で飛行を行っていた
ブラボー2『ブルーアイランド防衛軍最新鋭機での空の旅はご満足いただけてますかな?魔法使いの皆さん』
エイラ「最悪だよ。燃料の燃えカスは臭いし手が疲れて来た」
その音速に近い飛行の衝撃をなんなく受け流しながら平気で会話をこなせる彼女達にブラボー2の名を与えられた兵士は深い敬意と憧れを抱いていた。必ず彼女達を目的地へ到達させることに使命感を燃やしながらも、彼は生来である軽口に付き合ってくれるエイラとの会話を楽しんでいた
ブラボー2『そりゃ申し訳ない。今度から尾翼にふかふかのシートとパラソルを設置するよう軍に掛け合ってみるよ』
防衛軍オペレーター『示現エネルギ-反応!12時の方角!距離4000!』
ブラボー1『各機警戒態勢!』
ブラボー2『そーらおいでなすったぞ!』
回線から少し遅れて赤い熱線が前方より数本飛来する。ブラボーチーム各機は機体を左に傾け進路を維持しつつ回避した。前方を見れば、遥か彼方に空いた示現の穴から弾丸のように飛び出した黒光りする物体がこちらに先端を向けていた
リーネ「敵機3!何れも小型!」
ブラボー1「このまま突っ込むぞ!ミサイルスタンバイ!」
ブラボー2「了解!」
ブラボー3「了解」
ブラボー1「発射!」
白い煙を吐きながら放たれた6発のミサイルが寸分違わずネウロイに命中。物理兵器に対しある程度の耐性を持つネウロイだが、それが纏う装甲は大型アローンには劣る。しかも高速戦闘タイプの小型ともなれば、防衛軍の空対空ミサイルが直撃すれば打ち砕くことが可能なのだ
シャーリー「ヒュー!爽快だ!」
ブラボー2「アローンじゃなきゃどうとでもなるのさ!」
砕かれたネウロイの残骸を避ける為追い越すように高度を上げ移動を継続するブラボーチームだったが、防衛軍作戦指令室は続けざまに新たなエネルギー反応を探知していた
防衛軍オペレーター『前方に高エネルギー反応!ディメンションゲート発生の予兆です!』
リーネ「まだ塔のアローンの勢力圏外なのに、相手はここで迎え撃つつもりなのでしょうか?」
健次郎『解らん。折角邪魔が入らぬよう広域でジャミングをしておるというのにわざわざその範囲外でというのは確かに無駄な気はするがのう』
宮藤「なにはどうあれ片っ端から落としましょう!!!」
ペリーヌ「落ち着きなさい。こんなものをいくら落としても本丸は健在です。切り抜けることを第一にしなくては」
エイラ「全く散々だナ。サーニャ達からは何のコンタクトも無いし敵は切れ目なしだ」
「おっと、私のような可憐なアローンに銃を向けるのはやめていただきましょうか」
宮藤「あろん子ちゃん!」
あろん子「少しはいいニュースをお届けしようと颯爽駆けつけた訳ね」
どこからともなく澄まし声が飛んできた。小さなディメンションゲートが開き、黒い装甲で全身を覆ったあろん子の姿が出現する。ブラボーチームの横に付けたあろん子の手を芳佳が握り、彼女を隊列に加える。ストライカーや戦闘機とは違ったシステムで飛行するあろん子は重さの無い風船のようで引っ張るのはとても簡単だった
宮藤「というと?」
あろん子「この次元の外に出てみたんだけど、今この世界には外から介入されないよう協力な防御壁が張られているわ。恐らく観測者の仕業だろうけど」
エイラ「お散歩感覚で次元の壁を破ってんじゃねーよ最強か?」
あろん子「アローンだもの。でも防御壁を破って他の次元に行くことは不可能だった。監視者が許可したネウロイやアローンは通過できるのでしょうけどね」
シャーリー「おいおい、じゃああれか?敵は増えるが味方は増えないってことか?」
あろん子「この作戦は今この世界にいる戦力だけで成功させる必要があるわね」
宮藤「もしかして聞き間違えたのかな。いいニュースが聞けそうな流れだったと思うんだけど」
あろん子「塔のアローンを壊してしまえば監視者もその役割を終える。ならばこの次元を覆う壁も無くなるでしょう。そうしたらあなた達が帰る目途が立つんじゃない?私が自由に移動できるようになれば、あなた達を元居た世界に連れていくことも可能になるでしょうし」
ペリーヌ「後々の事よりも目先の危機を脱しなければなりませんわね」
ため息をついたペリーヌの言葉に誰も言葉を続けない。希望の手前には常に大きな破滅をもたらし得る危険が待ち構えているのは明らかな事だったからだ
ルッキーニ「ま、あたし達がいればヨユーヨユー!」
それを吹っ飛ばすのは不謹慎な程楽観的な明るい声だ。ルッキーニはにっと歯を見せながらにこやかに笑っている。そんな彼女の言葉に小さく笑ってシャーリーが雰囲気を明るくする為言葉を繋いだ
シャーリー「その意気だルッキーニ。他のヤツがいないうちに撃墜スコアを荒稼ぎして、あっちに戻ったらバカンスと洒落こもう!」
普段から幼さ故のおちゃらけた発言の多い彼女だが、戦闘に関して意識が低い訳ではない。敵を撃つ為になにが必要かを本能と経験で嗅ぎつけるセンスを持ち、また命のやり取りの場においても自らを失わない冷静さも備えている。この発言も慢心故の物ではなく、自らが背負った使命を必ず果たさんとするウィッチとしての強い意志の表れが前向きな発言としてノータイムで出てくるのだ
ひたむきで真剣に前を向き突き進んでいく宮藤とはまた違った方法でルッキーニは部隊の士気を上げてくれる。不真面目おちゃらけが嫌いなペリーヌも今だけはバカのように前向きなチームメイトの存在をありがたく感じたのだった
ブラボー3『切り離しポイントまで距離4000!』
塔のアローンの勢力圏内も眼前に迫ったという時、オペレーターから悲鳴のような警告が耳を突く
防衛軍オペレーター『前方に高エネルギー反応!多数の次元の歪みが検知されました!!』
ブラボー2『おいおい、多数ってのはよ!』
正確な数を数えるのを面倒くさがったのではない。計測が意味を成さないのだ。前方の視野いっぱいに大小様々なディメンションゲートが開いていく。その数は視線を走らせて一つ一つを目で追っているうちにも増え続けている
圧倒的な物量による攻勢。ネウロイ側がとった戦法はシンプル故に対抗する手段は限られる
『目標確認。一斉射』
故に、こちらも物量を
真っ先にゲートから顔を出したネウロイの横っ面を飛来したミサイルがぶっ叩いた。凄まじい轟音と爆炎がネウロイの受けたダメージの大きさを表した。さらに雨のような機銃とミサイルがシャーリー達の左右からディメンションゲートへ目掛け放たれる
チャーリー1『こちらチャーリー1。戦闘に合流する』
デルタ1『デルタ1だ。想定以上だが、目的地まで援護しよう』
この作戦には防衛軍の全戦力が投入されているのだ。塔のアローンの勢力圏外にて待機していた空母から、満を持して発進してきた防衛軍戦闘機隊が意気揚々と戦線に合流した
さらに海上を行く護衛艦隊も超遠距離から攻撃を開始。青い空に無数の白い煙が尾を引いてネウロイ達へ襲い掛かった
チャーリー2『ヘイウィッチーズ!弾はとっときな!ここは俺達が出し惜しみなしでやらせてもらう!』
シャーリー「頼れるぜお兄さん方ぁ!」
ブラボー1『こちらはこのまま一直線に進む!』
妨害を企てた不埒ものへ、これまで指をくわえているだけだった防衛軍兵士の怒りがこもった火力が遠慮なく集中する。無数に湧き出るネウロイと言えど、出鼻を挫かれる形になったことでウィッチーズの前方にスペースが開く。ブラボーチームは一気に前へ出ると目標地点へ急行した
夏、はじまりましたね・・・