<シュイイイイン・・・>
青白い光を放つパレットスーツに身を包まれた二葉あおいは、自分の身体に革新的な変化が起きていることに驚愕していた。元から常人離れの身体を持っているあかねは気づかなかったがもやしのような身体と言うべきほど弱い肉付きであったあおいには解った。自分の身体に訪れた変化に。
あおい(・・・元気って、こういうことなのかな)
信じられないように両方の手のひらをみつめ、何度か手を開いたり閉じたりしてみる。それだけで、自分の腕の筋肉が力で溢れていることが感じ取れた。どんな薬を飲んでどれだけ休息をとっても得られなかった、夢にまで見た〈強い身体〉がそこにあった。元気な親友を護るためにあおいが欲したのは、自分にもっともたりないあかねの暴走に付き合える(持久力〉と
あおい「オペレーション・・・ネイキッド・・・」
あかねの邪魔をするものをぶっこわす〈腕力)
あおい「インパクト。」
前方に差し出した手の平から青い光が発せられ、長い棒を形成する。下は足のつま先より少し下、上はあおいの頭の上のさらに30cmほどまでだ。あおいは棒の先端の方を怪訝そうに目をやった後、眼前に展開された電子画面の中央を空いた手でタッチした。すると一度は完全に物質となった棒の先端部分が光の粒へと逆戻りしてしまう。それを見たあおいは棒を強く握りしめ、軽く足元のコンクリートにどんと突き立てた。すさまじい衝撃が足元のコンクリにひびを走らせ、その反動で棒の先端部分はバラバラに飛び散って巨大な光の玉の玉へと姿を変えた。最終的に、あおいの手には大きなハンマーが握られていた。両方が平らな面となっている両口のハンマーで、スレッジハンマーと呼ばれるものを対大型兵器用に特別サイズに拡張されている。
あおいが放った衝撃波でしりもちをついたあかねは、自分の頭上を傘のように覆うハンマーを見上げながら立ち上がった。
あかね「あおいちゃん、すっごい・・・。これ重くないの?」
あおい「えっ?う、うーん、結構重いんだけど・・・なんというかね、ピッタリって感じ・・・なの。わかるかな・・・?」
あかね「すっごいわかる。」
あおい「だよね。すごいしっくりくるよね。」
示現力は心の力だ、と健二郎が言っていたのをあかねは思い出した。であるならばパレットスーツは心に着せる服、身体に合うようにではなく心に合うように設計されているのだ。武器は対アローン用に作られており使用者の事を考える余裕はない。だから身体を強化する必要がある。急激に変化した環境に2人がなんなく対応できたのはそれらが2人の心と調和がとれているからなのだ。とあかねは直感で理解する。
あかね「よっし、行こうか!あおいちゃん!」
あおい「うん!!あかねちゃん!!」
考えたいことはたくさんある。だが、そんな難しい思考は寝る前にタオルケットにくるまり月でも見ながらすればいい。今の一色あかねに求められる思考は、戦士の思考だ。自分達にしか倒せない敵、アローン。
アローン〈・・・・・・〉
アローンは海の向こうで未だ不動だ。傷の修復は直に終わるだろうとあかねは判断した。急がなければならない。アローンをこれ以上示現エンジンに近づけることは危険だ。優先目標はやはりアローンの破壊ではなく示現エンジンの防衛。アローンが撤退してくれたならそれでいいのだ。あかねは隣を飛ぶあおいに話しかけた。
あかね「あおいちゃん。どれくらい速く飛べる?」
あおい「ううんと、今飛んでる速さがたぶん全力の8割くらいかな・・・?たぶん全力でもさっきのあかねちゃんよりかは遅いと思う。ハンマー持ってるからっていうのもあるけど、あんまり細かく飛ぶのも厳しいな。ごめんね・・・」
あかね「ううん、、でもこれで8割って感じなら・・・よし、いける!あおいちゃん、私にいい考えある。」
あおい「うん!あかねちゃんの命令に従うよ!なんでもいってね!!!!」
あかね「う、うん。まるで奴隷がご主人様を見つめるような目で言わなくでも大丈夫だからね。対等な仲間でいようね私達。」
あかねはあおいに耳打ち・・・しようと思ったが相手は人語を理解しないであろうから堂々とあおいに伝えた。作戦はいたってシンプルだ。あかねは速さを生かして敵をかく乱しネイキッドラングによる波状攻撃で装甲に傷をつける。あおいは敵の装甲の弱ったところに一撃を加える。ネイキッドインパクトの威力がどれほどのものかは未知数だが、あかねとあおいはその可能性に賭ける。あおいの覚悟の塊であるハンマーの一撃はきっと侵略者に一矢も二矢も報いるはずだ
あかね「はずだ、とかきっと、とか、作戦っていうにはふわふわしたところが多すぎる。それでも必ずやれるって、私の本能がビビっと叫ぶ!オペレーション、ビビッドコンボ!」
あかねはあおいに一度目配せをすると、爆発的に速度を上げてアローンに接近する。同時に行動を開始したアローンは、自分に迫り来る存在めがけビームを発射した。強烈なエネルギーがあかねを掠めるようにして空へ消えていく。あかねは軽くそれをかわし、急激に高度を上げて雲の中へと入る。アローンはあかねが入ったあたりの雲にビームを数発放ちそれを散らしたが、そこにあかねの姿は既にない。
あかね「こっちだ!ネイキッドラング!!」ブォム
別の雲の中から高速でネイキッドラングが飛び出した。迎撃するビームも軌道のあとをなぞるだけで勢いを殺す事もままならない。ネイキッドラングは見事アローンの装甲を縦に鋭く切り裂いた。
あかね「あおいちゃん!傷の箇所の反対側にもう一発打つ!それに合わせて二面同時攻撃だよ!」
あおい「あうんの呼吸、成し遂げてみせます!ふんっ・・・!」
あおいは敵の攻撃を避けるため、水中にて息を潜めながらアローンに近づいていた。説明書を見て解ったことだが、どうやらパレットスーツは水中でも速度をほとんど落とすことなく移動できるようだ。特殊な波動を出して水中生物を追い払っているのでなにかに当たる危険もない。あおいはネイキッドインパクトに気を集中させる。ハンマー部分の内部でゴウン、と何かが作動した音がする。ネイキッドラングはあおいの腕力のみで振るうことも可能だが、エネルギーをチャージし補助ブースターを作動させればその威力はさらにあがる。
あおい「そう説明書に書いてあった・・・!私はゲームをする前説明書は隅から隅まで全部読み、パッケージの裏から攻略情報のヒントを見出した経験すらあるの。自分が今手に入れられる情報を短時間で全て完璧に脳に入れるということ。これの重要性はこの一撃で証明できるはず!」
<ゴゴゴゴゴゴ・・・・>
水面に伝わる波紋。それが巻き起こした円の中央を突き破りビビッドブルーは急速浮上した。アローンはあかねの方に攻撃を集中させていたが、この瞬間あおいもああかねと同じ距離に侵入したことになり攻撃の対象となる。赤い一閃が海面を真っ二つに切り裂く。あおいはすんでのところで海面と運命を共にするところだったが、タイミングが合わなかったため回避する形になった。ほっと一息つく間に気づいた。ネイキッドインパクトの特殊機能を使うと機動力が大幅に鈍る。前へ移動することに問題はないが横への移動がかなり制限される。身をよじるように再度飛来した攻撃をかわすことに成功するが、これではすぐに追い込まれてしまう。
あかね「大丈夫!そのまま、まっすぐ!」
あおい「・・・!」
そうだ。回避に気を使えばその分攻撃の威力は落ちる。臆するな!あおいは自分を奮い立たせた。あかねが大丈夫だと言ったのだ、何を疑うことがある。あおいはまっすぐアローンの傷ついた足へと飛ぶ。あかねの鋭い攻撃があおいの目標の別の足に一撃を与え、赤と白の火花が散っている。アローンは再三あかねへ攻撃を仕掛けるが、あかねの機動力はあおいの比では無いのだ。業をにやしたアローンは当てやすいあおいへと照準を定めた。だがあおいもちんたらしていた訳ではなく既にアローンの間近へと接近を果たしていた
<バシュン!!>
あかね「行ってあおいちゃん!」
アローンの攻撃をあかねのネイキッドラングが真上から両断した。戻る刃でアローンのビーム発射台でもある頭頂部の軽く牽制で一撃を入れ、あおいが完全にフリーになる状態が出来上がった
あおい「ネイキッドインパクトッ!フル!!バーストォ!!」ガゴォ!
ハンマーの接触面に凝縮された示現エネルギーが破裂し、物理力と混ざって重い衝撃波をアローンの装甲表面に叩きこんだ。ハンマー本体は装甲を砕く過程で停止し振りぬくことは出来なかったもののその破壊のエネルギーは傷の内部にえぐりこみ貫通、足の一本を中ほどから完全にへし折った。アローンは悲鳴のようにも聞こえる金属音を響かせながらその身体を大きく崩した。好機だ。あかねは雲から飛び出し、ネイキッドラングを空中で受け取ってアローンの中央部分めがけ高速で落下を開始する。
あかね「あおいちゃん!どこかにアローンの〈核〉がある!それを壊さないと倒せない!」
あおい「どこかって、どこ!?」
あかね「どっか!」
あかねは思考をめぐらす。4本の足は中央の身体を外部から隠すように見えなくもない。であればやはり中央の塔のような縦長円柱の身体の内部に核が仕込まれているのが道理であると推測した。足にある可能性はこの際捨てる。もし残った3本足のどれかの中央だとしてそれら全てを破壊する時間的余裕はない。折れた跡からすぐさま再生が始まっているし、同じコンボが何度も通じるのか?二人の体力はどれくらいもつのか?
あかね「あおいちゃん、下から見える範囲で弱点っぽい箇所はない?」
あおい「あるよ!身体の真下、赤く光ってるガラスみたいな箇所があって・・・そこはなんというか、お腹みたいな感じになってる!下から攻撃するね!」
大きくネイキッドインパクトを振りかぶり突進する。補助ブースターは煙を吹いていて連続使用は無理そうだったが、あの箇所は黒い装甲部より随分やわらかそうだ。破壊は可能と踏んだあおいは一刻も早くとどめを刺すため飛ぶが、その時結晶部分がキラリと赤く輝いたのを見てとっさにハンマーを盾のように前へ振り下ろす
近づく脅威へ対抗するためもがくアローンは、弱点と思われた部分から高速で光線を放ったのだ。発射台は頭の1つだけだとすっかり思い込んでいたが、これはまさに奥の手なのだろう。
しかし、あおいには効かなかった。輝くネイキッドインパクトで煙を払い、あおいは安堵のため息をつきながら回避行動へ移る。攻撃は連続してあおいへ牙を剝いて襲いかかるため、一撃に予備動作を必要とするあおいは武器を一時的にしまってアローンを中心に円を描きながら攻撃を避ける。
あおい「陽動はあかねちゃん、本命は私。あなたはそう思ったんだろうけど―――」
もう武器を使う必要はない。
あおい「視野が狭いですね。」
あかね「とぉー!!」
陽動は、お終いだ。
赤いエネルギーのオーラを纏ったあかねはネイキッドラングを折りたたみ、ブーメランの両端をあわせ中央部分に両手を沿え、さながら一本の剣を構えるようにアローンの赤い結晶部分へその先端を突き刺した。勢いを一点に集めたネイキッドラングと一緒にあかねは結晶対を貫き粉々に粉砕した。決着である。足の再生がとまり、逆に崩れていくではないか。あおいはそのまま勢いを殺しながら海へ高度を落としていくあかねを後ろから抱きかかえてその場から離脱する。次元を歪ませまばゆい閃光を放ち、アローンはその身体を崩壊させながら轟沈していった。
あかね「あぁー・・・やった・・・?」
あおい「うん。」
あかね「そっか・・・わたし、寝てていい?」
あおい「うん。」
あかね「そっか・・・」
あかね「・・・」
意識を失い飛行が解除されたことで少し重くなったあかねの身体を痛くないよう優しく抱き、あおいは海上を飛行した。視線の先にあるのは、いつもどおり太陽をあびて鈍く輝く示現エンジン。
あおい「・・・私も、一緒にがんばるから。」
あかね「・・・ん。」
あおい「・・・お、起きてたんだね・・・」
人類の希望、示現エンジン。それが失われるようなことがあれば、人々は数少ない資源を再び奪い合うようになるだろう。そんなことがあってはならない。世界を背負うのは女の子。過酷な運命に、それでも文句を言わず、笑顔で背負うと決めた少女に苦難は再び訪れるだろう。
だが、負けるな。苦難もあれば幸福もある。いいことばっかりの世の中ではないが、悪いことだけなものでもない。
戦えビビッドチーム!世界のためでもあるけれど、やっぱり自分の幸せのために。
第一章 「世界は示現力で回る」
終
第一章堂々完結。おめでとうございます。ありがとうございます。
描写力の甘さで解り難い箇所が多々あったかと思いますが、先に私自身の気持ちを1つまとめさせていただきます。
楽しかったです。2話前編を書き上げたところで失踪しましたが、ここ一ヶ月少々でだいぶ楽しくやれました。一回できあがったのをみなおして、あやっぱりここ変えようかな、こんな文章いれようかな、と、こうして少しでもベストな形を考える時間は大変ですが幸せです。読んだ人に私の感じた楽しさがいっぺんでも伝わったならうれしいです。伝わらなかったですか?次章からもっと気合いれることにします。では下に少し本編捕捉を
二葉あおいちゃん。青いロングヘアーのお嬢様。あかねと小6の時に出会った。歩きまわれなかったとしても自分の住む島の事を少しでも知りたいと新聞を購読。配達にきたあかねを二階の窓から見て、彼女の姿に自分にはない溢れる元気を感じ気になるようになる。ある日も二階から見ていたあおいに気づいたあかねがワンコで窓まで寄ってきて直接手渡してくれたのをきっかけに話すようになった。
あかねと同世代の子が島にいることが非常に珍しかったためあかねも気になったからだが、高いところ苦手な一色あかねさんは怖くておりられなくなり、あおいの部屋に靴を脱いでいれてもらい玄関から出て、ワンコを音声誘導でおろして配達を再開した・・・という話だ。
学校帰りに寄る約束をした彼女を部屋に招きいれ色々話をした際に「じゃあ夕刊配達の時、最後にここに配達にくるから、一緒に新聞読もう!」このときのあかねの笑顔にやられた、と二葉さんは語る。
このへんの話、掘り下げてまたあとでやりますがこういうかんじです。あおいちゃんからすればあかねちゃんは楽しく生きることの象徴のようなものです。
さて、次章ではついにコラボ始まります。そろそろ始めないとタイトル詐欺だといわれそうですね。コラボしてくるスト魔女チームも相当改変入ってます。まあパラレルワールドのビビオペ世界に混ざるということはスト魔女世界も原作準拠ではありません。
それでは次章で。お楽しみに