ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第64話 あおい「決別を告げる羽音」

〈防衛軍・作戦指令室〉

 

 

オペレーター1「東京全域に張られていた遮断フィールドの消滅を確認しました!」

 

 

オペレーター2「航空部隊から伝達!展開していたネウロイが消滅していきます!」

 

 

長官「ビビッドチームがやった!一色博士!やったんですね!?」

 

 

健次郎「ああやった!やってくれおったぞい!」

 

 

作戦指令室を歓声が満たした。戦闘に参加していた部隊にも作戦の成功は伝えられ、喜びの連絡が続々と送られてくる。犠牲も多くあった。空に散った戦士達がいて、そうして得られた勝利なのだ。それを理解しながら、生き残った戦士達は悲しみよりも喜びをもって彼等に敬意を示した

 

 

柴条『先生。示現エンジンから妙な反応があると部下から連絡が入っています』

 

 

健次郎「なに?」

 

 

 

__________________________________

 

 

 

 

宮藤「空が光ってる!」

 

 

リーネ「光ってるね……」

 

 

 

空が光っているのだ。時刻は既に17時を過ぎ、太陽は西に大分傾いているというのに、空は黄金ともいえる輝きを放ち真夏のようにギラギラとした光が大地を照らしていた

 

 

あろん子「これは示現力が放つ光よ。エンジンで変換されて人工的に出力されるものとは違う、純粋な高次元のエネルギー」

 

 

ペリーヌ「それが空から降ってくるのは、罰ゲームなのかしら?それともご褒美?」

 

 

あろん子「おめでとう。あなた達は勝利した」

 

 

クールにそう言ってのけようとしているのは解るが、あろん子はぐずぐずと鼻水を啜り歓喜の涙を手の甲で拭いながら震える声を抑えきれない

 

 

ルッキーニ「え、めっちゃ泣いてない?」

 

 

あろん子「よかったわねぇ……!ほんと良かった……!」

 

 

ルッキーニ「おおぅ、なんかからかってごめん。どしたの?」

 

 

あろん子「ぶっちゃけ全く役に立てた自信なくて……!」

 

 

シャーリー「いやそんなことないだろ!?」

 

 

あろん子「そうかしら?なら安心するわ」

 

 

シャーリー「コロコロ感情が変わるヤツだな。ま、みんな頑張ったよ!お疲れさん!」

 

 

 

シャーリーが明るい声をあげて戦いの終わりを宣言する。しばらく周囲の様子をうかがっていたウィッチーズの面々もここでようやく一息つくことが出来た。先行して突入、露払いから壁役までをこなし流石の彼女達もヘトヘトであった

 

 

健次郎『うむ、見事な戦いじゃった!あろん子くん、今の我々の状況について教えてもらえんか?』

 

 

あろん子「巨人のアローンが〈試練〉として設定される最後のアローンであることに間違いはないと思うわ。証拠にあなた達の世界は示現力に認められた」

 

 

健次郎『認められた、という事象について具体的に説明してくれんかの?』

 

 

あろん子「示現エンジンという変換器を使わなければ、あなた達は示現エネルギーを使うことができなかったでしょう?ドッキングによるビビッドエンジンもパレットスーツを装着した状態で起こせる一時的なイレギュラーでしかない。それは〈管理者〉達による制限がかかっていた故の不便さ。しかし、あなた達は塔を破壊し、巨人を討った。そして〈管理者〉が戦士として選んだ最初の1人を救い出した。〈管理者〉が与えた試練の全てを乗り越えたあなた達は、この力を自分達で自由に使う権利を得たのよ。」

 

 

 

トリニティ「私のコンディションが先程から改善されていってるのはそれが影響されているのね」

 

 

ふわり、と宙に浮きあがってきたトリニティが非常に穏やかな口調であろん子の会話に混ざった。先程全ての力を使い果たすつもりで一撃を放った合体状態の3人だったが、今の状態は彼女自身が言うように非常に高い調子で安定している。身に纏った光のオーラも穏やかな流れを見せながら乱れなく流動しており、彼女から放出されるエネルギーも明らかに増加していた

 

 

 

健次郎『こちらでも示現エンジンの反応に異常を検知しておる。今までビビッドチームの戦闘の際に使用しておった4番から10番までの炉とパレットスーツの接続が切断されていたのじゃ。今のあおいくん達は示現エンジンの力を借りず、独立して示現エネルギーを生成しておるようじゃな』

 

 

トリニティ・コンボは3人の力を相乗させ、示現エンジンから得られる力を限界まで取り込み、それをさらに体内で増幅させることでドッキングの出力に迫るための戦法だった。しかし今、あおい達自信がエンジンからのエネルギー供給を必要としなくなったことで、トリニティはドッキングと同じ自らで特殊次元から自由に力を引き出せる段階に到達している

 

 

 

 

「成程、こうなりますか。管理者達も随分甘いようで」

 

 

 

瞬間、空気が重みを増す

 

 

空間を歪ませて、トリニティの前に瞬間的に現れたカラスの形をしたモノは夕陽を背に、空に浮いていた。まるでそこに宿り木でもあるかのように羽を閉じた状態で感情の読めないガラスめいた瞳をビビッドチームの1人1人を順繰りに向けて、最後にトリニティの顔をじっと見つめて話続ける

 

 

「確かにあれが〈試練〉として送り込まれる最後のアローンです。ですがあなた方が倒すべき敵が最後である、という訳ではありません」

 

 

シャーリー「ああ確かにそうだな。まだお前さんを丸焼きにして皿に盛りつけるって作業が残ってたよな?」

 

 

あろん子「ぶっ殺すわ」

 

 

プレッシャーを跳ね除けるシャーリーの啖呵が終わる前に各々は武器を構え終えている。6つの銃口と、赤く光る両手、そして示現エネルギーの火花が迸るのを見てもカラスの口調に変化はない。ただ淡々と言葉を繋ぐ

 

 

「今後、〈管理者〉である彼らがこの次元にアローンを送り込んでくることは無いでしょう。ですがあなた方が抱える問題はもう一つ有る筈」

 

 

宮藤「ネウロイ?」

 

 

「そうです。あれは彼らの支配下にあるものではありません。アレにもいくつか種類はありますが、アレの大半はアローンの成り損ない。理から外れた生命の残骸が示現力の影響を受け受肉した生体兵器のようなものです」

 

 

あろん子「それを操ってるのもあなたでしょうがよ。」

 

 

「ええ、少なからずは。しかし全てではない。私の支配下に無いネウロイなどいくらでもいる。今のままでは、私が手を引いてもこの世界に惹かれたネウロイの侵略は止まないでしょう」

 

 

トリニティ「それは、あなた以外に何か原因があるという話?」

 

 

カラスは小さく頭を縦に振り肯定の意味を示した

 

 

「あなた方は、この世界にある異物を全て取り除かなければならない。〈魔女〉を名乗るその者達のみならず___」

 

 

れい「もしかして私の話をしてる?なら混ざったほうがよさそうね」

 

 

再び時空が歪み、カラスの横に黒騎れいが出現した。黒いマフラーをなびかせ、鋭い切れ長の瞳でビビッドチームを見渡した後カラスと向き合った

 

 

「黒騎れい。あなたは失敗したのですよ。〈試練の矢〉を全て使っても尚、あなたは示現エンジンを破壊することができなかった。失望しましたよ。あなたの手腕を買い被っていたようです」

 

 

れい「毎度貴女のたいそうな高説に付き合うのは飽き飽きだわ。私が何に失敗したって?もう一度言ってみなさい」

 

 

「あなたの望みを叶える対価として私が求めたのは、アローンを誘導し示現エンジンを破壊する、それ1つ。リスクを冒しあなたをこの世界に送り込んだ私の労力が水の泡です」

 

 

れい「確かに私は示現エンジンの破壊には失敗してしまったわ。正直これに関しては想定外。彼女達の強さを見誤っていた。でも、あなたはやっぱり勘違いしている。そもそも私が本当に望んでいたのは示現エンジンを破壊する事そのものではないのよ?この結果はあなたにとって歯がゆい結末かもしれないけれど、この展開は私にとって僥倖の極み」

 

 

「何を___」

 

 

 

れい「あなたは退場してもらって結構だと言ったのよ」

 

 

 

ヒュン と鋭い風切り音を立てて走った刀の一閃が、カラスの素っ首を叩き落す。息つく間も無く返す刃が胴体を断ち切り、先ほどまで喋っていたカラスは黒い塵となって散った

 

 

 

れい「割り込み失敬、あの鳥の話を引き継ぎかせてもらうわ。そもそも〈黒騎れい〉には、試練を課す為のアローンの跳躍を手助けするビーコンの役目があった。ネウロイもその波長を感知して迷い込んでいる。だから私かそこの人型アローンがこの世界に居る限り、侵略者の来訪が止むことはない」

 

 

漆黒の小刀を肘関節で挟み返り血を拭うようにゆっくりと引き抜きながら彼女の冷酷な語りは続く

 

 

れい「この世界を救いたいなら黒騎れいを殺してみなさい___とでも言いたかったんでしょうよ。あのカラスは」

 

 

可笑しくて仕方ない、とばかりにくすくすと笑いながられいは話続ける。巨人のアローンとの闘いを放置していた彼女がこのタイミングで出張って来たのは今更仲直りをしたいからという訳ではないのは解る。彼女が纏う気配はあまりにも危険な香りを匂わせ過ぎていた

 

 

トリニティ「れい。あなたは何を求めているの?なにを思って私達と敵対しているの?」

 

 

そう問いかけながらもトリニティは拳を握る力を少し強める。れいが戦闘体勢に入っている事を察知し、トリニティの一角を担うわかばの闘争心が反応しているのだ。今にも開戦の火ぶたを切りたがる拳を宥めながらトリニティは話を続けた

 

 

れい「私は、かつてあった私の世界を取り戻したいの。身の丈に合わない力を求め、天に手を伸ばしたばかりに焼かれ尽くした、私の愛すべき愚かな世界を、もう一度再現する。その為にあのカラスに力を貸していたの」

 

 

不敵な微笑みは消え、釣り目は垂れ下がる。さみしそうで切なそうな、哀愁を感じる表情を浮かべる。だが彼女が纏う底知れぬ悪意は刻刻と強まり、アローンなど比べ物にならない程の存在感が満ちていく。一度は晴れた夕空が再び暗雲に覆われ、周囲に闇の帳が降りる。闇を近づけさせない強い光を放つトリニティと張り合うように、れいも鈍い銀色の輝きを放つ

 

 

 

トリニティ「それじゃあ、あなたは私達と同じ……!」

 

 

れい「示現力によって滅びた世界は、示現力によって再生させる。世界を再構築する程のエネルギーは、世界を滅ぼしてしまうエネルギーを利用しなければならないのよ。他所の世界の住人であるウィッチの皆さんは別として___あおい、わかば、ひまわり。健次郎博士、管理局と防衛軍のみなさん。それからあかね」

 

 

 

れい「私の為に、滅んで下さい」

 

 

 

悲壮感を背負いながらも、迷うことなく彼女は右手を前に突き出した

 

その手に銀に輝く〈鍵〉を握りしめて

 

 




暑さを乗り切りましたね……。まあまだしばらく暑いんでしょうけどね!!!!!!
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