ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第7章 ―ハッピーエンドの条件は―
第65話 「果てない戦いの果てに」


 

「ハッピーエンドへの挑戦権はまだ残ってると思う?」

 

「なにが?」

 

 

日課になりつつある瓦礫撤去作業に飽きてのジュース休憩中の事だった

 

 

「私達、こんな状況からでもハッピーエンドに辿り着けるのかなぁってさ」

 

 

青いボブヘアーの毛先を指でくるくると巻きあげながら、青影はポツリとそう言った。手に持ったジュース缶は蓋すら空いていない。彼女らしくないアンニュイな雰囲気に私はフンと鼻を鳴らして応えると、手にした缶ジュースをぐいっと呷る。今日の空は青く澄み渡り、地上のあり様に目を向けなければ心地よいピクニック気分にすら浸れた

 

 

「ちょっとぉ、ガチの相談なんだけど」

 

「迷いは心と技を鈍らせる、いつもそう言ってるのはあなたでしょ」

 

「そうなんだけどねぇ。だって昨日ので何体目?」

 

「100から先は数えてない」

 

「この世界、案外洒落にならない世紀末だよねぇ……」

 

 

実際、毎日のように奴らは空に穴を空けてやってくる。示現エネルギーに適正を得たと言っても疲労を感じない訳ではないし、侵略の規模によっては手が足りず被害が出ることもある。もっともここ最近に関して言えば、小型が1、2体出る程度なので残党軍の攻撃だけでも撃破できる程度だから復興作業に時間を割く余裕もあるくらいだ

 

 

「戦いに終わりなど無い、ということなんじゃないかな。生きることは戦うことだという名言があるだろう?」

 

 

空から降りて来て会話に混ざって来た緑は、自分の緑色の髪に合わせたようにメロンソーダのペットボトルを握りしめていた。ジュースを買いに行くためだけに変身して空を飛ぶのは少し前までなら軍事機密的に許されない行為だったが、今となっては私達の行動に文句をつけて来る人は殆どいなくなった

 

 

物理的に人の数が減ったというのもあるし、光り輝く女の子が飛んでいてもそれがアローンでないのであれば大した問題は無いと考える人が増えたからというのもあるし___そもそも私達にへそを曲げられたら世界が終わってしまうという恐怖が世論を抑えているんだとか、まあそんな感じらしい。私達はそんなに短気で身勝手な訳でもないんだけど

 

 

 

 

 

「みどりんさぁ。もっともらしい言葉で煙に巻こうとしてない?」

 

「青影、悩んだって仕方ないことじゃないか。僕達が頑張ればこの世界の平和は維持できる。ならば尽くせばいい。そうすることが君の言うハッピーエンドへの唯一の道なんじゃないのかい?」

 

「私もそう信じて戦ってるけどさぁ……」

 

 

彼女は煮え切らない様子でぐずっている。本当にらしくない。口調こそだるーんとした青影だが、性格は竹を割ったようにあっさりすっぱりと直感で物事を判断する子だ。だがごくごく稀に思考が迷宮に迷い込んでしまったかのように面倒くさい絡みをしてくることがある

 

 

「今面倒な感じになってるって思ったでしょぉ?」

 

「思ったわね」

 

「隠して欲しいなぁせめて!」

 

「私、隠し事しないの。知ってるでしょう」

 

「隠し事をしないのと人に気を遣えないのは別物なんだよねぇ……」

 

 

青影は直感で物事を判断する。考える、という事を嫌う。そんな彼女が悩んでいる時は大抵大きな災いを直感が予知している時。初めてアローンが世界にやって来た時も彼女は自らの人生について朝からうんうん悩んでいたし、私が塔のアローンとやらに囚われる時もその日の朝から彼女からの哲学めいた問答がメッセージアプリの通知欄を埋め尽くしていたな、と少しの間昔を思い出していた

 

 

まあ、つまり。幼いころからの付き合いであるこの青髪の親友が柄にもなく大層なテーマの悩み事を抱えていることをアピールしてくる時は、どでかく面倒な事が起きるのだ

 

 

「オォーイ!!!!しょくーん!!!!大変ですぞー!!!!!」

 

 

倒壊した建物の上を器用にぴょんぴょん飛び跳ねながらこちらに駆け寄ってくる彼女に3人の視線が集中する

 

 

「このバカみたいにでかい声は……おおバカちゃん!」

 

「黄山ですよぶっとばしまずぞ青影氏!それより、示現エンジン周辺にこれまで検知したことのない量の示現エネルギー反応が大量です!でっかいのがたっくさん来るやもしれませんぞ!」

 

「全く、青影のせいだねこれは」

 

「私が悪い訳ないでしょぉ!アローンでしょ悪いのは」

 

「はいはい!みんな、落ち着いて」

 

 

私が手をパンと叩くとみんなが一瞬で静かになった。3つの色鮮やかな瞳がこちらをじっと見つめて来る。口は閉じても、みんなの中の闘志が高まっていくのは手に取るように解る。私達は既に一つなのだから

 

 

 

「青影、あなたの悩みの原因がまた空から来るわ。ぶっ倒すわよ。集中して、力を合わせましょう」

 

「おっけー。わかってるよ」

 

「緑。数が多い場合は守るより私と青影で打って出る。私達の援護よりエンジンに近づくヤツを優先して射抜いて」

 

「解ったよ。飛び回るのは君達に任せる」

 

「黄山。あなたもエンジンで待機。緑を援護しながら敵の動き見てて。ヤバイ時はあなたも前に」

 

「了解ですぞ!」

 

 

 

 

私達の首にふわり、とマフラーが巻かれる。それぞれの名前にあやかった色だ。私の首には真紅のマフラー

 

「ねえ青影。いや、皆も」

 

「何?」

 

「何だい?」

 

「何でしょう?」

 

「私達はこれまで信じた道を進み、全力を尽くして戦ってきた。これからも自分の信念に殉ずれば、きっと青影の言うハッピーエンドに辿り着ける。___いいえ、この私がそこにあなた達を導くわ。約束する」

 

「……うん!信じるよ!」

 

「うん。キミがそういうなら、安心だな」

 

「ですが我々も力を貸しましょう!これまでのように!」

 

「ええ。行きましょう。何度だって世界を護って、また明日を迎えるのよ!」

 

 

私がそう言うと同時に世界が一気に真っ黒くなる。夜の暗さとはまた違う、一切詫び寂びを感じさせない不愉快な黒。この世界の全てを塗りつぶそうとする悪意に立ち向かう為、私達は勢いよく空へ飛び上がった

 

 

 

 

 

 




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