数の差こそが力の差だった。結論から言えば、トリニティとブラックの決闘はそこが勝敗を分けた
先んじて仕掛けたのはトリニティだ。彼女達はあかねの復活を待つという考えはなかった。むしろあかねのあずかり知らぬところでれいとの決着をつけてしまいたかった。彼女が目を覚ました時に、全ての問題を解決しておいてあげたいと思っていたのだ
ネイキッドコライダーを8個展開し一斉にブラックへ向けて突撃させる。不規則な軌道をとらせながらレーザーを放ち注意を引きつけつつ、トリニティは二の手としてブレードを展開させると宙を蹴り超高速で接近する
受けるブラックは余裕の表情を崩さない。ふわりと舞うように飛び上がると身を捻りながらビームの間をすり抜けると腕を前に突き出す。両手足に巻かれたリングが緑色の光を放ったかと思うと、次の瞬間彼女の手に黒い弓が握られていた
目にも止まらぬ速さで弓弦が引かれ、放たれた8の矢が正確にコライダーの中央を撃ち抜いた。爆散するコライダーの爆風すら追い風にトリニティは距離を詰めた。ブラックがトリニティに弓を向けたその時には既に剣の間合いに入っていた。トリニティは鋭い雄叫びと共に大上段に振りかぶった剣を振り下ろす
ブラック「___」
彼女が何事かを小さく呟けば、刹那ブラックの手に持つ武器は槍へと変わり、腕輪の色は赤へと変わっていた。穂先は禍々しくも美しく尖った刃が取り付けられ、柄は黒真珠のように光沢を放った豪胆な一振りだ
身を翻しながら繰り出された突きがトリニティの剣と真っ向からぶつかり合い太刀筋を弾き飛ばした。体勢の崩れたトリニティの喉をえぐるように躊躇いなく突き出された一撃を横に滑るように飛行して躱すと下から切り上げるように剣を振るう
その剣を足裏で踏み台にして飛び上がったブラックはトリニティの背後に回り込みつつ飛び降りざまに槍を背中に突き立てた
トリニティ「くっ!」
下へ高度を下げることでそれを回避したトリニティは一度そのまま大きく距離を取る。ブラックの持つ武器が弓以外にもある事に意表を突かれ、一度仕切り直したかった
ブラック「三次元での斬り合いは中々楽しいでしょう?」
トリニティ「私ばかり楽しませてもらうのは申し訳ないんでね!」
腰の鞘に納刀するような動作をとり、トリニティは武器を切り替えた。勢いよく抜刀する動作で具現化させたのは巨大な青いハンマー。それを右手で持つと、左手にももう一本ハンマーを召喚する。気合を入れるため両のハンマーをガツンと叩き合わせブラックへ再び襲い掛かる
槍の間合いの遥か先から叩き潰すように振り下ろされた一撃をブラックは難無く躱す。隙を狙おうと槍を構えるが、直ぐに身を引いて回避の体勢に入る。トリニティは空振りの反動を使ってもう片方のハンマーを続けざまに振り下ろしていたのだ。槍で受けようものなら破壊こそされずとも勢いを殺しきれずダメージを負う可能性がある。ブラックは間合いを取るため後方へ飛ぶ
その瞬間を狙っていたトリニティは回転の勢いのまま右手に握っていたハンマーをパッと手放した
〈ゴウッ!!〉
轟音と共に射出された青いハンマーがブラックへ向けて飛翔した。面食らったブラックは勢いよく高度を上げてハンマーの射線上から退避するが、空振ったハンマーは大きく弧を描いて逃げたブラックを追走する
ブラック「姑息な大技を!」
トリニティ「頭使って戦ってんのよ!」
投げたハンマーとトリニティが持つハンマーが挟み撃ちの形になる。間に挟まれたブラックから回避の選択肢を奪う策だ。脳筋ゴリ押し以外の戦い方もできることを身をもって証明したトリニティは渾身の一撃を振り下ろす
ブラック「___」
ブラックが何かを小さく呟いて槍を手放した。そして彼女はこの状況を打破するべき武器に切り替えた。腕輪の色が青い光を放つ
<ドガン!!!>
トリニティ「なんっ……と!」
ブラック「ぶっ飛ばしてあげる!」
暴れ回るハンマーを受け止めたのは、直径5m程の2つの黒い塊。黒いエネルギー粒子を纏い浮遊する物の正体は、トリニティのハンマーに負けず劣らずの重量感を備えた巨大な拳だ
ブラックの手にも黒い篭手が装備されている。宙に浮いた2つの拳は篭手の動きに連動して動くようになっており、ブラックが手を開いて拳を握り直せば巨大な拳も同じように動く。おもむろにブラックが腕を振り回せばそれに合わせて振り回される拳がハンマーを弾き飛ばした
吹き飛ばされたトリニティはハンマーを右手に持ち直すと空いた左手を突き出し、投擲したハンマーを手元に呼び戻した。両方のハンマーを引きずるように力強く跳躍すると、両手のハンマーを上から下へ振り下ろす軌道で力いっぱいブラックへ叩きつけた
ボクサーのように腕を構え不敵に笑うトリニティが迎え撃つ。左フックで右のハンマーを横殴りにして軌道を無理矢理にずらし左のハンマーに衝突させ、2つのハンマーが擦り合うような形でブラックの横に逸れる
攻撃をやり過ごしたブラックは右の拳をトリニティの脳天を勝ち割らんと振り下ろす。トリニティは右手のハンマーを救い上げるようにして拳を相殺すると、左のハンマーを横なぎにしてブラックの横っ腹を狙う。ブラックは弾かれた右の拳をすぐに体の横に移動させてハンマーを受け止めるが、衝撃を受け止め切れず吹っ飛ばされる
トリニティ「隙ね!」
ブラック「そうね」
畳みかけようと攻撃の構えを取ったトリニティだったが、次の瞬間背中から強烈な衝撃に襲われた。眼から星が飛び出すようなダメージに足が止まる
トリニティ「姑息な小技を……!」
ブラック「ま、少し手癖が悪くてね」
確かにブラック自身の手は動いていなかった。そこに意識を集中していたトリニティは、自動で動いた拳に反応できなかったのだ。浮遊している巨大ナックルは確かにブラックの動きをトレースして動くのだが、それ以外の方法で動かせないとは言っていない。思い込みをまんまと利用された訳だ
隙を突いて追い打ちに放たれたストレートパンチが正面か襲い掛かる。ハンマーで受け止めるが、衝撃を打ち消すことは叶わずトリニティはそのままぶっ飛ばされた
宮藤「あお___わか、ひまわ……三人合体ちゃん!」
エイラ「その呼び方はないな。おーい大丈夫か!」
ネウロイをある程度蹴散らした2人が間に割って入る。芳佳が空中で頭を抑えてふらふらしているトリニティに手を添えて治癒魔法を発動させ、エイラが鋭い視線をブラックへ向ける。ブラックも自分のダメージを確認する為一度足を止めていたが、大したことがないのを確認すると不敵な笑みを浮かべ再び拳を構える
エイラ「どうなんだよ、勝てそうか?」
トリニティ「どんと来いって感じよ。楽な相手じゃないけど___」
ブラック「あかねは来ないわよ」
バッサリ、という表現がしっくり来るだろうか。ブラックは一言でビビッドチームの希望を断ち切らんとした
ブラック「塔から解放された魂が戻ってはいるのでしょうけど意識が戻るまで少し時間がいるでしょうね。私達の時は半日くらいかかったかしら」
空から降り注ぐ敵の大群は途切れなく。示現力を自在に扱い飛翔するかつての友人の成れ果ての戦力はトリニティを上回っていることは打ち合えばすぐに解った。ただ、一色あかねさえここに来さえすればなんとかなるという根拠のありそうでないような確信がビビッドチームの心を支えていた
ブラック「彼女に頼らず戦いたいというのは立派。でも現実、画竜点睛を欠いているようなものよ。あなた達ではどう足掻いても私には勝てない」
トリニティ「……それなら半日付き合ってもらうまでのことよ!」
ハンマーを放り投げて粒子化し、宙からブレードを引き抜くとトリニテイは再び戦いを挑んだ。最早言葉では止まらぬ覚悟がトリニティにはあった。だからブラックは力でそれを黙らせることにした
ブラック「殺しはしないけど___ぶっ壊れてもらうわよ」
言い放つと彼女が纏う威圧感が急激に増していく。既に全力に近いものを投入しているトリニティと違い、様子見半分だった彼女がギアを一段上げた。
ブラック「あなた達は3人と他。こっちは4人と他。決して埋められぬ差があると知りなさい」
両の手を開いて、前に突き出して構えた。それに連動し巨大な拳が巨大な手の平へと変形する。彼女が放つどす黒い気配に怯えてかネウロイ達が心なしか遠巻きになっている
それを追撃するウィッチーズ達を除き、トリニティと芳佳、エイラの3人は底知れぬ実力の片鱗を見せ始めたカラードブラックを迎撃する構えを取った