〈BI防衛軍・作戦指令室〉
「北面防衛隊、前線の消耗率が20%を越えました。南西航空団も15%。」
長官「踏ん張らせろ。ビビッドチームがケリをつけるまで奴らをこの国の防衛圏内に押しとどめるんだ」
「しかしこの消耗ペースでは戦線の維持は半日と持ちません」
長官「泣き言を言う部隊があるなら、言って聞かせろ。今一番の前線に立っているのは年端もいかん少女達だ。我々が先に尽きる訳にはいかんだろうが」
「了解です」
長官「さあ、正念場だ」
唸るように呟き彼は椅子から立ち上がった。自分に言い聞かせるようなその言葉だったが、戦いに身を投じる全ての人間達は皆同じ思いを抱いていた
―――――――――――――――――――――――――――――
「___!」
一方その頃。あかね達が住む場所とは少し違う次元、広い海に浮かぶ巨大な船。あまりにも巨大すぎる船は街1つを甲板に乗せてゆったりと航行を行っていた
その街に備えられた軍事基地の一室で、ぼんやりとコーヒーを呑もうとしていた彼女はモニターが発するけたたましい警告音を聞いて飛び上がった。足元に散らばるコードを器用によけながら転がるように機械に駆け寄り、何度かキーボードを叩き現状を把握すると部屋の隅にあった赤いボタンを殴りつけた
<ジリリリリリ!!!>
基地中に警報が鳴り響く。数十秒もせず、部屋のドアを蹴飛ばして数人の女性が飛び込んでくる
「見つけたのか!!」
「はい!突然反応が明瞭になりました!エイラ大尉以下3名のストライカーを追えます!」
「よし。ミーナ!」
「解ってるわ」
言われるまでもなく彼女はポケットにある通信機を取り出し、基地に張り巡らされたスピーカーへ繋ぐと凛とした声で指示を飛ばす
「全隊員に告ぐ!現時刻をもって我々は〈ディメンション・アタック〉作戦に突入する!作戦に参加する全隊員は至急〈晴風〉に搭乗せよ!繰り返す___」
「留守を頼むぞ」
「お任せ下さい坂本少佐。こちらからも全力でサポートを行います」
「うむ。よし、行くぞミーナ!ストライクウィッチーズ、出動だ!」
______________________________
ブラック「___!これはあの子の……でも、早すぎる!?」
トリニティに強烈なキックをぶちかまして吹き飛ばしたブラックの表情が驚愕に染まる。東の小島から一色あかねが飛び立った気配を感じ取ったのだ
何かアクションを取る間も無く、光をも凌駕せんとする程のスピードで接近してきた赤い閃光がネウロイで構成された黒い壁を引き裂きながら戦場へ飛び込んできた
「れいちゃああああああああああ!!!」
挨拶代わりの右ストレート。赤い流星が黒い戦士に衝突し、辺りを爆風の余波で押しのけた
ブラック「くっ!」
槍の柄の中央であかねの拳を受け、押し戻す勢いを利用し宙返りで間合いを空けた。真紅の戦士も思う所があり追撃はせず、漆黒の戦士の顔を精悍な顔つきで見つめた
トリニティ「あかね!」
思わず声を上げたトリニティは、直ぐにビビッドレッドの様子がいつもと違う事に気付いた。パレットスーツに若干の変化が起こっている。いつもはショートでフリフリのスカートの後ろ半分が少し長めになっており、裾の先が明るい炎のようにゆらゆらと燃えている。彼女の可愛らしい短めのツインテールも肩の少し下まで伸びて、纏うスーツには赤と白に加えて黒の太いラインが数本走っている。そして背中には翼を模した赤いパーツが二つ堂々と輝いていた
ブラック「……アレが身を捧げた、ということね。心を持たないアローンがあなたに力を与えられるとは。予想していなかったわ」
「あの子に心がない?そんなことない。あの子が秘めた思いも願いも、すっごく熱く燃えていた。それをあなたにも教えてあげる」
右手を握りしめ顔の横に上げると、彼女の拳が黒を秘めた赤い炎を纏った
「意志を受け継ぎ、希望を灯す。この身が背負った願いをくべて、今こそわたしは炎となる。オペレーションは、ビビッドレッド」
示現力を完全に自分の物にしたあかねがドッキングを行うことで得られるパワーは、これまでの比ではない。それこそ、3人で合体しているトリニティを上回っているのは確実だ。だがしかし、カラード・ブラックをも凌駕するほどなのかというとその限りではなかった
つまりこの増援を受けてもブラックの優位が損なわれた訳ではない。だというのに、ブラックは戦いの手を止め、鋭い視線を紅い戦士に向け言葉を綴る
ブラック「あの時、言ったわね?私が困ってたら、助けてくれるって」
レッド「___うん。助けてあげる」
本心だ。ブラックには解る。彼女の紅い瞳はどこまでも澄んでいて、怒りや憎しみに囚われた濁りは見られない。ただ真っすぐに希望の炎を心に灯し、赤い拳を握っている
ブラック「だったら、物騒な拳を降ろしてくれない?まさかそれを私にぶつけたい訳じゃないんでしょう?」
レッド「ううん。ぶん殴ってあげる」
ブラック「なんでよ」
素で突っ込んでしまった
ブラック「あなただってきっと同じことをするでしょう?あおいを、わかばを、ひまわりを。おじいさんを、お母さんを。こまりやなつみや同級生達を救うためなら、見ず知らずの世界の1つくらい滅ぼしたっていいと思うでしょう」
レッド「悪いことは悪いことだよ。わたしはそう言うしかない。認められない」
ブラック「ええ。私はこの行いが罪であると、認識している。でもそれが帳消しになるほど崇高な使命を背負っているのよ」
レッド「崇高だろうがなんだろうが!わたし達に相談もしないで、喋るカラスにもっともらしいことを吹き込まれたからメチャクチャするなんてちゃんちゃらおかしいね!」
ブラック「うるさいっ!」
ブラックは巨大な拳を発動し怒り任せにビビッドレッドを叩き潰した。レッドは己の拳をアッパー気味に放ち、赤い閃光をぶっ放して迎え撃つ。両者は空中で激突し暴風を巻き起こしながら拮抗した
ブラック「所詮貴女も、自分の世界を守りたいだけ!その為に戦いに挑んでいる!私と同じでしょう!?だというのに、何故そんな……澄んだ瞳で私を見るの!?」
レッド「わたしは。私達の世界を守るのも、れいちゃんを笑顔にするのも。どっちも同じくらい……やんなくちゃいけないことだと思ってる。だからあなたを倒して、あなたを救いたい。これが私の思い」
ブラック「そんな都合のいいことをッ!」
レッド「それができる程の力だって、わかってるはずだよ!忘れたっていうんならもう一回思い出させてあげる。示現エネルギーは、都合のいいハッピーエンドを見せてくれるってね!」
天に向けて拳を突き上げれば、彼女を中心に赤い光の輪が空いっぱいに広がる。周囲のネウロイが片っ端から爆発し、ネウロイの残骸がビビッドレッドの紅い輝きをキラキラと反射して戦いの舞台に舞い散った