ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第70話 「悪夢を運ぶ黒い風」

巨大な拳を弾き飛ばしてレッドが宙を駆けた。あまりの速度にブラックはもう片方の拳を振り下ろす暇も無く自らの手に装備した篭手でビビッドレッドの強力なパンチを受けざるをえなかった。インファイトの間合いに入ったレッドは一瞬で10発の突を放ち、アローンの装甲を容易く貫くパンチを連続で受け止めたブラックの篭手には小さなヒビが入った

 

 

レッド「お仕置きだよ!」

 

ブラック「でかい口を!」

 

レッド「理不尽に奪うようなやり方じゃ、喧嘩になるに決まってるでしょ!」

 

ブラック「道徳を語る余裕がそっちにはあるんでしょうが、こちらはそうもいかないのよ!」

 

 

紅い拳と黒い拳が交差する。衝撃波が海を割り、宙を裂く

 

 

レッド「数ある選択肢の中で一番悪手を取ったんだよ!誰かの幸せを横取りして、自分の友達に配ろうなんて!」

 

ブラック「選べる立場ではないと、何度もそう言ったでしょう!」

 

 

ブラック自身の左右の拳、それと別に襲い掛かる巨大な拳。全てが余すことなく凶器である4つを丁寧に捌きビビッドレッドは肉薄して攻撃を叩きこむ

 

 

レッド「あんなカラスにもっともらしいことを吹き込まれて、それに縋っただけだ!」

 

ブラック「どこまでも……!崖っぷちに追い込まれた人間を突き放すようなことしか言えないの!?」

 

レッド「わたし達は手を差し出してる!れいちゃんが歩み寄る番なんだよ!」

 

 

篭手のダメージが反映されヒビの入った巨大な拳を間に割り込ませ、手を開いて壁を作る。ビビッドレッドが思い切り拳を振り抜けばついに砕け散るが、その間を縫って赤い槍が飛び出してビビッドレッドの額を狙う。上半身を思い切り反らして突きを躱し、勢いを乗せて右足を跳ね上げ槍を持つ片方の手を蹴り上げる

 

 

ブラック「ふんっ」

 

 

その足を手でガシッと掴む。腕輪は黄色に変わっていた

 

 

レッド「やばっ」

 

ブラック「口を回しすぎね。痛い目、見てもらうわよ!」

 

 

ブラックの背後で黄金の輪が回転を始めたかと思うと、彼女の身体が黄色い火花を散らす。ビビッドレッドがもう片方の足で蹴りかかるより早く、ブラックは体内で増幅させた力を思い切り放出した

 

 

レッド「あばばばばばば!!!!」

 

 

握られた部分から衝撃波を流し込まれ、雷に打たれたような衝撃がビビッドレッドを襲う。すぐさまビビッドレッドも全身にエネルギーで防御フィールドを発生させて攻撃を遮断し、掴まれている部分にエネルギーを集中させ爆発を起こしブラックの拘束を無理やり解除した

 

 

ここまでの打ち合いを経て尚、両者とも身体に纏う防御フィールドが厚いため外傷は無い

 

 

ブラック「だからチャンスがある、と思っているのでしょう?確かにあかね、あなた達は私の到達したステージに手をかけているし、実際私も〈一部〉を切り捨てたから最大出力が多少落ちている。それでも___」

 

 

ふう、と息を吐いたブラックは両手にエネルギーを溜める。バチバチと音を立ててエネルギーの球を創り上げ、直径1m程のサイズまで大きくしたそれを力強く投擲した。ビビッドレッドへまっすぐ向けて進む攻撃を横から飛び出した青い暴風が轟音を纏ったハンマーの一撃が打ち落とした

 

 

トリニティ「おいて行かれちゃ困るわよ!」

 

宮藤「蚊帳の外は勘弁です!」

 

 

ブラック「これは頭数の戦いではないのよ?そろそろ解ってもらわないと」

 

 

ブラックが両の手を広げ、目つきをより鋭く尖らせる。背後に展開されていた輪が人間大からブラックの背丈の半分ほどまで縮み、彼女の背中にマウントされるようにくっつく。しかしそれから発せられるパワーはより増大している。彼女の腕輪は黒一色に染まり、ブラックは両手に篭手をつけ、槍と弓を携えた

 

 

彼女が放つ示現力が周囲の空間を歪ませる。近づくことすら困難な程の影響力を辺りにまき散らせながら、真っ黒な瞳をすっと滑らせた

 

 

だが、そんなブラックを見てトリニティは合体を解除した。その場に3人のパレットスーツ装着者が現れ、まっすぐとブラックに向き合った

 

 

ブラック「正気?」

 

わかば「あなたに一言いってあげたくてね。私達の言葉で」

 

ブラック「無駄よ。あなた達がするべきは私を倒す事。そして倒したければ、全員で1つになって向かってくるしかない」

 

レッド「でも、それじゃ結局あなたの思うつぼでしょ?」

 

あおい「あかねちゃん?なにを……」

 

ブラック「ふふ、勘づいたようね。みんなが混ざり合ってぐちゃぐちゃになれば、そこに個性など残りはしない。どんな色も呑み込まれて、真っ黒な塊になるの」

 

 

ブラックは手を広げ、その上に4色に別れた4つの球を作り出す。それらを1つに混ぜ合わせれば、様々な色に変化しながら最後は真っ黒な巨大な球に変わる

 

 

ブラック「どんどん混ざり合って大きくなって。そうすればいつか〈観測者〉を名乗る超常の存在のように、完全に個が消失した概念のような生き物へなっていくのよ。そうすれば今のままの心躍る幸せな生活の続きなど、夢見ることもできなくなるわ。あなた達が目指す勝利の先には、夢も希望も待ってない」

 

レッド「……じゃあ、あなたは何を夢見ているの?」

 

ブラック「この世界の命を使って、私の世界を再現する。私自身が壁として世界を覆い、示現エネルギーの影響を受けないようにすればかつてのような最期を迎えず、新たな可能性を掴んで未来を描いてくれる。私達はもう一度やり直せるの」

 

ひまわり「うわ、ヤバすぎじゃん。魔王だって世界の半分は譲ってくれたりするのに、全部もってく気?」

 

ブラック「こんな力に関わるべきではなかったのよ。あなた達も……」

 

 

ブラックを中心に渦巻く示現エネルギーの流れが宙を引き裂き、次元の法則を書き換える。既に彼女を中心に、所謂世界の改変が始まっているのだ

 

 

ブラックはこの期に及んで、仕掛けず、待った。今ブラックの支配下にあるネウロイ達は、この世界の人間達の魂を壊さないように回収している。このままあかね達がアクションを取らなければ、奪った魂を変換しかつての世界を再現し、少しずつでもあかね達の世界を侵食する事が可能だからだ

 

 

その空き時間でビビッドチーム達と言葉を交わしたのは、ただの時間潰しなのだ。ブラックは自分にそう言い着かせ、こちらを見つめる彼女達の瞳を見据える

 

 

 

あおい「あかねちゃんをどれだけ好きでも。私は私でありたい。そうしなきゃ、あかねちゃんの友達でい続ける事ができなくなっちゃうから」

 

わかば「この身を剣と捧げたけれど。三枝わかばとして立っていてこそ果たされる誓い。私の信じた強さで、私達は勝利する」

 

ひまわり「みんな違う存在だから、手を取り合って強くなれる。みんな一緒になっちゃったら意味ないじゃん。そんな孤独、二度とごめんだね」

 

 

 

レッド「___例え1つになるとしても。わたし達は、わたし達として強くなる。1人1人にある思いは、これからどうなっても決して消えたりしない。誰にも乱されることのない、原点。それを握りしめていれば、例え魂を裂かれるような示現力の流れの中でも、自分を見失ったりしないから」

 

 

初めてのドッキングの際にあかねがわかばに言った言葉だ。この言葉はあかねが自身の支えにしている言葉でもある。れいの為にれいと戦うという矛盾を孕んだこの場面でも彼女がブレないのは、自らが初めの戦いに際し志した原点を芯に据えているからだ

 

 

レッド「今の生活が大好き。今っていうのは……常に変わっていくものだけど。わたしはその変わっていく〈今〉がより素敵なものになっていくよう頑張ってる。わたしはわたしの〈大好き〉を護る為に戦う」

 

 

レッド「あなたも、そうだったんじゃないの?」

 

ブラック「黙りなさい」

 

 

小さく呟くように、感情のこもっていない独り言が零れる。何ともないような問いかけが、ブラックの心に刹那の空白を産んだ。頭が真っ白になったかと思えば、一拍遅れて憤怒が思考を支配する。知った風な口を利くこの少女を叩きのめしたい、という感情が心を埋め尽くし、余計なものを洗い流した

 

 

ブラック「この私が愚かだと言いたいのね、ビビッドレッド。正しさを見失って醜く足掻いてるように見える?でもこれがあなた達の未来に待っている姿なのよ」

 

レッド「カラード・ブラック。生憎だけど、わたしの未来はハッピーエンドで予約済みなの!___あなたが諦めた可能性だっていうなら、見せてあげる!」

 

 

 

 

 




お話はライブ感重点で作っています。それでもあまりブレすぎないよう定期的にこの先の展開を箇条書きにして見つめなおしたりしているのですが、先日やってみるとほんと一瞬で終わってしまって、ああ終わり見えて来たな・・・とさみしくなってしまいました。よければもう少し付き合ってくださいね
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