拳が流星となって降り注ぐ。比喩ではなく、ビビッドフォースの〈殴ろう〉という意志に反応した示現力が具現化し巨大な光の拳が無数にカラードブラックへ襲い掛かった
ブラックはその攻撃を受ける為に巨大な拳を展開し高速ラッシュを繰り出した。物理法則の限界を越えた速度で繰り出される乱打は破壊力の残像を残しながら降り注ぐ光の拳を全て打ち消す事に成功する
余裕の表情のブラックを見て少しむっとしたビビッドフォースは握りしめた手を開いて、ふわりと横に滑らせた。どこからともなく黄金の風が戦場に吹き荒れて、それに触れられたネウロイは身体に赤い火花を散らせたかと思うと次の瞬間には光の粒へと分解され風の一部へと取り込まれた
ブラックは槍を取り出し黒く光る穂先を足元に向け、水を巻き上げるように勢いよく下から上へ切り上げた。切り裂かれた空間から黒い霧が吹き出し黄金の風に真っ向から食い掛る
風上に座す主に仇名さんとする物を浄化し光へ返す黄金の風に対し、物質も事象も全てを呑み込み漆黒へと変質させる亜空間の瘴気が拮抗し両者の狭間で大きな爆発が生じる
自らに迫る風を受け切ったブラックが攻撃に回る。槍を弓に持ち換え、4本の矢を一息に放った。しかしビビッドフォースは避けようともせず涼しい顔で待ち受けた
矢の一本一本がネウロイのビームなど比較にならない威力であることは容易に見て取れたが、それでも自らが纏った黄金の風を貫通することは不可能だろうということも同時に解っていた。実際4本の矢はビビッドフォースに命中することなく光に飲まれ消失する。弓を放った姿勢で様子を伺っていたカラードブラックは呆れたように溜息をついた
ブラック「インチキくさい能力ね。それなに?」
フォース「スーパービビッドオーラだよ!弓なんて捨ててかかっておいでよ。オーラ消して殴り合ったげるから」
ブラック「嫌よ。私の目的はあなたを倒す事より、あなたを釘付けにすることにあるんだから」
ブラックが操るネウロイの攻撃に見舞われたものは死にはしない。死なずに、その身体は特殊な光に包まれ眠るように地に伏すのだ。彼らの魂は別次元の存在に上書きされる準備に入り、身体は素材として大切に保管される。撃墜された戦闘機や破壊された戦艦の残骸の中で、搭乗員達はその未知の現象に見舞われている。戦線が広がれば、避難した民間人達もその牙にかかるだろう
現時点で一対一の戦いに関して言うならばビビッドフォースに明らかな分がある。だが一発で決着をつけられる程両者にある力の差が大きい程ではない。先にネウロイをどうにかしてしまうという手もある。ビビッドフォースがその力を振るえば、数十キロ離れた戦場であろうとネウロイを薙ぎ払う事が可能であろう。だが他に手を回しながらカラードブラックを抑え込む、というのは力に目覚めたばかりのビビッドフォースには少しばかり難題であった
ではどうするか。悩みがてら天を仰いだビビッドフォースにいいアイデアがビビっと来た。空の穴を塞いでしまえばいいじゃないか
ビビッドフォースはイメージを練り上げながら穴へ手をかざす。自分の意識を空へ向かって薄く広げて感知領域を広げ、空の裂け目の周囲の状況を瞬時に把握する。どういった力で異空間に繋がっているのかが解れば、それを閉じる方法も感覚で理解できる。感覚さえ掴めればビビッドフォースは己の望むような結果へ事象を結びつけることが可能だ
手の中に溜めたエネルギーを大風呂敷のように勢いよく広げる。ぐんぐんと大きくなり、やがては空を全て呑み込めそうな巨大な光の幕が黒々と光る次元の裂け目に覆いかぶさった
ブラック「は!?」
ビビッドフォースを止める為に飛び出そうとしたブラックを強烈な一撃が出迎える。ビビッドフォースの身体から飛び出した緑の稲妻がカラードブラックに直撃したのだ。眩い閃光を放つエネルギー体はビビッドグリーンを形どり、彼女を思わせる鋭い斬撃を数発見舞う。不意を突かれたブラックだがすぐさま槍を構えて攻撃をいなし、反撃の一撃を頭部に叩きつけた
残像はゆらりと立ち消えるが、しかし最後の瞬間に破裂して電撃のドームを発生させる。それに囚われたブラックは全身に凄まじい熱量の電撃を喰らうが、彼女の防御力をもってすれば精々肌が静電気でちくちくする程度のダメージしか感じない。身体から衝撃波を発生させて打ち払う頃には既に事は済んでいた
空にあった筈の割目は影も形もなく、やけに白ばんだ空が広がっていた
ブラック「ちっ、なんてこと!」
もう一度巨大な侵入口を作るにはそれ相応の時間と力がいる。カラードブラックが先程と同じ大きさの裂け目を発生させている間にビビッドフォースは隙を見せた自分を無力化し、この世界に残った全ネウロイを完全に消滅させる事ができるだろう
故にビビッドフォースを倒さない限り次の手を打つことは叶わない。カラードブラックは覚悟を決める必要があった
ブラック「わかった、わかったわ。なんとしてもあなたと殴り合わないといけないってコトね」
フォース「そいうコト」
しかし追い込まれた訳ではない。むしろ選択肢を一対一の戦いのみに絞られた今、カラードブラックという戦士の真髄が発揮されようとしていた
ミシリ、と空間に亀裂が走る音を聞きビビッドフォースは瞬時に身構えた。ゲートが開かれるのとは少し違う音。眼前に立つ彼女が放つパワーに次元を構成する壁が耐えられないのだと気付いた
爆発的な力の上昇を察知した次の瞬間には、既にビビッドフォースの目前にカラードブラックの槍が迫っていた。素手で受けるのは得策ではない。反射的にビビッドフォースは自らの胸から光の球を取り出し、瞬時に武器へと変化させる
<ガキィン!>
ビビッドフォースが攻撃を受け止めるのに選んだのは剣だ。白く輝く両刃の長剣は、緑の柄と金の鍔を備える豪華ながらも質素で武骨な仕上がりとなっている。押し返そうと力を込めるも、完全に拮抗した槍と剣は両方とも動かない
フォース「……!」
ブラック「次元の裂け目を維持し、出現させたネウロイを制御し私の為に動かすのに使っていた力。それが今全て私の下にある!」
ブラックは上半身を引き、槍にかけていた力を一気に脱力する。必然押し込もうとしていたフォースの体勢が僅かに崩れた。引いた槍の柄を下から上へ突き上げる。狙いは顎だ
フォース「ふんっ!」
身体を回転させながら距離を放し槍の間合いから外れ、力任せに剣を横殴りに振り抜く
黄金の斬撃が光線となって放たれる。無秩序に放たれたように見えて、無限に近い射程を持つ光線は味方を避けネウロイだけを切り裂いていく。ブラックは次元の隙間を通ってフォースの真後ろへ転移し隙だらけの背中に槍を真っすぐ突き立てた
死角から迫るノータイムの攻撃だが、未来予知に近い直感で察知していたフォースは即座に背面にシールドを発生させた。法陣を模した強力な盾はウィッチをリスペクトした絶対防御。しかし槍は盾に一撃で突き砕き、フォースは傷こそ負わないものの衝撃を受け流しきれず後退した
ブラック「さぁ……思う存分、やりあいましょうか!」
フォース「上等だよっ!」
ぺっと唾を吐き捨て、ビビッドフォースは剣を持つ手に力を込めた