ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第76話 「実家に帰らせていただきます」

 

 

あかねが目を覚ましたのは暖かな布団の中だった。嗅ぎ慣れた匂いも見慣れた天井も、間違いなくここが我が家であるいとを証明してくれる。これまでの全てが夢だったのかとぼけっとした頭で考えながらあかねは寝返りをうった

 

 

 

あろん子「おはようあかね。よく眠れたかしら?」

 

あかね「うわわわわー!?」

 

 

寝返った先であろん子とばっちり目が合い、寝起きとは思えない声量で絶叫を上げて飛び上がってしまった。彼女の驚きに反応してすわ戦いかと示現力がふわふわ寄ってきたが、あかねが手でおい払えばすごすごと辺りへ消えていった

 

 

あかね「あれっ?なにがどうなったんだっけ!?」

 

あろん子「なにはともあれ、万事OKってな感じよ。私もなんか復活したし」

 

あかね「なんかって……いや、よかったけど」

 

 

布団の上で漫画を読みながらごろごろしていたらしいあろん子は再び読書に戻った。そんな彼女から目を逸らして、一色あかねは今の状況を整理するため目を閉じてむむむっと考え込んだ

 

 

カラードブラックを名乗る彼女と激しい戦いを繰り広げた後、ネウロイ達が消滅した報告を聞きながら合体を解除して元に戻った事まではなんとなく覚えている

 

 

あかね「わたしあの後気絶したの?」

 

あろん子「気絶ぐらいするでしょ。ふつう完全合体で超次元の生命体に進化したりすれば元に戻ったりできないのだから。私の相方が真っ黒な形態から分離できないのと同じようにね」

 

あかね「あろん子ちゃん待って、どんどん解説進めるのやめて。とにかく……お腹すいた!ご飯食べたい!」

 

 

腹が減ったら何にもできない。教科書にもそう書いてある

 

 

 

あかねは一度現状について考えることを止めて台所へ向かうことにした。少々ふらついてしまい、白目を向いて寝転がっていたあおいを思い切り踏んづけてしまった気がしたが、まあそれについてもとりあえずは考えないようにした。とにかくお腹が空いていた

 

 

あかね「ももーいるー?なんか食べたいんだけどー」

 

ましろ「あかね起きたの?カレーあるけど食べる?軽めのおうどんとかにしとく?」

 

あかね「___」

 

 

台所にいたのはピンクのツインテールではなく、赤い髪を短く切りそろえた女性___一色ましろだ。湯気を上げるお鍋の前で元気に動き回る彼女がつけているエプロンにあかねは見覚えがあった。家事をする際母が必ずつけていたピンク地に赤いハートのアップリケが縫い付けられたそれは、研究者としての白衣を脱いで母親として頑張る為に愛用していたものだ。そのエプロンはもう何年も箪笥に仕舞われていた筈だった

 

 

ましろ「マヨネーズはちょっとだけだよ?んーでも頑張ったからねーあかねは。今日は好きなだけ___わわっ!?」

 

あかね「お母さぁああああん!おかぁ……おがっ……ぐじゅっ」

 

ましろ「おっきな甘えんぼさんだなー?……よしよし。頑張ったもんね、あかね。えらいえらい」

 

 

せきを切ったようにあかねは母に泣きついた。これまで張り詰めていたものが緩み、複雑な感情をただストレートに吐き出したかった。あかねだってまだまだ甘えたい盛り。そしてましろも甘やかし盛りだったのだ。包み込むようにあかねを抱きしめて撫でまわすましろの瞳にも薄い涙が浮かんでいた

 

 

もも「ねえおかあさー……おっとっと」

 

 

調味料を取りに別部屋へ行っていたももだったが、慌てて陰に隠れて2人の様子を微笑ましく見守ることにした。大きな試練を乗り越えた姉が、思う存分甘える為には妹の自分がいては恥ずかしいだろうと考えたのだ。あとお姉ちゃんが大泣きして甘える様子を盗み見したいとも思っていた

 

 

あかね「おか、おかさああああああんうえええええええろろろろ!!!!」

 

ましろ「わああああ!?あかねが吐いちゃったぁぁぁああああ!!!!???」

 

もも「ちょちょ、だいじょうぶ!?」

 

ましろ「ももー!!!タオルもってきてタオル!!!!!」

 

 

見守っている場合ではなかった。ももはすぐさま脱衣所に飛んでタオルを数枚ひっ掴み台所にとんぼ返りする。あかねの嘔吐は疲労によるものというより、泣きゲロだった。少し感極まり過ぎたのだった。感情を爆発させて冷静になったあかねは鼻水とその他もろもろをももとましろに拭われている間に少し冷静さを取り戻した

 

 

あかね「お腹すいた……うげっ」

 

ましろ「わかったから一回お水飲みなさいあかね。おうどん茹でたげるから」

 

あかね「かれーうどんにして……」

 

ましろ「はいはい」

 

 

ぼーっとしながらちゃぶ台の前に座り、あかねにしては珍しくなんにも考える気にならず、気だるげに天井を見上げていた。アローンとの戦いが始まってからこの家には多くの友人が住み着いていて、どこにいても誰かと一緒だった筈なのに今あかねはたった1人居間で座布団の上に座っていた。妙な寂しさを紛らわせるために、辺りにあった座布団を引き寄せて抱きしめた

 

 

ましろ「はい、ゆっくり食べないとだめだからね」

 

 

こと、と机の上に器がおかれる。湯気の上がるカレーうどんをゆっくり食べ始めた

 

 

ましろは机に頬杖をついてその様子を眺める。言葉が交わされない、うどんをゆっくりすする音だけが聞こえる静かな時間がしばらく続いた。次に言葉を発したのは、お腹がそこそこ満たされたあかねだ

 

 

あかね「ごちそうさま!」

 

ましろ「お粗末さまです。いやぁ、久々に台所に立ったけどちゃんと身体が覚えてるもんだね。これからもちゃんとお母さんできそうだよ」

 

 

ケラケラと笑いながら器を下げるましろの顔をあかねはじっと見つめた

 

 

あかね「お母さん、もう元気なんだよね」

 

ましろ「うん。あかね達のお陰かな。示現力の呪いは完全に消滅したみたい」

 

 

一色ましろが抱えていた呪い。希望を背負ったあかねとは真逆に、この世界を一瞬で崩壊させる危険な呪いの示現チ力を内包した爆弾はましろの中から完全に消滅していた。超次元に存在する〈管理者〉達が与えた試練が完全に終了した証だ

 

 

あかね「そう、なんだね。よかった」

 

 

確かに示現力を与えた〈管理者〉達の試練は終わったのだろう。しかし、一色あかねの直感が告げていた。まだ自分がやるべきことは残っているのだと

 

 

居間に繋がるふすまがガラリと開けられた。漫画本を片手に握ったままのあろん子がそこに立っていた。彼女の真っすぐな瞳を見れば、なにか大切なことを言おうとしている事は誰だって解るだろう。あかねもましろも、息を呑んで彼女の発言を待った

 

 

 

あろん子「___あかね」

 

 

あかね「うん」

 

 

あろん子「この漫画、5巻だけがどこを探してもないんだけど___」

 

 

あかね「うん……うん?え、マンガの話……?」

 

 

あろん子「え、なんでそんな悲しそうな顔を……?私なにか悪いことしたかしら?」

 

 

あかね「あ、いや、ごめん。勝手に勘違いしただけだから。マンガ、あとで探すからちょっと待っててね」

 

 

あろん子が悪い訳ではないが、完全にやる気を削がれてしまった。あかねは状況を知ってそうな健次郎に会う為空になった食器を台所に下げる為に立ち上がった

 




あかね「いやシリアス展開じゃないんかーい!!」(座布団をあろん子の顔に叩きつける

という展開にするか迷ったんですが、あかねはあんまり激しいツッコミをするタイプじゃないかもしれんな・・・と迷った結果こんな感じになりました(ケンカになった時は容赦なくグーでいくけど


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