ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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新キャラ投入。そろそろ物語が大きく動きます





第7話 あかね「海沿い散歩の拾いもの」

 

 

どんよりとした目覚めだ。どろりとした水に全身が浸かっているような、すさまじい疲れが全身にまとわりついて気分が悪い。起き上がろうにも両腕は痺れて感覚が無かった。首を横に動かそうとしたとたん走った痛みに思わず顔を歪めて唸る。どうにも困ったことによくないのは気分だけではない様子だ。自分の身体とは思えないほど重たく、あらゆる感覚が鈍っている。

 

 

新聞配達が毎日の始まりである健康児一色あかねはこのような気だるい寝起きは経験した事がなかったため筋肉痛という言葉が出てくるまでしばし時間を要した。両腕が動かないのは親友と妹に完全ホールドをくらっているからだろうな、と考え昨日の出来事を目を瞑って思い出す。ホント夢だったんじゃないのか、こうなってしまうと疑わしい。

 

 

あかね(ももより早く起きるなんていつぶりだろ・・・。わたしも相当な早起きガールだけど、ももはわたしを見送るという使命感でわたしが起きるのを察知して起きてくるからね・・・。タッチの差で負けるんだよねー・・・)

 

 

固まった首をゆっっくりと動かし、目をしばたいて時計を探す。確かこの位置だと右側の壁に

 

 

<09:14>

 

 

 

あかね「ほぁ」

 

 

冗談ではない。早起きシスターズの面目丸つぶれだ。配達どころか学校も始まっている。当然今日は土曜でも日曜でもない。遅刻だ。(ちなみに昨日の夕刊配達のことも忘れている。あおいが泊まりにくるということでテンションがあがりすぎていたからだ)

 

 

あかね「おき・・・おきて・・・ゲッホ」

 

 

のどがカラッカラで声が出ない。寝起きで大声を出そうとしたから咳が出たのだが、その衝撃が背筋にビビっと響く

 

 

あかね「いっーーー」

 

 

全身筋肉痛であるあかねは悶えた。とりあえず2人を起こす必要がある。早急に。堅い股関節に気合をいれ、足であおいの足を軽くつつく。

 

 

あおい「・・・うぉぁぁ・・・いったぁい・・・」

 

 

軽く、であったがあおいも筋肉痛らしく身体をもぞもぞ動かしてふとももに手を伸ばそうとして、そこで腕が痛いのに気づいて1人悶え始めた。反対に身体を倒して開放された腕をその勢いでもものほっぺにベシっと乗っけた。

 

 

もも「・・・んあ。」

 

 

あかね「ももやばいよ。9時だって。」

 

 

もも「・・・?」

 

 

あかね「午前9時。」

 

 

ももはバネでも仕込んであったかのような身のこなしでガバっと身体を起こした。時計を凝視するその頬に一筋の汗が垂れる。あいた口が塞がらない、ももはまぬけな顔でそのまま固まってしまった

 

 

あおい「あかねちゃん・・・?なんで・・・ああ・・・お泊りだったね・・・。ごきげんよう・・・」

 

 

あかね「ごきげんようあおいちゃん。」

 

 

もも「いやご機嫌よくないよ!早く起きて早く!学校!」グイグイ

 

 

あかね「いだいいだいいだい!!!だめだめ引っ張らないでちぎれるちぎれる筋肉断裂するって!!!!」

 

 

もも「えっ。」

 

 

パっと手を離すと、あかねは亀のようなのろのろした動きで身体を起こそうと布団の上でごろごろ転がるが、はたから見るとおきるのをぐずっているだけに見える。しかし寝起きも寝つきも抜群なあかねらしくない行動にももは少し驚いた。

 

 

もも「どうしたの?まさかどこかケガしたの!?」

 

 

あかね「全身がすっごい筋肉痛・・・。たぶんあおいちゃんも。」

 

 

あおいは枕に顔をうずめた姿勢で小さく唸った。肯定の意思表示なのだが、身体を動かすことが出来ないようだ。相当参っている。昨日なにがあったか少しだが知っているももは下手に手をつけられないと、いもむしになった2人を放って居間へ向かう。そこには新聞の上で小さな身体を動かす祖父の姿があった。

 

 

健二郎「んおおももか。まだ寝とってもかまわんぞ。」

 

 

もも「おじいちゃんおはよ。ってかなんで起こしてくれなかったの!?でも新聞があるってことは配達はなんとかなったんだ・・・。でも学校!」

 

 

健二郎「やれやれ少し落ち着かんか。焦っても時間は巻き戻らんぞ。」

 

 

もも「・・・」

 

 

祖父の向かい側におとなしく座った。おじいちゃんを見下ろすことが出来るのはもっと未来の話だと思っていたが、自分の成長でなく相手の縮小でそれが叶うなど考えた事はもちろんない。可愛らしい人形はその外見にまるで合わない渋声でももへと話かけてきた

 

 

健二郎「昨日はあんなことがあったんじゃ。島中に被害もでとる、学校は休みじゃよ。連絡網を回してきたなつみちゃんは随分ハイテンションじゃったわい。避難が早かったからか怪我人は確認されとらん。ああ、あかねが頑張ったのももちろんある。配達のほうも文さんに連絡してあるわい。昨日の夕刊はあかねの奴忘れとったんじゃろうが、お前達が随分楽しそうにしとったもんで言うのも気がひけてのう。家が壊れたからその片付けでしばらく休ませて欲しいと昨日の夕方連絡したら文さんは『むしろ大丈夫かどうかこっちから電話しようとしてましたから!お怪我はなかったので?そりゃよかった!お家の片付けがあるでしょうからしばらくは私が配達しますとも!一週間ほどゆっくりなさってください!っではではー!』とのことじゃ。なーんの心配もいらん。」

 

 

しっかり手がまわしてあったようでももは健二郎の言葉を聞き終わったころには焦りが全て消え去って胸をなでおろした。しかし、あかねとあおいの様子が変だったことを健二郎に聞いてみなくては

 

 

健二郎「なに2人がいもむし?仕方あるまい。示現エネルギーが全身の細胞を駆け巡ったのじゃ。反動はあって当然。まあ初回だけじゃとおもうがな。寝ておればすぐ治る。それより、もう寝ないなら新聞めくるのを手伝ってくれんか?この身体ではちと苦労での」

 

 

もも「うーん・・・悪いけどもう少しだけ眠い・・・」

 

 

健二郎「そうか。ならゆっくり休むといい。もも。昨日が大変だったのはあかねだけではないからの。留守番、ありがとう。」

 

 

もも「・・・ん。」

 

 

小さな人形に手を振って見送られながらももは縁側を通って布団を敷いてある部屋に戻った

 

 

あかね「そりゃっ、わき腹ミサイル!」

 

 

あおい「うっひゃっ!だめだっってウヒヒヒヒ!!!」

 

 

2人は団子のようになりながら互いの筋肉痛をいかした遊びに興じている。昨日の闇におびえていたあかねとあおいはどこへいったか、半分寝ぼけたまま互いの腕や足やらをつつきあっていた

 

 

 

もも「おとなしくしないんならもう電気つけちゃうよ!私も眠いし2人も疲れてるんだから・・・」

 

 

あかね「んぇー、学校はー?」

 

 

もも「おやすみだって。新聞配達もしばらく休んで家の片付けしなさいって文さんが。」モゾモゾ

 

 

しれっとあかねと同じ布団に潜り込みながらももは応えた。

 

 

あかね「ふぁー・・・んじゃあもう一眠りしようかぁー・・・」

 

 

あおい(よーし、あかねちゃんが目つぶったらその隙だらけのわき腹めがけて)

 

 

もも「おとなしく寝なかったら健康体な私がその機動力を活かしてこちょこちょの刑くらわしますからね。つっつきですよつっつき。あおいさんも。」

 

 

あおい「・・・ぐーぐー」

 

 

もも「はいおやすみなさい。」

 

 

そういえば、しばらくしたら起こしてくれるようおじいちゃんに頼むの忘れてたな・・・というどうでもいいことを考えながらももはあかねの腕を握りしめゆっくりと目を閉じた

 

 

 

 

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同時刻。ブルーアイランド防衛軍司令室。正面のモニターには大きく2つのウィンドウが展開されていた。片方には管理局長 紫条悠里。もう片方には示現力の権威一色健二郎の名が電子体で表示されていた。

 

 

補佐「通信、繋がります。ご準備はよろしいでしょうか?」

 

 

長官「はじめよう。管理局長の方はまだしも博士の方は待たせたら次どこで話せるかわからん。」

 

 

補佐「では接続開始します。・・・完了。通話チャンネル開放いたしました。」

 

 

長官「これより示現エンジン防衛作戦の会議を行う。一同挨拶の前に。一色博士の情報提供により以下、未確認敵兵器をアローンと呼称する。それにともないここにアローン対策本部の結成を宣言しよう。」

 

 

凜、とした声が司令室の空気を締め上げた。いつも軽口を叩き続ける3人の部下も今回ばかりは口を閉じて緊張した面持ちでモニターを見上げている

 

 

紫条『はい。一同拍手。』パチパチ

 

 

健二郎『わー。緊張してきたわい。少しトイレ行ってきていいかの。』

 

 

長官「お二方。今回お2人をお呼びしたのは、示現エンジン防衛作戦において公式に力を貸していただきたいとのことです。」

 

 

紫条『おや先生、お手洗いが近いような歳ではないはずですが?』

 

 

健二郎『その通り。ワシは若返ったんじゃよ紫条くん。健二郎お兄さん、昔のようにそう呼んでもよいのじゃぞ。高野くん!君もじゃよ。』

 

 

部下1(高野くんって?)ヒソヒソ

 

 

部下2(長官の名前だよバッカお前。)ヒソヒソ

 

 

長官「お二方。我々がデータのやり取りで済むようなことを、こういう形で話し合おうとしている私の考え。察していただけないのでしょうか?」

 

 

紫条『そんなに怒っていては話し合いになりませんよ。軍人はこれだから困ります。』

 

 

健二郎『我々科学者はいつだって君らにそんな態度をとられてきたからのう。』

 

 

長官「それは煽りで仰っているのか解りませんがもし7年前の事を言われてるのでしたら、それはこの場で謝罪しましょう。そのことも、今回の話の目的ですからね。当時の政府組織の対応がこういう事態を引き起こしたといっても過言ではありませんからな。」

 

 

健二郎『君が謝ったところでしょうがあるまい。それにワシは過去の事にはこだわらん。自分の失態は別じゃがな。このアローン対策本部ができるのが5,6年ほど遅かったこと、これからはもう言及しないでおこう。じゃが、まあ、結果からいうと、アローンに対抗できるのは先の戦いで見せたビビッドシステム以外発見できてないからの。実際問題なかったわけじゃが』

 

 

長官「その発言、この対策本部の存在意義を奪いかねないものですが」

 

 

紫条『確かに。現状対抗できるのが博士の仰るそのシステム以外無いということでしたら軍に出来る事は少ないかもしれません。ですが、逆に考えましょう。我々は、既にアローンに対して確実な手が1つある。全くの0から考えるよりずっと有理。悠里だけにですね』

 

 

健二郎『うまいぞ紫条くん!1ビビッドポイント!いや失礼。しかしワシは5年前示現エンジンの一部の管理を紫条くんとこの組織に任せてから自分の研究に没頭しとったからな。現状、どうなっとる?』

 

 

補佐「こちらの組織のデータにあわせて、いくつかまとめておきましたので今すぐ転送させていただきます。話を合わせやすいよう管理局長の方にも送らせていただきます。」

 

 

 

〈ブルーアイランド〉

 

示現エンジンを中心に建てられたいくつかの人工島と、その周りにある島々のこと。あかねの住む島は天然の物である。

 

 

 

〈ブルーアイランド管理局〉

 

示現エンジンの生成したエネルギーを世界中に送るための施設〈整流プラント〉と示現エンジンの管理を行う組織。その傘下に様々な組織を抱え込み、示現エネルギーを応用する研究も行っている。その他にも様々な業務を行っている。今回の事件の情報操作に奔走したのも管理局である。対アローンの研究のため健二郎が表向き身を引いた現在、管理局のもつ権力は大きい。

 

 

 

〈ブルーアイランド防衛軍〉

 

示現エンジンの防衛を名目に、5年前に結成された。示現エネルギーを狙う存在への対抗手段として最先端の装備を常に配備しているが、アローンには示現力を介さない攻撃は効かないため多くの損害を出した。

 

 

補佐「詳細は後に、まとめておくらせていただきます」

 

 

 

長官「では、一度ここいらで会議は終了とさせていただきます。こちらに開示できる分だけデータを送っていただき、次回からの避難と戦闘補助の連携についてこちらからいくつかご提案させていただきます。」

 

 

紫条『先生、先ほど申請がありました物資の補給ですがもうすぐそちらへ着くと思われます。』

 

 

健二郎『助かる。それじゃの!またすぐ連絡する』プッ

 

 

紫条『ではまた』プツッ

 

 

長官「・・・」

 

 

補佐「通信、切断されました。」

 

 

長官「次回から3人そろっての会議はなるべく避けたいものだな。緊張感がなくなるだけだ。」

 

 

補佐「了承いたしました。そのように予定を組んでいきます。」

 

 

第一回、アローン対策本部会議 10分にて終了

 

 

 

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あかね「痛いなぁー。」

 

 

あかねは、島の海岸線をゆっくり歩いていた。手には何ももたず、手を突っ込んだポケットにもなにも入っていない。行き先もない。なにも目当てじゃない散歩。あえてあげるなら、ただ午後の太陽に当たりたいとそう思ってふとんを蹴飛ばした。ももの拘束を優しく外し、あおいを起こさないようにゆっくりと堅い筋肉を伸ばして起き上がった。時計は既に昼を回っていた。祖父の姿は居間に無く、おそらく研究室でなにかしているだろうしそれを邪魔するのは悪いので、時間をつぶしにサンダルをつっかけて外へ出た

 

 

あかね「寝て起きたら筋肉痛もだいぶ楽になったし、明日になったらもう全快だね。でも毎回変身するたびこれじゃ困るし、特訓がいるなぁ。」

 

 

朝ごはんを食べずに昼が回ってしまったのでなかなかの空腹感がある。島から見える海はやはり綺麗だが、美しさでお腹は膨れない悲しさ。あかねはあと少しだけ歩いたら戻ろうと決めてまた歩き出した。

 

 

あかね「今日はずいぶん海岸に鳥が多いな・・・」

 

 

海鳥は珍しくない。しかし、ずいぶんと多い。誰かが朝早く餌でもまいたのだろうか。とくに鳥達が群れているところをひょいと覗き込み、衝撃の光景にあかねは硬直した。

 

 

 

 

あかね「あ、あれは!こないだテレビでみた・・・まさか・・・」

 

 

 

鳥葬。どこかの国のどこかの地域、おだやかな雰囲気の土地の特集番組だった。その中で触れられたのが、死んだ人の身体を野原に置き野鳥に食べさせるという内容の一種の葬儀の方法であるらしいが、そのグロさを無警戒に想像してしまったあかねとももはその夜手をつないで眠った。今後絶対にかかわりたくない現象トップ3に入るそれがこの平和な島で行われている。まさに目の前で。サーっと身体から血の気が引いていくのを感じる。思わず目をそらした彼女だったが、怖いもの見たさの気持ちからチラリと視線を向けてしまった。いくら鳥が多いと言ってもぎっちり詰めて並んでいるわけではないのだから自然と群がられている物体は視線に晒されてしまう訳だが・・・とにかく見てしまった。

 

 

あかね「?」

 

 

グロいシーンを覚悟の上だったがまるで血肉の雰囲気はない。なんともおかしい、と様子を伺うあかねはそろりそろりと砂を踏みしめて鳥の群れに迫っていった。人間の接近に敏感に気付いた海鳥達の大半はしめしあわせたように一斉に飛び立った。飛び散る羽を手で払いながらあかねはあらわになった2つの何かを凝視した。

それはうつぶせに並んで倒れる2人の少女。1人は背中半ばまである長い黒髪。服装は短いパンツと上にどこかの学校の制服のようなものを着ている。もう夏を前にしているのに首に巻いた長い黒マフラーの上では鳥がのんきに座り込んでいる。 もう1人は反対に少し茶色の混ざった髪が首元までしかないしマフラーも巻いていない。絵に描いたような船乗りが着るような水夫服に、下は水着でも着ているのかふとももは丸出しだ。(あかねも人のことはいえない)

 

 

死体でないと判断し慌ててかけよる。背中しか見えないが鳥についばまれたような外傷は見受けられない。2人をゆっくり仰向けになおし肩を叩いて意識が戻るか確認するがまるで反応はない。顔に耳をうんと近づけて二人とも呼吸があることは解ったがやはりお医者さんに見せる必要があるのだろうか

 

 

あかね「困ったなぁ・・・1人なら背負って帰れるんだけど。」

 

 

瞬間、あかねはポケットに違和感を感じて手を伸ばした。その指先が堅いものに触れ、そこにあるものが鍵であることを直感で理解した。家の鍵ではなく、示現の力を引き出すあの鍵だ。なぜか勝手にポケットに入っていたが、これで変身すれば2人を島の病院に運べる

 

 

「  ゲホッゲホッ、ぼはっ!」

 

 

あかね「はっ!大丈夫!?」

 

 

迷い無く変身することを決めポケットに手を突っ込んだあかねだったが髪の短いほうの女の子が咳き込みながら突然起き上がったのを受けて取りやめた。背中に手をそえて身体を支えてあげると、少女は目をぱちぱちさせながら息を整えあかねにまっすぐ目を向け話出した

 

 

「ああ、ありがとうございます。あなたが助けてくれたんですか?」

 

 

あかね「わたしは何にもしてないよ!立てそう?ケガはないみたいだけどだいぶ疲れてるみたいだし、とりあえずわたしの家においでよ!」

 

 

「え、でも迷惑じゃ・・・。ってうわ!この人は?」

 

 

あかね「あなたの隣で倒れてたんだけど、知り合いじゃないの?こっちの子は起きないから島の診療所に連れて行こうと思ってるんだけど、倒れてる人ってへたに動かしたらだめなんだっけ?」

 

 

「ちょっと待ってくださいね・・・うーん、外傷はないし、頭を打った様子もない。たぶん気を失ってるだけみたい。おんぶで運んでも大丈夫だと思います。医者見習いの私の診察ですが、おそらく信じてもらって大丈夫かと。」

 

 

その少女は緊張した面持ちで倒れてる少女の身体をあちこち見たあとで、あかねのほうを振り返って安心したように言った。ならば家で寝かせて、お医者さんを家に呼ぼうと決めてあかねは倒れた少女をひょいと担いだ。たとえ変身していなくとも一色あかねにとって人間1人背負って歩くくらい造作もない。

 

 

あかね「えっと、歩けます?無理そうならここで待っててもらえればすぐ迎えに来ますけど・・・大丈夫そうですね。」

 

 

「はい、歩けます。私は宮藤芳佳っていいます。お名前聞いてもいいですか?」

 

 

あかね「わたし、一色あかねっていいます!14歳です!気軽にため口でいいよ!」

 

 

芳佳「ありがとうあかねちゃん。私と同じ歳なんだね。どっこいしょ・・・」フラフラ

 

 

相当疲れているのか足のなかなか進まない芳佳だったが人を背負っているあかねからすれば話しながら歩くのに丁度いい速度だ。並んで海辺を歩く芳佳という少女は冷静さの中に焦りと戸惑いを浮かべている。きゅっと結ばれた唇は何かを言いたげだがなかなか切り出せずにいるようにうかがえる。あかねは言いやすい環境を作ろうと軽い話題を選んだ

 

 

あかね「お腹空いてない?わたし今日は朝ごはんも食べずに寝ててすごく腹ペコなんだよー。」

 

 

芳佳「私も・・・。最後に食事してから何時間経ったのかわかんないんだけどね。ははは・・・」

 

 

あかね「そ、そうなんだ。大変だったね・・・」

 

 

平日の昼間に波打際で倒れている理由はとっても気になる。しかしそれは彼女が落ち着いた状況で慎重に聞き出すべき話だろうし、雰囲気によっては聞くべき事案では無いのかもしれない。

 

 

あかね「裸足みたいだけど痛くない?サンダル片方かそうか?」

 

 

芳佳「うれしいね。でも大丈夫、裸足でコンクリくらい平気だよ。」

 

 

あかね「ならよかったよ。もう着くからね。そこの道入って左の植え込みのところを・・・はい!ここがわたしの家です!ささ入って入って」

 

 

芳佳「待って、足の裏ふかなきゃ。」

 

 

あかね「そこの雑巾使っていいよ!この子どこに寝かせようかな・・・芳佳ちゃんも休まないとだよね。布団引くからちょっと待っててね」

 

 

芳佳「」

 

 

あかね「・・・足拭きながら玄関で寝てる。」

 

 

あおいとももが寝てる部屋の障子を挟んで隣の部屋に新しい布団を敷くとそこに黒髪の少女を寝かせ玄関に取って返し再び気絶した芳佳をかついで黒髪の少女の隣の布団に寝かせた。

 

 

あかね「あーあ・・・だれも起きてこないし、なんだか疲れたしわたしももう一回寝ようかなぁ。今日はとことんだらだらしたい気分」

 

 

あおいとももが寝ていた部屋の障子を身体が入るぶんだけあけて太陽の光が入らないようすぐ閉める。

 

 

あかね(どこらへんだっけ・・・2人を踏まないように・・・)

 

 

<ギュッ>

 

 

あかね(あ、どっちか踏んだ)

 

 

もも「・・・私だよ・・・!」

 

 

あかね「ご、ごめんごめん。目が慣れてないから仕方が」

 

 

もも「・・・」

 

 

あかね「ちょ!ふくらはぎつかまないで!痛いって!」

 

 

あわてて四つんばいに姿勢を落としてあまってる布団を抱き寄せそれでももとの間に防壁を建設した。

 

 

もも「・・・どこいってたのー・・・?」

 

 

あかね「散歩。」

 

 

もも「ふー・・・ん・・・」

 

 

あかね(わたしも寝よ・・・あ、ももに芳佳ちゃん達のこと言うの忘れてた)

 

 

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障子を通りぬけた暖かい光で部屋は薄ら明るい。畳の匂いと他所の家の匂いを放つやわらかい布団の中で少女は目覚めた。酷い頭痛に眠気が遠のいていく。自分がなぜ昼間から眠っていたのか、そもそもここが誰の家かもまるで思い出せない。まだ寝ぼけているようだ

 

 

「顔を・・・洗わないと・・・いけないわね・・・」

 

 

のそのそと布団を押しのけ立ち上がってとりあえず部屋から出ようと足を踏み出したが、混乱していた彼女はこの部屋に自分以外の人間がいる可能性を考える余裕はなかった。彼女は布団からだらしなくはみだしていた白いふとももを踏みつけてしまった。

 

 

「えっ」

 

 

芳佳「おおっ!?」ガバッ

 

 

「あ、ご、ごめんなさい!」

 

 

芳佳「なになになんなの!?敵!?」ジタバタ

 

 

<ガラッ>

 

 

 

もも「もー・・・うるさいよ・・・。というか、だれです?」

 

 

「えっ?あ、あのっそのっ・・・」

 

 

芳佳「ええっとですね、あかねさんの知り合いと言いますかなんというか」

 

 

もも「・・・やれやれ、お姉ちゃん起きて。事態の説明を要求するよ。」

 

 

あかね「おはようもも。ああ、芳佳ちゃん達も起きたんだね。」

 

 

にっこり笑って芳佳ともう1人の少女にあかねは手を振ったが腰に手を当てて不満顔のももの視線に気付いて手を引っ込めて海岸散歩の際起きた出来事を丁寧に説明した。それはももと、状況を把握していない芳佳ともう1人の少女に向けての説明でもあった。

 

 

「ありがとう。あなたが私を助けてくれたのね。お礼を言うわ。」

 

 

芳佳「私からも改めて!ありがとう。」

 

 

2人はそろって頭を下げる。布団に座り込んだままではなんとも失礼なのであかねも慌てて立ち上がっていえいえとお辞儀を返した。ももも反射的に頭を下げた。あおいはいまだすやすや眠っている。事情を聞くためと食事を用意するため居間へと移動することにした4人はももを先導に静かに部屋から出た

 

 

「・・・海が近いし、いいところね。」

 

 

芳佳「ほんと。海岸の砂も寝心地よかったよね。」

 

 

「ええほんとにね」

 

 

あかね「起こしちゃ悪かったかな?」

 

 

「「「はっはっはっはっは!!!」」」

 

 

もも(なんだんだこの人たちは・・・)

 

 

芳佳「そうだ、あなたの名前まだ聞いてませんでしたね。」

 

 

「黒騎れい。れいでいいわ。敬語なんて使わなくていいわよ。」

 

 

芳佳「OKれいちゃん、同じ難破人同士仲良くしようね」

 

 

もも「お2人さん、どこから来たんですか?波打際ってことは、それこそ船が難破でもしたんですか?」

 

 

芳佳「どこから・・・?」

 

 

れい「来たのか・・・?」

 

 

2人はそろって腕をくんで首をかしげる。

 

 

芳佳「なんとなくは思い出せるんだけど、ううーん・・・???」

 

 

れい「私はまったく思い出せないわ。そもそもホントに黒騎れいって名前だったかも」

 

 

あかね「記憶喪失コンビでもあったんだね。ほんと大変だね。」

 

 

芳佳「うーん、私は覚えてはいるんだけどなんかはっきりしない感じで・・・たぶんこれは時間が経てば治るよ。れいちゃんはなにも覚えてないんだよね?」

 

 

れい「そうなの。でもポケットのハンカチにやっぱり黒騎れいって書いてあったし大丈夫。名前は間違ってないわ。」

 

 

ちゃぶ台で互いに顔を向き合わせてももが料理を作っている間少し話をした。れいはやはり何も覚えていないようだ。年齢はおそらくあかねと芳佳と同じなのだろうが、自分のことについて考えると頭がぼーっとしてしまうらしい。顔立ちや立ち居振る舞いからクールな印象を受けるれいはそう語ると落ち込み気味に顔を伏せた。芳佳は芳佳で自分のことが思い出せそうでいまいち思い出せないという状況に少々苛立ちを見せる。

 

 

あかね「この島でのんびりしていったらいいよ。」

 

 

様子を伺いながらはらはらしていたももだが、あかねはそれに反して落ち着いた表情で2人にそう声をかけた。頭を抱える芳佳とれいはあかねにまっすぐと見つめられていることに気付いて顔をあげた。目があったことを確認してからあかねは言葉を続ける

 

 

あかね「わたしは記憶喪失になったことがないから、2人の気持ちをわかってあげることはできない。でもまあ、自分の家への帰り道を思い出すまではここを帰る場所にしたらいいよ。今いる場所がどこか解らないのって不安だろうけど、わたしが島を案内してあげる。だから、旅行に来たような気分でかるーく遊んでればすぐ思い出せるよ。大丈夫大丈夫!そんなに自分を追い詰めなくたって、そのうちなんとでもなる。」

 

 

場の空気が暗いのに耐えられないあかねのがんばりは少しだが悩める二人の心を救った。明日からの寝る場所ができたことはなにも持たない芳佳とれいにとっては非常に心強いことだ。こころよく提案を受けてもらいあかねも笑顔だが、明日から2人分の生活意をやりくりするのはももである。せめて相談くらいしてほしい、とももは台所でため息だったがあかねが言い出さなくとも帰る場所の無い女の子2人家から無情に追い出したりはしない。結局はももとあかねどっちが先に引き止めるかの問題だったわけだ

 

 

れい「・・・迷惑だとは思うけれど、ほんの少しだけお世話になります。」

 

 

芳佳「ありがとうあかねちゃん。私家事もバリバリ手伝うよ!あ、親御さんにご挨拶したいんだけど・・・」

 

 

あかね「うーん、今ウチにはおじいちゃんしかいないんだけどどこ行ったのかな。ももー!おじいちゃんは!」

 

 

もも「私もお姉ちゃんと一緒に寝てたんだから知らないよー。たぶん研究所のほうじゃない?」

 

 

あかね「聞いてくるよ。ああ大丈夫、おじいちゃんにダメなんて言わせないから。言わないと思うけどね。それじゃあちょいと失礼」バタバタ

 

 

芳佳「一緒に行ったほうがよかったんじゃないかなぁ。れいちゃん、菓子折りとか持ってないの?」

 

 

れい「いや、なんにもないわよ・・・」

 

 

芳佳「ももちゃーん。私たちも手伝うよ。ただでお世話してもらうなんて気がひけるからね。」

 

 

もも「芳佳さんお料理できるんですか?」

 

 

芳佳「余裕だよ。なんとなくだけど前はどこかで料理係を担っていた記憶がうっすらあるんだよね。」

 

 

もも「お料理することで記憶戻るきっかけになったりするんでしょか?とりあえず手伝ってもらえると嬉しいです。人が急に増えたからなかなか厳しいんですよね・・・あっ、いやみとかではないですよ!」

 

 

芳佳「大丈夫だからそんなわたわたしないで。れいちゃんは料理は?」

 

 

れい「料理をした記憶は全くないけれど、なにか簡単なことなら手伝えると思うわ」キリッ

 

 

~数分後~

 

 

れい「あら」ツルッ

 

 

芳佳「あぶなーい!」ガシッ

 

 

もも「ナイスキャッチです!」

 

 

れい「ごめんなさい。ジャガイモって案外すべるのね」

 

 

芳佳「れいちゃん猫の手だよ猫の手。指切るよ。」

 

 

れい「猫ね、猫。」

 

 

 

「スイマセーン お届けものでーす」

 

 

もも「はいはいはーい!おねえちゃ んはいないし、芳佳さんとれいさんは家の人じゃないし。芳佳さん!おなべ任せます!」パタパタ

 

 

芳佳「よーし任された!」

 

 

猫の手で野菜を抑えるのに集中するれいとやる気まんまんの芳佳に台所を任せてももは玄関へ走る。ついでにテレビの上に置いておいたハンコも持っていくのを忘れない。しかし宅配とは珍しいとももは思った。健二郎宛に研究に使う機材が届くことはあるがそれなら大抵待ちわびた祖父が玄関で待ち構えているのでももが受け取りに行く事は少ない。ご近所さんが作りすぎた料理を持ってくるだとかはたまにあるが、それなら裏口から声をかけてくれる。なじみの友人達はそれを持って勝手にあがってきたりするし、こうして玄関に来る配達は珍しかった。

 

 

もも「はい、一色ですけど」

 

 

「一色健二郎さんのご家族宛てにいくつかお荷物です。ああ、それとお手紙と。結構重いですし、こちらでお家の中に運びましょうか?」

 

 

もも「え?うーん」

 

 

見慣れない人だ。島の配達は新聞も込みで文が行うことが多い。都会から届く荷物に関しては別の配達屋が行うがそれでも大体顔は覚えている。今回来た人は見慣ぬ制服姿だ

 

 

「ああ、知らない人間がいきなり家にあがるのはまずいですよね。ええと、どうしようか。名刺いります?」

 

 

もも「ああいえ、別に大丈夫なんでありがたくお願いします」

 

 

「そりゃどうも、ちょいと下がっててください。」

 

 

そういうと男はももに手紙を渡すと軽トラックの荷台から4つのダンボールを1人で土間に運び込んだ。

 

 

もも「中身はなんなんです?」

 

 

「手紙の中身は知りません。箱の中身は調味料と米、管理局の紫条さんからだとおじいさんに言えば解ると思います。お手紙はできるだけ早めに渡してくれとも。そえでは!」

 

 

荷物を運び入れた男は頭を下げると軽トラックに乗ってゆっくり元来た道を戻っていく。ダンボールの1つを開けてみるといつも家で使っているお米だった。誰かは知らないがワンコが壊れている現状無くなりかけているお米の補充をしてくれたのはありがたい。その他の箱にも色々入っていたがマヨネーズが異常に多いところをみるに家庭事情を解っている人物からか

 

 

もも(管理局のしじょうさん?手紙を渡しにいかなくっちゃ)

 

 

<ももーー!!!あかねーー!!!!>

 

 

もも「縁側!」ダッ

 

 

玄関とは違う方向から自分を呼ぶ声に反応してももは廊下を疾走した。この声はおそらくなつみのものだが遊びに誘いに来たにしてはずいぶん慌てた様子にももも何事かと不安を募らせた。研究所のドアを蹴飛ばすように向かいからあかねが姿を見せ二人同時になつみの前に立った。

 

 

なつみ「緊急事態だ!すぐに来てすぐに!」

 

 

あかね「オッケー!もも、行こう!」

 

 

もも「あー、ちょっとまって。芳佳さーん!ここにおじいちゃん宛のお手紙おいておくんで、おじいちゃんに渡しといてもらえますか!私とお姉ちゃんは少しでかけてきます!」

 

 

なつみ「よっしゃ行こう!で、芳佳さんって誰よ?」ダッ

 

 

あかね「新しい友達!」ダッ

 

 

もも「ちょ、2人とも速すぎますよ!小学5年生をいたわってください!待ってってば!待って!」ダッ

 

 

家の裏から飛び出していく2人と少し遅れて1人。静かになった縁側に手をエプロンで拭きながら芳佳が出てきた。誰もいない庭を見て、次におきっぱなしの手紙を見た。手をさらに念入りにぬぐうとその手紙をもって

 

 

芳佳「・・・おじいさんって、どこにいるんだろ?」

 

 

研究所の秘密の入り口を芳佳が知る由もない。その時右手にあったお手洗いの横の行き当たりのはずの壁が音をたてて左右にスライドしたのだ。驚きのあまり固まる芳佳の視線の先には鉄製の頑丈そうな扉。それも左右に開いた。あかねは何者かの登場を予感し神妙に待ったが誰も出てこなかった。いや、正確には出てきていたのだが小さくて見えなかった。まさか人形サイズとは思わなかったからだ。とてとて歩いてくるかわうそ人形と目が合った芳佳は眉をひそめる。

 

 

芳佳「あー・・・どうも。失礼かもしれませんけど、もしかしてあかねさんのおじいさんだったりしますでしょうか?」

 

 

健二郎「まさかまさかのおじいさん登場じゃ。驚いたかね?よしかちゃん、だったか」

 

 

芳佳「わー驚いた・・・宮藤芳佳、記憶喪失です。あかねさんに先ほど海岸で拾われました。あとお手紙をももさんから預かってます」

 

 

健二郎「ご丁寧にありがとう。ワシは天才科学者一色健二郎じゃ。現在ぬいぐるみじゃがあかねとももの祖父。よければ手紙の封を切って中身を見えるように床においてくれんか?なにぶん人形の手は不便ってもんじゃなくてのう。おお、ありがとう。もう1人の子はどこかな?」

 

 

床にそっとおいた手紙の上に覆いかぶさって内容を読みながら問いかけてくる健二郎の身体をあまり上から見下ろすのも悪い気がする芳佳はしゃがみこんで出来るだけ低い体勢でれいにおなべを任せていることを伝えた。

 

健二郎「ふむ・・読み終わったから封の中にしまっとくれ。もう中身は覚えたからのう。それは居間の隣の部屋の机の上にでも置いといてくれんか。夜までにはもう一度居間に戻るからそれまで研究に集中させとくれ、とあかね達に言っておいとくれ。」

 

 

それだけ言うとかわうそ人形はくるりと回って扉のほうへ戻っていく。その背中に向かって芳佳は慌てて質問した。

 

 

芳佳「あの、私・・・とれいちゃんなんですけど、本当に」

 

 

健二郎「ああゆっくりしていくといい。前までは家計は火の車だったんじゃが、つい今日から我が家には女の子の3人や4人増えても十分なくらいの収入源が出来たんじゃ。なんの遠慮もいらんよ。」

 

 

芳佳「ありがとうございます!」

 

 

ペコリと頭を下げる芳佳に軽く手をあげると健二郎はゆったりした足取りで暗い壁のむこうへ消えていった。鉄の扉と壁が今度は音も無くすばやく閉まった。不思議体験をしたわりにあまり驚いてない自分の感覚に驚いた芳佳であったのだが、台所のほうかられいの救援要請が発せられたのを受けて自分のことについて考えるのを切り上げて急いで戻った。ももがいない間になにかあってはならない。ここはお料理ウィッチ芳佳さんの腕の見せ所なのだから

 

 

芳佳「ん?お料理ウィッチ芳佳さんってなんだっけ・・・?ん?」

 

 

れい「宮藤さん!ちょっと早く!これ火を止めたほうがいいんじゃないの!?ふきこぼれそうよ!」

 

 

芳佳「大丈夫大丈夫、料理ってのはおっかなびっくりやらなくても案外焦げたりしないから!それに芳佳って呼ばないと助けてあげないからね!」ダッ

 

 

 

_____________________________________________

 

 

 

 

先導するなつみが通った道は学校への道だ。いつも通ってる、見慣れたものだ。道中すれ違う顔なじみの島民達とケガはなかったかと軽く言葉を交わしながら急かすなつみの後を着いていく。実際あかねは筋肉痛であってももう少し早く走れたがももが限界に近いのでそれなりにあわせたペースで走った。何があったのか聞いてもなつみはあまり言いたく無さそうだ。実際見てのお楽しみ、というやつなのだろうかとあかねは考えたがいいことではないようなので楽しみではないなと訂正をいれた。なつみは前情報なしに見てくる絶望を味わえというのだろうか

 

 

なつみ「ああ、もうここから見えるだろうけど・・・ほら。」

 

 

あかね「わお」

 

 

もも「ぜー・・・ぜー・・・うっわぁ・・・」

 

 

なつみ「昨日は避難所から家に直帰して今日は休みだったからさっきまで知らなかったんだ。あ、ねえちゃーん!」

 

 

こまり「ああなつみ。あかねとももも来たんだね。」

 

 

あかね「これ・・・昨日の?」

 

 

学校は見るも無残に吹き飛んでいた。一番大きな光線が当たったのだろうか、木製の古びた校舎は台風ですらまともに耐えられないくらいなのにアローンの攻撃などもらえば一発で倒壊するのもさも当然のことだ。屋根は大穴、壁は燃え落ち、消し飛んでいる。

 

 

なつみ「火は先生達が消したんだって。昨日で解ってたんなら、今朝の連絡網で学校が吹っ飛んだことも教えれくれたら・・・いやそりゃーなんかまずいか。」

 

 

こまり「こりゃなつみが悪いね。前、学校がつぶれないかなーとか言ってたじゃん。あれよあれ。マジ不謹慎

中学生だねなつみは」

 

 

なつみ「冗談キツイよ。ウチは火事にならないかとか台風でぺしゃんこにならないかとかは願ったけど爆発でふっとべなんて思ったことないしノーカンよノーカン。」

 

 

もも「おねえちゃん・・・学校が・・・」

 

 

あかね「なーに、形あるものいつか壊れる。だれもケガした子はいなかったんでしょ?それでよかったんだよ。それにほら、これで綺麗な校舎建てられるんじゃない?ね?」

 

 

結構なショックを受けたももは顔をあかねのお腹にうずめるように抱きついた。あかねはその背中をよしよしと撫でながら無残な学びやを悲しげに見やった。授業を受けるのは6歳からだが生まれた時からこの島の子供達の集まるいつもの場所だった学校がこうもやられてしまったのは誰だってショックだ。誰だってキツイ。しかし年長者の中学生軍団が悲しめば周りの小学生達はもっと悲しくなるだろう。

 

 

れんげ「・・・ボールも燃えちゃったんなー。それにウチ、まだちょっとしか通えてないのん。」

 

 

なつみ「あーあ、家が片付いたと思ったら、明日からは学校を造らなきゃね。兄ちゃん建築とかできる?ああ流石に無理なんだ。そりゃ仕方ないか」

 

 

卓「・・・」

 

 

物言わぬ卓だがその眼鏡の奥の瞳は悲しみを帯びていた。彼がもっともこの建物に長く触れていたのだ。思い入れも一番強い。

 

 

あかね「・・・許せない。あおいちゃん、楽しみにしてたのに」

 

 

あかねの中で昨日一度は引いた燃える闘志が怒りとともにふつふつと込み上げてきた。ポケットの鍵が燃えるように熱い存在感を放っている。だがあかねはすぐに怒りを抑えた。これでは密着しているももにまでそれが伝わってしまう気がしたからだ。戦いの場ではないところでぶちまけていいような気持ちではなかった。

 

 

あかね「先生は?」

 

 

なつみ「本島のほうに行ってるらしい。お土産に期待しとこうかな」

 

 

本島、とは数あるブルーアイランド諸島の中で示現エンジンがある大きな人工島のことを言う。結構高いビルなどもあってあかね達のような田舎風味漂う島の住民からすればなかなかの都会だ。海をワンコで渡れるあかねはわりとすぐ行けるのだが、それ以外だと数少ない定期便の船かモノレールしかない。お金をあんまりもたない子供達は気軽に使えるものではないのでたまにあかねはなつみやこまりとワンコに2人または3人乗りでこっそり海を渡って遊んでいる。

 

 

あかね「しばらくは休みだね。落ち着いたらみんなで遊ぼうか。新しい友達もできたしあおいちゃんも帰って来たし」

 

 

こまり「新しい子?ふーん、楽しみだね。さーてそろそろ帰って片付けの続きしようかなつみ。」

 

 

なつみ「あいあいねえちゃん。じゃあねあかね、また連絡するよ。」

 

 

あかね「うんまたね。・・・もも、かえろ?手、つないであげるから。それともおんぶ?」

 

 

もも「・・・おんぶ」

 

 

小学生達は卓が送っていってくれると申し出てくれたので、あかねはももをおんぶして家まで帰った。帰る途中のたまに黒く大きな穴が空いているなどを見つけるたび友人達が誰もケガをしなくてよかったと心のそこから思いながらゆっくりと元来た道を歩いた。

 

 

 

 

 




今回はいつもより長く書いてしまいました。終わりどころを見つけられないでずっと書いてました。大抵書いてる時は何回かに分けてちょこちょこ書いたあと一気に徹夜して日の出くらいに完成させてます。なのでこれからも朝方更新が多いとおもいます。朝の読書に最適ですね。

宮藤芳佳ちゃん、黒騎れいちゃん登場です。この2人がこれからどう話に関わってくるか、色々推測しながら楽しみに待っていてください。すぐに次がくると思いますので。では
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