ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第87話 「翼がもがれる時」

 

 

ビビッドフォースは金色の光線を発射して視界を塞ぐネウロイの大群を薙ぎ払うと、監視者に急接近してハンマーを振り回し刀を一閃させる。懐に入られた監視者は反撃しようと腕を振り上げるが、そこに飛来した矢に動きを釘付けにされる。鈍った腕に巨大な拳が叩きつけられ、おまけとばかりに強力な重力波が全身を締め上げて来る

 

 

やられっぱなしとはいかず、監視者は自身の上空に大きな黒い雲を発生させそこから紅い雷を落とした。超高密度のエネルギーを孕んだそれは文字通り光の速さで対象を狙い撃つが、2人は空間を飛び越えて攻撃の範囲外へ瞬時に離脱。追撃を企む黒い雲をビームで吹っ飛ばし、次の攻撃の準備へ入る

 

 

 

大いなる力のぶつかり合いは苛烈を極めた。ビビッドフォースは全力を込めた攻撃を1つ繰り出す度に自分の力の上限にまだ先がある事に驚き、カラードブラックはこれまでの鬱憤を晴らさんが為あらゆる技を駆使して監視者を叩き潰そうとした

 

 

真っ向から力で抑え込んで張り合っている監視者の力は流石の物で、その存在が放つ常軌を逸した攻撃により幾度となくあかね達の世界は滅びる寸前まで追い込まれ、その度に何とかかんとか踏みとどまっていた

 

 

『何故この世界を崩壊させる事ができない!私が力を解放するだけで宇宙の法則を乱し全ての物理的存在を消滅に至らせることすら可能な筈だと言うのに!』

 

 

発狂したかのようにキンキンとした声をまき散らしながら監視者はその巨大な羽を広げる。高次元生命体の翼は破壊の象徴だ。ただ在るだけで周囲の空間を蝕み、次元に歪みを発生させる

 

 

羽ばたくだけで全ての空間が翼の生んだ歪に引きずられ、世界中の物体が強制的に引っ張られる。大地は割れ、インフラは崩壊し、大量の人間が瞬時に壁や大地に叩きつけられ死亡する___筈だったが

 

 

ブラック「通らないわよ、そんなマップ兵器は!」

 

フォース「関係ない人巻き込むのはやめてよね!」

 

 

2人は戦いながらも監視者の攻撃が世界に影響を与えないようエネルギーの防波堤を作り攻撃を中和していた。凄まじい集中力と体力を使う行動だが、決着をつける前に世界を壊される訳にはいかない。むしろ勝利よりも敗北しない事の方が大切だった

 

 

健次郎『とはいえネウロイ出現の勢いはこちらの撃破ペースを上回りつつある!世界が飲み込まれるぞ!』

 

坂本『一色達!もう一度次元の穴を塞げないか!?』

 

フォース「ごめんなさい、そっちまで手が回らない!」

 

ブラック「守るものが無いヤツが好き勝手できる分、こちらが少しだけ押されるわね!」

 

 

 

カラードブラックは唇を噛んだ。ここがもし何もない無で構築されたフィールドで、ビビッドフォースと2人でただ相手を倒すことにのみ集中できるというのならば勝機を得る自信はある

 

2対1という環境にもちこめるからだ。ただ現状は、周囲への影響を抑える事に力の半分を割かないといけない。どうにも余裕の勝利とはいかない流れだ

 

 

そう、このままでは

 

 

フォース「思いついた」

 

ブラック「私も」

 

「「皆で戦えばいい」」

 

 

2人はうっかりしていた。ここには山ほど仲間がいる。彼等彼女等に手を貸してもらえばいい。簡単な話だった

 

 

 

ビビッドフォースとカラード・ブラックパレードは手を繋いで目を閉じ、深く息を吸った。2人は8人であり、1つである。捉え方次第で〈自分〉という概念は変わり、それによって力の大きさも変わる。彼女達は意識を大きく広げた

 

 

示現力が跳ね上がる。監視者は脅威を察知し攻撃を行うが、2人を覆う大きな力の壁に阻まれその行為を邪魔することはできなかった

 

かつてあかねは友達と二人でビビッドエンジンを形成し、無限の力を出力した。今回もそれと同じことをする。ビビッドフォースとカラード・プラックパレードは互いの力を混ぜ合い増幅させ、周囲に一気に解き放った

 

 

爆発的に広がるエネルギーの波動が戦う戦士達を呑み込んでいく。心のパスが繋がり、戦場にいる全員が自分の中に未知の力が湧き上がる感覚を覚えていた

 

 

 

 

ミーナ「私達の身体に流れ込んでくる……!魔法力とはまた違う、温かな物……!」

 

シャーリー「こりゃ熱いな!燃えて来たぞ!」

 

「艦長!なんか超いい感じです!」

 

岬「うん!」

 

「いや艦長。我々が強くなっても晴風は強くならないのでは?ウィッチの方々とは事情が……」

 

「いえ、副長!火力が上がってます!明らかに対空砲や艦砲の威力、シールドパワー等全ての数値が上昇しています!」

 

「何故だ!?」

 

「まあ___解りません!」

 

「!!????」

 

 

示現エネルギーだからそういうこともある。晴風副長は笑うしかなかった。そうして進化の力が行き渡り、今この戦場に立つ全ての者が高次元生命体に抗う力を得た

 

 

 

晴風だけでなく、防衛軍の兵器による攻撃もこれまでよりネウロイの装甲を貫通しやすくなっていた。さらに彼等1人1人の存在が監視者の影響に対する壁となり、ビビッドフォースとカラードブラックはこれまでより攻撃に集中できるようになった

 

 

さらに、ビビッドフォースは力を受け取った人間の数が増える度に自身の力も増していくのを感じ取っていた。何故だろう、と少し考えればすぐに理解できた。ここに居るものは皆同じ思いだからだ。同じ敵に対抗し、それぞれが幸せを得ようと頑張っている。戦場に満ちた示現力を通して、戦うみんなの心が伝わってくる。それがビビッドフォースにとっては追い風だった

 

 

『小癪な。しかしこの次元1つ全ての生命体を取り込んだとしても、数多の次元を呑み込んできた私には届きません』

 

ブラック「取り込むだの呑み込むだの……。手を取り合い、輝きを重ね合わせる。彼女達の力の高め方はあなたとは違う。彼女達が辿り着く場所は、あなたが今いる場所とは違う所よ」

 

『でしょうね。あなた方は破滅の道を進んでいるのです』

 

ブラック「滅びるのがどちらか、教えてあげるわ!」

 

 

ブラックの放つ一本の矢が堕天使の身体を貫きどデカイ穴を空けた。瞬時に風穴を再生させようとする監視者は異変に気付いた。矢に抉り取られた部分が再生を拒否しているかのように動きが鈍い。追撃の矢が放たれる。叩き落す事は難しいと判断し、矢の軌道上に次元の穴を空けようと力を込めるがゲートが思うように開かず、防げなかった矢がまた1つ監視者の身体に穴を空ける

 

 

ここで初めて、監視者はこの次元における自らの支配権が少なくなっている事を悟った

 

 

『何故だ!』

 

 

驚愕していた。恐怖していた。全知全能を名乗るだけに相応しい力を持つ存在だった筈の自分に起きている事態が理解できなかった

 

 

ブラック「可能性を否定し、新しきを受け入れず!どんなものも自分の色で塗りつぶして腹に溜め込んで、そうして得た力で何を誇る!」

 

 

フォース「あなたが圧し潰してきた可能性が、あなたの中でくすぶってる!わたし達がそれを引っ張り出して火をつけてあげる!」

 

 

 

巨大な赤いブーメランを2つ翼のように広げ、全力で投擲した。対抗しようと伸ばされた黒い翼をあっさり切り裂くだけでは飽き足らず根こそぎ刈り取り、返す刃で胴体を左右から両断した

 

 

『このような……ばかな!やめろ!滅びた筈!何故このような熱を……!』

 

 

自らの中から湧き上がる力が、自らの身体を崩壊させていく。監視者は何も理解できないまま、無我夢中で指先から光線を手あたり次第に撃ちまくった。しかしそれは誰も破壊することはできない。青い魔法陣に防がれ、或いは軽々とかわされる

 

 

フォース「あなたは滅ぼした訳じゃなくて、自分の中に取り込んだんでしょ?あなたの中でずっと生きてたんだ。そんな皆が、あなたに力を貸してくれると思う?」

 

ブラック「あなたを滅ぼすのは、今まであなたが踏みにじって来た全ての魂の可能性の輝きよ!」

 

 

最期の足掻きだった。監視者を気取っていたアローンが最後に選んだのは、周囲の生命を巻き取って自分の命を繋ぎとめることだった。自らを中心に大きな力の渦を発生させ、召喚したネウロイを片っ端から取り込んでいく。ネウロイは監視者にとってアローンの発生過程で産まれた不良品のような物で、そんなものに頼るなど本来ならあり得ないことだった

 

 

しかし最早監視者に身の振り方を選ぶ余裕はない。心などもたないネウロイでも内包するコアには示現エネルギーに似た力を秘めている。大量に取り込めば多少の力にはなるだろう

 

 

だがネウロイの数が無限に増える現象は既に止まっている。監視者が自分の保身に走っている間に、ビビッドフォース達は協力して戦場全体を特殊なフィールドで覆い、外界とこの戦場を完全に遮断した。新たな敵が召喚されるのを防ぐ為と___この戦いが終わるまで、誰も外に出さない役割を果たす物だ

 

 

 

ブラック「ここで倒すッ!完全に!」

 

フォース「みんなの力を!1つに!!」

 

 





2020年で終われそうです。たぶん。ギリ。いけます
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