ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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お話タイトルを 希望の未来へレディーGo!!!!!!!!にするかどうか迷いました


第88話 「最期の一撃は」

空を埋め尽くす程のネウロイが消失した変わりに、それらを吸収した監視者は山のような大きさになっていた。かつて出現した高さ300mの電波塔が変質して産まれた塔のアローンが霞む程の高さと、それを支えるだけの横幅を持っていた

 

 

監視者は人型を捨て、無理やり肉を積み上げた不格好な形へと変わっていく。全身から不規則に突き出した禍々しい腕と翼からは宙を切り裂くビームが絶え間なく発射され、米粒程の大きさの人間を叩き落さんとする。だが、最早この戦場に監視者が片手間で殺せるような弱い存在はただの1人もいなかった

 

 

岬「みなさん、晴風の射線上から退避してください!」

 

 

肥大化した監視者に一撃を加える為晴風は前に進み出る。艦長の指揮の下、各員が攻撃の準備に入る。機関室は攻撃に使わないエネルギーを全てカット、限界を越えた出力が艦全体を微弱な振動と共に走り抜け、船体が軋む音を聞いた副長は嫌な予感に身を強張らせた

 

 

岬「対ショック!対閃光防御!」

 

「充填120%!安全装置解除!」

 

晴風前方の艦首を塞いでいた装甲が左右にスライドし、仰々しい大穴が顔を出した。既にその穴の内部では高密度のエネルギーが圧縮を完了していた。艦橋にいる全員が眼球を保護するゴーグルを装着し、その瞬間に備える

 

岬「タマちゃん!なんちゃって波動砲、発射!」

 

岬の指示の下、タマと呼ばれた晴風砲術長が拳銃のグリップを模したトリガーのカバーを外し両手に握りしめ、静かな気合を込めて呟いた

 

「うぃ」

 

 

タマはトリガーをめいっぱい引いた。凝縮されたエネルギーが勢いよく押し出され、晴風最大の攻撃が火を噴いた。次元を越え、船を空に浮かばせ、ネウロイのビームを弾く。それらを行うエネルギー全てを攻撃に転用し放たれる強力無比な一撃が監視者の胴体ド真ん中に直撃した

 

 

監視者は体表に張ったシールドで攻撃の無効化を試みるが、それがただの高エネルギー攻撃ではない事に気付く。特殊な粒子を秘めた光線は法外な熱量と質量を兼ね備え、なんといっても厄介なのはその光線はどんな防御も無視して必ず一定距離を直進するという特性を備えている。威力を和らげる事は出来ても別次元へのゲートを開けない以上監視者と言えど完全に防御することは出来なかった

 

 

「目標損傷!有効打です!!」

 

「いよっしゃあ!」

 

 

岬は上手くいった事に安堵し大きく息を吐いた。突貫工事で取り付けられたこのロマン砲は501科学班のトップからも『マジでヤバイ時以外は使わないで欲しいけど、データ欲しいから一発は撃ってきて欲しい』と無茶な注文を受けていたものだ。晴風に搭載されたエネルギー炉に大きな負担をかける為使用には大きなリスクを伴うものだが、示現エネルギーの補助がある今こそ使い時だと判断したのだ

 

 

一時的に防御フィールドを解除する為丸裸になるという欠点があるのだが、宮藤が直衛に入り晴風に迫るビームを全て防いでいた。その為晴風はノーリスクで攻撃に全てを賭ける事が出来、監視者の力を大きく削ぐ事に成功した

 

 

岬「ダメージは与えました!一気に圧し潰してください!」

 

 

坂本「よくやった!総員突撃ッ!」

 

魔女の鉄の箒が唸る。防衛に当たる宮藤を除く10の飛行機雲が美しい軌跡を描きながら巨大な黒いアローン目掛け飛翔した

 

 

バルクホルン「デカイな!」

 

シャーリー「なんだビビったのかバルクホルン!」

 

バルクホルン「馬鹿を言うな!奮い立ってるのさ!」

 

シャーリー「結構な事だ!じゃあ行くぞ!」

 

 

シャーリーは編隊の先に飛び出した。シャーリーの加速魔法は最早単なる速さを越えた領域に達している。彼女が飛んだ後には光の帯が残り、それに触れたウィッチーズ全員がこれまで体験した事の無い飛行速度に達する

 

 

監視者の全身から赤い光線が放たれる。線というより面に近い密度の攻撃だが、ウィッチ達はまるで空間を飛び越えるような軽やかな動きでその攻撃をなんなく回避した

 

ルッキーニ「んにゃー!すごーい!」

 

シャーリー「速さの真骨頂だ!デカさだけじゃなにも出来んぜ!」

 

 

監視者の攻撃は強い。宮藤芳佳のシールドでも無ければ、一発防御するだけで魔法力を使い切る恐れすらある。それは強化された今の状態であってもだ。だが、当たらなければどうということはないのだ

 

ペリーヌの電撃、ルッキーニの高熱シールド、ハルトマンの暴風が大災害のような規模で監視者の身体を破壊していく。エイラ、ミーナ、サーニャ、坂本の感知魔法が最大限に活かされ、監視者がいつどこへ誰に攻撃するのかは完全に読み切られた。防衛軍の戦闘機達は完璧な軌道で全ての攻撃を掻い潜り、ミサイルをぶち込む。それでも戦闘機に命中しそうなビームは、リーネが全て銃撃で相殺していた

 

 

監視者は腕を伸ばし、思い切り振り抜いた。無造作な動きだが、その腕はターゲットである晴風に直撃する寸前まで完全に透明になっていたものだった。晴風からしてみれば突然空中から黒い腕が目の前に現れたようなものであった

 

 

岬「!」

 

バルクホルン「任せろ!」

 

 

だがその攻撃はバルクホルンが許さない。エイラの未来予知により察知されていたその攻撃を圧倒的怪力で受け止め、逆に思い切り拳を叩きつけ黒い腕を粉々に打ち砕いてみせた

 

 

 

フォース「芳佳ちゃん!ウィッチの皆もこっち来て!」

 

宮藤「うん!」

 

坂本「了解した!」

 

晴風の防御フィールドが再展開されたのを確認し、攻撃に転じようとしていた芳佳はビビッドフォースに呼ばれて側に寄り添った。監視者を攻撃していたウィッチーズも取りやめて2人の下に集まる。ビビッドフォースとカラードブラックは監視者の攻撃の大半を引き受けつつ、傷一つなく健在だった

 

 

ブラック「トドメを刺す。私達と、あなた達で」

 

 

 

ポツリと呟くようにそう言い放った。慢心でもなく、確信があった。次の攻撃で全てが終わるのだとカラードブラックには解っていた

 

 

 

監視者が何か言っているような気がしたが、既にブラックにそれを聞き届ける余裕など無かった

 

 

彼女は、ただ真っすぐ白い衣装を纏う友人と。そして共に記憶喪失仲間としてこの世界にやって来た友人と見つめ合った

 

 

ブラック「あなたをこの世界に招いたのは、私。私はこの世界に〈黒騎れい〉として侵入する際、カラードブラックとしての力も記憶も全て監視者に預けていた。空っぽになった私の魂は無意識に片割れのあろん子を求め、その瞬間傍に居たあなたを巻き込んじゃったの」

 

 

宮藤「巻き込んだって……でも、あの時あろん子ちゃんは一緒にいなかったよ?」

 

ブラック「ごめん、間違ってあなたを引っ張っちゃったの」

 

宮藤「え、ええー……」

 

ブラック「本当にごめんなさい。人型ネウロイとして行動していた時の私には殆ど自我が無かった。ただ、薄い意識の中で自分を助けてくれる誰かを探していたの。きっとあなたの優しさや思いの強さに惹かれたんだと思う。だから、最後の瞬間には___あなたの力も貸して欲しい。芳佳。そしてみんなも」

 

 

芳佳は考えるまでもなくブラックの差し出した手をとった

 

 

宮藤「私、怒ってないよ。あの時、ネウロイのあなたに惹かれて飛び出した事、後悔なんてしてない。そのお陰でれいちゃんやあかねちゃんと会えたんだから!だから、一緒にやろう!」

 

ペリーヌ「宮藤さんとリーネさんの無茶に付き合って、まさかこんな所まで来てしまうとは。こうなったからには最後までお付き合い致しますわ」

 

リーネ「うん!」

 

 

11人の魔女と、2人の示現力の戦士を中心に大きな光の輪が生まれる。思いを力へ変える示現力が極限まで彼女達を強くし、最後の一撃へ相応しい攻撃への予兆に世界が震える。監視者の攻撃は最早届くことは無く、かつて高位の存在として振る舞っていたソレは、自分が今断頭台で座らされた罪人であることを受け入れるしかない現実に直面していた

 

 

 

フォース「ビビッド」

 

ブラック「アンド!」

 

宮藤「ウィッチーズ!!!」

 

 

「「「「ファイナルオペレーション!!!」」」」

 

 

一度空高く飛び上がり、彼女達は1つの大きな光の矢へとなった。そのまま監視者のてっぺん目掛けて真っすぐと降下する。共に戦っていた仲間達は天で輝く星に自分の力を託した。虹色の光を纏った流星は戦場に渦巻くエネルギーを救い上げてどんどんと大きくなる

 

 

監視者は自害を選択した。究極的に高めたエネルギーを使って自らの身体を崩壊させ、示現エンジンと逆位相の力場を発生させる。自らを示現エンジンと真逆の存在へと変質させ、この次元に溢れる示現エネルギーにぶつけて対消滅を引き起こす。宇宙丸ごと吹っ飛ばせる算段だった

 

 

『私1人では終わりません。この世界は終了させる。あなた方も道連れです』

 

ブラック「最後の最後まであなたと言うヤツは!」

 

フォース「わたし達は終わらない!これからも続いていく!それを邪魔するあなたは……絶対に許さない!!」

 

 

巨大な光の矢が監視者の身体を貫く。貫いた先でぐるりとターンしてもう一度監視者の身体を貫く。暴れまわる光の奔流は意志を持った龍のように力強い火花を散らしながら下から上へとぐろを巻くように昇っていき、監視者の身体に強く巻き付いた

 

 

光の龍に巻き付かれた監視者は完全に動けなくなる。自身を中心に引き起こそうとしていた爆発も急激に衰えていき、遂にビーム1つ撃つ事すらできなくなった

 

 

その光から飛び出した2人。ビビッドフォースとカラードブラックが監視者の前に並び立った

 

『___』

 

監視者は最後の最後に口を閉じ、己の本来の役割に殉じた。〈管理者〉を超えうる可能性を持つ存在を監視する。自らを縛る光の束も、目の前の2人の人間が拳に込める力も。その正体は、最後まで監視者には理解出来なかった

 

 

カラードブラックはビビッドフォースの白い左手に自分の黒い右手を重ねた。一瞬だけ視線を合わせ、すぐに顔を前に向ける

 

 

ブラック「ファイナル……ビビッド……」

 

握り合った2人の手が眩い光を放つ。全ての思いを束ねて放つは、絶対勝利の一撃必殺。恨みも妬みも、悲しみも。全てを吹っ飛ばし、明日を希望で満たすための

 

 

フォース「パーンチ!!」

 

 

全力の、パンチだった

 

 

 

 





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