ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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真実を知ることは全ての場合において大切であるが、その全ての場合において真実を知ることが当事者達に「いいこと」に繋がるかどうかは別である


ちなみに今回のことはいいことに繋がる一例である。


第8話 あかね「わたしであるべき理由」

健次郎「おお、来たかあかねよ。ほれ座りなさい。」

 

 

あかね「座れる場所なんて無いけどね。これどかしていい?どかすからね。」

 

 

ももを連れ帰った後。あかねは健二郎に呼ばれ家の裏の研究所で椅子に座っていた。ここに入るのは昨日のアローンの襲来以来だが、壊れた屋根と壁はすっかり新しくなっていた。それでもたくさんの紙が散らばっていて前より一層ごちゃごちゃしている。そも健二郎の今の姿では整理整頓は厳しいだろう。自分に見やすいように床に並べるのは仕方の無いことだが、立ったままでは話に集中できないのも確かなのだ。いくつかをまとめて重ねて床に置いた

 

 

健次郎「ああ、壁はお前達が寝ている間に管理局の連中を呼んで直させたんたんじゃ。風通しがよすぎると書類が飛んで仕方ない・・・。昨夜少しだけシステムのデータをとっていたんじゃがな。まず、あおいちゃんの鍵はあかねの持つ鍵と同じものではないことが解った。」

 

 

 

健次郎「あのキーはあかねのように示現エンジンにアクセスしとるわけではない。じゃがその鍵がもたらす効果は同じ。オペレーションキーはビビッドシステムを発動させ示現力を鎧として体現させる。違うのはアクセスする対象じゃ。

 

・・・そもそもビビッドシステムを利用しなければアローンを倒せないことを知っておきながらなぜワシがオペレーションキーをたった一本だけ、それもあかねしか使えないように作ったのか。疑問じゃろう?もっとたくさん造ればよかったのにと。そも、なぜ女の子であるあかねが戦わなければならなかったか。造らなかったわけではなく造れなかったというのもあるが、他の人でダメな理由は、7年前にある!思い出したくないだろうが、思い出すのじゃあかね。」

 

 

あかね「・・・」

 

 

 

腕を組んで目を閉じれば思い出すまでもなく瞼の裏にゆらゆらと浮かび上がってくる悲劇の記憶。あかねの高所恐怖症の原因にもなった事故。あの日、小学校に入学したばかりのころ。示現エンジン内で作業をしていた母に会いに行った。学校でもらったプリントを見せたかったんだったか確かそんな理由だった気がするがもう忘れた。大事なのは、偶然その時開発中だった示現エンジンが暴走し、あかねと母がその中に落っこちてしまったことの方だろう。

 

 

 

 

健次郎「我が娘ましろ、そして我が孫あかね。2人は、あふれ出した示現エネルギーの渦の中に落ちていった。ワシはそのあとを追って飛び込もうとする自分を制し、どうやれば2人を助け出せるのか考え始めた。その時じゃった。

 

 

・・・あれはその渦から現れた。次元の向こうからやってきたものだ。物理的な肉体はもっていなかったが、思考、概念としてワシに語りかけてきたのじゃ。それは、示現力の存在に手を伸ばした世界へ忠告に来たと言った。ましろとあかねのことで正直頭がいっぱいだったんじゃが、その存在はワシの頭の中に強烈な印象を与え続け話を聞くしかなかった。続けて語りかけてきた。」

 

 

 

 

彼は言った。示現力を手にした新たな世界に試練を与えると。示現力の本質を見極め、それを制御し、時に武器としては敵を討ち盾としては味方を護る。技術力と心を持った生命体だと解れば示現力の使用権を渡すと。ワシは失敗したのではなかった。開発は成功したのじゃ。示現エンジンからあふれ出した示現力が強すぎて制御できなかっただけで、7年前のことは示現エネルギーがこの世に溢れ出した反動で起きたこと

 

 

 

健次郎「その後、彼はワシにアローンのことを教えた。示現エネルギーのおおまかな使い方もな。」

 

 

あかね「わたしとお母さんはいつ助けてもらえるの?」

 

 

健次郎「この後じゃ。話終えた彼はそのまま渦の中へと消えていった。渦も少しずつ弱まっていき、漏れ出した示現エネルギーは試作エンジンの中におとなしく収まっておった。その横にお前とましろが倒れていた。」

 

 

あかね(お母さん・・・)

 

 

あかねは目を閉じて母の姿を思い描いた。思い出されるのは病院の白いベッドの上で病人らしくない笑顔でお見舞いにきた自分達を迎えてくれる優しく頼もしい姿だ。あの人が健康そうに歩きまわっているところなど、もう久しく見れていない。

 

 

健次郎「あかねよ。この世界で示現力を直接制御できる権利を持った人間は3人だけじゃ。示現力の仕組みを直接授けられたワシ。そして示現の渦に飲まれその力の本質に触れたあかねとましろ。ビビッドシステムにアクセスし、示現力をその意識の支配下におけるのはこの世界でこの3人。しかしワシはこの歳じゃし示現エネルギーの力には耐えられん。ましろは・・・もしましろがパレットスーツを着とったら・・・ぶふふっ!いや、やめよう。」

 

 

あかね「ぶっ飛ばされるよ。」

 

 

健次郎「ましろのやつならワシが愛くるしいぬいぐるみの姿であっても容赦なく蹴っ飛ばすじゃろうな。ましろが入院しとる理由、これは言い方が悪いがずばり言うぞ。ましろは今まさに試練をこなす為の人柱となっておる。」

 

 

 

この世界に現れた示現力は体験版のようなもので、それには2つの性質があった。それは試練に失敗したり示現力を扱いきれなかった場合この世界を破滅に導く衰退と侵略の負の性質。試練に打ち勝ったものに与えられる繁栄と創造の正の性質。示現力を我々に与えた存在はその2つをこの世界においていった。その1つをましろに、もう1つをあかねに。アローンに勝利し世界を救う英雄の力と、それを使うにふさわしくない世界をいつでも破滅させることが出来る爆弾。

 

 

 

健次郎「渦に巻き込まれた後、ましろは少しずつ身体の調子が悪くなっていることに気付いた。自分で自分の面倒が見れる限界まであかねともものそばにいることを決め、示現エンジンの研究から手を引いた。

 

 

エンジンが完成し示現エネルギーが世界中に降り注ぐようになってからましろの身体は急激に弱まっていった。5年という歳月を経て第一のアローンが現れ、試練が開始した瞬間からさらにそれは顕著になった。逆に力を授かったあかねは見事示現力を操りアローンを打ち倒してみせた。試練は始まったのじゃ、あかねよ。お前が負ければましろは死に、世界は示現力に飲み込まれるじゃろう。もしお前が母を、妹を、友を救おうというのなら逃げることはできない。誰もお前の代わりにはなれん。しかしそれでも。お前がもし・・・・・・」

 

 

あかね「いいよ。わたしがやる。」

 

 

健次郎「そうか・・・この理不尽きわまりない事態にな怒るか泣くかくらいすると思ったんじゃが」

 

 

あかね「変身する時、エンジンの中心部をのぞいた時おじいちゃんが言ったようなことを教えられたからね。わたしじゃなきゃダメな理由と、わたしが出来ること。あおいちゃんに鍵を造ってあげた時もだけど。」

 

 

健次郎「あれはワシにも解らん。ビビッドシステムはあかねにしか使えないもののはずじゃが、あおいちゃんの発する示現の波動はビビッドシステムによるものと酷似しておる。あかねには解るのか?」

 

 

あかね「うん。あおいちゃんの鍵はわたしが自分の力の一部で造ったんだ。あおいちゃんはエンジンから力を引き出してるんじゃなくて、わたしを経由することでビビッドシステムにアクセスしてるんだよ。あおいちゃんの鍵はわたしが出したブーメランと同じ扱いだね。エンジンから示現力を引っ張り出すことはわたしにしか出来ないし、示現力を制御できるのもわたしだけ。でも他の人が使えるようにわたしが示現力を変換してこの世界に放出すれば・・・その人も示現力を扱えるってかんじ」

 

 

健二郎「特定の人・・・お前と心が通じ合った人、といったところか。」

 

 

あかね「うん。なんだろ、わたしの魂と共鳴した・・・って感覚なのかな。ああこの人なら一緒に戦える、戦ってほしいって直感でわかるんだよね。ビビッっときたら鍵が出てくるみたい。それは仲のいいあおいちゃんだけなのか他の人でもできるのかわからないけどね。

 

ああ、ももが呼んでる。ご飯できたみたい。」

 

 

健二郎「行ってくるといい。昨日の夜からなにも食べとらんのに悪かったのう。」

 

 

あかね「わたしも一回ちゃんと話しておきたかったからいいよ!お母さんがなんで入院してるのか・・・ほんとうに私でいいのか・・・。もう解った。」

 

 

あかね「アローンをぶっ倒して、示現力を手に入れる。そしたらお母さんも帰ってきて万事解決。うん!」

 

 

 

ギリギリと拳を握り締める。自分にしか出来ない、自分にしか倒せない。別にいい。誰かがやらなければならないことがたまたま自分に回ってきただけだ。命をかけて、戦ってやる。わたしがやらなきゃ誰もやらない。負ける気なんて毛頭無い。戦争の時代を終わらせた祖父のように母のように、この世界を救ってみせる

 

 

あかね「うん・・・燃えるね。」

 

 

 

 

 

張り切って研究室から出て行こうとしたあかねはなにかに呼び止められたように動きをとめ天井を見上げた。突如として現れた強烈な敵意は、間違いなく示現エンジンの方角だ。自分に向けられているような鋭い悪意に対しても臆さず真正面から睨みつけると、ちょうどこの燃えたぎる闘志をぶつけあえるサンドバックがわりが現れたことに1つ大きく笑ってみせてから研究所のドアを蹴っ飛ばして飛び出した。戦いの時が再び来たのだ

 

 

 

_____________________________________________________

 

 

 

学校から帰った後、あかねは研究室に入っていってしまった。ももは縁側でおろされてしばらく三角座りでぼーっと空を眺めていた。

 

 

 

示現エンジンを狙う侵略者、アローン。へんちくりんな研究で家計を圧迫させていたおじいちゃんと自由奔放やりたい放題なナヨネーズジャンキーお姉ちゃんは、一日で世界を救った英雄となって帰って来た。こないだまで病弱だったとは思えないほど元気になったあおいちゃんを連れて。それに今日は記憶喪失のお友達を2人も拾ってくる始末。

 

 

もも「私はこの家のお母さんにはなれないなぁ・・・」

 

 

さみしそうにつぶやいて、顔をひざにすりつけてそこにためいきをつく。その時後ろになにかの気配を感じてふり返ってみると心配そうにこちらを見ていた芳佳があわてて目をそらしながら話し出した

 

 

宮藤「いや、ご飯できたよーって・・・言おうと思ったんだけど。」

 

 

もも「別に泣いてないですよ。大丈夫です。おねえちゃーん!ご飯できたよー!」

 

 

元気さをアピールするため研究所のほうに大きく叫ぶと、どうだというように芳佳のほうに笑顔を向ける。そこでやっと芳佳は心配そうな顔を止めると、ももの横に座った。

 

 

宮藤「ここに来る途中ですっごい大きな穴を見たけど、この島は隕石でも降るの?」

 

 

もも「隕石じゃないですよ。昨日は晴れのちビームでした。すくなくとも私はビームが降ってくるのは生まれて初めて見ましたんであまりよくある天気ってわけはないみたいですけど。」

 

 

宮藤「ビーム?もしかして赤くてふっといの?」

 

 

もも「はい。赤くて、ふといのです。ビームって光の速度で飛んでくるんだと思ってましたけど、そうじゃないんですね。芳佳さんってビーム専門家なんですか?」

 

 

宮藤「専門家じゃないよ。なんとなくビームって言われるとそんなイメージがあるだけで。そうそう、ビームっていうのは光ほど速くないぶんだけ破壊力があるんだよ。速いだけのビームは恐るるにたらず!だよ。」

 

 

もも「芳佳さん、やっぱりビーム専門家なんですね。」

 

 

宮藤「おかしいな・・・なんだろ、ビームを結構身近に見るような生活をしてたような記憶がうっすらと」

 

 

もも「これもう冗談なのかどうなのかわかりませんね。」

 

 

<バァン!!>

 

 

あかね「ちょっと後ろ通るよー!動かないでね!」ドタバタ

 

 

もも「走らないで!どうしたの!?」

 

 

あかね「ちょっと出かけてくる!ももは2人を連れて地下にいっといて!あおいちゃんはまだ寝てんの!?」

 

 

もも「地下?ということは・・・待っておねえちゃん!」

 

 

寝室に飛び込んでいったあかねを追ったももを芳佳は追いかけた。中では布団で巣を形成しつつあったあおいをあかねが掘り起こしている最中だった。

 

 

あかね「このわたしにグータラだねって言われるという不名誉な目にあいたくなかったらいい加減起きてあおいちゃん!」

 

 

あおい「あかねちゃんに怒られるのはそんなに不名誉って訳じゃないんだけどね・・・。それにしたってあかねちゃん元気すぎるよ・・・私まだすっごく疲れてて・・・」

 

 

あかね「変身したら治るよあおいちゃん。」

 

 

あおい「それは、アローンが空気よめなかったってこと?うそでしょあかねちゃん、昨日の今日だよ!」

 

 

あかねが頭をのっけていた枕を眠そうに抱きしめていたあおいは痛む身体を奮い立たせた。身体はギチギチと軋むがあかねを1人で戦場に行かせる訳にはいかないのだ。腕があがらなければ体当たりでアローンに隙をつくるぐらいはできるだろう。あかねに借りた寝巻きがわりの体操服姿であかねに続いて庭に裸足で飛び出した。

 

 

あかね「ご飯は残しといてね!もも!すぐ戻るとは思うけど!」

 

 

もも「お姉ちゃん!待ってるからね!あおいさんも!」

 

 

行かないで、そんなことはいえない。ただ無事を祈ることしかできないももは力いっぱい手を振る。そろってグッと親指を立てたあかねとあおいはすぐそばの海岸まで走って移動し空の彼方を見つめた。雲がなにかの力に吸い寄せられるようにうずの形をとっている。

 

 

その部分の空はまだ午後だというのに真っ暗な闇に染まっている。闇の穴はとても小さいが、問題はそれがスパークを散らしながらだんだん広がっていくのが目に見えて明らかであることだ。あれこそがアローンが出てくる前兆なのだな、とあおいはぼーっと考えていたが、そもそも敵襲を直感で察知できるあかねがいてくれるのだから自分はついていくだけでいいしこの情報は無駄になるだろうと思った。

 

 

あかね「よしいこう!イグニッション!」サッ

 

 

あかねが戦う意志をもってポケットに手を伸ばせば鍵は必ずそこにある。実際とても便利だ。どうやらあおいもそうらしくあかねに続いて鍵を目の前に掲げる。

 

 

あかね「テクスチャー、オン!オペレーション・ビビッドレッド!!」

 

 

あおい「オペレーション・ビビッドブルー!」

 

 

開かれた示現の扉から漏れ出した示現の力が砂浜にあふれ出し、赤と青のパレットスーツを着た2人の戦士をそこに造り出した。2人は自分の身体に満ち満ちる力を軽く爆発させ宙に飛び上がった。ぐんぐんと高度を上げてあっというまに黒い穴のそばまでやってきた。

 

 

あおい「どうしよう?あんまり近づきたくはないけど・・・」

 

 

あかね「連合軍の人にど派手にミサイルでも撃ち込んでもらう?このまま敵が来るのをじっと待ってるっていうのもしゃくだしさ。」

 

 

健次郎『ダメージは通らんからやめたほうがいい。ミサイル一発といえどそこそこの費用がかかるんじゃぞ。』

 

 

あかね「大人の事情により打つ手なし、か!これは参ったね。ならプランBでいこう。」

 

 

あおい「プランB?」

 

 

あかね「プランBのBはブルーのB。」

 

 

あおい「私が考えろってことだね・・・。」

 

 

最後はやっぱり2人で話し合って大体の作戦が決まった。この穴がどういうものかが解らない以上ネイキッドラングを放り込むのは返ってこなくなる可能性も込みで無し。だがここからアローンが現れようとしているのは半ば間違いないだろう。というよりそれ以外思い当たらない。ならばこちらは敵を万全の姿勢で迎える策をとる事にした。あおいは示現エネルギーを集中させネイキッドインパクトを造り出すと穴の近くで空中仁王立ちの構えをとった。

 

 

あおい「あかねちゃん!アローンが出てきそうになったら教えてね!私が思いっきりひっぱたくから!」

 

 

あかね「ひっぱたくなんて可愛いもんじゃすまないと思うけどね・・・。敵はたぶん海に落ちる方向で出てくるだろうからあおいちゃんは鼻っ柱に一発いれたらそのまま上に避難して!わたしがブーメランで攻撃しながら敵をひきつけるから、隙をみてどんどん攻撃いれて!」

 

 

あおい「わかった!」

 

 

健次郎『うむ、現場の判断に任せる。』

 

 

紫条『なげやりなようにも聞こえますね先生。 ブルーアイランド全島に避難指示が出されました。アローンがビビッドチームを振り切って周囲の島に攻撃をかけようとした場合に備えて連合軍戦闘機隊も発進準備をすすめています。』

 

 

健次郎『よろしい。あかね!エネルギー反応は徐々に大きくなっとるが姿を見せるタイミングは正確には測れん!1体目のアローンが発していたエネルギー反応に近くなってきたら一応警告するが、それも頼りにするでないぞ!あおいちゃん、十分気をつけるのじゃ!』

 

 

あおい「はいっ!」

 

 

 

あおい「ネイキッドインパクト、セイフティ解除。」

 

 

 

<ジャキン>

 

 

 

あおいが柄を強く握るとハンマー表面の噛み合った装甲がスライドし内部の機関が露出される。内部で小型エンジンが回転を始め増幅された示現エネルギーが粒子となってあふれ出す。前回のように敵が常にこちらを警戒している場合と、迎撃される可能性の低い今回では攻撃する際の立ち回りがまるで違う。回避・防御前提の攻撃と突撃全フリの攻撃の差は大きい。特にこの武器は使用者のあおいの攻撃時の体勢によってダメージが上下に激しくぶれるものだ。パレットスーツの力があれば空中であろうと踏ん張りがきく。足の先から力をためて上半身に、腰をしっかりいれて叩きつければ威力はどこまでも上がるはずだ

 

 

あおい「ふー・・・」

 

 

あかね「あおいちゃん、来るよ。先っちょが出たら思いっきりね。」

 

 

あおい「OK。」

 

 

足を大きく開き、肩の稼動範囲ギリギリまで振りかぶる。次元の穴が強い閃光を吐き出しながらその穴を急激に開く。作戦は一撃をいれたら離脱。だがあおいに離脱する気はなかった。逃げる気持ちを捨てて構えている。

 

 

あおい「一撃で!終わり!ネイキッドォォォォ!!!!」

 

 

 

<ギギギギギギ>

 

 

金属が引き裂かれているとでも思えるような不愉快な音を立てながら真っ黒に輝く装甲がぬっと空間に現れた。円錐形の身体の先端はとがっておりそこから海に飛び込ませるような姿勢で出てきた敵はあおいの存在に気付いても止まることなどできない。

 

 

あおい「インパクトッ!!!!!」

 

 

内部に凝縮された示現エネルギーが推進力の役目を果たすため爆発しあおいの腕力に乗る。野球のスイングをイメージしたフォームで繰り出された下からすくい上げる一撃がアローンを派手に出迎えた。打撃面の中央がアローンの装甲に触れるがあおいはそれを無視してネイキッドインパクトを振りぬいた。たたきつけた衝撃エネルギーはそのままアローンの先端を粉々に砕くとまだ出現していない身体の大部分へと侵食していった。極限まで高めた示現エネルギーを内部で爆発させたことで冷却のため使用不可になったネイキッドインパクトを放り投げるように手放して粒子化させたあおいはその勢いで一回点してもう一度アローンへと向き直る。

 

 

あかね「・・・!」

 

 

 

ネイキッドラングを展開したあかねは驚きのあまり少し呆けていた。大きく開いた示現の穴。出現したアローンは鼻先を2mほど出した段階で射程範囲内に入ったあおいの一撃により粉砕された。たった一発の攻撃が放った示現エネルギーは衝撃の波となりアローンの装甲を破砕しながら上へ伝わっていき、穴から出るのはすでに活動不能となりバラバラになった灰色の装甲破片の屑のみ。そしてその中から支えを失い落下してきたのは赤い怪しげな光を撒き散らすおそらくはアローンの核だ。

 

 

あかね「核!あおいちゃん、攻撃してくるよ!!!」

 

 

海へと落下しながらもその輝きの純度が増した意味を理解したあかねは叫びながら核を追った。あおいは自分へと飛んでくる光線を警戒し距離を開けるため高度を上げたが狙いは武器を失ったあおいではなく自分を追ってくるあかね。高速で距離を詰めるあかねに向かって放たれた光線はただ立っているだけの時の数倍の速度で迫りくるのだが、あかねはそれをひょいひょいと容易にかわす。手に持ったネイキッドラングを投げることはしない。投げるためのモーションに入ればそこを狙い撃ちされる危険もあるし光線で迎撃される可能性もある。あかねはその速さを保ったままアローンへと肉薄し接近戦を挑むことにしたのだ。

 

 

アローンの核はその表面に装甲部分を徐々に再生させながら身軽になった恩恵を存分に利用しあかねから必死に逃げる。しかしあかねは攻撃を紙一重でかわしながらその距離を確実につめていた。それが0になるまでに距離はかかったが時間はほとんどかからなかった。あかねはネイキッドラングを以前もやってみせたように中心部分を軸に折りたたみ剣のような形態に変化させると、アローンの手前で大きくひねりを加えた飛行で最後の攻撃を避けたあと加速を乗せた刃で装甲ごと核を真っ二つに切り裂いた。

 

 

 

あかね「撃破!」

 

 

散らばるアローンの残骸を避けるためその場を離脱しながらふと前を見ると、どこかの島の近くまで追ってきていたようで斜め前の結構近いところに砂浜が見えた。急に全力での飛行と攻撃を行いすこし息が切れたのでそれを整えるためにそのまま空を飛んで砂浜にどすんと着陸しあおいがいるであろう上空を見上げるがそこからでは見つけられなかった。空のどこかにいるはずの青い光を探していると連絡が入った。あおいからだ

 

 

 

あかね「どうしたのあおいちゃん?アローンは倒したよ?え、今?今どっかの島の砂浜に着地したよ。え?なに?どーしたの?2人?なにが?ちょ、落ち着いて落ち着いて。今からすぐ行くから。・・・筋肉痛が限界に来たのかな。」

 

 

よいしょ、と掛け声を小さく掛け声を出し身体をフワリと浮かせた瞬間だった。なにか強烈な感情をはらんだ視線を背中に感じ、あかねは思わずラングを構えながら後ろを振り返った

 

 

「・・・」

 

 

 

凜、とした少女と目が合った。クールなれいとはまた違い和な空気の中に冷静さと激しさが合わさったものを漂わせている。深い緑色の髪を後ろでたばね、同じく緑の目であかねをまっすぐと見つめてくる。その服装が上下剣道着なのもあいまって、侍という単語がぴったしだとあかねは思った。

 

 

「見ていました。」

 

 

あかね「え?なにを?」

 

 

「それは・・・剣、ではないのですか。でも見事な一撃、私、心底感激しました。」

 

 

彼女は興奮を抑えるような落ち着いた声であかねに語りかけてきた。なにが言いたいのかよくわからなかったかねだったが、ほめられていることを察してありがとうと返す。

 

 

「是非、名をお聞かせ願えませんか?」

 

 

 

あかね「名乗るほどのものじゃあございません。私は、通りすがりのビビッドレッド。それ以外の何者でもありません。」

 

 

 

くるりと振り返るとあかねは背中でそう語った。アローン関連の出来事は実は国家機密レベルに秘匿事項として今後扱われることになったのが決まっていたことをあかねは知らなかったし、自分が示現力を扱いアローンと戦える数少ない人間であることを隠さなくてはならないのだということも彼女はまだ誰にも教えられていなかった。ただ今回名乗らなかったのは、ヒーローは正体を隠すものだし、こういう風に名前を聞かれる機会もなかったのでただちょっと格好をつけただけだった。しかしその姿に、彼女は心底心を奪われたのだ。

 

 

彼女は避難命令が出ていることを知らなかった。砂浜近くの秘密の修行場での特訓を終え、砂浜で1人海を見つめながらかねてよりの悩みについて思いをめぐらせていた。そんな彼女がふと空を見上げると、赤い光を放つ二つの飛行物体。なにかに追われている方は黒い金属を身体に纏いながら赤い光線を空にむかって撃っていた。もう1つの光は人間だった。目で追うのもやっとな光線を完璧に見切り不自然な体勢から手に持った得物で一閃。

空中でアクロバティックに前転を決めながら自分の目の前に降りてきた段階で、彼女は完全に目を奪われていたことに気付いたのだ。

 

 

(私が他人の剣を美しいと思うのは、初めてだ。)

 

 

空へ飛び立とうとしている彼女に追いすがるすべを持たない自分の力の無さを恨みながら、彼女は手に持った竹刀を強く握りしめ小さくうなった

 

 

「弟子にして欲しい・・・」

 

 

 

大武辺者剣道少女、三枝わかば。若干14歳にして同い年の女の子に侍という第一印象を持たれるほどの空気を纏った彼女は、緑の髪を潮風になびかせてその鋭い瞳を大空へ向けた。無力に地をはいずることしか出来ない自分と相反する、翼をもった赤い瞳の少女に魂を惹かれた2人目の女の子であった。

 

 

 

 

 

 

 

 




少々お待たせしました。前半部分はすぐかけていたのですが、後半と仕上げをやるまでに間があきました。特に忙しくはないです。


英雄が自分でなければならない理由。示現力を扱える人間が一色家だけ、という今回のお話でした。変身して戦う英雄は本人は強くなくても、変身できれば誰でも戦えるのでは?というのは結構あると思います。そこのところの設定のお話でした。


わかばちゃんをやっと出せましたね。どういう風なキャラとして扱うかはもう決まっているのですぐかけると思います。
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