ビビッド&ウィッチーズ!   作:ばんぶー

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第90話 「そして夏空は晴れやかに青く」

 

全てが終わって、丸一日が過ぎた

 

 

 

あかね「ほげー……」

 

 

あおい「ねむー……」

 

 

2人は縁側で互いの身体を支えに100%ダラけていた

 

 

もも「おねーちゃん、おひる何食べたい?」

 

あかね「そうめん以外……」

 

もも「りょうかーい。ねえお母さーん!」

 

とててて、と駆けて行く音を背後に聞きながら、あかねは青空を見上げた。この所空は示現力の影響で変な色に光っていたのだが、今日になってようやく落ち着いてきた

 

 

今のあかねには示現力は殆どない。思った通りに事象が変換されたりすることは無いし、お腹は空くし、眠くもなる

 

といっても、別に力を失った訳ではない。必要とあらば鍵は手の中に現れるし、変身だってできる

 

戦いの後、あかね達4人は自分達の力の大半を使ってこの次元を特殊なバリアで覆ったのだ。監視者は倒されたが、別の変な存在があかね達にちょっかいをかけてきたりネウロイがふらっと侵入したりしないよう蓋をする為だ。

 

示現力との繋がりは常に感じるが、あかね達自身はちょっと元気な普通の女の子として生活していける身体になっていた。少なくとも、力をこの世界の防衛に中てている限りは

 

 

バリアの維持も示現力にお願いしてやってもらっているのであかね達が普段何か気を取られたりすることはない。なにか問題があれば知らせてくれるだろう

 

 

『即ち、万事解決した』

 

 

戦いが終わり家に帰って健次郎を通してその言葉を聞いた時、あかねはちょっとだけ泣いて、思いきり笑って仲間達と抱き合って、そのまま疲れが限界を迎えて布団にダイブしてつい先程まで泥のように眠っていた次第だった

 

 

 

わかば「ふわー……おはよ。2人とも」

 

少し遅れて起きて来たわかばがあおいと反対側のあかね横に座り、肩に頭を乗せた。2人きりの空間を邪魔されて少しむーっとした視線を投げて来るあおいを無視してあかねに体重をかける

 

 

あかね「重い……」

 

わかば「頑張ったのだから、褒めて欲しいのよ」

 

あかね「頑張ったねー……よしよし」

 

あおい「私は!?私は!!!!??」

 

あかね「んああ、揺らさないで……」

 

 

気だるそうに両腕を上げて2人の頭を撫でていると、背中に何かが触れたのを感じた

 

 

ひまわり「おはよ、あかね」

 

あかね「おはようひまわりちゃん。身体だいじょうぶ?」

 

ひまわり「ん、まあまあかな」

 

背中合わせに座り込んだひまわりと言葉をかわした後、4人はしばらく黙り込んだ。この所ずっと慌ただしかったものだから、なんにもしなくていいこの時間を存分に満喫したかったのだ

 

 

 

その静寂を破るのは、誰かが庭の土を踏みしめる音。あかねがふと顔を向けると、見知らぬ女性が立っていた。いや、恐らく女性だと思えた。肩までかかる黒い髪、垂れてもなく釣り目でもない瞳。やわらかな微笑み以外、なんだか全く印象を持てない人があかねに向かって小さく頭を下げた

 

「どうも。管理者です」

 

あかね「???」

 

「ああ、待って。敵ではないですよ。そのまま座っていてだいじょうぶです」

 

 

そうは言われても警戒しない訳にはいかないのだが、なんだかあかねはまるっきり気合が入らなかった。その女性はあまりにも敵意が無く、危険性が感じ取れないのだ。それは横にいる仲間達も同じだった

 

 

わかば「管理者……。あのカラスの上司?」

 

「ええ。とはいえ、暴走を許してしまいました。管理者という名は、返納する必要があるというのが私達の考えですが」

 

微笑みが消え、申し訳なさそうにしょぼくれた顔であかね達に頭を下げて来るこの女性が本当に示現力の神様なのかと思ってしまう

 

「私は所詮分身ですから、大した力はありませんよ。所詮はメッセンジャーです。それより、我々の不手際であなた方には大変なご迷惑をおかえしまったことを我々は大変申し訳なく思っています。そのお詫びに来たのです」

 

あおい「はぁ。なにかくれるんですか?」

 

「なにか欲しいものがあれば、それを差し上げます」

 

あかね「マヨネーズ」

 

間髪言わず答える。管理者は上着のポケットからいつもあかねが食べているのと同じメーカーのマヨネーズの瓶を一本取り出し、差し出した。あかねはそれをうやうやしく受け取り、大切そうに膝の上に置いた

 

あおい「そ、そういうことならあかねちゃんの___」

 

「公序良俗に反するモノはちょっと。そういうものなら後でこっそり差し入れますよ」

 

あおい「ちちち違いますぅー!!!!そんなヤバイことじゃなくて……あかねちゃん違うから!違うの!あれ、あれだよ!あかねちゃんの……ごめんなさいちょっと考えます」

 

あかね「えー、教えてよ。何もらおうとしたの?」

 

あおい(あかねちゃんの抱き枕カバーが欲しいとは言えない……!両面で、裏はちょっと半脱ぎのヤツ……!)

 

わかば「ドッキングしたら解るわよ」

 

あおい「なんでもないからー!それよりほら、それだけですか!?管理者さん!他に何かお話とかあるんじゃないですか!?」

 

 

これ以上つっこまれたら叶わない。あおいは声を荒げた

 

 

「そうですね。もう一つだけ。あなた方が黒騎れいと呼ぶ友人の事です」

 

 

_____________________________

 

 

 

戦いの直後。ビビッドフォースとカラードブラックの合体パンチは、監視者と呼ばれた存在を粉々に打ち砕いた。残骸はカラードブラックが次元の狭間に放り込み、最後にその空間ごと焼失させ完全に消滅させたことで決着がついた

 

 

ブラック「___」

 

フォース「終わったね」

 

ブラック「ええ」

 

 

手を繋いだまま、2人は結界を解除し晴れ晴れとした空を見上げた。だがブラックの心は快晴とはいかない。敵こそ倒したものの、これからの当ては無い。やるべきことが終わってしまった今、彼女の心には徐々に喪失感が生まれ始めていた。それが解ってか、ビビッドフォースは少しだけ手を強く握り直した

 

 

ブラック「……?」

 

その時、ブラックの側にふわりと小さな光が近づいてきた。それは監視者の身体を砕いた際溢れ出した示現力の一部で、監視者が取り込んでいた力___かつて黒騎れいが居た世界の欠片だった

 

 

 

ブラック「ああ……」

 

 

感情が次々と涙となって溢れ出して、言葉にならない。まだまだ先は長く、この欠片も所詮はきっかけに過ぎない。だがしかし、彼女は何もかもを無くした訳ではないということに気付けたのだ

 

 

フォース「やったね!」

 

ブラック「ん……。色々と回り道をして、皆に迷惑をかけたけど……。うん、本当に良かった」

 

 

首輪に繋がれ、運命に振り回され、全てを失ったかと思われた彼女。長い時間と多くの戦いの果てに、ようやく心の底から笑うことができたのだった

 

 

 

 

____________________

 

 

 

 

その後、直ぐにれいはこの世界を去って行った。彼女はその力の全てを使ってでも、自分が元居た世界を再現するつもりだった。あかねは最後まで力を貸したかったが、どれだけ頼んでもれいが提案を受け入れる事は無かった

 

 

れい『あまりにも長い時間がかかる作業よ。その間、ずっとあなた達を縛り付けておくことはできない』

 

 

だから彼女は1人で行ってしまった。さよならを言う時間も殆ど無いままに。あかねはおいて行かれた事とれいが過ごす孤独な時間を考えて、今日の朝からずっと憂鬱な気分だったのだ

 

 

あかね「で、れいちゃんがどうしたの」

 

「あかねさんが求めるのは、ハッピーエンドでしたね」

 

あかね「そりゃそうだよ。ハッピーエンド嫌いな人とかいないと思うよ」

 

ひまわり「それは違うよあかね。世の中にはバッドエンドにこそ喜びを見出す人もいて___」

 

あおい「ひまわりちゃん、今オタク談義は一旦横に置いとこうよ。後で付き合うから……。ごめんなさい、続けて」

 

 

「言いましたよね。あなたが求めるものを差し上げると。マヨネーズは簡単ですし、まあもう1つくらいなら差し上げてもいいかなと思いましてね」

 

 

管理者が気取ったようにパチンと指を鳴らす。なにがもらえるんだろう、とぼけっとしていたあかねの頭上にふっと影がさしかかり、顔を上げる間もなく彼女の上から誰かが膝の上に落っこちて来た

 

 

「どうぞ。ハッピーエンドです」

 

 

あかね「?……!!!???」

 

 

視界が塞がっているので空いた両手で前にあるものをまさぐった。ふにふにとしていて、あったかい

 

 

「ちょぁ、やっ!どこ触ってるの!あかね、ちょっと!」

 

あかね「れいちゃんだ!!」

 

れい「もうっ!ただいま!」

 

 

耳を真っ赤にして頬を膨らませているが、見紛う事なき黒騎れいだ

 

 

「元はと言えば、彼女の世界が滅んだのは監視者の暴走によるもの。試練自体は乗り越えていた訳ですから。我々の罪滅ぼしも兼ねて、少しお手伝いをさせてもらいました」

 

あかね「れいちゃんだ……れいちゃん!」

 

わかば「おかえりなさい!全く、大げさにいなくなって!」

 

ひまわり「昨日の今日とかなんか拍子抜けだけど。……ま、よかったんじゃない?待ってたよ」

 

あおい「れいちゃんおかえりなさい!また会えて本当によかった!でもその場所は変わって下さい!ずるいです!」

 

 

れい「みんなありがとう。あおい、ブレないわね」

 

れいはあかねの上からどいて、わかばが場所を空けてくれたのであかねの横に座り直した。あおいはあかねの膝の上に座る。あかねはあおいを撫でながら、視界があおいの背中で塞がってしまったのでちょっと身体を傾けて管理者を見る

 

 

あかね「あの、ありがとうございます!」

 

 

監視者はニコリと笑った。先程までのうっすらとしたものでなく、本当に嬉しそうに

 

 

「確かに手助けはしました。ですが、この結末はあなた方が頑張り、そして手にしたものです。誇って下さい。我々とは違う道を行くあなた方の事、これからも見守らせて下さい。今度は、対等な立場の友人として」

 

 

 

管理者を名乗った女性は深く頭を下げ、去っていく。数歩歩いた辺りでその姿は風に流されたかのように消え去った

 

 

れい「まあそんなんこんなで……。ただいま、あかね」

 

 

あかね「___うんっ!おかえりなさい!れいちゃん!」

 

 

 

 

 

 

黒騎れいは一色家に帰って来た。一番初めにここへ来た時と違って、その手に何もかもを取り戻してから。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

わかば「あ、私は新しいトレーニング用の服と靴がほしい」

 

ひまわり「最新のグラボとモニタ」

 

「はい。あとで郵送で送っておきますね」

 

あかね(管理者さんまだ帰ってなかったんだ)

 

 

 





ちなみに後日あおいちゃんの所に一色あかね抱き枕カバー(普段着、制服、パレットスーツの3バージョン・観賞用使用用の2セット)が届きました





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