GOD EATER  mixed blood   作:98zin

5 / 5
極東支部

「ここは、フェンリル極東支部。ゴッドイーターの最前線基地だね」

 

そう言ってベッドの周りをくるくるしながら説明を続けるのは、白髪のサカキという人

何かとしゃべっているが内容はよくわからない

その間僕はどうしてこんなところにいるかを振り返ることにした

ただ()()記憶が飛んでる

ここは村のどこでもないみたいだし、サカキって人の話も村長から聞いたこともない

ただ、フェンリルっていう言葉は村の倉庫にあった物資の名称と同じだ

最後の記憶は、、たしか、村にアラガミが数匹向かってきていると聞いてみんなで地下に避難して、、

そこから覚えてないや、、

どうしてここにいるか頑張って思い出そうと唸る、が無理だ

さっきまで意識を失っていたことでまだ少し、頭が混乱しているようだ

そんな僕を気にすることなくしゃべり続けていたサカキ、さんをつけたほうがいいかな?

そんなことを考えていると、コンコンと赤いドアからノックが聞こえてきた

「お、来たみたいだね。入っていいよ」

その言葉に続き、ドアノブがまわり黒い服やら、赤いフード付きの羽織を着た人たちがゆっくりと部屋に入ってきた

瞬間、僕の体は勝手にベッドを蹴り飛ばし、ガタン!と派手な音を鳴らしてドアの反対の壁まで跳んだ

入ってきた人たちとサカキさんは思わず腕で顔を覆い驚いた様子だった

それはそうだろう

壁に穴をあける勢いで跳んだ本人が一番びっくりしているんだから

入ってきた黒い服の人が

「大丈夫?」

と声をかけてくれるが、まったく大丈夫じゃない

その声に反応して足が少しブルっと震えた

「おびえてるのか?」

赤いフード付きの羽織を着た褐色の肌のお姉さんが首をかしげてたずねてくる

おそらくそうなんだろう

知らない人が増えたなー、と思うだけだったのに、体が勝手に動いたんだ

ただ、黒い服を着た人だけは、初対面にもかかわらず心のどこかで恐怖が見え隠れしている

強張る筋肉のせいでろくに声も出せずに入ってきた人たちを見つめる

「こんなに大人数の人が急にきちゃったら、ちょっと刺激があったかな?」

そう言ってサカキさんは戸惑う彼らを押し出して最初に入ってきた黒い服の人だけを部屋に入れた

えー、その人が一番嫌だったのに、、

「えーと、初めまして。僕の名前はヒロ。驚かしちゃってごめんね?名前を教えてもらってもいいかな?」

初対面にもかかわらずおびえまくっている僕に、戸惑いながらも丁寧に名前を聞いてくる

シオン、と言おうにも声は出ずただ足を震えさせて情けない体勢でヒロさんを見つめる、というか睨んでる

「んー、ヒロ君、彼に何かしたかい?」

「いや、何も、、あ、僕が斬りました」

「なるほど、じゃあ選手交代だ」

よくわからない会話をしてからヒロさんは申し訳なさそうな顔をして部屋を出た

少しして代わりに入ってきたのは褐色の肌のお姉さんだった

非常に失礼だが、ヒロさんがいなくなってホッとして、代わりに来たお姉さんに安堵を覚えている僕は駄目なんだろうか

「話は何となく分かった。安心しろ、私はお前の味方だ」

そう言ってつかつかと壁際でいまだに軽く縮こまっている僕のところに来て手を差し出してきた

「あ、ありがとうございます?」

思わず疑問形になってしまったが、差し出された手を握り返すとなぜかあたたかい気持ちになれた

「私の名前はリヴィだ」

「僕の名前はシオンです」

握手を交わしたままお互いの名前を認識する

「やー、どうやらアラガミの時に斬られた衝撃が残っていてヒロ君に怯えたみたいだね」

サカキさんがふんふんと1人納得している

え、

アラガミの時?

どういうこと?

あいかわらず意味の分からないことを言うサカキさん

首をかしげているとリヴィさんが

「どうした?まさか覚えてないのか?」

「う、うん。何のことやら、、」

リヴィさんは驚きと、悲しみの表情を浮かべて僕の顔を見る

口を開けては閉じてを数回繰り返し、発した言葉は

「シオン、お前はアラガミだったんだ、、、」

そんな、突飛なことだった

 

 

 

 

そこから僕はここ、村からフェンリル極東支部にいたるまでの経緯を説明してもらった

アラガミが人を食べていたこと

そのアラガミを倒すと僕が出てきたこと

村は災害にあったように荒れていたこと

 

 

 

 

そんなこと言われても、何も思い出せないし、納得もできない

僕が、あの、アラガミ、だった、、?

リヴィさんが嘘を言っているようにも思えず、サカキさんが言っていた僕がヒロさんに怯えている理由

それも、感覚的にあの人は危険だと心の中で感じている

混乱していた頭も現状を理解し始める

 

ヨコセ、、、

 

そんな声がまた聞こえた気がした

その声に心が急に不安になり体が震えだす

僕は訳も分からず頭を掻きむしり、頭皮が傷ついて血が出ていることにも気が付かない

気づいたら僕は大きな口を開けてひたすらに発狂していた

リヴィさんが何かを言いながら必死に僕の腕を押さえてくれている

けど、僕はそんなことお構いなしに頭を掻き、叫び、吐いて、狂った

見える視界はどんどん赤黒くなり次第に真っ暗になった

 

モット、ヨコセ、、

 

その声だけは鮮明に聞こえて、僕は意識を失った

 

 

 

 

 

 

 

 

「、、、そして今ここにいる」

 

 

幼い少年にここまで正確に現実を伝えていいものかと迷ったが、私たちは「食べ残し」の情報を得なければならない

彼が、彼の村がどういう状況にあったか少しでも把握したいと思ったが故の判断だった

しかし、それは間違いだった

今目の前の幼い少年は現実に打ちのめされ、狂ってしまった

「シオン!落ち着け!おい!」

頭を掻きむしるので、腕をとり押さえるが抵抗しながらも腕を振り回す

ゴッドイーターの力でさえもシオンの腕を押さえられないことに、彼がアラガミの細胞を持っていることを認識させられる

自分の早まった判断によって1人の少年を狂わせてしまった

「すまない、、!落ち着いてくれっ!」

暴れ狂う少年の体を抱きしめ、落ち着くように促す

少年の手が振り回され私の腕や顔をひっかき皮がめくれ血が滲む

さらにシオンの手の爪がはがれシオンが動くたびに赤い血が飛び散る

抱きしめていた体はしばらく抵抗を続けていたが次第に動きに力が無くなっていく

体を少し離しシオンの顔を見ると目は赤黒く染まり、焦点があわずどこを見ているかわからない状態だった

さらに腕や首に黒い痣が浮かんでいた

それはかつて人々を苦しめた黒蛛病の痣に酷似していた

そして不意にシオンの体から力が抜け体を私に預けてきた

「、、、」

彼が暴れている間このままアラガミ化してしまったらどうしようかと思っていたがその心配は必要なかったみたいだ

が、そのまま意識を失い体と心に傷を負ってしまった

これまで暴れるシオンをオロオロしながら成り行きを見ていたサカキ博士がふと疑問を口にする

「ここまで不安定になってもアラガミ化しないのはなぜだ?いや、もちろんここでアラガミになってもらっても困るが、ここまで感情が荒れて制御できない状況で、、」

ブツブツと独り言ちるサカキ博士をよそに私はシオンを抱きかかえる

さすがに外までシオンの叫び声は聞こえていたらしく、慌てた様子でブラッドの仲間が部屋に入ってきて心配してくれる

このとき私の心の中はシオンに対する申し訳なさと、幼い少年が狂ってしまえるこんな世界への怒りで溢れていた

 

 

 

 

 

 

僕は目を覚ますと真っ暗な部屋にいた

「、、、」

体は重く指一本も動かせそうにない

天井の電気は消えていて周りは真っ暗だ

そういえばこの部屋、窓はないんだ

おかげで今が昼か夜かは分からない

暗い部屋の中で僕は独り呟く

「アラガミ、、、」

僕はアラガミ、もう今はすんなりと理解できてしまう

夢の中で聞こえた声

きっと僕じゃない何かがいるんだろう

ここでいろいろ考えるとまた狂ってしまいそうで僕は考えるのをやめてもう一度深い眠りにつくことにした

 

 

 

 

 

僕達はシオンからいろいろなことを聞きたかったが、僕はシオンとの面会は絶望的、ほかのみんなも下手なことを聞いてまたシオンを暴走させてしまう恐れがあるので情報はゆっくり聞き出す方針となった

しかしいつ落ち着いた状態で話し合いができるか分からないシオンを待ち続けるほどの余裕はゴッドイーターたちにはなく、新たに発見された食べ残しやその周りに群れるアラガミたちの処理に追われる日々が続いた

ある作戦の帰り道

「なぁ~ヒロ~、いったいいつになったら食べ残しの張本人、いや張本アラガミさんは出てきてくれるんだよー。お母さんに食べ残したらダメって言われなかったのかよー」

口をとがらせこの作戦に疲れてきたロミオが不満をもらす

「確かにこれだけ長期にわたって作戦を展開しているのにこれといった手掛かりは見つかっていない、、おそらくその張本アラガミさんはただものじゃないってことが分かるくらいだね」

この日の作戦はほかのみんなとは別行動でロミオと二人だけだ

作戦も順調に終わりそんな無駄口をたたく余裕はあった

討伐したアラガミのコアも回収し終わり帰還の準備をしていると

「ゴァァァァァ!」

「「!?」」

少し離れた位置からアラガミの叫び声が聞こえた

「なんだなんだぁ!?この辺のアラガミは全員やっつけただろ!?」

「ああ。ヒバリさん!近くにアラガミの反応は!?」

「あ、ヒロさんお疲れ様です。先ほど全討伐対象の駆逐を確認したので周りにアラガミはいないですよ?」

「うっそぉ!?じゃあ今のは何なんだよ!」

思わず叫んだロミオの言葉に同意しながらありうる状況を考える

僕達の状況をみて冗談を言うことなんてヒバリさんがするはずないだろうし、オペレーターが冗談なんか言ったら現場のゴッドイーターの命に関わる

じゃあレーダーの故障?それこそ死活問題だ

整備のリッカさんの腕を疑う訳じゃない

現にさっきまでレーダーは機能していた

「、、、レーダーにうつらない、アラガミ、もしくはアラガミじゃない?」

出てきた答えに自分でも鼻で笑ってしまいそうだったが、今はそれくらいしか思いつかない

「ロミオ、確認に行くよ」

「うげっ、まぁそう言うと思ったけどさー」

神機を構え警戒態勢をとり、声が聞こえたほうに向かって進む

「ヒバリさん、作戦終了後、おそらくアラガミと思われる叫び声を確認しました。だけどレーダーにそれらしきものはないんですよね?」

「はい!アラガミの影は確認できません!」

「今から対象の調査に向かいますもしレーダーに変化があれば報告をください!」

「わかりました!くれぐれもお気をつけて!」

通信が切れ意識を現場に戻す

「あっちだな」

先ほど聞こえた声を頼りに神機を握りしめ向かう

「ガァァァァ!」

「まただ」

確かに近づいている

強い緊張感をもってじりじりと進む

「おそらくその角を曲がった先だ。ロミオ、一気に行くぞ!」

「ちょ、ヒロ!待てって!」

角を曲がった先に居たのは、

「、、ヒト?」

二足で直立し二本の腕が生え頭と思われる部位が胴体の上に乗っている

向こう側を向いており顔は確認できないが、その姿はヒトといって差し支えなかった

こちらの声に反応してバッと振り向く

その正面をみて僕たちは絶句した

ヒトならば顔があるはずの場所に、目も鼻も口もなくただただ肌色が見えるだけ

そして彼のお腹には大きな口が開いておりそこからはヒトの腕のようなものが出ていた

その腹の口は大きく咀嚼を繰り返し、その腕をすべて飲み込み尽くした

「な、なんだこいつ!?」

あまりに奇怪な姿に息をのむ

「ガァァァ!!」

こちらをどうやってか知覚しいきなり走り出す謎の生き物

腹の大きな口をあけこちらを喰らわんとするそれはアラガミのようで、、、

「ふっ!」

その突進をバックステップで避け、避けざまに一閃、腹の口を引き裂く

口がぱっくりと横に裂け赤黒いちをボタボタと零し腕でおさえる謎の生き物

「今だ!」

ロミオの手にある神機から放たれた弾丸は真っすぐそいつに向かって飛び命中かと思われた

いや、確かに命中した

だが効いていない、喰らってしまった

その大きな口ですべての弾丸を受け止め喰らってしまった

「喰った!?」

その出来事に戸惑いを隠せないロミオ

謎の生き物は弾をかみ砕き飲み込む

するとみるみる口の傷が治っていき何もなかったように口は元の形に戻った

「治った!?」

さっきから驚きの言葉しか出ないロミオを置いて僕は走った

弾は喰えるみたいだが、剣は届いた!

血の力、ブラッドアーツを発動し一気に加速する

紅く煌めく刃は絶対的な一撃になるはずだった

「なっ!?」

喰われた

謎の生き物を切り裂き通り過ぎたと思ったが僕の神機の剣先は無くなっていた

「ゴリッ、ボリッ」

後ろから聞こえる咀嚼音

「ゴフッ!?」

「ヒロ!?」

僕の口から血が流れた

どうして?

そう思って自分の体を見下ろす

脇腹が無かった

僕の脇腹は、謎の生き物の右手に収まっていた

そこでようやく痛みを感じ、僕は地面でのたうち回る

「ぐううぅう、、」

一気に脂汗が流れ、それ以上に血が脇腹から出ていく

「おい!ヒロ!」

ロミオの声もぼんやりとしか聞こえない

かすむ視界でこちらに駆け付けるロミオを見てかすれた声を出す

「、、う、う、、ろ」

うしろ

そう言いたかった

ロミオの後ろには口の両端を吊り上げたそいつが立っている

僕の判断ミスだな、、

朦朧とする意識の中自責の念と、反省が行き交う

ロミオがそいつの口に収まろうとしたその瞬間に、そいつの体は吹き飛んだ

なんで?誰が?

「大丈夫?」

それが僕が意識を手放す前に聞いた最後の言葉だった

 

 

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※参考:評価数の上限
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。