ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

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6話 決意

「いただきます…!」

 

乱暴にそう言った明人は、怒りをぶつけるように目の前の夕飯にがっつく。

 

「アキ。もう少し丁寧にたべなさい」

 

「うるせーよ」

 

母親に注意をされるが、聞く耳を持たず、むしろ睨み付けて反抗する。

 

あの後、家に帰った明人は自室に籠もり、枕や布団を投げて八つ当たりしたが、イライラが収まることはなく、ご飯に呼ばれる1,2時間ずっと暴れ回り、この上なく不機嫌な顔で食卓に付いたのだった。

 

「あら。反抗期?

親にそんな口利くなんて立派になったものだね」

 

母親は呆れたような口調で言う。

 

「ああ、そうだな。立派立派」

 

隣で料理を頬張る兄の晴人も、茶化すように言った。

 

「うるせえな!!

兄貴は口出しすんなよ!!」

 

明人は、自分がこう怒っているのにヘラヘラして茶化してくるのが気に入らず、怒鳴った。

 

「は…?

なんだ…その口の利き方は…!?」

 

兄も事情を知らないため、必要以上に怒られたことに怒り、明人の耳を引っ張りながらドスの効いた声で言った。

 

「いてて……! コイツ!! てめえ!!」

 

明人は兄の手を払い、衝動的に殴ろうとする。

 

しかし、相手は2つ離れた兄。

 

兄弟喧嘩もよくし、行動パターンも決っていたため、拳は簡単に受け止められてしまう。

 

むしろ、顔面にカウンターパンチを食らってしまった。

 

「どうした? やれるもんならやってみろよ」

 

兄は余裕そうに挑発する。

 

「くっ……てめえ!!」

 

明人は手で鼻を覆いながら、仕返しにと、殴り込もうとしたとき

 

「ハル! アキ!! いい加減にしな!!!」

 

と母親が怒鳴った。

 

2人はビクリとし、動きを止めて母親を見る。

 

「今は食事の時間だよ!!

兄弟喧嘩なら後にしな!!」

 

母親は2人の顔を見ながら、厳しく叱りつける。

 

しかし、明人は納得行かないような表情で、兄を指差す。

 

「だって、兄貴が!!」

 

「は…!?

殴ろうとしたのはアキだろ!!」

 

「いい加減にしな!!!

それ以上続けるならご飯下げるよ!!

あと、口に物入れながら喋らない!!」

 

口論が始まりそうになったので、母親はすぐに止める。

 

2人はこれ以上怒られるのと、夜ご飯を抜きにされるのは嫌と、互いを睨みながら、大人しく椅子に座った。

 

「よろしい。

アキは顔洗ってきな。

鼻血でてるよ」

 

「……ッ!?」

 

明人は母親に言われて、鼻を覆っていた手や、口や鼻の周りに血がついている事に気付いた。

 

出血させられたことに、兄を一発殴りたくなったが、なんとか我慢し、ティッシュで鼻を抑えながら洗面所へ向かった。

 

その間に、リビングから声が聞こえる。

 

「アキ。何そんなに苛ついてんだ?」

 

「学校で女の子泣かしたんだって」

 

「え? なんで? アイツが?」

 

「知らないわよ。私も夕方学校から電話が来てビックリしたよ」

 

「聞かなかったの?」

 

「無理無理。あの子頑固だから。

アンタも変なこというんじゃないよ」

 

「はいはい」

 

壁に隠れて聴いた後、血が付いたティッシュをゴミ箱に捨て、顔を洗う。

 

その間、またイライラが増して来た。

 

(あーもう!!

今日は最悪だ!!

倉庫に閉じ込められるわ! 最悪なタイミングではかちゃんに見付かるわ! それを母ちゃんに言われるわ! 兄貴にぶん殴られるわ!

なんでこんな目に合わなきゃいけねえんだよ!!)

 

明人は一通り洗い流し終えると、衝動的にゴミ箱を蹴飛ばそうとしたが、また母親に怒られることを危惧してやめた。

 

大きな溜息をつき、タオルで顔や手を拭く。

 

(もういい。こうなったら、早苗さんと絶対に付き合ってやる…!!)

 

明人は吹っ切れたのか、はたまた、逆境に立たされてむしろ火が付いたのか、咲希と付き合うことを固く決意した。

 

 

 

〜〜〜

04/19(火)

 

「……おはよ。しん」

 

「……おはよう」

 

明人は登校し、机にランドセルを置くと同時に、気まずそうに真也に挨拶した。

 

真也は昨日のことを気にしているらしく、今日使う教科書を確認しながら、渋々といった感じで返す。

 

「………」

 

明人はなにか話そうとしたが、気まずく、言葉が出ない。

 

そして、そのまま黙って座り、黙々とランドセルから教科書とノートを取り出して机の中にしまう。

 

「あーー……ええ、今日って算数…宿題あったっけ?」

 

それでもやっぱり、沈黙には耐えられず、適当に話題を振る。

 

「……ない」

 

「………あそう」

 

しかし、会話は続かず、それぞれの朝支度に戻る。

 

「………で」

 

真也が一通り朝支度を終えると、一時間目に使う社会の教科書を、いじくりながら口を開いた。

 

「え?」

 

「どうだったんだよ?」

 

「どうって?」

 

「……生き物係」

 

「あ……ああ。

……………」

 

明人は真也が何を聞き出そうとしばらく考えたが、結局答えはでず、それよりもやることがあるのではないかと思い

 

「すまん!!」

 

と頭を下げた。

 

真也はちょっと驚いた顔をしながら、横目で明人を見る。

 

「しんがなんであそこまで言ってるのかよく考えないで、俺、色んな意味でお前を裏切っちゃって……

だから、なんていうか…その…。

すまない!!」

 

「………それで?」

 

真也はどこか照れくさそうな顔をしながら、視線を外し、教科書をいじる手が速くなる。

 

「え……あ、だから友達のままで」

 

「そうじゃなくて。

アイツだよ」

 

真也は右の机の方を指差した。

 

明人がその方を見ると、指先は百合の席に向けられてた。

 

明人はこのとき、真也が裏切られて怒っていること以上に、百合に自分がなにかされなかったか心配していたのだと気付いた。

 

真也の方を見ると、照れながらソワソワした様子で教科書を指でトントンしていた。

 

「ああ…。

やられたよ」

 

明人がそう言うと、真也は教科書をパタンと置き

 

「だろ?

アイツ、クラスでは優しい子ぶってるくせに性格最悪だよな?」

 

と徐々に明人に顔を向けながら言ってきた。

 

「だよな。

お前、なんで今まで言わなかったんだよ?」

 

明人も顔を合わせ、共感する。

 

「言えるわけねえだろ。

てか、言っても絶対に信じないって」

 

「ああ。確かに。

俺なんて、アイツが悪いくせに、はかちゃんが来たときに泣かれて、俺が悪者にされたからな。

絶対あれ嘘泣きだろ」

 

「そうだよな!

女子ってなんでも泣けば許されるって思ってるよな!

……お前もこれで分かっただろ?

昨年の俺みたく、俺達の係でも手伝うか?」

 

真也は悪口大会で、活気付いた様子になり、明人の肩に手を乗せて誘った。

 

しかし、明人はすぐにその手をどけて

 

「いや。いいよ」

 

と断った。

 

「なんだよ? じゃあ1年間サボるつもりか?」

 

真也は機嫌の悪そうな顔付きになる。

 

「そんなわけねえよ。

俺は生き物係を続ける」

 

「は?

お前、アイツに言われただろ…!?」

 

真也は信じられないと、目を丸くする。

 

「そんなの知るかよ。

せっかく早苗さんと一緒になれるんだから、わざわざあんなヤツの言う事聞くことはねえよ。

俺は絶対に、早苗さんと付き合ってやるって、覚悟決めたんだから、そこは曲げねえよ」

 

「アッキー」

 

明人の宣言に、真也は呆れと困惑があったが、それ以上に、その目と口調に本気であることを感じ取れた。

 

「はあ……

お前らしいな。

応援してる。頑張れよ」

 

溜息を吐くと、やれやれという風に、応援の言葉をかけながら、明人に手を伸ばす。

 

「ああ」

 

明人は確固たる決意に満ちた表情でそう言うと、熱い握手を交わした。

 

「絶対、早苗さんを彼女にして、アイツをギャフンと言わせろよ」

 

「任せておけ!」

 

「またいつものように飽きるんじゃないぞ」

 

「今回ばかりは、いつもの俺と思うなよ」

 

「期待してる」

 

硬い握手をしたまま2人が言葉を交わしていると

 

「おはよー!!!」

 

と咲希が教室に入るなり、手を上げてとびきりの笑顔で大声で挨拶した。

 

クラスの一部が挨拶を返すと、明人も少し笑顔になり、躊躇しつつも挨拶を返そうとした瞬間

 

咲希の後ろから百合も教室に入って来た。

 

その姿を見ると、すぐに明人は真顔になり、小さく舌打ちして真也の方に向き直った。

 

「結局、アイツと早苗さんはセットだから無理じゃねえか?」

 

真也は“よくよく考えると”と思い、諦めたように明人に耳打ちする。

 

「そこが問題なんだよな。

あの2人凄く仲良いし」

 

明人も難しそうな顔をして、返す。

 

「てか、早苗さんはなんであんなヤツと仲良くしてんだろ?

性格悪いの知らないんじゃねえか?」

 

「どうだろうな…………」

 

明人がそこまで言ったとき、百合が一瞬明人を睨みつつ、彼女の席に向かって来たため、椅子を真也の方に寄せた。

 

「………しん。お前は知らないのか?」

 

「知らない。アイツが一方的に脅迫して、言い負かされたから、なにも……」

 

「なんだよ。

まあ、とりあえず……そこ、探り入れるか」

 

「本格的だな」

 

「やるからにはな。

それで、早苗さんが知らないなら、早苗さんといる時はアイツは裏の顔出せないし、脅しの材料にもなるからな」

 

「アッキー……お前。なかなかエグいこと考えるな…」

 

思っていたよりも本格的なことを言う明人に、真也は少し困惑した。

 

「そうか?アイツもアイツで脅して来たんだし、お互い様だよ」

 

明人は得意気な顔で言いながら、内側に闘志をメラメラと燃やしていた。

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