ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

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17話 咲希と百合

(さっちと仲直りしたい!!)

 

百合はその思いを胸に、花畑へと辿り着いた。

 

「さっち!!」

 

その真ん中で、一人、花飾りを一生懸命に作る咲希に、百合は大きく叫び、呼び掛けた。

 

「? ……!!

百合ちゃん!!」

 

咲希は百合の姿を見ると、立ち上がり、一瞬、笑顔になったが、喧嘩をしていることを思い出してか、表情を曇らせてしまった。

 

百合はそれを見て、やっぱり来るべきじゃなかったのか自問する。

 

それでも、ここまで来た以上、自分の気持ちを素直に伝えるしかない。

 

「さっち……私!!」

 

「ごめんなさい!!」

 

百合は咲希の元へ進みながら、気持ちを伝えようと思ったとき、咲希が頭を下げて謝った。

 

「………………なんで……さっちが謝るの?」

 

百合は愕然とし、思わず立ち尽くした。

 

「だって…………だってわたし…………百合ちゃんとの約束……破っちゃったもん!!」

 

咲希は泣きそうな声で、百合に叫んだ。

 

百合は驚きながらも、少しずつ、咲希に歩み寄った。

 

咲希は百合を真っ直ぐ見詰めながら続ける。

 

「ヒマワリ……植えようって約束したのに…………ごめんなさい!!

約束したとき、“一緒に”って言ってなかったから……百合ちゃんと一緒じゃなくても、大丈夫かなって思っちゃって……!!」

 

「じゃあ……なんで一人で植えなかったの?

さっち一人でもできるよね!?」

 

百合は、言い訳とも取れる咲希の言い分に、また心が冷たくなる感じがし、悲しい声で訊いてしまった。

 

「できるよ! でも……でもね!!

ヒマワリは……竹内さんと植えたかったの!!」

 

「なんで……!?

私はもう、いらないの!!?」

 

「…………違うよ!!!!」

 

咲希は思わぬ言葉に驚いたあと、一際大きく叫んだ。

 

百合はまた驚き、動きを止める。

 

「私は、百合ちゃんのことがとっても……とーーーーっても………大好きだもん!!

だからね! そんな大好きな百合ちゃんが、他のお友達にもよく知ってもらいたくて! 他のお友達とも仲良くしてほしくて!!

だから! 先生に頼んで、生き物係の人数を3人にしてもらったんだよ……!!」

 

「…………そう……だったんだ…………」

 

百合はまた、自分のちっぽけさを痛感した。

 

誰かを好いて、自分好みにお世話し、ちっぽけな自尊心を護っていただけだった。

 

護っていたつもりが、逆にいつも護られていたのは自分だったのだ。

 

「去年はだめだったけど…………今年は大丈夫だって思ってる!!

あ……でも……でもね!! 百合ちゃん!

わたし、まだ……あき………竹内さんに、花壇のお手入れはさせてないよ!!

百合ちゃん、お花のことが大好きだから、勝手なことしちゃいけないって思って…………!!

だからね、先にプランターで育てて、それから花壇のお手入れをしていいか、百合ちゃんにテストしてほしいって思ったの!!

だから私、最初の種植え以外、プランターのお手入れ、手伝ってないよ!!」

 

「…………そう……なんだ…………」

 

百合は、咲希の弁明は、ほとんどどうでもよくなってた。

 

ちっぽけな自分には、咲希の行動はすべて立派で壮大なことにしか思えず、許す許さないなんて判決を下す権利さえないと、思ってしまった。

 

「百合ちゃん!! ごめんなさい!!

また、水やり一緒にやろう! お花のこといっぱい教えて!! 休みの日、いっぱいいっぱい遊ぼう!!」

 

咲希は頭を下げ、必死に謝る。

 

百合は首を振り、咲希に向かい走り、そして

 

「ごめん……!

さっち…………!!」

 

咲希に抱き着いた。

 

「百合ちゃん…………?

なんで……謝るの……?」

 

咲希は驚いた顔をしつつ、百合の背中を撫でながら訊ねた。

 

「ごめん……!!

本当にごめん!! ごめんなさい!!!」

 

「百合ちゃん……?」

 

「私………………私!

さっちのことが好き……!!

好きで好きでたまらなくて…………少し、さっちを不自由にさせてた…………。

さっちを……悲しませてた……!!」

 

「百合ちゃん…………。

大丈夫だよ」

 

百合の心からの叫びに、咲希は、少し困惑したが、笑顔になり、優しい声で言った。

 

「さっち…………」

 

百合は、どこまでも優しい咲希に感動し、体を離して咲希を真っ直ぐ見詰めた。

 

「なあに? 百合ちゃん?」

 

「ありがとう!!!」

 

そして、感謝の気持ちを伝えると、また咲希をギュッと抱き締めた。

 

「わたしも!!」

 

咲希も百合を抱き締め、しばらく抱き締め合った。

 

「百合ちゃん!!

わたしも大好きだよ!!」

 

「私も、さっちが好き!!

本当に……心から愛してる!」

 

「ありがとう!!」

 

百合は心からの気持ちを伝えた。

 

案の定、咲希にその意図は伝わらなかったが、それでも、どこか心の中で突っかかっているものが取れたような気がした。

 

 

「あ……!

そうだ!! 百合ちゃん!!

はい!!」

 

咲希は何かを思い出し、足元のものを拾って見せた。

 

「わあ……すごい!!

さっちが作ったの!?」

 

それは、花の冠だった。

 

色とりどりの花が編み込まれ、よくできている。

 

「うん! 一人で作ったんだよ!!」

 

「すごい!!

…………乗せていい?」

 

「うん!!

あ、どうぞ!!」

 

百合は頭に乗せるため、冠を受け取ろうとしたが、咲希は背伸びをして、直接百合の頭へ乗っけた。

 

「これからも、よろしくね!!」

 

驚く百合に、咲希はいたずらに笑いながら言った。

 

「………………うん!!」

 

百合は久しぶりに見る咲希のとびっきりの笑顔を見て、自分もつられて笑顔になっていた。

 

 

 

 

それから、2人は花畑で隣り合わせに寝転がった。

 

「やっぱり、さっちのお胸あったかい……」

 

百合は咲希の胸に、触れない程度に手を当てる。

 

「うん! あき………竹内さんもあったかいよ!」

 

百合は明人の名前が出てきたため、一瞬、不機嫌な顔になりながらも、優しく微笑んだ。

 

「いいよ。下の名前で呼んでも」

 

「えっ!? いいの!!?」

 

「うん」

 

「やったー!! ありがとう!!」

 

「……うん」

 

百合は、男子と親しげな咲希の姿をみたくなく、下の名前呼びを禁止していたが、今回の事で、あまり意味のなかったり、禁止するのはやりすぎだと思ったりで、解除することにした。

 

それでよかったのかどうか、今はわからない。

 

それでも、咲希の嬉しそうな笑顔を見ると、自分も嬉しかった。

 

「ねえ! わたしたちが仲直りできたんだからさ!!

百合ちゃんと明人くんも仲直りできるよね!!」

 

「え………あ……ああ…………

うん。がんばる」

 

百合はそこを掘り出されるとは思えず、困惑しながらも、咲希の前では取り繕えばいいかと思い、二つ返事で返した。

 

「やったー!!

じゃあ、明人くんも、花壇のお手入れ一緒にやってもいい!?」

 

「それはまだ」

 

「えー! なんで!?」

 

百合は、咲希の行動について、色々許すことにはしたが、まだ明人に言われた“たかが係”の件は解消されていない。

 

そのため、やっぱりまだ花壇の手入れをさせることには賛成できなかった。

 

それに、まだ独占欲が消えたわけでなく、“2人だけ”の花壇を手放すのは、まだ心の準備ができていなかった。

 

「今日見てきたけど、あれじゃ全然だめ。

水やりもムラが多くて、雑草も生えっぱなしだし、取ったとしても根っこからとってないもの」

 

百合は、2人がジョウロを片付けている間に見た、プランターの状態を思い出し、それらしい理由を付けた。

 

「それは……言ってなかっただけだもん。

どこまで教えていいかわからないから……」

 

咲希は口を尖らせ、不貞腐れながら言う。

 

「とにかくまだだめ。

まだ竹内さんには誠意が足りないから、ヒマワリも、今年分は私たちが育てる」

 

「えーー、でも、竹内さんは休みの日、全部来てくれたよー!」

 

「それは認めるけど……でもまだだめ」

 

「なんで?

百合ちゃんも、今日、お熱下がってるのにズル休みしたのに」

 

「それは……ちょっと…………気まずかったから…………」

 

「あ……えっと……ごめんなさい」

 

「あ、いや……さっちが謝ることじゃないよ」

 

「……うん」

 

「優しいね。さっちは」

 

「百合ちゃんも優しいもん」

 

「……ありがとう」

 

百合はこうして、咲希と話すのが何ヶ月ぶりかのように久しぶりのように感じた。

 

そして、あれだけ悩んだのが馬鹿みたいに思えてきた。

 

「ねえ。

さっち」

 

「なあに?」

 

「花壇の手入れはまだだめだけど、竹内さんに、代わりに別のことをやらせてもいいかな」

 

「え! なになに!! 別のことって!!」

 

興味津々にきく咲希に、百合は優しく微笑んだ。

 

「私たちって、生き物係だよね」

 

「うん!!」

 

「だからさ、生き物を飼おうと思うの教室で」

 

「おー!! すごい!! 面白そう!!

何飼うの!?」

 

「うーん……そうだなー…………

あ、前、お姉ちゃんのクラスでメダカを飼ってたって聞いたことあるよ」

 

「メダカ!!

…………メダカ!!

面白そう!!!」

 

「まだ決まったわけじゃないからね」

 

「メダカ!! メダカ!!」

 

「ふふ。

じゃあ、あした袴田先生に相談してみるね」

 

「うん!!

楽しみだなー!! メダカ!! メダカ!!!」

 

明人に係仕事をさせるための代案として思い付いたものを、咲希がこんなにくいつくとは思わず、百合は驚くと同時に、嬉しそうに微笑んだ。

 

(あの人と仲直りか…………)

 

そして、ふと咲希に言われたもう一つの仲直りのことを思い出した。

 

百合は、その相手を思うとまだ怒りが湧いたが、それと同時に、どこか照れてしまっていた。

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