ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

24 / 59
19話 ホームセンター

05/07(土)

 

朝の10時に、明人は集合場所の花畑へと辿り着いた。

 

「あ! 明人くん! おはよー!!」

 

咲希と百合はすでに花畑に着いており、花を見ていた咲希は明人の姿を見ると、とびきりの笑顔で嬉しそうに手を振って挨拶した。

 

「お……おはよ」

 

明人はその姿がかわいらしく、照れながら少し手を挙げて、挨拶を返す。

 

「…………おはよう」

 

その様子を呆れながら見る百合も、咲希に注意される前に、一応挨拶する。

 

「………………おはよう」

 

明人は無視をしようとしたが、咲希の期待の眼差しに負け、仕方なく返した。

 

百合は不機嫌そうな顔をわざとらしく見せると、顔をそらした。

 

明人もそれを見て苛つき、なにか言いたかったが、咲希の前なので、留めた。

 

「百合ちゃん! 明人くん!

早く行こー!!」

 

そんな2人の様子を気付いてかどうか、寧ろ2人が挨拶交わしているのに嬉しそうな様子を見せると、咲希は百合と手を繋ぎ、ソワソワしながら言った。

 

「うん!    「そうだな

はやく行こう」 とりあえず行くか」

 

咲希の催促に、百合と明人は同じタイミングで返事をし、かぶっているのも承知で最後まで言い終わると、お互いに睨み合った。

 

「うん! 行こー!」

 

咲希は同時に発せられた声を聞き取れた訳ではなかったが、声色的に肯定的だったため、片手を上げて、走り出そうとした。

 

「待ってさっち!

走らない」

 

百合は繋いだ手を引っ張り、今度はかぶらないよう、早口で咲希に注意する。

 

「あ! ごめんなさい」

 

咲希はまた自分が思わず走りそうになっていたことに気付き、照れながら百合に謝り、ゆっくりと歩き出した。

 

「いいよ」

 

百合は隣を歩きながら優しく咲希に言うと、後ろにいる明人に視線を送り、勝ち誇るかのように咲希と繋いだ手を見せびらかした。

 

「くっ…………

(あいつ……!!)」

 

明人は拳を握り、今にも殴りたいと思ったが、なんとか抑え、仕方なく1人後ろに着いて歩いた。

 

「ねえねえ!」

 

そこへ、咲希が後ろを振り向きながら、明人に呼び掛けた。

 

「な

 

「さっち。後ろ振り向きながら歩くと危ないよ」

 

“なに?”と応えようとした明人の声を、百合が遮る。

 

(おまえ……!)

 

明人は小さく百合を睨み付けた。

 

「そっか! わかった!!」

 

咲希は納得したように言うと、立ち止まる。

 

(違う、さっち! そういうことじゃない!!)

 

百合は咲希と明人が話す事を阻止しようと、“後ろを振り向くこと”を注意したのに、咲希は“歩くこと”を注意されたと思ってしまったことに気付き、心の中で突っ込んだ。

 

「どうしたん

 

「さっちー!

道の途中で立ち止まると他の人の迷惑になるから

 

「人なんていねえだろ」

 

百合は会話をなんとしたも阻止しようと、必死にそれらしい理由をつけようとしたが、半ば呆れ気味な明人が、苛ついた様子で小さく呟いた。

 

百合も明人の言い方にムッとし、不機嫌そうな顔を顕にする。

 

「えっと……明人くん!」

 

咲希は中々言い出せず、困った表情をしていたが、2人が喋り終えるタイミングを見計らい、明人に手を差し出し、話し掛ける。

 

「こっちの手、あいてるから!

明人くんも繋ぐ?」

 

「え!?」 「えぇ!!?」

 

突然のお誘いに明人は驚くが、それ以上に百合がびっくりする。

 

「……じゃ、じゃあ……お言葉に

 

明人はせっかくのチャンスだからと、手を握りに行ったが

 

「さっち。

あまり横に並ぶと迷惑になるから、3人で手を繋ぐのはやめたほうがいいんじゃないかな?」

 

と百合はさっちの差し出す手を掴んで下に下げ、早口で説得するように言った。

 

「いいじゃねえか……!

咲希も手繋ぐか言ってくれてんだから!」

 

明人は腕組みをし、呆れてイライラした様子で、百合に諭す。

 

「うるさいな!

横に並ぶと通行人の迷惑になるって、よく先生方に言われてるでしょ!!」

 

百合もイラッとし、咲希から両手を離して、明人と向き合う。

 

「今は迷惑かどうかっていう話じゃねえんだよ!!

手、繋ぐか繋がないかって話だろ!!

論点ずらすなよ!!」

 

「ずらしてません!!

手、繋いだらこういうデメリットがあるよっていうのを教えてるだけですー!!

自分都合だけでなく、もっと周りを見てくださーい!!」

 

「はーーーあ!?

おいおいおいおい、誰の口からそんな偉い言葉が発せられるんだろうかね!!

自分都合は誰のことかなー?」

 

「それはあなたの

 

「仲良くして!!!」

 

怒りが爆発し、ヒートアップする2人に、咲希は泣きながら叫んだ。

 

(あっ………) (やべ…)

 

百合と明人は、やってしまったと思いながら、それでもお互い、向こうのせいだと睨む。

 

「ごめんね。さっち。

あの人が突っかかってくるから」

 

百合は咲希の頭を撫でながら、ポケットのハンカチで涙を拭く。

 

「は?

自分勝手な嫉妬で遮ってきたのは誰だよ」

 

明人は、注意されてもなお嫌味な言い方をする百合に苛つき、睨みながら言った。

 

「…………………………。

行こう。さっち」

 

百合は黙りながら乱雑に咲希の涙を拭き取ると、咲希の手を取り、スタスタと歩き出した。

 

「百合ちゃん…………

仲直りは? ごめんなさいは?

しないの?」

 

咲希は百合の顔を見上げながら、心配そうな顔で訊く。

 

「しない」

 

百合は不機嫌にそう言うと、明人から距離を離すように、さらに歩く速度を上げた。

 

咲希はまた泣きそうになり、小走りで百合に引っ張られながら、助けを求めるように後ろでゆっくり歩く明人を見た。

 

(悪いけど……やっぱあいつとは無理だ)

 

明人は思わず首を振ってしまう。

 

咲希はそれを見て、ショックを受けた顔をすると、また百合を見上げた。

 

 

 

 

 

あれから数分が経つが、3人に会話はない。

 

ホームセンターへの道は車通りが多くて歩道が狭く、横幅は3人通れるかどうかであった。

 

人通りも多く、結局百合の言うとおり、3人で手を繋いで歩くと迷惑になってしまう。

 

明人はそれをわかっているが、やはり腑に落ちなかった。

 

(ちんたら歩いて……おっせえな…………)

 

百合の歩みは、初めは早足だったが、疲れのためなのか、次第に遅くなった。

 

明人が普段早足ということもあるが、それでもその半分にも満たないスピードに、明人はじれったくなっている。

 

その苛つきで、歩くスピードが少しずつ速くなり、足を動かすサイクルも増え、いつの間にか2人との距離が縮まる。

 

そして

 

「わっ!?」

 

百合の靴の踵を踏み、靴を脱がせてしまった。

 

「あ……わるい」

 

明人は視線をそらし、謝る。

 

「大丈夫? 百合ちゃん」

 

「……うん。

大丈夫大丈夫」

 

心配する咲希に、百合は微笑みながら返し、けんけんして靴を拾う。

 

履き直す途中で、明人と目が合い、少し収まっていたイライラがまた再燃してきた。

 

「わざとでしょ?」

 

百合は明人を睨み、声を低くして訊く。

 

「は?」

 

明人は腕組みをしながら目をそらす。

 

「“は”じゃなくて!!」

 

百合は文句を言おうとしたが、咲希に手を強く握られ、止めた。

 

咲希の顔を見ると、悲しみ、拗ねていた。

 

“またやってしまった”と思い反省しつつ、元凶の明人をまた睨む。

 

「…………悪かったよ」

 

明人も咲希の表情に気付いており、仕方なく自分の非を認めた。

 

「……次からは気を付けて」

 

言い方に誠意がないことに口出ししたかったが、咲希の前で謝られたからには許すしかなく、注意で留めてこの場をおさめた。

 

2人が何も言わなくなったため、咲希は、とりあえず喧嘩はおさまったのだと思い、一安心したが、ずっと険悪なムードが続いているため、心配は絶えなかった。

 

 

 

 

 

「百合ちゃん見てー!!

グッピーだって!! グッピー!!」

 

「うん……!

かわいいねー」

 

「うん!!」

 

ホームセンターへ着き、まずは2階の熱帯魚のコーナーを見始めた。

 

展示されている魚を見ると咲希は、まるで水族館に来ているかのように大はしゃぎしている。

 

「わー! なにこれ!!

かわいいー!! ねえ!! 百合ちゃん! 百合ちゃん!

ネオンテトラだって!!」

 

「そーなんだー……!

かわいいねー」

 

「うん!!」

 

百合は、咲希が店内を走らないようずっと手を繋いでいるが、咲希が大はしゃぎなことと最初に早歩きをしてしまったにより、疲れた様子を見せている。

 

(はあ…………

そういえば、あの人どこ行ったんだろう……!)

 

それに、さきほどから明人の姿がなく、あたりを見渡してもいないので、また少しイライラが増していた。

 

「……あ!!

ワンちゃんだーー!!!」

 

「うわ……!」

 

百合がぼーっとしている間に、咲希は隣接するペットショップで展示されている犬を見付け、百合を引っ張り向かってしまう。

 

百合は引き止めようとしたが、もうその体力は残っていなかった。

 

「ワンちゃん!!」

 

咲希はガラスに手を付き、引っ付いてしまう。

 

「はあ……はあ……

さっちー……さすがに犬はだめじゃ

 

百合は優しく注意しようとしたとき、ペットの餌が置かれている商品棚の近くに明人がいることに気付いた。

 

「……さっち。

まだ少しここにいる?」

 

百合はムッとした表情になり、明人を見ながらそう言った。

 

「うん!!

ワンちゃん見てるー!!」

 

咲希は犬に首っ引きなため、百合の様子に気付かず、無邪気に見ていた。

 

「うん」

 

百合は頷くと、ドシドシと歩き、商品を両手に持って吟味する明人の肩を力強く叩いた。

 

「ちょっと! 竹内さん!!」

 

「イテッ……!

…………なんだよ」

 

怒る百合に、明人は迷惑そうな顔をする。

 

「なんだよじゃないでしょ!!

あなた、こんなところで何してるの!?」

 

「なにって。……だから

 

「だからじゃない! 言い訳は結構!

あなたね、ここに来た理由分かってる!?」

 

「教室で飼う動物の下見だろ?

そんくらいわかって

 

「分かってない!! じゃあなんでこんなところで油売ってるの!?」

 

「だから、それは

 

「だからじゃないでしょ!!

あなたね……あのときも言ったけど、生き物係は命を預かる係で、責任のある係なの!!

それなのにあなたときたら、私たちをほったらかして自分はウィンドショッピングでも気取ってるつもり!?」

 

「お前……さっきから何怒ってるんだよ?

それにさっき

 

「うるさい!! 言い訳はいい!!

やっぱりあなたには

 

「百合ちゃん! うるさいよー!」

 

呆れる明人を叱り付ける百合に、咲希は困った様子で注意した。

 

「なあ……こいつ何怒ってんだ?」

 

明人はなぜ自分が怒られているのか分からず、百合を指差し、助けを求めるように咲希へ訊いた。

 

百合は、ふんと顔をそらし、向けられる指を叩き落とす。

 

「人に指ささない……!

ねえ、さっち聴いてよー!

竹内さんたら、私たちをほったらかしてこんなところで遊んでるんだよー」

 

そして、わざと困ったような口調にし、咲希に同意を求める。

 

「……? 遊んでないよ。

お買い物だよねー! 明人くん!!」

 

咲希は首を傾げると、微笑みながら明人に言った。

 

「ああ」

 

明人は呆れながらそう言うと、咲希が味方してくれたことに、少し安心して微笑んだ。

 

「え!!?

お買い物って…………いやでもやっぱり、そう! いや、あ! なんていうか!! なんで私たちをほったらかして!!」

 

自分だけ仲間はずれにされたような気がし、恥ずかしくなる百合は挙動不審になり、必死に説明を要求する。

 

「人聞き悪いな……。

ちゃんと許可取っただろ……?

先に上あがって、猫の餌買ってるって」

 

明人は呆れ果て、見下すような視線をしながら言った。

 

「聞いてない!! 許した覚えもない!!」

 

百合は顔を赤くしながら、必死に叫ぶ。

 

「言ってたよー? ね、明人くん」

 

「ああ。1階にいるとき」

 

「…………1階……」

 

明人が反論するならまだしも、咲希も向こう側に付いているため、自分が間違っているのではと思った百合は、ホームセンターに着いてからのことを思い出す。

 

到着し、店に入ると、大きなぬいぐるみのセールがやっており、案の定咲希が食いつく。

 

百合はなんとか説得し、引き離そうとするがてこでも動かない。

 

見兼ねた明人が手伝おうかきくが、百合は断固として拒否。

 

しばらくし、明人が呆れた様子で何かを言ったが、疲れて聞き取れず、咲希がうんと言ったから、適当に分かったと返していた。

 

(……………!!!

あれか……!!)

 

百合はそのときに、買い物の許可を出していたことにようやく気付いた。

 

早とちりした恥ずかしさに、顔が真っ赤になり、心臓の鼓動が速まる。

 

「と……とと…………

とにかく!! 早く買って来て!!」

 

百合は一刻も早く、この恥ずかしさから抜け出したく、明人に指を差し、命令口調で誤魔化した。

 

「人に指差すな」

 

明人はそう言うと、振り返り、レジへと歩き出した。

 

百合は誤魔化すように指をピクピクと動かすと、スルーしていた事実に今気付いた。

 

「待って!!!!! あなた! 猫飼ってたの!!?」

 

「百合ちゃん……うるさいよ」

 

店中に響き渡るような声量で百合が叫んだため、咲希は思わず耳を塞ぎ、少し迷惑そうに注意した。

 

「あ……ごめん」

 

百合は恥ずかしそうに謝ると、思わず咲希の手を掴んだ。

 

明人は呆れながら会計を済ますと、2人の元へ戻る。

 

「うるせえな……聞こえてるていうの」

 

「…………ごめん」

 

百合は口をもごつかせ、顔をそらして謝る。

 

「…………行くぞ」

 

明人は財布にお釣りをしまうと、ポケットに入れ、小動物のコーナーへ歩き出した。

 

百合も咲希に引っ張られるようにして付いて行く。

 

「ねえねえ! 明人くん、猫飼ってるの!?」

 

咲希は興味津々で、明人に訊いた。

 

「ああ。一匹な。」

 

「へー!! かわいい!?」

 

「かわいい……?

……うーーん、まあ…………“猫”って感じかな」

 

「ねこ!! ねこー!!!」

 

咲希は可愛らしい子猫の姿を想像し、興奮気味に小さくスキップした。

 

「さっちー……危ないよ」

 

「ねこねこ!!!」

 

百合が疲れ切ったようすで注意するが、咲希の興奮は留まることを知らない。

 

明人はその様子を見て、自分のペットの話をしてこれだけ喜んでくれたのがとても嬉しかった。

 

 

 

「ハムスターだー!! かわいい!!

百合ちゃん!! これ飼いたい!!」

 

ハムスターのところに来た途端、咲希はその愛くるしさに食いつき、きらきらした目で百合に頼んだ。

 

「えー……もうちょっとよく選んでみたら」

 

疲れている百合はほとんど棒読みでそう言った。

 

「ハムスターは夜行性だし、聴覚も優れてるから、あんまり教室で飼うのは向かないんじゃないか?」

 

隣で見ていた明人が、悩んだ様子をみせながら言った。

 

「そうなの?」

 

咲希は首を傾げ、不思議そうに訊いた。

 

「ああ。昨日、図書館で読んだ」

 

明人は照れながらも、少しドヤ顔で答えた。

 

「そうなんだー!

………それで、“やこうせい”ってなに?」

 

「…………!

あ……ああ、夜に動くこと……かな?」

 

明人は思わぬ質問に驚いたが、なんとか柔らかい言葉にして伝えた。

 

「あ! コウモリさん!!」

 

「……そう! コウモリさん!!」

 

「ふふ!

やったー!!

………あ、百合ちゃん!」

 

予想が当たり、喜ぶ咲希は、突然、百合に話し掛けた。

 

「………………

はっ……!

なに!? さっち」

 

百合は少しうとうとしており、反応が遅れ、慌てて聞き返した。

 

「うんち!!」

 

咲希は元気よく、なんの恥じらいもなく伝えたため、明人は少し驚いた。

 

「あ……うん!

トイレは……あっち!」

 

百合は立ち上がってトイレを探し、案内を見付けると、咲希の手を引き、連れて行った。

 

 

 

 

 

「はーっ………………」

 

咲希がトイレをしている間、トイレ前の休憩所のソファに座る百合は、大きく溜息をついた。

 

「お疲れか?」

 

自販機でオレンジジュースを買った明人は、缶を振りながら、少し心配するように話し掛ける。

 

「ほとんど、あなたのせいだけどね」

 

百合はぐったりしながら嫌味らしく言う。

 

「ふーーん。

…………飲むか?」

 

明人は飲み口を向けて、まだ開けてないことを強調しながら、訊いた。

 

「いい」

 

百合は一瞥するとすぐ断った。

 

「なんで?」

 

「いいから」

 

「そう」

 

明人はそう言うと、蓋を開け、半分くらい一気に飲んだ。

 

百合はその間羨ましそうに見ていたが、飲み終えることを確認すると、また視線を外した。

 

「疲れてるなら代わるか?

手繋ぐの」

 

「あなたが繋ぎたいだけでしょ?

ぜっっったい、ダメ」

 

「あっそう、はじめから期待はしてねえよ」

 

明人はそう言うと、また少しジュースを飲んだ。

 

「でも、無理はすんなよ。

お前が無理して注意散漫になったら、怪我するのは咲希だからな」

 

「うるさいな……!

だから、この疲れはほとんどあなたのせいなの!!

はーーーあ、さっちの前だと、あなたももう少し大人しくなると思ったんだけどなーー!」

 

「それはこっちのセリフだ。

一々突っ掛かりやがって。

仲直りしたから少しは反省したのかと思ったら、なにも変わってねえじゃねえか……!」

 

「別にあなたに言われたから仲直りしたわけじゃありません!!

それに、私も少しは変わろうとは努力はしてるんです!!」

 

「だったら結果見せろよ!!

結果見せなきゃ努力は意味ねえだろ!!」

 

「うるさいな!!

そんなすぐ結果が出るわけないでしょ!!

せっかちな男は嫌われるよ!!」

 

「お前こそ!

束縛が酷い女は捨てられるさ!!」

 

「なにを!!」

 

2人はまたヒートアップしてしまい、口喧嘩になる。

 

百合はまた明人の胸ぐらを掴もうと立ち上がったが、人はいないが場所が場所なため、冷静になり、座った。

 

「決めた」

 

「…………なにがだよ……?」

 

「もうあなたとは休日一緒に遊ばない」

 

「俺こそ願い下げだ」

 

「さっちのために、なんとか仲良くなろうと計画したのに……………

これじゃ台無しだよ!!」

 

百合は泣きそうになりながら、明人へ叫ぶ。

 

「なんだよ? その言い方。

恩着せがましくするな」

 

明人は腕を組み、睨みながら冷たく言った。

 

「ちょっとでも、本当に仲良くなりたいって思う私が馬鹿だった…………」

 

百合は顔に手を当て、すすり泣く。

 

「今更かよ。

…………バカ」

 

「ただいまー!!

百合ちゃん! 明人くん!

仲良くしてた?」

 

何も知らない咲希が無邪気な顔をして、2人に訊いた。

 

明人は顔を俯かせ黙っていたが、百合は手をどけて、咲希に笑顔を見せた。

 

「うん! とても仲良しにしてたよ!」

 

そう言うと、明人をちらりと見る。

 

明人は何をしてほしいか察し、咲希に笑顔を向けた。

 

「ああ! もうすごい仲良しだよ!」

 

「そっかー!!

よかった!!」

 

咲希は安心し、今までにないほどのとびきりの笑顔になった。

 

明人と百合は、その笑顔を見れて嬉しかったが、同時に大きな罪悪感を覚えていた。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。