ハートジャスティス 番外編集   作:ココリンク

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29話 なかよし

遠足のメンバー決めのくじ引きの結果、明人、咲希、百合という生き物係がそのままメンバーになった。

 

そして、残った時間はそれぞれメンバーが集まり、準備の時間になった。

 

今回の遠足は自然あふれる大きな公園。

 

それぞれの班で、それぞれ行きたいところを決めて話し合い自分達でルートを決めることになっている。

 

 

「さっち! こっちー!!」

 

明人たちのメンバー──6班は席の近さから明人と百合のところに集まることになった。

 

「あ。

机ピッタリくっつけないで」

 

机をくっつけ、先生から資料をもらい話し合いをする時間なのだが、明人が自分の机を百合の机につけようとしたとき、百合は睨みながら言った。

 

「……なんでだよ?」

 

明人は寸止めして、呆れながら訊く。

 

「なんでも。

あなたは資料取ってきて、さっちの分の机動かすから」

 

百合は明人を一切見ずにそう言うと、黙々と机を動かした。

 

「指図すんなよ」

 

明人は不満げに呟くと、資料を取りに教卓に向かった。

 

「アッキー流石だな!

再び両手に花とは、運命の赤い糸で結ばれてるんじゃないんですか?」

 

明人が順番待ちしていると、横から健太が茶々を入れてきた。

 

「一本多いんだけどな」

 

明人は不満そうに溜息を吐いた。

 

「そうだなアッキー。

男には決断しなくちゃいけない時が来るもんだよな」

 

「浅い。

ていうか意味分からん」

 

明人はまたカッコつけながら語る健太に、辛辣なツッコミを入れながら、教卓に一通りセットされている資料を手に取った。

 

「浅くねえし!

いいよなー! 天真爛漫なカワイイ子と、伝説のクラス委員の妹を侍らせるなんて」

 

「そんなんじゃねえから。

ていうか、“妹”って不来方自身は違うだろ」

 

「いいじゃねえか、不来方と仲良くなればもしかしたら、伝説の超絶美人とお知り合いになれるかもしれないんだぞ」

 

「はいはい。

魂胆さえも浅い」

 

明人はそう言い捨てると、席へと戻った。

 

 

「咲希! お待たせー」

 

明人は百合と楽しそうに話す咲希に言ったが

 

百合がいち早く反応し、明人の姿を見るや否や険しい顔付きになり

 

「おそい!」

 

と言った。

 

明人も百合を睨みながら、資料を机に置いた。

 

「遅くねえよ。

少し捕まって話してただけじゃねえか」

 

「なんで話すの? さっち待ってたんだよ?」

 

「わたしは大丈夫だよー!」

 

百合は咲希の頭を撫でながら文句を言うが、当の咲希本人はあまり気にしてない様子で、無邪気に言った。

 

「ほら、咲希は大丈夫だって」

 

「…………始めるよ」

 

何も言い返せなかった百合は資料──遠足のしおりやその場所のパンフレット、地図の書かれたプリントなどをそれぞれに配った。

 

「勝手に仕切るなよ」

 

「……あなたこそ、一々突っかかってくる」

 

「お前がずっとピリピリしてるからだろ」

 

「あなただってこの頃余裕ないんじゃない?

いつも飄々としてるくせに」

 

「は?

俺がいつ余裕を

 

「ねえ! 百合ちゃん!!

ここ行きたい!」

 

2人の口論をお構いなしにパンフレットを眺めていた咲希が、綺麗な花が咲いている写真を指差して百合に見せた。

 

「どれ?

あ! いいね!! 私も行きたい!」

 

百合はさっきまでの険しい顔はどこへやら、とても穏やかなにこやかな笑顔で、咲希が指差す写真を見た。

 

「どこのことだ?」

 

明人も興味があり、覗きこもうとするが、百合はすぐに気付き、睨み付けた。

 

「さっちは私に

 

「明人くんも!

ここだよ! かわいいお花がたくさん咲いてるの!」

 

百合の言葉にかぶせるように咲希は、無邪気にパンフレットを明人に見せた。

 

「おお…! すごいな、これ!」

 

写真には大きな花畑が写っていた。

 

花には深く興味があるわけではない明人も、感動するほど壮大な景色が広がっていた。

 

「俺も、いいんじゃないかな。」

 

「やった!」

 

咲希は二人からの同意が得られたことに喜ぶと、地図が書かれたプリントに鉛筆で丸を書いた。

 

「適当に合わせただけでしょ?」

 

拗ねた様子の百合がまた明人に突っ掛かる。

 

「ちげえよ。

お前こそ、咲希の行きたい場所ならどこでもいいんだろ? 自分の都合より咲希が一番なんだもんな」

 

「あなたこそ、さっちの行きたいところに行きたいんでしょ?

どんなことよりもさっちが一番だもんね」

 

「ねえ! 百合ちゃん!

ここも!! あ!! ここも行きたい!!」

 

咲希はふたりの様子をまるで気にせず、パンフレットを眺め、興奮している。

 

「どれどれ? ああ、いいね!

私も行きたい!」

 

咲希が指差すところはどれも、花がキレイに咲いているところだったので、百合も思わず見惚れてしまう。

 

「あ! さっち、ここは!?」

 

「あー!! ここも行きたい!」

 

完全に2人でパンフレットを見ることに集中してしまっている。

 

「時間足りるのか?」

 

明人はそう言いながらしおりを手に取り、パラパラとめくった。

 

「うるさいな。

あとから考えるの」

 

百合は顔を上げてそう言うと、またパンフレットを見始めた。

 

「ふーん。

ま、ほとんど自由時間だし、なんとかなるか」

 

明人はそう言うと、しおりを机に置いた。

 

百合はその様子を横目で見ると、不思議そうな表情をした。

 

「前から気になってたけど。

あなたって、それ読めてるの?」

 

百合は度々明人が本をペラペラとめくる姿を見ており、じっくりと1ページ1ページ読んでいるところを見たことがない。

 

百合は、それでちゃんと読めているのか気になっていたのだ。

 

「ああ、なんとなくだけど」

 

明人は得意ぶる様子もなく、当たり前かのように言った。

 

「すごーい!

ペラペラするだけでわかるんだ!」

 

咲希はワクワクしたように目をキラキラさせると、真似してしおりをペラペラめくった。

 

「……わからない…………ぜんぜんよめないよー」

 

「変なこと教えないで」

 

百合はめくり続ける咲希からしおりを取り上げた。

 

「変なことじゃねえよ。

昔っからの俺の読み方」

 

「あそ。

じゃあ持ち物の欄何書いてあった?」

 

百合は目次から持ち物が書いてあるページを見付けようとしたが

 

「百合ちゃん、これわたしの」

 

と咲希が困った様子だったので

 

「あ、ごめん」

 

と謝り、自分のしおりで探した。

 

「何って、一度じゃ覚えられねえよ」

 

「じゃあ、ちゃんと見て

 

「おやつは4年のときからあがって、500円までになってたけど」

 

“ちゃんと見てなかったんでしょ?”と言おうとした百合に、明人はついでのように言った。

 

「え?」

 

百合は信じられないような顔で、しおりを見た。

 

(本当だ)

 

そこにはおやつは500円までと書いてあった。

 

更には、流し読みしていたら見逃してしまうくらい、特に目立っているわけでもなかった。

 

「ほんとだー! 500円までだ!

百合ちゃん! 一緒に買いに行こうね!」

 

「う……うん」

 

百合は呆気にとられ空返事をしてしまった。

 

 

 

 

 

そんなこんなで、結局咲希の行きたいところばかりが候補になり、順路や滞在時間を決めようとしたところで、チャイムがなってしまった。

 

「楽しみだね!

百合ちゃん! 明人くん!」

 

咲希は筆記用具をしまいながら、遠足に向けてのワクワクが止まらずとびきりの笑顔で2人に言った。

 

「うん!」  「ああ!」

「楽しみだね」 「楽しみだな」

 

百合と明人はほとんど同じタイミングで応え、被ったことに睨み合った。

 

「かぶらせないで」

 

「こっちのセリフ」

 

お互いに小言を言いながら、机を戻そうとしたとき

 

「あっ!」

 

咲希が鉛筆を掴み損ね、明人と百合の机の間に僅かに空いていた隙間に落としてしまった。

 

明人と百合はすぐにしゃがみ、鉛筆を拾おうと手を伸ばした。

 

「いて!」 「いた!」

 

その瞬間、取りやすいように体を寄せたときにお互いの頭がぶつかってしまった。

 

「お前、邪魔すんな」

 

明人は百合に顔を向けて文句を言ったが、百合は気にせず鉛筆を拾うと、明人に見せびらかすようにして立ち上がった。

 

「はい。

気をつけてね、さっち」

 

「うん! ありがと!!

百合ちゃん、さっき頭ごっつんこしてなかった?」

 

咲希は笑顔でお礼を言うと、心配そうに訊いた。

 

「どういたしまして。

私は大丈夫だよ。

この人も大丈夫。石頭だから」

 

百合は微笑んでそう言うと、明人を指差した。

 

「誰が石頭だ。

ていうか、お前が隙間開けさせなきゃ落ちなかっただろう」

 

「明人くんも、拾おうとしてくれてありがとう!」

 

「お……おう」

 

小言を言ってる中で、急に咲希に感謝されたため、明人は間の抜けた返しをしてしまった。

 

「そういえば、咲希、最近俺たちがなんか言い合っても止めなくなったな」

 

明人は“そういえば”と思い、咲希に訊いた。

 

今日のグループ活動を振り返っても、意図せずにとめたようなことは何回かあったが、咲希に注意された覚えがなかった。

 

(きいちゃうんだ)

 

百合も前から気になっていたが、改めて訊くタイミングがなく、先延ばしにするうちに答えを聞くのが怖くなったので、恐る恐る聞き耳を立てた。

 

「うん!

花奈ちゃんが言ってたんだ!

喧嘩するほど仲がいいって!」

 

「「え?」」

 

咲希の答えに2人はそろって目を丸くした。

 

「無理してなかよくしなくていいって言っちゃったけど、やっぱりなかよしがいいなって思って、花奈ちゃんに相談したの!

そしたらね! 喧嘩ばかりするけどなかよしってのもあるんだって!

たしかに花奈ちゃんと空良くんもよく喧嘩するけどなかよしだもん!

だから、百合ちゃんと明人くんのなかよしを邪魔しないように止めなくなったんだー!」

 

咲希の素直な言葉に、明人と百合は互いの顔を合わせる。

 

「なかよし?

俺が、お前と?」

 

「……なかよし?

私が、あなたと?」

 

2人は指を指し合い、しばらく膠着状態になる。

 

「うん!

それに最近、喧嘩してるときも、わたしに百合ちゃんが明人くんのお話してるときも、明人くんが百合ちゃんのお話をしているときも、すごく楽しそう!

怒ってるけど、なんか楽しそう!」

 

続けての咲希の言葉で、明人と百合は互いに睨み合い、そして咲希に向き直ると

 

「「仲良くない!!」」

 

と揃って言った。

 

「誰がコイツと!」「誰がこの人と!」

 

「一々突っかかってめんどくさいし!」

 

「自分が正しいっていつも調子にのってカッコつけて!」

 

「花壇の代わりとして用意したメダカの手入れも一々文句言うし!」

 

「かと思ったら余裕なくなると他人に当たり散らかす!」

 

「自分に不都合になるとすぐ暴力に走るし!」

 

「本当になんというか偉そうで!」

 

「コイツとは!」 「この人とは!」

「「無理!!」」

 

「「だから!」」

「被せるな!」 「被せないで!」

 

2人から同時にすごい勢いで愚痴られた咲希は、普段なかなか見ない2人の顔に、驚いていた。

 

が、すぐに微笑んで

 

「ふふっ」

 

と笑った。

 

「やっぱり2人ともなかよしだね!!」

 

「「だから!!」」

「仲良くねえ!!」 「仲良くない!!」

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